新築・中古マンションの最新市況を解説したい。不動産経済研究所によれば、2023年4月度の東京都23区の新築マンション平均価格は、1億1773万円と高水準が続いている。販売在庫も減っており、4月末時点で2022年10月度以来5千戸を割った。今月も最新のマンション市況のほか、2023年の注目マンションを紹介する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
最新の首都圏新築マンション市況【2023年4月度】
2023年5月に入ってからの株式市場が好調だ。日経平均株価が3万円台を回復。バブル期以降の最高値も更新し続けている。低金利や円安などによって海外などからの投資資金が集まっていることが上昇の要因だ。
このことが不動産市場にもプラスになっており、一時期、下落基調にあった東証REIT(リート)指数も持ち直している。株式市場の好調さが続けば、富裕層など金融資産を保有する層の資金力が高まり、好立地のマンション需要を押し上げそうだ。
2023年4月、首都圏新築マンション平均価格は高水準をキープ
不動産経済研究所の発表によると、2023年4月度の首都圏新築マンションの発売戸数は、対前年同月比30.3%減少の1,690戸、対前年同月より736戸減少している。
1戸当たりの平均価格は7,747万円、前年同月比で23.1%の上昇。また1㎡当たりの単価は115.9万円、前年同月比で23.7%のアップとなった。

億ションの分譲が多かった前月に比べ下がったものの、東京23区の平均価格は、1億1,773万円となっており高水準のままだ。首都圏の新築マンション市場は、変わらず好調だと言える。
2023年3月期の首都圏初月契約率は73.7%となり前年同月比で5.9ポイントダウン、前月比では5.8ポイントダウンとなったが、好調の目安とされる70%を上回る。
なお、販売在庫は4,983戸で、前月よりも206戸の減少。2022年3月末の販売在庫は5,475戸だったので、在庫は低水準が続いている。
高値で販売する狙いも?都市部の供給量が前年より大幅ダウン
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。

また、首都圏新築マンションの地域別の新規発売戸数は下表のようになっている。

平均価格は、神奈川県が5,792万円。埼玉県が5,578万円、千葉県が4,595万円となっており、都区部と比べるとその他3県の価格はまだ手が届く水準だ。
都区部の供給が前年比で大きく減少しているが、価格上昇トレンドが続く中で高値販売を狙い販売戸数を絞っていることも一因。段階的に価格を上げるプロジェクトもある。販売在庫が少ない現状では、売り手優位の状況は続きそうだ。
首都圏の中古マンション市況【2023年4月度】
次に中古マンション市場を見てみよう。首都圏中古マンションの市場動向も、新築マンション同様、価格上昇が続いている。
首都圏中古マンションの平均成約価格は、前年同月比で2.8%上昇の4,486万円。平均成約㎡単価は、70.17万円で+2.1%となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、36カ月連続となる。
2023年4月の新規登録物件の㎡単価は、73.75万円となっていて前月より1.9%上昇した。
2023年4月度の首都圏中古マンションの成約件数は、下記の表の通り2,954件となっており、前年同月(3,094件)比で4.5%減少した。

2023年4月の新規登録件数は前月に続き1万7,000件を超えており、在庫件数は前月より1.0%上昇し、昨年同時期よりも22.0%も増えている。新規登録物件数が増えたこともあり、在庫の増加トレンドは継続、対前年の成約㎡単価の伸びは大幅に鈍化してきている。
好調なマンション市場に対して、戸建ての上昇ペースは鈍化
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。

地域別の成約㎡単価は、前年同月比では都下を除いてプラス。都区部は前月より3.7%上昇し、㎡単価が104.38万円となり直近の最高値を更新した。

しかし、1年前に多くの地域が対前年比で10%を超える伸び率を示していたことを考えると、上昇ペースは鈍化してきている。このまま一本調子で上がると考えるのは早計だろう。
ちなみに戸建て市場についても触れておくと、好調なマンション市場に対して、戸建てはコロナ禍の戸建て需要が一服し、新築戸建て住宅の販売も鈍化している。
東日本不動産流通機構の市場動向データによれば、2023年4月度の首都圏新築戸建て住宅の在庫件数は、15,855件。前年同月比で4,552件も増加している。一部で需要層が重なる郊外エリアのマンション市場は影響があるだろう。
2023年以降の超高層マンションの予定は約11.4万戸、首都圏が約8.5万戸を占める
不動産経済研究所の発表によると、2023年以降に全国で建設・計画されている超高層マンション(20階建て以上)は、約11.4万戸。1年前の2022年3月末日時点と比べ23棟、1万5千戸超増加している。そのうち、首都圏は168棟、8万4,671戸で全国に占めるシェアは、74.1%に上る。
超高層マンションの竣工は、3万5千戸を突破した2009年をピークに1万戸台を維持していたが、コロナ禍による工事遅延などの影響もあり2022年は8,244戸と1万戸を割り込んだ。
2023年は、完成がズレ込んだ物件があるため、1万7千戸台へと急増する見込みだ。不動産経済研究所の予測では、2026年まで1万7千戸から2万数千戸の超高層マンションの住戸が毎年完成する見込みだ。
新築マンションの供給は、ピーク時の3分の1程度まで減少しているが、そうしたなかでも超高層マンションの供給が続くのは、値崩れが起きににくく資産性の面で人気があるからだ。2023年4月度の超高層物件の供給は、10物件、342戸で契約率は92.7%と高い数値を示している。
都市再生の動きもタワーマンションの建設を後押しする。都市再生緊急整備地域とは、都市再生の拠点として、緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として、政令で指定される地域。超高層マンションの多くが、都市再生緊急整備地域内の市街地再開発事業だ。
東京都心に限らず、中心市街地の市街地再開発事業で誕生するマンションは希少性が高く、人気になるケースが多い。
再開発事業のひとつ「大宮スカイ&スクエアザ・タワー」
「大宮駅西口第3-B地区市街地再開発事業(街区名称:大宮サクラスクエア)」で誕生する「大宮スカイ&スクエアザ・タワー」も、都市再生緊急整備地域内における市街地再開発事業の一つだ。

さいたま市大宮区桜木町2丁目において建設が進む「大宮スカイ&スクエアザ・タワー」も市街地再開発事業で誕生する総戸数522戸、地上28階建てのタワーレジデンス。2022年6月から第1期の販売をスタート。2023年5月末時点で、第3期6次までの計356戸を供給し、全戸に申し込みが入っており売れ行きも堅調だ。
地権者住戸などを除く販売住戸は、399戸なので未販売住戸は既に50戸を割っている。
人気のポイントは、新幹線も利用できるターミナル駅である大宮駅西口から徒歩5分の利便性と大宮駅初の商業・業務・住宅一体の市街地再開発事業であること。1階から3階には、スーパーマーケットなどの商業施設が入る「大宮サクラスクエアモール」が設けられ、住宅部分は4階以上。仕事帰りに気軽に買い物ができる便利な暮らしが実現する。
スケールメリットを活かした豪華な共用施設も魅力でウェルカムラウンジやグランドロビーをはじめワーキングブースやマルチスタジオ、ゲストスイートなど多彩。屋上には、大型スクリーンも楽しめるスカイラウンジも用意している。

3LDK中心で平均専有面積70㎡超のゆとりのプランも「大宮スカイ&スクエアザ・タワー」が支持されている理由の一つ。居室が十分確保され収納量も豊富だ。設備スペックも充実しており、1LDKを含め全てのタイプのLD・キッチンに床暖房が採用されている。
地震エネルギーを建物に伝わりにくくする「中間免震構造」を採用し安全面に配慮しているほか、各階に宅配ボックスやゴミ置き場、トランクルームを設置。快適な暮らしをサポートしている点も注目ポイントだ。
2023年5月16日時点で、総反響件数は6500件超。総来場件数も1500組を超える。購入者の居住地は、大宮区を中心としたさいたま市内および埼玉県内が中心。最高倍率15倍の住戸は、最上階の2億円を超える住戸だったように企業オーナーや開業医などの地元の富裕層から高評価を得ている。
大宮駅周辺では、西口・東口ともに再開発の機運が高まっており、2022年に大宮駅東口で大宮門街(おおみやかどまち)が開業するなど都市再生が進む。「大宮スカイ&スクエアザ・タワー」は、大宮駅における久々のタワーマンション分譲でもあり、幅広い年齢層から支持されているようだ。
大宮のような繁華性の高いターミナル駅は、相当数の地権者合意が必要になるため期間を要するケースが多い。その分、実現すれば地域の関心を集めることになる。首都圏では、ほかのエリアでも市街地再開発によるタワーマンションの供給が活発化している。資産性を求めるなら、こうしたプロジェクトに注目すべきだろう。
次に、今月の注目マンション「パークタワー西新宿」を紹介したい。
西新宿五丁目の再開発街区に誕生する地上40階建て超高層「パークタワー西新宿」
「パークタワー西新宿」は、都営大江戸線西新宿五丁目駅徒歩6分、丸ノ内線西新宿駅徒歩10分に誕生する地上40階建て、総戸数470戸の超高層タワーレジデンス。2023年4月に第1期の販売がスタートし、追加販売を含め138戸の供給全戸に申し込みが入り、最高倍率は、23倍(倍率優遇含む)。
2023年3月末時点の総反響件数は約3700件、来場件数は1000組と人気を集めている。その要因に挙げられるのが立地の将来性と優れた商品企画だ。

パークタワー西新宿が立地する新宿区西新宿5丁目は、4つの街区で再開発が進んでおり、4街区全体の面積は、約5.2ヘクタールにも及ぶ。
土地区画整理によって、かつての木造密集地域がゆとりある街区に。公園なども整備されており街並みも美しい。パークタワー西新宿は、開発規模は約0.8ヘクタールの西新宿五丁目中央南地区に位置する。新宿中央公園に歩いて4分のロケーションで、一部の住戸からは公園を眺めることもできる。

建物の特徴は、免震構造に加え、ZEHOrientedを取得した超高層ZEH免震タワーレジデンスであること。断熱性能を高め、高効率な設備などを導入することで、室内環境を維持し、大幅な省エネを実現する。デザイン性の高い外観も注目ポイントで、街のシンボルだった十二社の大滝をモチーフに、バルコニーの手すりなどに細やかな意匠を施すなど、存在感を放つフォルムになっている。

多彩な共用施設も魅力で、5階に個室ブースもあるオーナーズリビングやゲストルーム、フィットネスルームなどを用意。ペットのためのドッグランも設けている。23階にはスカイラウンジもあり、富士山も望めるダイナミックな景色が楽しめる。
住戸は、ワイドスパン中心で、専有面積42.48㎡~108.88㎡(全体概要分譲済含む)の多彩なプラン。販売センターを見学したが、ハイサッシ採用の住空間は、凹凸が少なくスッキリしていて居住性が高いと感じた。各フロアにゴミ置き場だけでなく食配ステーションや宅配ロッカーも設けられており生活利便にも配慮されているのもうれしいポイントだ。
東京都と新宿区では、新宿グランドターミナル構想により新宿駅周辺地域の再整備を決定しており、東西自由デッキや地下の東西自由通路の整備など歩行者中心のネットワークづくりに着手している。既に既存ビルの解体は始まっており、新宿駅を中心とした街の発展性も大いに期待できそうだ。
パークタワー西新宿の第2期販売は、2023年6月下旬予定となっており、予定販売価格は、8,000万円台~2億2,400万円台(※100万円単位)。好調な販売状況を踏まえると、第2期以降も注目を集めそうだ。
2023年は10年前と同様に「超高層マンション」が選びやすい年に
2023年は、先月紹介した地上50階建ての超高層レジデンス「HARUMIFLAG SKY DUO」をはじめ超高層マンションの注目物件が目立つ。今から10年前の2013年は、富久クロスやキャピタルゲートプレイス、ブリリアタワー池袋、スカイズタワー&ガーデンなどフラッグシップといえる超高層マンションの供給が相次ぐ当たり年だった。
超高層マンションは、広域で比較検討するユーザーも多いため、2013年と同様に2023年は選びやすい年と言えるかもしれない。
インバウンド需要の復活による中心市街地の地価上昇や建築費の上昇によって、超高層マンション価格の調達価格がさらに上昇する可能性は高いだろう。希望にあったマンションに出会えたら、まずは検討することをおすすめしたい。
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