2023年は新築マンションの買い時か!? 注目マンションや最新市況を不動産アナリストが解説!【2023年1月版】

2023年1月7日公開(2023年1月6日更新)
岡本郁雄:不動産アナリスト

新築・中古マンションの最新市況はどうなっている? 不動産経済研究所発表の「首都圏新築分譲マンション市場動向 2022年11月度」などを見ながら解説しよう。新築マンション供給戸数は、前年同月比47.4%増加となる2,866戸。契約率は、69.4%となり、好不調の目安となる70%を下回った。今回は、マンション市況のほか、2023年の注目マンションも紹介したい。(不動産アナリスト:岡本郁雄)

2023年の住宅市場はどうなる?

 まずは、2023年の住宅市場がどうなるのか、住宅ローン金利と消費者物価指数から予測してみたい。

日銀がYCCの運用を見直し

 2022年12月20日、日本銀行はこれまで±0.25%としていた長期金利の変動幅を拡大し±0.5%にする、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直しを発表した。

 これにより、市場では長期金利が上昇し、円高が大きく進んだ。日本銀行は、金融政策の変更ではないことを強調しているが、市場の受け止め方は異なる。

 大手金融機関の固定金利は、2023年1月分から引き上げられている。例えば、三菱UFJ銀行のインターネットでの申込金利は、固定10年の場合が2022年12月度の0.87%から0.18%引き上げられ、2023年1月度は1.05%に。全期間固定31年~35年は、0.03%引き上げられ1.81%となっている。

 一方で、短期プライムレートは変わっていないため、変動金利は0.475%に据え置かれている。金融機関によっては、固定10年よりも全期間固定のほうが金利の引き上げ幅が大きなところもある。住宅ローンの選択の際には、融資条件をよく確認すべきだろう。

 低水準の住宅ローン金利は、コロナ禍のなかでの住宅市場を支えていただけに影響は懸念されるところ。短期金利に関してはマイナス金利を続けており、多くの人が利用している変動金利への影響は軽微と思われるが、今後も物価上昇が続けばマイナス金利政策を変更する可能性はある。先々の金利動向には注意が必要だろう。

消費者物価指数は高水準が続く

 総務省が2022年12月23日に発表した、「2020年基準消費者物価指数全国2022年(令和4年)11月分」の総合指数は、前年同月比3.8%の上昇と高水準が続く。一方、一部の企業で賃金の引き上げの動きが見られるものの、企業に浸透しているとは言い難い。

 つまり、物価上昇に賃金上昇が伴っておらず、家計を圧迫している状況が続いているということだ。この状況が続けば、マンションの成約件数は新築・中古ともに押し下げられるかもしれない。

 東日本不動産流通機構発表の「月例マーケットウォッチ 新築戸建住宅レポート」によれば、2022年11月度の首都圏新築戸建ての在庫件数は14,013件となっており、前年同月比で61.0%も増加している。

 これは、新築戸建ての供給に対し、需要が下回っている状況が続いているということだ。地価や建築費の上昇で、マンションも一戸建ても価格が下落する状況ではないが、売れ行きは鈍化傾向にある

 平均的な家族の住宅購買力は弱くなっており、郊外の戸建ては、物価上昇や金利上昇の影響は小さくない。

最新の首都圏新築マンション市況は?

 続いて、首都圏新築マンション市場を2022年11月度データから見てみよう。

 下表の通り、2022年11月の首都圏新築マンションの供給戸数は、対前年同月比47.4%減少の2,866戸。対前年同月から2,586戸も減少した。

首都圏の新築マンション市場動向2022年11月
首都圏の新築マンション市場動向(出典:不動産経済研究所発表「首都圏新築分譲マンション市場動向 2022年11月度」)

 新築マンションの1戸当たりの平均価格は6,035万円、前年同月(6,123万円)比で1.4%の減少。㎡当たりの単価は89.8万円、前年同月(87.1万円)比で3.1%の上昇。

 契約率は69.4%で、前年同月(79.9%)比では10.5ポイントのダウン、前月(71.9%)比では2.5ポイント減少した。販売在庫は、5,079戸で前月よりも134戸の増加。契約率は、69.4%と好不調の目安とされる70%をわずかに下回った

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

新築マンション価格と契約率の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 また、首都圏新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のとおり。全エリアで供給戸数が大幅なダウンになっている。

首都圏新築マンション新規発売戸数および契約率(2022年11月度)

都区部……949戸(前年同月比-54.7%) 63.1%
都下………273戸(前年同月比-37.0%) 66.3%
神奈川県…736戸(前年同月比-50.7%) 69.0%
埼玉県……633戸(前年同月比-28.7%) 79.3%
千葉県……275戸(前年同月比-49.4%) 72.7%

 新築マンションの即日完売戸数は、「HARUMI FLAG」を含む4物件、192戸。「HARUMI FLAG PARK VILLAGE 第一工区」 2期2次119戸、「HARUMI FLAG SUN VILLAGE 第一工区」 2期2次 66戸の平均倍率は28.2倍で、最高倍率は105倍だった。

 次に中古マンション市場を見てみたい。

首都圏の中古マンション市況は?

 2022年11月度の首都圏中古マンションの成約件数は下記の表の通り、2,797件となっており、前年同月(3,416件)比で18.1%も減少した。

首都圏の中古マンション市場動向2022年11月
首都圏の中古マンション市場動向(出典:東日本不動産流通機構発表「2022年11月度の中古マンション月例速報」)

 2022年11月度の首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で13.3%上昇の4,417万円。平均成約㎡単価は、69.69万円で+14.4%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、30カ月連続だ。

 また、新規登録物件数は前年同月比で伸びており、在庫も41,158件と引き続き増加基調が続いている。中古マンション市場は価格上昇により成約が鈍化する一方で、この機に売却を検討する人が増えているようだ。

 下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

首都圏の中古マンション在庫数、成約㎡単価、在庫㎡単価の推移
不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成

 首都圏中古マンション成約㎡単価を地域別に見ると、以下の通りとなっている。

首都圏の中古マンション成約㎡単価(2022年11月度)

都区部……………103.26万円(前年同月比+14.9%)
都下(多摩)……50.03万円(前年同月比+8.5%)
神奈川県
横浜・川崎市……61.79万円(前年同月比+13.8%)
神奈川県その他…40.07万円(前年同月比+14.5%)
埼玉県……………40.89万円(前年同月比+6.8%)
千葉県……………34.35万円(前年同月比+0.3%)

 地域別の成約㎡単価は、対前年同月比で全エリアが上昇。地域別では、千葉県の伸び率が低くなっている。

 千葉県新築マンションの平均価格は4,083万円(2022年11月度)で、対前年同月比10.8%ダウンしており、千葉県の中古マンション価格か頭打ちにっている原因と考えられる。

 次に、現在販売中の新築マンションで、注目の物件を紹介しよう。

2023年注目の新築マンションは、「大規模」「再開発」「ZEH」がキーワード

 2023年のマンション市場は、ロシアのウクライナ侵攻や資源・エネルギー価格の上昇、円安などの影響もあり価格上昇は避けられない状況だ。

 こうした中で注目したいのは、2023年だからこそ出会える立地や商品企画の希少性の高いプロジェクトだろう。

 その点で2023年は、注目プロジェクトが目立つ。キーワードは「大規模」「再開発」「ZEH」だ。

注目の大規模マンション「三田ガーデンヒルズ」

 港区最大敷地約25,000㎡の旧逓信省跡地に、全1,002戸のプロジェクトで誕生する「三田ガーデンヒルズ」は、2023年の注目の大規模マンション筆頭格だろう。

 三井不動産グループと三菱地所グループが都心において「広尾ガーデンヒルズ」以来、38年ぶりに共同開発する「ガーデンヒルズ」を冠する大規模レジデンスとなる。

 旧逓信省建造物を一部保存・再生した、立地にふさわしい格式あるファサード・デザインや、中庭を中心とした緑に囲まれた入居者専用の約7,700㎡のランドスケープも特徴だ。

 いわゆる再開発プロジェクトではないため、デベロッパーの意図をプランに反映しやすく、プライベートガーデンなど入居者本位の居心地の良い空間を創出しやすい。

 また、国内最大規模となる全戸ZEH-Oriented(※)マンションでもある。帝国ホテルと提携したコンシェルジュをはじめ、さまざまな共用施設やソフトサービスを提供する。
(※)断熱+省エネで20%以上の一次エネルギー消費量を削減した住宅

 「三田ガーデンヒルズ」は、上質なマンションを届け続けてきた2社の知見を結集したマンションといえる第1期は、2023年2月上旬販売開始予定となっているが、富裕層を中心にかなりの注目を集めるだろう。

人気の大規模マンション「HARUMI FLAG」

 開発スケールの大きさでいうと、2022年から人気を集めている「HARUMI FLAG」が「三田ガーデンヒルズ」をさらに上回る。

 2023年は、地上50階建ての2つのタワー棟の分譲がスタートする予定だ。板状棟(板のように横に長い外観)のような選手村の再利用ではなく、高い自由度でプランニングされており、商品企画における期待度は高い

大山駅の再開発プロジェクト「シティタワーズ板橋大山ノースタワー・サウスタワー」

 また、2022年に続き2023年も再開発の注目プロジェクトがスタートする。

 その中でも特に注目なのが、「大山町クロスポイント周辺地区第一種市街地再開発事業」で誕生する「シティタワーズ板橋大山ノースタワー・サウスタワー」の2つのタワーレジデンスだ。

 池袋から3駅の東武東上線大山駅から約300mの「ハッピーロード大山商店街」の一部と周辺住宅地などを含む場所に、都市計画道路を挟んで商業区画を含む4つの街区を整備。新たなにぎわいを生み出すとともに、住宅や子育て支援施設、広場を整備し地域活性化を図るプロジェクト。

 ノースタワーが地上25階建ての88戸サウスタワーが地上26階建ての239戸となる(地権者住戸を含む)。再開発で魅力が増す池袋駅からも約2.3km圏と、都心近接であることも注目ポイントだ。

平井駅の再開発プロジェクト「プラウドタワー平井」

 JR総武線「平井」駅北口駅前広場に面した約0.7haの区域で開発が進められている「平井五丁目駅前地区第一種市街地再開発事業」で誕生する「プラウドタワー平井」も、2023年注目の再開発プロジェクトだ。

 JR総武線「平井」駅から徒歩2分の駅前に立地する地上29階建て、総戸数374戸(非分譲住戸106戸含む)の大規模タワーレジデンス。

 1、2階に商業施設、3階には子育て支援施設が入り、にぎわい広場の整備やシンボルツリーなども設けられる。

 建物は、免震構造で長期優良住宅認定も取得(一部住戸を除く)。東京駅から7.5km圏と都心アクセスも良好だ。

 JR総武線沿線では、亀戸、小岩が再開発で商業施設や住宅が整備され街の雰囲気が一変。新小岩でも駅前再開発が進行中だ。錦糸町駅など沿線のイメージは大きく向上しており、平井駅前に住むメリットは大きいだろう。

 2023年には、ほかにも月島や池袋、西新宿など再開発タワーの供給が豊富。選択肢の多い1年になりそうだ

超高層ZEH免震タワーレジデンス「パークタワー西新宿」

パークタワー西新宿
「パークタワー西新宿」外観完成予想CG(写真:パークタワー西新宿公式ホームページ)

 2023年の注目の動きが、ZEH-M(ゼッチマンション)の供給の活発化だ。

 2022年に「建築物省エネ法」の改正法が公布され対象外であった住宅および小規模建築物の省エネルギー基準への適合が、2025年度までに義務化されることになった。

 すでに、全物件をZEH-Mとする企業も出てきている。エネルギー価格の上昇もあり、省エネルギーへの関心は高まっている。

 「パークタワー西新宿」のように、「超高層ZEH免震タワーレジデンス」の分譲も予定されており、環境や家計にやさしいマンションにも注目が集まりそうだ。

2023年もマンションの買い時か

 新築、中古ともに価格上昇が続くマンション市場だが、現在の建築費と地価トレンドから考えると、2023年以降に価格がもう一段上がる可能性は高い。

 都心エリアのマンション価格の上昇は避けられないところだが、郊外エリアの大規模マンションの中には、中心価格帯が3,000万円台のものもまだある。

 住宅ローン控除も、2024年以降の引き渡しの場合は縮小される見込みだ。金利が上昇すれば不動産価格が下がるという見方もあるが、価格が下がったとしても金利負担が増えれば総返済額がアップする可能性もある。

 金利の先高観を踏まえると、購入準備ができている人にとっては、2023年もマンションの買い時といえるのではなかろうか。

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