2023年7月の住宅ローンの金利推移・相場(132銀行、1000商品)を解説しましょう。住宅ローンの変動金利の相場は、史上最低金利を維持。10年固定と35年固定は多くの金融機関が金利を引き下げました。フラット35は1.730%と、金利を引き下げています。では、各金利タイプの特徴と推移、選び方も合わせて紹介します(住宅ローンアドバイザー 淡河範明)。
変動金利は、auじぶん銀行が独走
諸費用などを加味した「実質金利」ベースで、本当に割安な住宅ローンを見ていきましょう(表面金利が低くても、諸費用が高ければ意味がありません。両者を合計したのが実質金利です)。
2023年7月の「変動金利(新規借入)」は、調査した主要14行の住宅ローン金利について、1行が金利を引き下げ、金利を引き上げた銀行はありませんでした。
変動金利は、4月以降にいくつかの銀行が金利を大幅に引き下げており、市場最低水準を更新しています。なお、auじぶん銀行は2年10カ月間連続で首位を維持しました。

※実質金利は、借入金額3000万円、借入期間35年、団信加入、元利均等返済、ボーナス払いなし、最優遇金利を適用として、実質金利を計算。変動金利は現在の水準が継続と仮定。諸費用は、事務手数料等、保証料とする。auじぶん銀行は、2023/7/1現在の金利にau金利優遇割を適用した金利であり、実際の借入日の金利により変動する。審査の結果によっては保証付金利プランとなる場合があり、この場合には上記の金利とは異なる金利となる。金利プランが保証付金利プランとなる場合は、固定金利特約が3年、5年、10年に限定。au金利優遇割は、au回線とじぶんでんきをセットで契約された場合に適用されるプラン。審査によっては、割引が適用されない場合がある。金利はすべて年率で表示
変動金利は、もっとも利用者が多く、金利競争の主戦場となっています。年度が変わってから各銀行とも金利を引き下げるという、大きな動きが見られます。
以下は変動金利の上位銀行の金利の推移です。
・PayPay銀行 0.319%(前月比▲0.061%)変動金利 引き下げキャンペーン
・住信SBIネット銀行 0.320%(前月比±0.000%)通期引き下げプラン
・SBIマネープラザ 0.320%(前月比±0.000%)変動フォーカス、対面専用
・三菱UFJ銀行 0.345%(前月比±0.000%)住宅ローン(事務手数料型)
・三菱UFJ信託銀行 0.345%(前月比±0.000%)ネット住宅ローン・三菱UFJ信託銀行専用
実質金利の低さにおいては、auじぶん銀行が独走状態です。表面金利についても。新規借入が0.219%※、借り換えを0.196%※となっており、他の追随を許しません。さらに、7月には、無料の団信を拡充。がん50%保障に加えて、4疾病(性心筋梗塞、脳卒中、肝疾患、腎疾患)50%保障も無料で付帯するようになりました。所定の状態となった場合に、住宅ローン残高が50%になるもので、無料の団信ではトップクラスの充実度です。※2023年7月現在の金利にau金利優遇割を適用した金利であり、実際の借入日の金利により変動する。
住信SBIネット銀行は、4月に商品を刷新し、団信も拡充。金利も引き下げました。
PayPay銀行は6月に新規借入・借り換えともに「変動金利引き下げキャンペーン」を開始。そのため、新規借入では2位、借り換えでは3位と順位を大きく伸ばしました。このキャンペーンは、どちらも8月までの申し込み者が対象となっているのには注意が必要です。
メガバンクについては、みずほ銀行が5月の経営計画説明会で、住宅ローンの新規貸し出しの絞り込む方針を明らかにしています。それを受けてなのか、6月初めには三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行が大幅に金利を引き下げ、0.345%としたことで、大手銀行の半数以上が0.3%台にひしめき合う状況になっています。
さて、日本銀行の金融政策が7月の政策決定会合で、YCCの一部解除を予想する向きもあるようですが、1年程度大きな動きがないとみている市場関係者のほうが多いようです。従って、当面は変動金利が上がるようなことはなさそうです。
主要地銀等の表面金利ランキング(変動金利、新規借入)※主要銀行除く、2023年7月
0.325 % 中国銀行
0.375 % 埼玉りそな銀行
0.395 % みなと銀行、JAバンク埼玉、紀陽銀行
0.400 % 横浜銀行
0.445 % 関西みらい銀行
0.455 % 広島銀行
0.470 % きらぼし銀行、北九州銀行
0.475 % 西日本シティ銀行、肥後銀行、南都銀行
0.500 % 九州ろうきん、山陰合同銀行、静岡銀行
0.518 % 愛媛銀行
0.525 % 滋賀銀行
0.550 % 西京銀行
0.555 % もみじ銀行
0.575 % 十六銀行、池田泉州銀行
0.590 % 福島銀行
0.600 % 筑波銀行、大東銀行
10年固定金利は、多くの銀行が引き下げ
2023年7月の「10年固定金利(新規借入)」は、調査した主要13行の住宅ローン金利について、3行が金利を引き上げ、7行が金利を引き下げました。

銀行は「10年固定金利」を、固定金利選択型の中核に据えていることが多く、激戦区となっています。
7月は、ほとんどの銀行が10年固定金利を引き下げました。なお、6月に大きく金利を引き下げていた三菱UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行が、ランキング上位に食い込んでいます。
今年の3月までは、10年固定は1%を超える金利設定となっていましたが、現在は多くの銀行が1%を切る金利を設定してきました。金利は低下局面にあるような印象です。
以下は上位銀行の金利の推移です。
・三菱UFJ銀行 0.690%(前月比+0.010%)住宅ローン
・三菱UFJ信託銀行 0.690%(前月比+0.010%)固定10年プレミアム
・SBI新生銀行 1.050%(前月比±0.000%)当初固定金利タイプ、頭金10%以上、割引プログラム
・ソニー銀行 1.195%(前月比±0.000%)住宅ローン、頭金10%以上
「新規借入ランキング」では、約2年間トップを維持していたみずほ銀行は、一時、金利を引き上げ、2位へと転落しましたが、6月には実質金利で1位に返り咲きました。さらに、大幅に金利を引き下げた三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行が、2位のSBI新生銀行を抑え、2位となっています。
一方、「借り換えランキング」は、長い間りそな銀行とみずほ銀行が低金利を争っている状態が続いていましたが、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行が大幅に金利を引き下げたため、借り換えランキング1位となりました。
10年固定金利については、10年国債金利をベースにしています。世界的な金利上昇の中で先高感がありますが、日銀としては金融緩和を維持する方向で進んでいるために、すぐに金利が上昇することはなさそうです。とはいえ、今後も、日銀の動き次第で、金利が変化していくことが予想されます。
主要地銀等の表面金利ランキング(10年固定、新規借入)※主要銀行除く、2023年7月
※カッコ内は、固定期間終了後の基準金利からの優遇幅
0.650% 香川銀行(固定期間終了後の金利は未定)
0.750% 百十四銀行(固定期間終了後▲2.495%、保証料で金利+0.2%)、十六銀行(固定期間終了後▲1.55%)
0.800% 富山銀行(固定期間終了後▲1.00%)、中国銀行(固定期間終了後▲1.90%)、愛媛銀行(固定期間終了後▲2.495%、保証料で金利+0.2%)、北陸ろうきん(固定期間終了後▲1.35%)
0.870% 北洋銀行(固定期間終了後▲1.50%)
0.880% 四国ろうきん(固定期間終了後▲1.00%)
0.900% 池田泉州銀行(固定期間終了後▲2.10%)、鳥取銀行(固定期間終了後▲1.55%)
0.980% 西京銀行(固定期間終了後、選択した金利プランの利率)
1.000% 山陰合同銀行(固定期間終了後▲1.20%)、福邦銀行(固定期間終了後▲1.90%)、中京銀行(固定期間終了後▲1.60%)、トマト銀行(固定期間終了後▲1.50%)、新潟ろうきん(固定期間終了後1.60%)、九州ろうきん(固定期間終了後、選択した金利プランの利率)
全期間固定金利も引き下げ傾向
フラット35は、1.73%に引き下げ
2023年7月の「全期間固定・35年固定金利(新規借入)」は、調査した主要10行の住宅ローン金利について、2行が金利を引き上げ、6行が金利を引き下げました。フラット35の金利は引き下げ、1.730%となりました。

7月の全期間固定金利は、10年固定金利と同じく、多くの金融機関が金利を引き下げています。
ただ、現在、ここ数カ月にわたって固定金利の絶対水準がそれなりに上昇してきて2%に近づいているために、全期間固定金利を選択することを躊躇する人が少なくないようです。
以下は上位銀行の金利の推移です。
・三菱UFJ銀行 1.340%(前月比+0.020%)住宅ローン、事務手数料型
・三菱UFJ信託銀行 1.340%(前月比+0.020%)三菱UFJネット住宅ローン・三菱UFJ信託銀行専用・ずーっと固定金利コース
・住信SBIネット銀行 1.420%(前月比▲0.030%)フラット35S保証型 頭金20%以上
・みずほ銀行 1.390%(前月比−0.050%)みずほネット住宅ローン
※フラット35S・Aプランは、11年目に金利が0.25%上昇する
りそな銀行が4カ月連続で金利を引き下げ、実質金利ランキングで1位を維持しました。りそな銀行は久しぶりに1.2%台をつけたために、金利の先高感が消えています。なお、35年固定でも、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行が大きく金利を引き下げ、2位にランクインしています。
なお、金利上昇局面では本来、全期間固定を選択すべきですが、全期間固定は人気がありません。変動金利は横ばい、全期間固定は上昇という局面で、金利差が1%を超えてしまい、「全期間固定は高いので選択したくない」という人が多いのです。
しかし、変動金利は借りた後の「金利上昇リスク」が気になる状態です。こうした人は「ミックスプラン」(例えば、全期間固定金利と変動金利で、半分ずつ借りるなど)が適していると考えます。
主要地銀等の表面金利ランキング(全期間固定、新規借入)※主要銀行除く、2023年7月※フラット35を除く
0.950% 中国銀行
1.130% みなと銀行
1.150% 紀陽銀行
1.200% 池田泉州銀行、常陽銀行
1.240% 百十四銀行
1.255% 埼玉りそな銀行
1.330% 十六銀行
1.350% 四国銀行
1.380% 常陽銀行
1.450% 千葉銀行
1.470% 阿波銀行
1.550% 京都銀行
1.600% 大垣共立銀行
1.750% 八十二銀行
1.800% 静岡銀行、京葉銀行
1.850% 北海道銀行、北洋銀行
住宅ローン金利は上昇始めるも、小康状態
最後に住宅ローン金利の長期的な推移(18年分)を見てみましょう。

グラフを見ればわかる通り、住宅ローン金利は、変動金利も、全期間固定金利(フラット35)も、非常に低い水準にあります。
変動金利は今なお下落を続けています。かつては2%近い水準でしたが、現在は実質金利で0.4%程度まで下がっています。過去最低水準と言えます。
一方で、全期間固定金利は、2004年ごろは3%台でしたが、2019年には1%台前半まで下落。その後、世界的な金利上昇などを受けて、足元では金利が上昇し始めています。全期間固定金利だけでなく、5年固定金利、10年固定金利も上昇しています。
日銀は大規模な金融緩和政策、つまり低金利政策を打ち出してきましたが、世界的な金利上昇や、金融緩和による弊害が目立ってきたため、将来的には金利引き上げは不可避です。植田日銀総裁は早期の金融引締はないとしているものの、将来的には金利は上昇していく可能性が高く、住宅ローンを借りる場合は、将来の金利上昇についても考慮しておくべきでしょう。
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
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新規借入2023年9月最新 主要銀行版
住宅ローン
変動金利ランキング
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- 実質金利(手数料込)
- 0.419%
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- 年0.290%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円

①手数料5.5万円〜で、初期費用が少ない
②がん団信が金利上乗せ0.1%

- 実質金利(手数料込)
- 0.449%
- 表面金利
- 年0.319%
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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