2023年9月の住宅ローンの金利推移・動向(132銀行、1000商品)は、変動金利が史上最低金利を維持した一方で、10年固定と35年固定は多くの金融機関が金利を引き上げました。フラット35は1.800%と、金利を引き上げています。7月28日の日銀による事実上の金利引き上げの影響といえるでしょう(住宅ローンアドバイザー 淡河範明)。
市場金利は上昇傾向
日銀は金融政策を変更して、金利引き上げに動いています。2022年12月には金融政策を変更し、長期金利の目標の上限を0.25%から0.5%に引き上げ。2023年7月には、長期金利の事実上の上限を1%に変更しました。
日銀が金融政策を転換したのは、世界的な金利上昇、急速な円安の進行などから、金融正常化(金利引き上げ)の圧力がかかったためです。
日銀の金融政策変更を受けて、長期金利は上昇。2023年9月1日19時の10年国債金利は0.630%と、約8年ぶりの高水準です。
世界的な金利高の中で、日銀は今なお低金利政策を継続しています。そのため円安が進んでいるのが現状です。円安はインフレを加速する可能性があり、今後の金利動向は予断を許しません。

変動金利は、SBI新生銀行がトップに!
では、諸費用などを加味した「実質金利」ベースで、本当に割安な住宅ローンを見ていきましょう(表面金利が低くても、諸費用が高ければ意味がありません。両者を合計したのが実質金利です)。
2023年9月の「変動金利(新規借入)」は、調査した主要14行の住宅ローン金利について、1行が金利を引き上げ、金利を引き下げた銀行はありませんでした。
変動金利は、4月以降にいくつかの銀行が金利を大幅に引き下げており、市場最低水準となっています。
なお、8月に金利を大幅に引き下げたSBI新生銀行は、2カ月連続で、変動金利ランキングで首位となりました。SBI新生銀行は、今年に入ってから住宅ローンの獲得に力を入れている印象で、変動金利はキャンペーンで低い金利に抑えています。2年10カ月間連続で首位を維持していたauじぶん銀行は、2位にランクを落としています。

※実質金利は、借入金額3000万円、借入期間35年、団信加入、元利均等返済、ボーナス払いなし、最優遇金利を適用として、実質金利を計算。変動金利は現在の水準が継続と仮定。諸費用は、事務手数料等、保証料とする。
変動金利はもっとも利用者が多く、金利競争の主戦場となっていますが、年度が変わってから各銀行とも金利を引き下げるという、大きな動きが見られます。
以下は変動金利の上位銀行の「新規借入」金利の推移です。
・SBI新生銀行 年0.290%(前月比±0.000%)住宅ローン 変動フォーカス
・auじぶん銀行 年0.319%(前月比±0.000%)全期間引下げプラン、au金利優遇割
・SBIマネープラザ 年0.320%(前月比±0.000%)変動金利通期引下げプラン、対面専用
・住信SBIネット銀行 年0.320%(前月比±0.000%)通期引き下げプラン
・三菱UFJ銀行 年0.345%(前月比±0.000%)変動金利 住宅ローン
※SBIマネープラザの商品は住信SBIネット銀行の住宅ローン。
※三菱UFJ銀行の適用金利や引下幅は、申込内容や審査結果等により決定する。
実質金利の低さにおいては、これまでauじぶん銀行が独走状態でしたが、SBI新生銀行が8月に大幅に金利を引き下げ、2カ月連続で首位となりました。住信SBIネット銀行は、4月に商品を刷新。団信も拡充しており、顧客獲得に本腰を入れた様子です。
さて、日本銀行の7月の金融政策決定会合では、長期金利の政策に一部修正がありました。市場関係者の中には、実質的な利上げととらえている人も少なくないようです。今のところ、長期金利のみが対象です。
しかし、長期金利の水準が上昇を始めると、近い将来、短期金利の上昇圧力になっていくと考えています。マイナス金利解除が徐々に近づいてると感じており、半年以内に行われるという見通しも再燃していることから、年末にかけて0.6~0.8%を目指すと予想しています。
ランキング対象外の主要地銀等の表面金利(変動金利) 2023年9月
0.320 % 池田泉州銀行
0.325 % 中国銀行
0.350 % 武蔵野銀行
0.370 % 埼玉りそな銀行
0.395 % みなと銀行、JAバンク埼玉、武蔵野銀行、関西みらい銀行、紀陽銀行
0.400 % 横浜銀行
0.455 % 広島銀行
0.470 % きらぼし銀行、北九州銀行
0.475 % 西日本シティ銀行、肥後銀行、南都銀行
0.500 % 九州ろうきん、山陰合同銀行、静岡銀行
0.518 % 愛媛銀行
0.525 % 滋賀銀行
0.550 % 西京銀行、愛知銀行
0.555 % もみじ銀行
0.575 % 常陽銀行、栃木銀行
0.590 % 福島銀行
0.600 % 筑波銀行、大東銀行
10年固定金利は、多くの銀行が引き上げ
2023年9月の「10年固定金利(新規借入)」は、調査した主要13行の住宅ローン金利について、11行が金利を引き上げ、金利を引き下げたのはイオン銀行だけでした。

銀行は「10年固定金利」を、固定金利選択型の中核に据えていることが多く、激戦区となっています。
9月は、先月に引き続き、ほとんどの銀行が10年固定金利を引き上げました。そのため、金利を据え置いたSBI新生銀行の順位が相対的に引き上がり、首位となっています。
また、6月に金利を大幅に引き下げていたみずほ銀行は、今月に入りやや金利を引き上げましたが、2位を維持しています。
以下は上位銀行の金利の推移です。
・SBI新生銀行 年1.050%(前月比±0.000%)当初固定金利タイプ、頭金10%以上、割引プログラム
・みずほ銀行 年1.350%(前月比+0.150%)全期間重視プラン
・三菱UFJ銀行 年0.880%(前月比+0.100%)住宅ローン
・三菱UFJ信託銀行 年0.880%(前月比+0.100%)固定10年プレミアム
・ソニー銀行 年1.375%(前月比+0.080%)住宅ローン、頭金10%以上
※三菱UFJ銀行の適用金利や引下幅は、申込内容や審査結果等により決定する。
10年固定金利については、10年国債金利をベースにしています。日銀は7月の政策決定会合で、10年国債金利の上限を1%に引き上げており、10年固定金利は上昇傾向が続きそうです。
ランキング対象外の主要地銀等の表面金利(10年固定) 2023年9月
0.650% 香川銀行(固定期間終了後の金利は未定)
0.745% 池田泉州銀行(固定期間終了後▲2.10%)
0.750% 百十四銀行(固定期間終了後▲2.495%、保証料で金利+0.2%)
0.780% 四国ろうきん(固定期間終了後▲1.00%)
0.800% 愛媛銀行(固定期間終了後▲2.495%、保証料で金利+0.2%)、富山銀行(固定期間終了後▲1.00%)、北陸ろうきん(固定期間終了後▲1.35%)
0.850% 愛知銀行(固定期間終了後▲1.55%)
0.870% 北洋銀行(固定期間終了後▲1.50%)
0.900% 中国銀行(固定期間終了後▲1.90%)、鳥取銀行(固定期間終了後▲1.55%)
0.950% 十六銀行(固定期間終了後▲1.55%)
0.980% 西京銀行(固定期間終了後、選択した金利プランの利率)
1.000% 九州ろうきん(固定期間終了後、選択した金利プランの利率)、山陰合同銀行(固定期間終了後▲1.20%)、新潟ろうきん(固定期間終了後1.60%)、中京銀行(固定期間終了後▲1.60%)、福邦銀行(固定期間終了後▲1.90%)
35年固定金利は引き上げ傾向
フラット35は、1.800%に引き下げ
2023年9月の「全期間固定・35年固定金利(新規借入)」は、調査した主要8行の住宅ローン金利について、7行が金利を引き上げ、金利を引き下げた銀行はありませんでした。フラット35の金利は引き上げ、1.800%となりました。

9月の全期間固定金利は、10年固定金利と同じく、多くの金融機関が金利を引き上げています。固定金利の絶対水準が上がってきており、全期間固定金利を選択することを躊躇する人が少なくないようです。
以下は上位銀行の金利の推移です。
・SBI新生銀行 年1.700%(前月比±0.000%)住宅ローン ステップダウン金利タイプ
・りそな銀行 年1.445%(前月比+0.180%)住宅ローン超長期
・三菱UFJ銀行 年1.580%(前月比+0.150%)住宅ローン、事務手数料型
・三菱UFJ信託銀行 年1.580%(前月比+0.090%)三菱UFJネット住宅ローン・三菱UFJ信託銀行専用・ずーっと固定金利コース
・ソニー銀行 年2.207%(前月比+0.145%)住宅ローン
※三菱UFJ銀行の適用金利や引下幅は、申込内容や審査結果等により決定する。
ほとんどの銀行が金利を引き上げる中、SBI新生銀行だけが金利を据え置いたので、実質金利ランキングで首位を獲得しました。
また、りそな銀行は7月までの4カ月間、連続で金利を引き下げていたため、今月も金利を引き上げましたが、2位となっています。
なお、金利上昇局面では本来、全期間固定を選択すべきですが、全期間固定は人気がありません。変動金利は横ばい、全期間固定は上昇という局面で、金利差が1%を超えてしまい、「全期間固定は高いので選択したくない」という人が多いのです。
国債の金利が上昇すれば、全期間固定金利は、つられるように金利が上がっていくと見ています。
ただ、個人的には、紀陽銀行、池田泉州銀行、常陽銀行など、固定金利で攻撃的な金利を提示している金融機関の動向に注目しています。フラット35よりもはるかに安い金利を提示しているので、選択肢と有力な候補だからです。こまめな金利チェックが求められるでしょう。
ランキング対象外の主要地銀等の表面金利(全期間固定、段階金利) 2023年9月
※フラット35を除く。
1.050% 中国銀行
1.100% 紀陽銀行
1.200% 池田泉州銀行、百十四銀行
1.350% 四国銀行
1.380% 常陽銀行
1.390% みなと銀行
1.445% 埼玉りそな銀行
1.500% 千葉銀行
1.670% 十六銀行
1.750% 阿波銀行
1.780% 横浜銀行
1.850% 北海道銀行、京都銀行、北洋銀行
1.900% 静岡銀行、八十二銀行
1.950% 大垣共立銀行
2.090% 京葉銀行
住宅ローン金利の長期推移は?
住宅ローン金利は、変動金利も、全期間固定金利(フラット35)も、一貫して低下し続けています。足元では全期間固定金利が上昇し始めましたが、まだわずかな金利上昇です。

全期間固定金利は、底を打って上昇傾向にあるものの、いまだに1%台と低水準にとどまっています。
変動金利も下がっており、0.5%を割り込んでいます。
なお、昨今の世界的な物価上昇の波が日本にも及んできていて、日銀も金融緩和解除に向けて徐々に金利を引き上げ始めています。変動金利は今なお過去最低金利を更新している状態ですが、今後は上昇に転じる可能性もありそうです。
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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淡河範明さん
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