「コーポラティブハウス」は理想の住まいをつくる、マンションの注文住宅! そのメリット・デメリットとは? 新築マンション購入前の注意点(11)

2020年12月12日公開(2020年12月12日更新)
高田七穂:住生活ライター

コロナ禍でテレワークが浸透し、ライフスタイルの変化や住宅の在り方そのものが見直されてきています。マンションも利便性を追求する昨今のトレンドから、より住環境を重視する動きが見えてきました。そうした中、企画から建設まで自分たち主導で行う「コーポラティブハウス」を選択肢の一つに加えてみてはどうでしょうか。(不動産・住生活ライター・高田七穂)

「コーポラティブハウス」とは
マンションの注文住宅

コーポラティブハウス
コーポラティブハウスで理想の住まいづくり(出所:PIXTA)

 新築マンションは、入居する前に間取りや設備、共用施設などが決められています。購入した人がそのプランやルールに合わせた生活をしなければなりません。戸建てで言えば、「建売住宅」です。これでは、立地や環境などが気に入っても、間取りや専有面積がライフスタイルに合わなければ、そのマンションをあきらめざるを得ません。

 これに対し、「コーポラティブハウス」と呼ばれる住まいの形態があります。ヨーロッパで生まれ、欧米では定着したスタイルです。日本でも、コーポラティブハウスとして建てられたマンションが、各地で少しずつ増えています。また、物件規模としては10戸以内の小規模物件から、30戸以上の物件までさまざまです。

 「コーポラティブハウス」は、居住予定者が計画段階から集まって建設組合を結成。土地の取得に始まり、設計から居住後の管理規約づくりまで、集合住宅に必要な一連の作業に、組合員である居住者自らが取り組んでいくものです。

 と言っても、素人ばかりでは分からないことが多いので、現実にはまとめ役として、設計事務所や不動産会社などがコーディネーターとして事業にかかわり、全体の計画をバックアップしていく例がほとんどです

 しかし、専門家の手を借りるとはいえ、自分たちで自分たちに合った住まいの形態をつくっていくのですから、とくに室内の専有部分に関して、考え方は「注文住宅」と同じです。出来合いのものではない、唯一無二の空間が手に入るのです。

コーポラティブハウスのメリット

 コーポラティブハウスには、主に3つのメリットがあります。

購入者がコストを管理できる

 1つ目は、コスト管理が自分たちでできること。一般の分譲マンションと比べ、モデルルームや広告宣伝費など販売に関する費用や売主の営業利益が不要なため、コスト面で有利になる場合があります。もちろん、取得する土地や建物のデザインなどにこだわると高額になるケースもあります。また、土地取得や設計など各段階においてかかる費用が明確になるため、それぞれの価格の成り立ちに納得できるという利点もあります。

室内プランの自由度が高い

 2つ目は、室内プランの自由度が高いこと。各自の住戸内部分は、メゾネットにしたり、好みの素材を使ったりと、思いのままに注文住宅の感覚でプランをつくりあげることができます。

信頼できるコミュニティーを築くことができる

 3つ目は、信頼できるコミュニティーを築くことができること。将来、居住者となる人同士でマンションを一から作り上げていくので、居住前から十分な時間をかけたコミュニティーが形成されるのです。

コーポラティブハウスのメリット
将来の居住者たちが協力してマンションをつくりあげる(出所:PIXTA)

 質の高いコミュニティーは質の高い管理を生みます。一般の分譲タイプのマンションでは、入居してみるまでどんな人たちが住み、どんな管理が行われるのかは分かりません。「管理はわずらわしいので関わりたくない」と考える人が少なからずいて、管理組合の運営に支障をきたすこともあります。

 しかし、コーポラティブハウスではそのような問題はほとんど起こりません。参加者は、建物を建てる段階で、さまざまな困難に遭遇し、解決していきます。ときにはぶつかり合うこともありますが、話し合いを続けながらつくりあげていく喜びを経験しているため、互いに協力する意識が育まれていきます。

 たとえば、管理規約など住まい方のルールについても、あらかじめ決められたものではなく、自分たちで話し合って納得した内容をつくることができるのです。

【関連記事はこちら】>>「管理組合」と「管理会社」の違いや役割を、マンション購入前に知っておこう!

コーポラティブハウスのデメリット

 メリットがある半面、デメリットもあります。

手間と時間がかかる

 まずは、何といっても手間と時間がかかること。企画から入居まで通常2~3年程度を要しますが、その間何度も集まって話し合いをする必要があります。また、参加者が集まらないと組合がつくれない、途中で脱退者がいると代わりの入居者を探さなければならないなど、居住に至るまでの時間は確約ができません。

事前に一定の自己資金が必要

 次に、事前に一定の自己資金が必要になること。参加者が土地代や運営費、建設費などを支払うことになります。当初に準備する資金は、物件価格の1割~5割程度。「住宅ローンで借りればいいや」と思っても、建物完成後にしか資金は得られません。手元の費用で負担できなければ、つなぎ融資などが必要になります。

 また、事業をバックアップする企業が倒産した例もあります。このような場合、すでに支払い済みのお金がどうなるのか、補償はどうなるのかを契約前に調べておく必要があります。

 また、あまりにも個性的なデザインにしてしまうと、売却が難しくなる可能性が出てきます。さらに、マンションの外観や仕様も個性的であればあるほど、大規模修繕時の費用が一般的な仕様のマンションと比べて、高額になるという面もあります。

苦労したからこそ味わえる充実感!

 自らがかかわり時間をかけて計画を練ったコーポラティブハウスは、それなりの苦労があるものの、非常に満足度の高いものになります。時間をかけても、結果に至るまでのプロセスを楽しめる人にとって、コーポラティブハウスは適したスタイルではないでしょうか。

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