新築・中古マンションの最新市況を、不動産経済研究所発表の「首都圏新築分譲マンション市場動向 2022年10月度」などを見ながら解説したい。データによると、新築マンション供給戸数は、前年同月比34.7%増加となる2,768戸。契約率は、71.9%となり、好不調の目安となる70%を5カ月ぶりに上回った。今回は、2022年のマンション市場を振り返るとともに、2023年の注目ポイントも紹介したい。(不動産アナリスト:岡本郁雄)
2022年のマンション市場の振り返りと2023年の注目ポイント
2022年は、コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻、急激な円安、世界的なインフレなど、社会・経済の不透明感が増した1年だった。11月分の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が、前年比で3.6%の上昇。40年ぶりの高い伸び率を示している(参考:総務省発表「消費者物価指数東京都区部2022年11月度中間速報値」)。
資源価格の高騰などによって、建築費も大きく上昇してきている。事業期間の長いマンション価格に影響が出るのは来年以降だが、既に中古マンション価格や期分け販売中の大規模マンションの価格を押し上げている。
こうした中でも、新築マンションの売れ行きは堅調で、販売在庫は5,000戸未満と低水準を維持している。
建築費の上昇による価格の先高観に加え、コロナ禍が3年目となり経済活動が回復しつつあることもプラスになっている。百貨店の売り上げは対前年で伸びており、2022年10月11日からは、外国人旅行客の水際措置も緩和された。コロナ禍で下落した中心市街地の地価も反転してきている。
2022年、人気となった新築マンションは?
好調な市場を反映して、「HARUMI FLAG」のような値頃感のある魅力的な新築マンションに人気が集まっている。
首都圏の中古マンション平均成約価格は、対前年比で10%超も上昇しており、好調物件の中には、価格設定を見直し実質的に値上げするケースも散見される。その中で「HARUMI FLAG」は、ほぼ据え置きの価格で割安感を感じる人がいるのは当然だろう。
では、2022年に売り出された人気マンションプロジェクトについて見てみよう。
「パークコート神宮北参道 ザ タワー」など都心高級レジデンス
都心の高級レジデンスの売れ行きが好調だ。東京メトロ副都心線「北参道」駅徒歩1分の明治神宮、代々木公園、新宿御苑、明治神宮外苑の緑を見渡す27階建て全471邸のタワーマンション「パークコート神宮北参道 ザ タワー」は、平均坪単価が800万円を超える価格設定にもかかわらず、ほとんどの住戸に申し込みが入っている。
千代田区三番町の四方接道の高台に建つ「ザ・パークハウス グラン 三番町26」も売れ行き好調。平均坪単価は900万円超と高額だが、立地の魅力に加え天井高2.73mから3.0mなど開放的なプランニングが評価されている。
「パークタワー勝どき」など駅近の大規模レジデンス
また、駅近の大規模レジデンスも売れ行きが良い。想定よりも4カ月も早く完売した「プラウドタワー亀戸クロス」は、JR総武線「亀戸」駅2分に立地する全934邸の大型ショッピングモールとの一体開発。新設の商業施設「カメイドクロック」へ専用通路でアクセスでき、共働きのカップルに高い支持を受けた。
都営大江戸線「勝どき」駅直結の商住複合大規模再開発「パークタワー勝どき」も好調。規模を活かした多彩な共用施設や都心立地の通勤利便性の高さが評価されている。
「武蔵浦和」駅とデッキ経由徒歩1分の「プラウドタワー武蔵浦和ステーションアリーナ」や住宅・商業一体型の複合再開発タワー「大宮スカイ&スクエア ザ・タワー」、「聖蹟桜ヶ丘」駅徒歩5分の「Brillia Tower 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING RESIDENCE」など、郊外駅近大規模マンションの販売も好調だ。
「Brillia City 石神井公園 ATLAS」など値頃感のある大規模プロジェクト
値頃感のある大規模プロジェクトも人気となった。全528邸の「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」は、平均専有面積90㎡超のゆとりに加え「ザ・パークハウス」シリーズとして初のZEH-M Ready基準適合物件。多彩な共用施設も評価され全戸完売となった。
また、旧石神井公園団地の建替えプロジェクト「Brillia City 石神井公園 ATLAS」全844邸(販売総戸数543戸)の売れ行きも堅調。自然豊かな住環境や南向き中心の間取りが評価され子育てファミリー層に人気だ。
コロナ禍で働き方も変化し、住まい選びも多様化している。好調物件のラインアップを見ると、「マンションを買う」というよりも「ライフスタイルを買って」いるようだ。
都心でありながら海に囲まれた自然豊かな住環境で、商業施設や教育施設も身近に誕生する「HARUMI FLAG」は、その最たるプロジェクトといえるだろう。
2023年の新築マンションは?
では、2023年のマンションのラインアップは、どうだろう。2022年は、東京都心以外にも横浜、川口、十条、千葉など首都圏広域で大規模タワーマンションの供給が目立ったが、2023年もタワーマンションの供給が活発だ。
西新宿や新宿御苑前、浜松町、月島、勝どき、池袋などの都心エリアに加え、大山、平井、大森などでもタワーマンションの供給が予定されている。タワーマンションは、用地取得から事業化までの期間が長く、2023年スタートのプロジェクトであれば昨今の建築費上昇の影響はまだ限定的だ。
未発表ではあるが「HARUMI FLAG」のタワー棟の販売も控えている。2023年は、2022年以上にタワーマンションの選択肢が多い年になりそうだ。
続いて、2022年10月度の首都圏新築マンション市場を見てみよう。
最新の首都圏新築マンション市況は?
2022年10月の首都圏新築マンションの供給戸数は、対前年同月比34.7%増加の2,768戸。対前年同月より713戸増加した(参考:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2022年10月度」)。

新築マンションの1戸当たりの平均価格は6,787万円、前年同月(6,750万円)比で0.5%の上昇。㎡当たりの単価は99.5万円、前年同月(105.7万円)比で5.9%のダウン。
契約率は71.9%で、前年同月(71.4%)比では0.5ポイントのアップ、前月(61.6%)比では10.3ポイント上昇した。新規物件の第1期販売がスタートするなど秋商戦が本格化しており、契約率は5ヵ月ぶりに70%を超えた。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

また、新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のようになっている。
首都圏新築マンション新規発売戸数および契約率(2022年10月度)
都区部……1,080戸(前年同月比+0.8%) 64.5%
都下………170戸(前年同月比+44.1%) 80.6%
神奈川県…632戸(前年同月比+18.6%) 86.2%
埼玉県……464戸(前年同月比+222.2%) 68.5%
千葉県……422戸(前年同月比+123.3%) 69.7%
供給戸数が伸びているのは、埼玉県、千葉県。都区部は、1080戸と前年同期比で0.8%増加と供給の増加幅は小さい。また、即日完売戸数は2物件47戸と少なくなっており、割安感で高倍率となるような「HARUMI FLAG」のようなプロジェクトは、限られている。
次に中古マンション市場を見てみたい。
首都圏の中古マンション市況は?
2022年10月度の首都圏中古マンションの成約件数は、下記の表の通り3,072件となっており、前年同月(3,440件)比で10.7%減少した(参考:東日本不動産流通機構発表の「2022年10月度の中古マンション月例速報」。

首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で13.1%上昇の4,395万円。平均成約㎡単価は、69.40万円で+14.7%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、29カ月連続だ。
また、新規登録物件数は、前年同月比で伸びており、在庫も増加傾向が続き40,300件に。4万戸を超えるのは2020年9月以来で、25カ月ぶりだ。新規登録物件の増加が在庫数増加の一因となっている。
月間の新規登録物件数が1万6,000件を超えるのは、2020年6月以来で28カ月ぶり。2020年6月度の首都圏中古マンションの平均成約㎡単価は、53.48万円。2022年10月度は同69.60万円なので、2年間で実に29.7%も上昇している。3割近くも上昇しているのだから、今が売り時と考える人が増えても不思議ではない。
また、地域別では、以下の通りとなっている。
首都圏の中古マンション成約㎡単価
都区部……………103.11万円(前年同月比+14.0%)
都下(多摩)……52.35万円(前年同月比+13.8%)
神奈川県
横浜・川崎市……56.64万円(前年同月比+6.9%)
神奈川県その他…38.00万円(前年同月比+9.5%)
埼玉県……………39.99万円(前年同月比+7.2%)
千葉県……………36.03万円(前年同月比+4.6%)
地域別の成約㎡単価は、対前年同月比で全エリアで上昇した。しかし、対前月で見ると神奈川県、千葉県、埼玉県は下落している。
2022年10月度の消費者態度指数は、前月よりも0.9ポイント悪化しており、物価に対する見通しは、「上昇する」と見込む割合が9割を超えている。物価上昇が家計を大きく圧迫すれば、郊外部の中古マンション価格動向に影響してくるかもしれない。
次に、現在販売中の新築マンションで、注目の物件を紹介しよう。
注目物件「Brillia 目黒大橋」
「Brillia 目黒大橋」は、東急田園都市線「池尻大橋」駅徒歩5分の丘の上に建つ、総戸数114戸の大規模レジデンスだ。南道路にワイドに面する第二種中高層住居専用地域に位置し、敷地面積は、3,474.34㎡と広い。隣接街区にも賃貸住宅が計画され、新たな街並みが誕生する。
「池尻大橋」駅からは、再開発で街の魅力が大きく高まっている「渋谷」駅へ1駅。現地は、南傾斜の高台で、開放感ある景色が楽しめるロケーションだ。計画地はかつて東邦大学医療センター大橋病院があった場所。南側を通る大橋通り沿いには、移転新築された東邦大学医療センター大橋病院と低層テナントビルが立地する。
近くには、目黒川緑道があるなど良好な住環境が形成されている。生活圏となる池尻・三宿エリアはしゃれた飲食店がそろう街で、「ライフ目黒大橋店」や「成城石井」などのスーパーマーケットも近くにあり、生活に便利だ。
近隣には東京大学のキャンパスや中学校・高校も点在する文教地区でもある。こうした立地環境は高く評価され、2022年6月からの資料請求件数は2500件超、来場も400組を超える(2022年11月30日時点)。

立地にふさわしい上質感のある建物プランニングも「Brillia 目黒大橋」の特徴だ。デザイン監修は、三菱地所設計が担当している。外観は、逆梁工法による重厚感があり、特注のタイル等の素材の組み合わせで質感や奥行きを感じさせる。
2層吹き抜けのエントランスホールやロビー、ライブラリーなどの共用空間には、アート作品が配され、ギャラリーのように空間を彩る。
内廊下を採用し、南北に住戸を配置。間取りはワイドスパンタイプが多く、リビングにハイサッシを採用するなど開放的で居住性の高いプランが目立つ。モデルルームタイプのバルコニーには隔板(隣のバルコニーとの境目となるパーテーション)がなく、プライバシー性を高く感じる。
また、ライフスタイルに合わせて無料で間取りを選択できるようになっており、リビングダイニングの拡大などができる(期限あり)。間取りは、3LDKタイプが中心だが、1LDKから4LDKまで多彩なプランが用意されている。
2022年11月に第1期1次の販売が始まったが、売れ行きは堅調だ。目黒区、世田谷区を中心とした地元層を中心に幅広い年齢層から反響を集めている。駅アクセスの良い住居系エリアのマンション立地は限られており、総戸数100戸を超えるスケールのマンションには早々出合えない。注目度が高いのも当然だろう。
2023年もマンションの買い時か
新築、中古ともに価格上昇が続くマンション市場だが、現在の建築費と地価トレンドを踏まえると2023年以降に価格がもう一段上がる可能性は高い。
バブル期を経験した筆者から見れば、千葉県の京葉線や埼玉県の東武東上線など、70㎡超の3LDKが3,000万円台で探せるエリアも多く、今はまだ立地や商品企画が魅力的なマンションが選べる状況だ。
金利の先高観を踏まえると、購入準備ができている人にとっては2023年もマンションの買い時といえるのではなかろうか。
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