新築・中古マンション市場動向は? 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説!【2024年3月版】

2024年3月12日公開(2024年3月13日更新)
岡本郁雄:不動産アナリスト

以下は、2023年10月の市況記事です。

2023年8月度の首都圏新築分譲マンションの平均価格は7,195万円。前年同月比では、17.9%の価格上昇となった。初月契約率は68.6%で高い水準を維持しているものの「HARUMI FLAG SKY DUO」の供給のあった前月の74.8%よりは下落した。中古マンション市場は、成約数、成約価格ともに前年同月比で上昇と堅調だ。今月も最新のマンション市況を解説する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)

都道府県地価調査を解説

 まずは、先ごろ発表になった都道府県地価調査を紹介する。同調査は、国土利用計画法施行令に基づき、各都道府県知事が毎年7月1日における基準地の1㎡当たりの価格を調査し公表するもの。都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況を取りまとめて公表している。

全国的に地価が回復傾向

 この調査によれば地価は、三大都市圏を中心に上昇が拡大するとともに、地方圏においても住宅地、商業地ともに平均で上昇に転じるなど、地価の回復傾向が全国的に進んでいる。

地価動向 ※地方四市:札幌市・仙台市・広島市・福岡市(単位:%)出典 国土交通省
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地価動向 ※地方四市:札幌市・仙台市・広島市・福岡市(単位:%)出典:国土交通省「都道府県地価調査

 全国平均は、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。また、三大都市圏については、全用途平均・商業地は、東京圏では11年連続、大阪圏では2年連続、名古屋圏では3年連続で上昇し上昇率が拡大。住宅地は、東京圏、名古屋圏では3年連続、大阪圏では2年連続で上昇して、上昇率が拡大した。

 そして、地方圏においては、全用途平均・住宅地は31年ぶり、商業地は4年ぶりの上昇に。中でも、札幌、仙台、広島、福岡の地方四市では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも11年連続で上昇し、上昇率が拡大している。

 全国における上昇率トップは、住宅地が北海道の千歳市栄町の30.7%、商業地は熊本県の菊池郡大津町の32.4%。いずも半導体工場進出の影響だ。国内への設備投資の機運が円安や中国リスクで高まっており、大規模な設備投資が行われる街での不動産需要が押し上げられている。

東京圏は上昇率が高いエリアが増加傾向

 次に東京圏の動向を見てみたい。東京圏の1㎡当たりの住宅地最高価格は、「港区赤坂1丁目1424番1」の524万円で、前年からの変動率は4.0%の上昇。商業地最高価格は、「中央区銀座2丁目2番19外」の4010万円で、前年からの変動率は2.0%の上昇となっている。

 また、東京圏住宅地の上昇率1位は、「我孫子市我孫子4丁目563番9」の18.6%上昇。基準地価格は、12.1万円となっている。上昇率上位10地点は、すべて千葉県が占め、我孫子市が2地点、流山市が2地点、市川市が6地点で上昇率は全て14%を超えている。

 基準地価格が全て50万円未満となっており、通勤利便性が高く手の届きやすい価格の住宅地の上昇率が高くなっている。

 東京圏商業地の上昇率1位は、「横浜市西区みなとみらい4丁目4番7外」の24.4%。商業地の上昇率上位10地点は、千葉県6地点と神奈川県4地点が入り、東京都内はゼロ。

 約2万人収容の音楽専用ホールとしてKアリーナ横浜が開業するみなとみらい地区や駅周辺の再開発が進む横浜駅周辺、2023年3月に相鉄・東急新横浜線が開業した新横浜駅周辺などが上位に入っている。

東京圏の市区町村別 上昇率の状況(図1)

東京圏の市区町村別の状況(商業地)
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東京圏の市区町村別の状況(商業地)

 5%を超える高い上昇率を示す東京圏の市区町村(図1のピンク色のエリア)は、令和4年調査よりも大きく増加している。

 住宅地では、東京都では港区、品川区、目黒区、文京区、豊島区、台東区、荒川区の7区。埼玉県では、川口市、戸田市、蕨市の東京都近接エリアの3市。千葉県では、浦安市、市川市、船橋市、流山市、柏市、我孫子市の6市。埼玉県、千葉県の各市は東京都心へのアクセスがスムーズな場所が並んでいる。

 一方、商業地は、5%を超える上昇地点が広範囲に及ぶ。コロナ禍が収まり経済活動が再開する中で、駅前など交通利便性の高い場所が多い商業地のニーズが高まっていることを示している。

 郊外の駅前立地のマンションは商業地に建つケースも多く、今後の新築マンション価格にも影響を及ぼしそうだ。建築費が上昇を続ける中で、地価もさらに上昇するとなると数年先の新築マンション価格を押し上げる可能性が高い。

最新の首都圏新築マンション市況【2023年8月度】

 次に、2023年8月度の新築マンション市場を見てみよう。2023年8月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月比307戸増加の1,469戸で26.4%の増加となった。

 契約率は、前年同月比6.6ポイントアップの68.6%だったが、高倍率を集めた「HARUMI FLAG SKY DUO」の第一期分譲があった2023年7月の74.8%よりは下落した。同マンションが契約率を引き上げた影響もあるため、販売動向に大きな変化は見られない。

 1戸あたり平均価格は、前年同期比で17.9%アップの7,195万円。エリア別では、東京23区が8,597万円で前年同期比8.8%の上昇。東京都下が5,957万円、神奈川県5,368万円、埼玉県4,632万円、千葉県4,932万円。東京23区とその他の地域での価格差は、依然として大きい。

首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2023年8月」)

 また、販売在庫は4,712戸で、前月よりも138戸の減少。2022年8月末の販売在庫は4,762戸だったので、新築マンションの在庫は低水準が続いている。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。

不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成
過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 また、首都圏新築マンションの地域別の発売状況は下表のようになっている。

首都圏新築マンションの販売動向(2023年8月)

  新規販売戸数 前年同月比 契約率 平均価格
東京23区 858戸 (+73.7%) 77.4% 8,597万円
都下 75戸 (+7.1%) 53.3% 5,957万円
神奈川県 315戸 (+100.6%) 63.8% 5,368万円
埼玉県 118戸 (-64.1%) 39.8% 4,632万円
千葉県 103戸 (-8.0%) 54.4%

4,932万円

  都区部を除き価格の大きな上昇は見られない。また、都区部の契約率が77.4%と高いのに対し、都下、埼玉県、千葉県の契約率は60%を下回っている。売れ行きにも地域差が出ている。

【関連記事】>>最新の新築マンション相場、価格、売れ行きを櫻井幸雄氏が解説!高倍率となった超人気マンションを一挙公開!【2023年最新版】

 続いて、中古マンション市場を見てみよう。

首都圏の中古マンション市況【2023年8月度】

 続いて中古マンション市場を見てみよう。新築マンションの価格上昇により、中古マンションの注目度はいっそう高まっている。

 竣工までの期間を要する新築マンションと比べ、中古マンションは引き渡し期間が短期間のケースが多く、金利上昇局面では魅力的だ。2023年8月度は、久々に前月よりも中古マンションの在庫件数がわずかに減った。築浅のマンションは、今後も動きが速そうだ。

首都圏の中古マンション市場動向2023年6月
首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2023年8月度の中古マンション月例速報」)

 2023年8月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比0.9%上昇の2,367件と3カ月連続で対前年比プラスになっている。 

 成約価格は、前年同月比9.9%上昇の4,704万円。平均成約㎡単価も対前年同月比10.1%上昇の74.08万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、40カ月連続となる。

 2023年8月の新規登録物件の㎡単価は、71.77万円となっていて前月よりも+0.2%、前年同月比で-1.4%となった。成約㎡単価を新規登録㎡単価が今月も下回っており、新規売り出しの価格設定は慎重だ。

 また、在庫㎡単価を成約㎡単価が上回っている。このことは、築年数の浅い高単価の中古マンションの売れ行きに対し、築年数の古い低単価の売れ行きが鈍いことを示している。

 2023年8月の新規登録件数は、対前年同月比で14.9%増加の14,701件。在庫件数は、先月よりも減少し45,961件となったが、前年同月比で19.9%アップと高水準のままだ。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2021年の半ばから在庫件数が大きく伸びていることがわかる。

 地域別の成約㎡単価は、すべての地域が対前年同月比で上昇。しかし、前月比では、横浜・川崎市、神奈川県その他、埼玉県でマイナスとなった。

首都圏の中古マンション成約㎡単価(2023年8月)

  東京23区 都下(多摩) 横浜・川崎市 神奈川県その他 埼玉県 千葉県
成約㎡単価 106.07万円 52.77万円 61.39万円 41.10万円 41.96万円 39.05万円
前年同月比 +5.4% +0.4% +7.0% +13.3% +5.1% +4.2%
前月比 +2.9% +3.1% -0.4% -2.3% -4.9% +2.8%

 

(出典:東日本不動産流通機構発表「2023年8月度の中古マンション月例速報」)

 2023年8月度の成約㎡単価の前年同月比の伸びは、全地域でプラスに。神奈川県では、都区部を上回る伸びを示している。

今月の注目マンション「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」

 次に、今月の注目マンション「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」を紹介する。

「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」の完成予想模型(筆者撮影)
「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」の完成予想模型(筆者撮影)

 地価の上昇は、好立地の土地流通を促す側面もある。2023年のマンションラインアップを見ると「三田ガーデンヒルズ」など立地とスケールを併せ持つプロジェクトが目立つ。

 三菱地所レジデンス株式会社が「ザ・パークハウス」のフラッグシップマンションとしてこれから販売を始める「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」もその一つだ。

 代々木上原駅から徒歩7分と交通至便でありながら、緑豊かな代々木大山公園を望むパークフロントで標高40mの高台に位置。南側に第一種低層住居専用地域が広がる8,000㎡超の敷地に誕生する全140邸の大規模低層レジデンスだ。

 千代田線の始発駅でもあり再開発が進む渋谷方面や新宿方面へのアクセスが良い場所で、これだけのスケールのマンションは、なかなか出合えないだろう。 

 ザ・パークハウス 代々木大山レジデンスのモデルルーム グランドラウンジ完成予想図(出典 公式ホームページ )
ザ・パークハウス 代々木大山レジデンスのモデルルーム グランドラウンジ完成予想図(出典 公式ホームページ )

 スケールを活かした充実の共用部空間も注目ポイント。木立のようなルーバーが施されたグランドエントランスの先には、グランドガーデンやグランドラウンジが広がる。

 さらに、個室のワークスペースをはじめ、パーティールーム、ボードルーム、ルーフトップテラス、ゴルフレンジ、ラウンジ、ゲストルーム、コンシェルジュサービスなどライフスタイルに応えるさまざまな共用施設が用意されている。

ザ・パークハウス 代々木大山レジデンスのモデルルーム(筆者撮影)
ザ・パークハウス 代々木大山レジデンスのモデルルーム。奥行き約3mものバルコニーなど居住性を高めたプランニングも注目が集まる(筆者撮影)

 間取りは、全33タイプが用意され、個別設計変更にも対応(受付期限あり)。平均専有面積92㎡超とゆとりがあり、奥行約3mのバルコニー、奥行3~7mテラス、コンサバトリー、バルコニーサイドキッチンなどの多彩なプランが用意されている。

 また、環境保全(SDGs)に応える仕様となっており、全戸「ZEH Oriented」認定取得予定、全戸戸別宅配ロッカー、全熱交換式換気システム、太陽光発電、EV カーシェア、EV 充電設備機器など、環境への配慮、および利便性の高い設備が充実している。

 実際にモデルルームを見た印象は、奥行きのあるバルコニーが室内空間の広がりを演出。通常のマンションにはない、住み心地の良さを感じた。

 しゃれたレストランやカフェが充実していて、人気のある代々木上原駅徒歩7分の高台の全140邸ということもあり、2023年9月上旬時点の反響数は約2,800件と堅調。オンライン説明会への参加率も高い。

 第1期の販売開始は、2023年11月中旬予定となっており、モデルルームの公開もスタートする。邸宅街の大規模マンションとしてかなりの注目を集めそうだ。

まとめ

 秋商戦がスタートし、これから新発表される新築マンションも多いだろう。地価の上昇や建築費の高止まりは、これから用地を取得するマンションの価格に大きく影響が出る。

 世界的なインフレ傾向や円安、金利上昇など先行きが見通しにくい局面ではあるが、希望のエリアの好立地マンションには、なかなか出会えない。家族のリスク許容度を考慮しつつ購入したいマンションをリストアップしてみてはいかがだろうか。

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