新築・中古マンションの最新市況を、解説したい。国土交通省発表の令和5年地価公示によれば、都市部を中心に地価上昇が継続。全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。地方圏においても同様の動きが見られる。一方で、3月に入り米欧の金融不安が拡大。世界経済の先行きの不透明感が強まっており、日本の不動産市場への影響が懸念されるところだ。(不動産アナリスト:岡本郁雄)
最新の不動産市況は?
国土交通省発表の令和5年地価公示で、全国トップの上昇率を示したのは、北海道日本ハムファイターズの新球場を中心とした大規模開発、「北海道ボールパークFビレッジ」が進行中の北海道北広島市。住宅地で最大30%の上昇、商業地でも最大28.4%の上昇となった。街では、球場以外にも住宅や高齢者施設などさまざまな開発が進められており、分譲マンションの売れ行きも堅調だ。
また、全国的に商業地の地価が回復傾向にあり前年よりも伸び率が拡大傾向に。東京圏が3.0%の上昇、大阪圏が2.4%の上昇、名古屋圏が3.4%の上昇。札幌・仙台・広島・福岡の地方4市の商業地は、令和4年の5.7%を上回る8.1%の大きな伸びになっている。
地価を牽引するのが、インバウンド需要の回復だ。世界的にも人気の観光地である京都は、コロナ禍において宿泊客が激減。来街者も大きく減少し地価は停滞していたが、入国規制の緩和から外国人需要が回復した。
筆者は、2023年3月に京都を訪ねたが、タクシーの運転手や錦町市場にある土産物店のスタッフいわく、コロナ禍前を上回る盛況さだという。大阪圏商業地の地価上昇率ランキング上位10地点のうち5地点を京都市が占める。変動率13.6%(大阪圏商業地2位)の京都市下京区の地点は、周辺にホテルが立地する京都駅から徒歩圏の場所だ。
首都圏の地価上昇率は?
また、みなとみらい21地区では、グローバル企業が入るオフィスビルが相次いで建設されているほか、2023年秋に音楽に特化した約2万人収容の大規模「Kアリーナ横浜」の開業が予定されるなど、街のさらなる発展が期待されている。
首都圏の住宅地でも上昇率上位10地点で千葉県浦安市が7地点を占めるなど、近郊エリアの地価上昇が目立つ。東京都内の住宅価格が高止まりする中で、自然環境に恵まれ都心アクセスも良い浦安市の住拠点としての評価が高まった結果だろう。
東京23区の住宅地は、全ての区で上昇率が拡大し、全体平均3.4%の上昇。上昇率上位3区は、台東区の4.8%、豊島区の4.7%、中野区の4.6%。都心3区の千代田区の3.2%、中央区の4.0%、港区の3.6%を上回っている。
東京23区商業地の平均上昇率は、3.6%。都心3区を見ると千代田区2.1%、中央区2.1%、港区2.8%と3%を下回っている。上昇率上位3区は、中野区、北区、荒川区の5.2%で3区とも市街地再開発が活発に行われているところだ。
例えば、中野駅では新庁舎の建設や橋上駅舎と南北通路の建設、囲町東地区第一種市街地再開発事業(パークシティ中野)や中野二丁目地区第一種市街地再開発事業など街の整備が進行中。北区では、十条駅西口地区第一種市街地再開発事業が進行中で、分譲棟である「THE TOWER JUJO(ザ・タワー十条)」の売れ行きも堅調だ。
荒川区では、西日暮里駅や三河島駅で再開発の動きがあり、2023年2月に三河島駅前北地区市街地再開発組合の設立が認可された。首都圏では、渋谷や池袋、新宿などでも複数の再開発が進んでおり、JR山手線を中心に多極化が進みつつあるといえるだろう。
新築マンション市況(首都圏)【2023年2月度】
続いて、2023年2月度の首都圏新築マンション市場を見てみよう。下の表のとおり、2023年2月の首都圏新築マンションの発売戸数は、対前年同月比20.4%減少の1,821戸。対前年同月より466戸減少した。

新築マンションの1戸当たりの平均価格は6,778万円、前年同月(7,418万円)比で8.6%のダウン。1㎡当たりの単価は101.5万円、前年同月(109.5万円)比で7.3%のダウン。契約率は73.3%で、前年同月比で横ばい、前月(54.6%)比では18.7ポイント上昇した。
とはいえ、成約率は73.3%て、
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。

販売在庫は、5,452戸で前月よりも158戸の減少。2022年2月末の販売在庫は、6,146戸だったので在庫が少ない状況は変わっていない。
また、新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のようになっている。

東京都区部の平均価格は、9,020万円で、㎡単価は、133.3万円となっている。都区部の新築マンションは変わらず堅調で、通勤利便性の高い立地の都下および首都圏3県の新築マンションも販売好調だ。
中古マンション市況(首都圏)【2023年2月度】
次に、中古マンション市場を見てみたい。2023年2月度の首都圏中古マンション成約㎡単価は、前年同月比9.9%上昇。中古マンションの成約件数は、下記の表の通り3,240件となっており、前年同月(3,146件)比で3.0%増加した。前年比で増加するのは、7カ月ぶりとなる。

首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で8.3%上昇の4,359万円。平均成約㎡単価は、68.71万円で同+9.9%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、34カ月連続となる。また、成約㎡単価は前月よりも0.6%増加した。2023年2月の新規登録物件の㎡単価は74.05万円となっており、新規の売り出し価格は強気のままだ。
新規登録件数は、前月同様に16,000件を超えており在庫件数も前月より2.5%上昇した。昨年同時期よりも在庫件数は、20.1%増えており選択肢が増えたことも成約件数が増加した一因と考えられる。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(戸当たり平均)と契約率の推移を示す。

地域別の動向を見てみよう。

地域別の成約㎡単価は、全地域で対前年同月比プラスだ。都区部は、前月の100.05万円よりも若干下がっており成約㎡単価が100万円を割るのは2022年9月以来。都区部の成約件数は、前年同月比で9.5%の増加。前月比では、24.3%増加しており売れ行きは堅調だ。
今月の注目マンション「リビオタワー羽沢横浜国大」
2023年3月18日、相鉄線と東急線が相互直通運転を行う相鉄・東急直通線が開業した。相鉄新横浜線と東急新横浜線が新しく開業する新横浜駅でつながることで、神奈川県央地域および横浜市西部から東京23区西部、東京多摩北部、埼玉中央地域・西部地域に至る広域的な鉄道ネットワークが誕生する。

東海道新幹線が利用できる新横浜駅へのアクセスが向上することで、首都圏から関西・中京方面への出張や旅行などが今まで以上に便利になる。相鉄新横浜線の路線は、西谷駅~新横浜駅間の約6.3キロ。東急新横浜線の路線は、新横浜駅~日吉駅間の約5.8キロ。
既に開業している羽沢横浜国大駅に加え、新横浜駅、新綱島駅が新しく開業。新綱島駅に直結する地上29階建ての再開発タワーレジデンス「ドレッセタワー新綱島」が早期に完売するなど、新線効果は不動産市場に波及しつつある。
新線開業によって、神奈川県と東京都心方面のアクセス性は大きく改善され、二俣川駅と目黒駅は、開通前よりも22分短縮となる最短38分で結ばれる。
「LIFULL HOME'S」の調査によれば、新線開業前でも二俣川駅・西谷駅といった開業メリットの大きな駅から徒歩10分圏の中古マンション価格は、同じエリアの徒歩10分圏の中古マンションに比べ上昇率が高くなっている。
また、2023年1月1日時点の住宅地公示地価は、新綱島駅や新横浜駅の位置する港北区は、2.6%の上昇。羽沢横浜国大駅が立地する神奈川区は、2.7%の上昇。これは、横浜市内平均の1.5%上昇を上回り、横浜市内では西区の3.6%に次ぐ上昇率で、新線効果はすでに顕在化している。
鉄道路線が拡充されたことで沿線につながる既存駅の交通ネットワークは大きく強化されるが、効果が大きいのは羽沢横浜国大駅、新横浜駅、新綱島駅の3駅だろう。筆者は、開業まもなく相鉄・東急直通線の上下線に乗車したが、乗降客が多いのはというと、東海道新幹線が利用できる新横浜駅だった。
JR東海では、相鉄新横浜線・東急新横浜線の開業に合わせ、新横浜始発の下り臨時「のぞみ」を新設し、土曜日・月曜日を中心に運転。名古屋や京都・大阪方面への早い時間帯のアクセスが可能となる。新横浜駅から京都駅へは約2時間の近さ。相鉄・東急直通線沿線で暮らす人の新幹線アクセスは大きく向上するだろう。
羽沢横浜国大駅徒歩1分 総戸数357戸の商業一体「リビオタワー羽沢横浜国大」

相鉄・東急直通線のメリットを大きく享受できるのが、羽沢横浜国大駅徒歩1分に誕生する総戸数357戸、地上23階建ての商業一体複合開発プロジェクト「リビオタワー羽沢横浜国大」だ。
2019年に開業した羽沢横浜国大駅は、相鉄・JR直通線によって直通で武蔵小杉駅へ16分、大崎駅へ26分、渋谷駅へ33分など都心にスムーズにアクセスできる場所。相鉄・東急直通線の開業によって、都心方面へのアクセス性が大きく高まる。
物件エントリー5000件超えで販売も好調!その特徴は?
建物は、制振構造採用の23階建てで4階までの下層階には複合商業施設や開業予定の医療施設や子育て支援施設も入居予定で、駅前立地の便利な暮らしをサポートする。5階には、マンションの共用部として個室ブースエリアやキッチンスタジオなどもあるアクティブラウンジも設けられる。
駅前のタワーレジデンスにふさわしく、プロムナードではデジタルサイネージなどを活用した照明計画でアート性の高い世界観を演出。羽をイメージしたアートが彩る2層吹き抜けのエントランスホールなど共用空間のこだわりも。
上質感あふれる暮らしの演出も特徴で、ホテルライクな内廊下設計で各階にゴミ置き場を設置。間取りは、ワイドスパン中心でハイサッシを採用。アウトフレームのスッキリした居心地の良い住空間で、ウォールドアの採用などフレキシブルに使える提案も。タンクレストイレの採用(一部住戸除く)など設備仕様も充実していて、モデルルームを見学した人の評価は高いという。
2023年3月の取材時点で、物件エントリー数は5000件超、第1期・第2期販売で209戸を供給済みと販売好調だ。良好な交通アクセスから共働きカップルの購入比率が高いようだ。新横浜駅へは、相鉄・東急直通線利用で1駅の便利さで徒歩1分の立地。好調な販売も納得だ。
新幹線効果が期待できる新横浜の注目マンションは?
もう一つ、新線効果が期待できるのが新横浜駅だ。横浜市営地下鉄ブルーライン、JR横浜線、JR東海道新幹線が利用できるターミナル駅。東海道新幹線の利用で、品川や東京へのアクセスも良好で、駅周辺の再開発が進む横浜駅へも往来しやすい。
新横浜駅最寄りでは、総戸数190戸の「レ・ジェイド新横浜」と総戸数118戸の「メイツ ザ・マークス新横浜」の大規模マンションがラインアップ。新横浜は、新横浜公園や横浜アリーナなど多彩な都市機能がすでに備わっている街だけに、相鉄・東急新横浜線開業による効果は大きいだろう。
価値あるマンション選びのポイントは?
マンションの資産性を考える上で、将来的に街の価値や魅力が高まるかどうかを見極めるのは、重要な視点だ。再開発が進む品川駅、横須賀線の新駅が誕生した武蔵小杉駅、線路の地下化によって新たなにぎわいが生まれた下北沢駅。価値や魅力が高まった場所は、結果としてマンション価格も上昇している。価値あるマンション選びには、街の将来像を思い描くことが大切ではなかろうか。
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