住宅ローン借り入れの際に、手数料、登記費用だけでなく引越代といった諸費用まで貸してくれる、「オーバーローン」を認める銀行が増えている。さらに、かつては「頭金1~2割」が必要だったが、現在は「頭金なし」でも借りられる銀行も登場している。現在は、手持ち資金がなくても住宅ローンを借りやすい時代になっているのだ。そこで主要14銀行について、どんな諸費用まで貸してくれるかを調査してみた。

オーバーローンで、融資手数料だけでなく、
引越費用、不動産仲介手数料まで借りられる

 かつては物件の価格までしか住宅ローンを貸してくれなかったが、最近は様々な諸費用も貸してくれるようになった。つまり、物件価格以上に住宅ローンを貸してくれる、「オーバーローン」に対応する銀行が増えているのだ。

 たとえば、住宅ローンを借りる際、物件価格の2%程度の諸費用がかかるケースでは、物件価格が3000万円だと60万円もかかる計算になる。その他にも、登記費用、引越費用がかかる。マンションであれば購入時に修繕積立金を支払う場合もある。諸費用は合計で100万円を超えることもよくある。

 住宅ローンにあわせて、諸費用も借りられれば、自己資金(手元資金)が少なくても借り入れしやすくなるので、助かるという人は多いだろう。。

ネット銀行は、手数料も借りられるのが当たり前

 まずは、主なネット銀行がどんな諸費用を貸してくれるのか、見てみよう。

 主なネット銀行の「諸費用」の内容
銀行名 借り入れ可能な諸費用
 イオン銀行 諸費用<取扱手数料、火災保険料、登記費用、印紙代、不動産仲介手数料、修繕積立金、水道加入負担金、借換時に発生する諸費用>
 じぶん銀行 諸費用は、主に印紙税(売買契約書などに貼付)、登記にかかる登録免許税、司法書士、土地家屋調査士の手数料、住宅ローンお借入れの際に発生する事務手数料、火災保険料、地震保険料、不動産仲介手数料、引越費用など
 新生銀行  ―
 住信SBIネット銀行 手数料や諸費用<収入印紙代、登記費用、火災保険料>
 ソニー銀行 取り扱い手数料
 楽天銀行 (新規借入の諸費用)
登記費用、融資事務手数料、火災保険料、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代、不動産仲介手数料。修繕積立一時金、水道負担金、引越費用等の住宅取得に関する諸費用
(借り換えの諸費用)
登記費用、融資事務手数料、現在の借入先の繰上返済手数料・経過利息、新たに加入する火災保険料、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代等の借り換えに関する諸費用
 アルヒ(フリーダム) 借り換えにかかる諸費用
 カブドットコム証券 借り替えに伴う諸費用
 ※2018年4月調べ、各銀行の主力商品の商品説明書を元に作成。諸費用に関する記載がない場合を「―」と記載しており、銀行によっては諸費用を貸してくれるケースもあるので、詳細は各銀行に問い合わせよう。

 上表のように、ネット銀行は諸費用を一緒に貸してくれるケースが多い。

 諸費用の中身はどうなっているのだろうか。通常、諸費用を貸してくれる銀行であれば、住宅ローン借入時の手数料、保証料、登記費用、印紙税は含まれている。こうした諸費用は新規借り入れでも借り換えでも発生するので、借り手としてはありがたい。

 中にはそれ以外の諸費用を貸してれる銀行もある。イオン銀行は、手数料、登記費用、印紙代だけでなく、不動産仲介手数料、修繕積立金、水道加入負担金といった、不動産売買に関わる手数料も含めている。じぶん銀行の場合は、土地家屋調査士の手数料引越費用まで借りられるのが特徴だ。

楽天銀行は、建売住宅などを購入した際に自治体に対して支払わなければならない「水道負担金」まで貸してくれる。通常は数万円だが、直径が太い水道管を引いた場合は、数十万円かかることもある。

 じぶん銀行の住宅ローンの概要
 金利 ⇒「じぶん銀行」詳細ページを見る
無料団信の保障範囲  死亡・高度障害+がん50%保障団信+全疾病保障(180日以上入院)
オプション(保険料)  ・がん100%保障(金利+0.2%)
 ・11疾病保障(金利+0.3%)
事務手数料(税込)  借入額×2.16%
保証料(税込)  0円
【ポイント】 じぶん銀行は、三菱UFJ銀行と携帯電話「au」を運営するKDDIが共同出資したネット銀行。申込みから契約まですべてネットで行える。変動金利が業界最低水準であることに加え、「全疾病保障(180日以上入院)」「がん50%保障団信」が無料で付いていること、「返済口座への資金移動」に手数料がかからないことなどが大きな特徴だ。
じぶん銀行の公式サイトはこちら

(関連記事はこちら!⇒[じぶん銀行の住宅ローンの金利・手数料は?]

大手銀行は、諸費用をあまり認めていない

 では、大手銀行は、どんな諸費用を認めてくれるのだろうか。まとめたのが下表だ。

 主な大手銀行の「諸費用」の内容
銀行名 借り入れ可能な諸費用
 みずほ銀行 火災保険料、保証会社手数料・保証料、仲介手数料、担保関連費用、印紙税、引越費用、修繕積立金、リフォーム費用、付帯工事費用、管理準備金、水道加入金
 三井住友銀行  
 三菱UFJ銀行  借り替えに伴う諸費用<建築会社、不動産会社との提携ローンを除く>
 りそな銀行  
 三井住友信託銀行  諸費用<詳しくは窓口に問い合わせ>
 フラット35(アルヒ) 印紙代、仲介手数料、既存住宅売買瑕疵担保保険付保にかかる費用(中古住宅購入のみ)、ホームインスペクション(住宅診断)費用、登録免許税、司法書士報酬または土地家屋調査士報酬、融資手数料、火災保険料及び地震保険料
 ※ 2018年4月調べ、各銀行の主力商品の商品説明書を元に作成。諸費用に関する記載がない場合を「」と記載しており、銀行によっては諸費用を貸してくれるケースもあるので、詳細は各銀行に問い合わせよう。

 上表のように、ネット銀行と比べて、大手銀行・信託銀行は諸費用を含めていない銀行が多い。

 また、借り換えの際だけ、諸費用を認めている銀行もある。通常、借り換えはより低い金利に乗り換えるので、総支払額は下がるというメリットがある。ただし、借り換える銀行に支払う諸費用は100万円以上かかることもあり、トータルでは得をするとはいえ、一時的な出費を嫌がって借り換えをしない人がいる。そこで、新規借り入れはダメだが、借り換えのための諸費用については住宅ローンに含めるという対応をとる銀行が多い。三菱UFJ銀行カブドットコム証券などが、こうした対応を取っている。

 ちなみに、諸費用のためのローンを用意している銀行もある。ただし、三菱UFJ銀行の諸費用ローン(新規借り入れの人向け)の金利は、4.475%(変動金利、2016年12月現在)と住宅ローン金利に比べるとかなり高め。諸費用が高額になりそうであれば、金利が安い住宅ローンと一緒に借りられる銀行を選ぶのが得策だろう。

 さらに、フラット35は2018年4月以降、仲介手数料や融資手数料、司法書士報酬まで借りられるようになった。これにより、もともと緩いと言われていたフラット35の審査が、さらに甘くなったと言える。詳しくは、「フラット35が手数料も融資可能になったので、必要な自己資金がいくら減少したかを試算!」を確認しよう。

 なお、上表には記載していないが、リフォーム資金を住宅ローンと一緒に借りられるという銀行も多いので、気になる人はそちらもチェックしておこう。

【関連記事はこちら!】
>> 住宅ローン実質金利ランキング(リフォーム一括)新規借入
>> 住宅ローン実質金利ランキング(リフォーム一括)借り換え

フラット35は頭金が1割以上ないと、
金利が0.44%も上昇するので、なるべく用意したい

 次に、頭金について各銀行の対応を比較してみよう。

 かつては「頭金は物件価格の約2割を用意すべき」と言われていた。住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)などの銀行・金融機関が、物件価格の約8割までしか住宅ローンを貸さなかったことも大きい。ただし、住宅金融支援機構は2014年、頭金なしでも借りられるように条件を変更したほか、銀行同士の競争が激化したことなどにより、今では借り換えを中心に「頭金なし」が珍しくなくなった。

 「頭金なし」だけでなく、「オーバーローンも当たり前」という時代になっているが、では果たして頭金は必要ないのか。結論から言えば、余裕があれば頭金はあったほうがいいだろう。頭金を用意すれば、借入れ額を抑えて月々の住宅ローン返済額を軽くでき、家計に余裕ができるメリットがある。

 さらに、頭金があれば、低い金利が適用されることがある。全期間固定金利の「フラット35」の場合、頭金が1割未満(融資率9割超)と1割以上(融資率9割以下)では、金利が違う。下表は2018年4月現在の金利表だが、頭金が1割未満になっただけで、金利が0.44%もアップする(返済期間21年以上35年以下の最多金利で比較)。この金利で、借入額3000万円、35年返済で借りた場合、頭金1割なら総支払額は3766万円となり、頭金なしの場合に比べて273万円もお得になる。頭金の効能は大きい。

 フラット35は、頭金を1割以上用意したほうがお得!
頭金 最多金利 総支払額
頭金1割以上
(融資率9割以下)
1.35% 3766万円 (頭金300万円が必要)
(273万円も少ない!)
頭金1割未満
(融資率9割超)
1.79% 4039万円 (頭金0円)
2018年4月、借入額3000万円、35年返済で計算

 フラット35は「頭金1割以上」「頭金1割未満」で金利差を設けているので総支払額に大きな差が出た。ただし、金利が一緒であったとしても、「頭金あり」の方が、「頭金なし」に比べて借入額の減少で金利負担が少なくなるので、やはり総支払額は少なくなる。頭金があったほうが、お得なのは確かだ。

 また、転勤などを命じられてせっかく購入した自宅を売却しなければならない可能性があるなら、頭金を払っておいたほうがいい。自宅を売却する時に、物件価格が大きく下落していると、売却した資金だけで残りの住宅ローンを支払うことができず、貯金を取り崩したり、売却そのものがキャンセルになってしまったりする可能性がある。一定の頭金を積むことに合理性はある。

貯金を全額はたいて頭金を作るのはダメ
1、2年分の生活費を手元に残しておくべき

 だからといって、貯金のほぼ全額を頭金に回すのはよくない。そうアドバイスするのは『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』(日経BP)の著者でファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみ氏だ。各家庭の状況にもよるが、頭金を用意できるにしても貯金の一部は現金のまま手元に置くことがポイントになる。その理由を端的に語ってくれた。

 「マイホームを購入するときは産休、育休、時短勤務など、収支が大きくブレる時期と重なりやすいので、頭金を無理に用意しようとせず、1、2年分の生活費を手元に残しておくことで、ライフプランの変化にも柔軟に対応できると思います」と中嶋氏。

 たとえば、将来子どもの進学先が私立校であれば、その期間は家計の負担が大きくなるだろう。不確定な時代だからこそ、年収の増減だけでなく、突然の会社の倒産なども考慮して、手元にまとまった貯金があると安心だ。

 仮に年間500万円程度の生活費がかかる人が、貯金を1000万円持っていれば、全額頭金に回すのではなく、半分の500万円を頭金にして残りの500万円は手元に置く。頭金を払った後も、1年以上の生活費を常にキープしておくことが、ライフプランを支える上での大きな安心となるだろう。

頭金があるのはいいことだが、それで貯金が底をついてしまっては元も子もない。自分のライフプランをよく考えたうえで、適切な頭金を用意するか、時にはあえて頭金を用意せずにフルローンで借りるという柔軟な対応をすることが、重要ではないだろうか。

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