首都圏の新築・中古マンションの最新市況について解説したい。2023年7月度の首都圏新築分譲マンションの平均価格は9,940万円となり、前年同月比では、55.8%もの上昇となる。価格を押し上げているのは、最高倍率142倍、平均倍率約15.3倍にも上った「HARUMI FLAG SKY DUO」など都心の高額物件だ。即日完売した本物件は、7月度の好調な契約率にも大きく影響した。今月も最新の新築・中古マンション市況や価格動向、および注目マンションを紹介する。(不動産アナリスト・岡本郁雄)
最新の首都圏新築マンション市況【2023年7月度】
2023年7月度の新築マンション市場を見てみよう。話題の「HARUMI FLAG SKY DUO」の第1期販売が、大きく影響する結果となった。
まず、7月度の新築分譲マンション発売戸数は、前年同月比323戸増加の2,591戸で14.2%の増加。このうち「HARUMI FLAG SKY DUO」第1期1次供給は、573戸となっており同月の供給シェアは、22.1%に上る。
契約率は、前年同月比14.1ポイントアップの74.8%だったが、「HARUMI FLAG SKY DUO」が平均倍率15.3倍で即日完売したことを踏まえると高い契約率は、それに起因している。
「HARUMI FLAG SKY DUO」の供給・成約数を除く契約率を試算してみると2023年7月度は、67.6%となり好不調の目安の70%を割っている。

1戸あたり平均価格は、前年同月比で55.8%アップの9,940万円。エリア別では、都心高額物件の供給が相次いだ東京23区が1億3,340万円で、前年同月比84.8%アップと大きな上昇を見せた。
しかし、その一方で、他のエリアは東京都下が5,807万円、神奈川県5,633万円、埼玉県4,579万円、千葉県4,465万円となり、東京都下以外は平均価格が下落。都心と郊外で、価格差は大きく開く傾向となっている。
販売在庫は4,850戸で、前月よりも101戸の減少。2022年7月末の販売在庫は5,126戸だったので、新築マンションの在庫は低水準が続いていることがわかる。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。

不動産経済研究所の市場動向データをもとに編集部が作成
また、首都圏新築マンションの地域別の発売状況は下表のようになっている。

東京23区を除き価格の大きな上昇は見られないが、都下、神奈川県、埼玉県の契約率は60%を下回っている。売れ行きに、地域差があることは留意しておきたい。
首都圏の中古マンション市況【2023年7月度】
続いて、中古マンション市場を見てみよう。
新築マンション同様に、中古マンション市場も好調さを維持している。しかし、市場変化の兆しもあり注意が必要だ。成約数、成約価格ともに伸びているものの、成約価格や、成約㎡単価の伸び率は鈍化傾向であり、在庫件数も増加が続いている。
公益財団法人東日本不動産流通機構によれば、2023年7月度の首都圏中古マンション成約件数は、前年同月比4.3%上昇の3,236件。前月に続き対前年比で増加傾向にある。
成約価格は、前年同月比4.9%上昇の4,563万円。平均成約㎡単価も対前年同月比5.0%上昇の71.92万円となっている。成約㎡単価が前年同月を上回るのは、39カ月連続となる。
2023年7月の新規登録物件の㎡単価は、71.61万円となっていて前月よりも-0.9%、前年同月比で-1.5%となった。成約㎡単価を新規登録㎡単価が下回っており、新たに売り出しをするユーザーが価格設定に慎重になってきていることが推察される。
また、在庫㎡単価と成約㎡単価の乖離(かいり)も縮小している。市場価格と売出価格の乖離が小さければ、合意形成はしやすい。このことは、成約の伸びにもつながっていると考えられる。
以下の表に、中古マンションの市場動向をまとめているので参考にしてほしい。

2023年7月の新規登録件数は、対前年同月比で14.3%増加の17,131件。成約件数は、伸びているものの在庫件数は増加しており、前月末よりも363件増加の46,235件となった。
これは、前年同月比で21.5%増加の高い水準となっている。
下のグラフは、過去5年間の首都圏の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。2021年の半ばから在庫件数が大きく伸びていることがわかる。

地域別の成約㎡単価は、すべての地域が対前年同月比で上昇。しかし、東京23区は、地域別で唯一、前月比でマイナス(-1.7%)となった。

2023年7月度の成約㎡単価の前年同月比の伸びは、東京23区よりも3県の方が上回っている。新築マンション市場と異なり、中古マンション市場では、郊外の価格の伸びが大きい傾向にある。
新築戸建て住宅市場の動向は?
新築戸建て住宅市場についても動向を見てみよう。東日本不動産流通機構発表の2023年7月度の新築戸建住宅レポートによれば、首都圏の新築戸建住宅の在庫件数は16,929件。1年前の11,885件と比べ5,000件超も増加している。
要因は、需要に対する供給の超過。2023年7月度の新築戸建住宅の成約件数は、前年同月比13.9%増加の467件。一方で、新規登録件数は前年同月比29.2%の増加だ。在庫が増えるのも当然だろう。
首都圏新築戸建て住宅の在庫平均価格は、前年同月比5.0%上昇の4,544万円となっており、1億円近くにまで上昇した新築マンション価格に比べると伸びは小さい。しかし、実質賃金は物価上昇で下落しており、住宅購入層が大きく増えるとは考えにくい。戸建て住宅は、調整局面が近づいているのかもしれない。
価格帯別の契約率に見るマンションの売れ筋
ここからは、価格帯別の売れ行き状況について解説する。新築・中古マンションともに高価格帯の物件ほど、売れ行きが良いという傾向が見られる。
新築マンション価格別売れ行き状況
2023年7月度の首都圏新築分譲マンションの価格別成約状況を見ると、1億円を超える億ションの好調さが表れている。

全体平均の契約率が74.8%であるのに対し、1億円以上の価格帯は、すべて契約率が90%以上。最も成約率が高いのは3億以上の価格帯。この価格帯の契約率は、99%となっており、2億円台の契約率も93.7%と高水準だ。
一方で、4,000万円台契約率は61.4%と全体平均を大きく下回る。また、7,000万円超え1億円未満の契約率もすべて70%未満と芳しくない。ある程度予算が出せる人は、希望条件にこだわり、予算を伸ばして億ションを選ぶケースが多いのだろう。
中古マンション価格別売れ行き状況
また、中古マンション市場でも1億円を超える価格帯の成約シェアが高まっている。
東日本不動産流通機構発表のデータによれば、2023年4月~6月期に成約した1億円の中古マンションは、494件で全体の5.6%のシェアを占める。これは、前年同期間の390件、成約シェア4.3%を大きく上回っている。
首都圏価格帯別件数 成約状況

一方で、3,001〜4000万円の2023年4月~6月期の成約件数は、1,374件で前年同期の1,412件よりも減少。この価格帯の在庫件数は、2022年6月末時点の5,843件から2023年6月末時点の7,483件へと大きく伸びている。
つまり、3,001〜4000万円の物件の在庫は増えているが、
首都圏価格帯別件数 在庫状況

今月の注目マンション「ザ・パークハウス ひばりが丘」
noprovideの設定を削除 次に、今月の注目マンション「ザ・パークハウス ひばりが丘」(西東京市)を紹介する。

西武池袋線ひばりヶ丘駅前立地としては、久々の大規模レジデンス(総戸数140戸)であり、建物外観は、地名にあるヒバリの巣をテーマにした意匠性の高いデザイン。
2023年7月の公式ホームページ公開から資料請求件数は600件(2023年8月時点)を超え、出だしは堅調だ。
モデルルームの公開は、2023年10月中旬予定で、販売開始は2024年1月中旬を予定している。今秋に注目を集めそうなマンションである。
ひばりヶ丘駅の周辺環境は?

筆者は、建設地である西武池袋線「ひばりヶ丘」駅を訪ね現地を確認した。
「ひばりヶ丘」駅前は、パルコやひばりが丘図書館、西友などが立地し、生活利便性が極めて高い同物件は、駅徒歩2分なのでそのメリットを享受できる。
「ひばりヶ丘」駅からは、再開発で注目を集める「池袋」駅へ2駅18分でアクセスが可能。「新宿」や「渋谷」「大手町」といった都心のビジネスエリアへも40分程度でアクセスできる。
また、「ひばりが丘団地」があるなどベッドタウンとしての歴史があり、公園などの自然環境も充実した街づくりも魅力的だ。
環境配慮型のマンション
「ザ・パークハウス ひばりが丘」は、環境への配慮という点からも注目できる。
建物地上部分に長谷工コーポレーションが開発した環境配慮型コンクリート「H-BA コンクリート」を採用することが、三菱地所レジデンスから発表された。同社では初の採用となる。
「H-BA コンクリート」は、普通のコンクリートに比してCO₂排出量が少ない。この採用によって、約350tのCO₂排出量削減効果が見込まれるという。
また「ザ・パークハウス ひばりが丘」は、「ZEH-M Oriented」を採用。断熱性能を高め、高効率設備の導入によって快適な室内環境を創出し、省エネもかなう。
ちなみに、地所レジデンスは2022年1月に「CO₂排出量削減戦略」を打ち出しており、CO₂排出量を2030年までに 2019年比で50%削減することを掲げている。
すでに分譲・賃貸の原則全てのマンションの現場造成杭(くい)においては、 CO₂排出量が少ない高炉セメントを配合したコンクリートに順次切り替え、導入を始めている。三菱地所レジデンスでは、今後もCO₂を削減するために、さまざまな取り組みを進めていくようだ。
まとめ
夏休みが終わり、9月からは「HARUMI FLAG SKY DUO」のパビリオン内覧会が再開される(予定)など、新築マンションの販売現場も活発になる。
「HARUMI FLAG」では、賃貸街区「PORT VILLAGE」のオフィシャルサイトも開設。マンションの価格上昇を踏まえて賃貸を選択する人も今後増えるのではなかろうか。
また、中古マンション市場における在庫件数の増加は、選択肢が増えることにもつながり買い手のメリットも大きい。
長期金利の上昇や実質賃金の低下など不動産市場にとってマイナスな要素も多いがこの時期だから出会えるマンションもある。住まいを探す皆さんにとって実りの秋になることを願う。
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