離婚後も「持ち家」に住み続けたいなら、
夫婦でどのように財産分与すればいい?
~離婚問題に詳しい弁護士が解説~離婚と「わが家」シリーズ 第3回

【第3回】2019年11月13日公開(2021年3月1日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 白井可菜子:法律事務所アルシエン 弁護士

「離婚後も、これまで住んだ家に住み続けたい」という希望は、転校などで子育て環境を変えたくない理由から多い。しかし、賃貸ではなく「持ち家」の場合、財産分与や住宅ローンをどうするかという問題が絡んでくる。特に、住宅ローンの名義人ではない妻が住み続ける場合は、どうすればいいのか? 離婚とわが家の第3回は「持ち家に住み続ける場合」の財産分与に関して、離婚問題に詳しい弁護士の白井可菜子氏に話を訊いた。

持ち家を所有するには
不動産評価額の確定と代償金の用意が必要

法律事務所アルシエン・白井可菜子弁護士
白井可菜子(弁護士)
法律事務所アルシエン所属。離婚前の相談から協議、調停、訴訟まで丁寧・迅速に対応。親権、養育費、DV・モラハラ、不倫慰謝料など家庭内問題に明るく、特に一番の被害者となりやすい子供の幸せを守るという視点を大事にしている。著書に『弁護士が語る我が子の笑顔を守る離婚マニュアル ~円満離婚のススメ~』(啓文社書房)。

 前回は、オーバーローンの持ち家を売却する事例を紹介した。今回は、「どちらか一方が持ち家を所有し続けるケース」を検証する。
【前回の記事はこちら】>>離婚の際、住宅ローンが家を売っても完済できない「オーバーローン」状態! それでも売却するには?

 「多くの離婚例を見てきた経験からいうと、離婚後も夫婦のどちらかがそのまま持ち家に住み続けたいと希望する例は非常に多いです。特にお子様がいる場合は、学校を転校させたくない、環境をできるだけ変えないであげたいといった理由から、親権を得るほうの親が住み続けることを希望するケースはたくさんあります」(法律事務所アルシエン・白井可菜子弁護士)

 この際、重要なのは持ち家の住宅ローンが残っているか、いないかだ。まずは、持ち家に「住宅ローンが残っていない」場合から解説していこう。

一方が住み続けたい家に
住宅ローンが「残っていない」とき

 夫婦の一方が住み続けたい家に「​住宅ローンが残っていない」ときは、以下の2つケースがあり得る。

(1)不動産の所有権を「保有している者」が居住を希望する場合


(2)不動産の所有権を「保有していない者」が居住を希望する場合

 ├[A] 居住希望者が所有者に賃料を支払い続ける

 └[B] 居住希望者に所有権を移転する

 (1)の「不動産の所有権を『保有している者が居住を希望する」場合は、相手側から財産分与を求められた際は代償金さえ払えば、相手の同意などはなくてもそのまま自身の財産として保有し、かつ住み続けることができる。

 一方、(2)の「不動産の所有権を『保有していない者が居住を希望する」場合は、まず所有名義人側の同意をとることが必要となる。

 なお、(2)-[A] の「居住希望者が所有者に賃料を支払い続ける」ケースは実際はまれだ。離婚するに至った2人がその後も金銭のやりとりを行うのは困難であること、いつ賃借関係の解消を求められるかわからないことが理由に挙げられる。

 そうしたことから、不動産の所有権を保有していない者が居住を希望する場合、(2)-[B] の「居住希望者に所有権を移転する」ケースがほとんどだ。

 所有権の移転とは、一方が持つ不動産の所有権を、他方に譲渡し取得させることをいう。所有権の移転自体が財産分与なので、相手側から財産分与を求められた際のみの(1)と異なり、(2)-[B] では財産分与を避けて通ることができない。

 財産分与ではまず、不動産の評価額の確定を行う。不動産仲介会社で算出された査定額を元に、不動産をいくらと評価するかを決めていく。
【詳しく知りたい方はこちら】>>離婚したら、わが家はどうなる? 不動産売却で住宅ローンを完済できても「いばらの道」

 「実際の売却はせずに、査定のみで評価額を決めていくことになります。不動産価値が高ければ代償金も高くなり、逆に、不動産価値が低ければ代償金も低くなるという関係上、対立構造が生まれやすいので、不動産評価額が決まらずに調停まで持ち込まれるケースも多々あります」(白井氏)

 そのため、双方で査定依頼をする企業を2社ずつ選び、4社の中間値を不動産評価額として合意することも多い。
【関連記事はこちら】>>不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう

 不動産評価額が確定した後は、代償金を相手に支払う。

 たとえば、持ち家の価値が1000万円であれば、居住希望者は持ち家の所有権を取得する一方、価値の半分である500万円をもう一方へ代償金として支払う。

 代償金は、以下のような資産の中から用意することになる。

・特有財産(婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産)

・親族からの借金
・金融機関からの借り入れ

 「一般に不動産価値は高額で、代償金の用意が難しいという声も少なくありません。相手の合意を得られれば、分割払いにしてもらう方法もあります」(白井氏)

一方が住み続けたい家に
​住宅ローンが「残っている」とき

 次に、持ち家の「住宅ローンが残っている」場合についてみていこう。

 住宅ローン付き不動産には、ほぼ必ず抵当権が付いている。抵当権とは、住宅ローンの弁済が受けられない場合に、当該不動産から優先して弁済を受けられる担保権のこと。住宅ローンが残っている分、当該不動産の価値を抵当権者に掌握されているような状態にある。

 誤解を恐れずに言えば、抵当権付住宅ローンがあるとすると、自身の単独所有名義でも不動産の価値のうち該当分は抵当権者の管理下にあり、自身では自由にできない状態にある。そのため抵当権付住宅ローンがある場合には、市場価格から住宅ローン残額分を控除した額が当該不動産の価値とされる。

不動産価値:5000万円
住宅ローン残高:3000万円

 たとえば上記の場合は財産分与上、自宅不動産の価値は不動産価値の5000万円から住宅ローン残高の3000万円を引いた「2000万円」と扱われ、これを夫と妻で2分の1に分ける、という処理になる。

 ここからは、夫婦の一方が住み続けたい家に「​住宅ローンが残っている」ときの4つのケースごとに、財産分与の方法を解説する。(なお、いずれの場合も不動産価格を査定し、そこからローン残高を控除し、財産分与上の不動産価値を合意するという作業は必要)

(3)住宅ローンの名義人である夫が持ち家を取得して住み続ける場合

 不動産価値=5000万円、住宅ローン残高=3000万円とすると、夫は当該不動産取得の代償金として、不動産価値の半額である1000万円を妻に対し支払う必要がある。代償金は一括払いが基本だが、協議により分割払いが認められる場合もある。

 そして、残った住宅ローンは、そのまま夫が支払う。

(4)住宅ローンの名義人は夫で、妻が持ち家を取得して住み続ける場合

 妻が住み続ける場合、まずは、不動産の所有権も妻が取得することが検討される。

 不動産価値=5000万円、住宅ローン残高=3000万円とすると、妻は当該不動産取得の代償金として、不動産価値の半額である1000万円を夫に対し支払う必要がある。加えて住宅ローンについて、一括返済するか、債務を引き継ぐかしなければならない。

 しかし、住宅ローンは名義人その人を信頼して貸し付けているため、そのまま妻が引き継げる可能性は著しく低い。

 住宅ローンの一括返済も、債務の引き継ぎもできない場合は、自宅も住宅ローンも夫名義のまま、妻が住み、妻は毎月の住宅ローン支払相当額を夫へ支払っていき、ローン完済時に自宅の名義を妻に移すなど、夫の協力を得なければならない。それができないと、妻が持ち家を取得するのは困難になる。

 「子どもがおり、妻が親権者である場合、夫は毎月の養育費を減免することを条件に、住宅ローンはそのまま支払い続けることもあります。また、夫が不動産を取得している状態のまま『子どもが小学校を卒業するまで』と期限を区切って妻と賃貸借契約を締結し、妻が毎月夫へ家賃を支払うことで住み続けられるようにする方法もあります」(白井氏)

(5)住宅ローン名義人は双方で、妻が持ち家を取得して住み続ける場合

 双方が住宅ローン名義人であり、お互いの債務の連帯保証人となる「ペアローン」の場合、まずは金融機関へ相談に出向き、離婚に伴い債務者が一人になる旨を伝えて了承を得なくてはならない。反対されたり、一括返済や別の住宅ローンへの条件変更、別途連帯保証人を立てることなどが要求されることもある。

 もし金融機関の了承が得られれば、後の処理は上の「住宅ローンの名義人は夫で、妻が持ち家に住み続けるケース」と同様だ。

 不動産価値=5000万円、住宅ローン残高=3000万円とすると、住宅ローン残高を控除した不動産価値の半額にあたる1000万円を、妻が夫に支払う。そして妻は持ち家を取得し、夫の分も合わせた住宅ローン残高を一括返済するか、決められた期間返済していく。

 金融機関の了承が得られなかった場合は、夫の協力を得てペアローンを継続させるしかない。
【関連記事はこちら】
>>夫婦で一緒に借りた住宅ローンは、離婚すると「思わぬトラブル」の原因になる! 連帯保証、ペアローンのデメリットを解説

(6)オーバーローンの住宅ローンの名義人は夫で、妻が持ち家を取得して住み続ける場合

 ここまでは持ち家の売却で住宅ローン残高を「完済できる」ケースを見てきたが、最後は以下のような、不動産価値がマイナスの「オーバーローン」のケースだ。

不動産価値:3000万円
住宅ローン残高:3500万円

 財産分与はプラスの財産を分ける制度であるため、分与対象となる財産はないと判断される。

 もっとも住宅ローンは残っているし、不動産の処遇も決めなくてはならない。この場合、実際は住宅ローン名義人である夫がそのまま所有することがほとんどだ。

 そのため、オーバーローンにある持ち家を住宅ローン名義人ではない妻が取得し、住み続けるためには、何らかの方法で住宅ローンを一括返済しない限り難しい。

 それができない場合には、所有権取得は諦め、夫に自宅不動産について賃貸借契約と結んでもらい、家賃を払って自宅に住み続けることになる。

 「2分の1が基本的ルールの財産分与ですが、話し合いで異なる分け方を決めるのは可能です。子どもの暮らしを守るために、妻側に有利な分与で合意することも多いです」(白井氏)
【関連記事はこちら】>>離婚の際、住宅ローンが家を売っても完済できない「オーバーローン」状態! それでも売却するには?

 どのケースにおいても関係者との柔軟な話し合いは不可欠で、合意点を見つけていく努力が大切だ。

■離婚と「わが家」シリーズ リンク集■
第1回 財産分与の基本
第2回 家を売っても、住宅ローンの負債が……
第3回 住み続けるなら、どうやって分与する?
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