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不動産屋から営業時間外の深夜にメールの返信があったのですが「残業ばかり」なのでしょうか?

【第37回】2019年12月18日公開(2022年5月16日更新)
梶本幸治:株式会社レコ 取締役・コンサルティング本部長

不動産屋さんの「労働時間」は長い? それとも短い? 今回は「一般的に"残業が多い"イメージのある不動産業界の労働時間」について、不動産会社向けの集客&教育コンサルも行う株式会社レコの私・梶本幸治が、その実態をお話しいたします。

「不動産業界=残業が多い」は
かつては本当だった

 今回は、「不動産屋から営業時間外の深夜にメールの返信があったが、残業だらけなのですか?」という、不動産業界外の方からいただいたご質問に対してお答えしたいと思います。

 不動産業界というと、ややお給料は高いものの、「休みは少なく、勤務時間も長いというイメージ」があるようです。実際、少し前までの不動産業界では「休みは水曜日のみで、始業は朝8時頃から。そして終業は……エンドレス」なんて会社が珍しくありませんでした。
【関連記事はこちら】>>不動産屋さんってどのくらいのお給料を貰っているの? 不動産業界に就職する人ってどんな人が多いの?

 なぜ以前はそんな長時間労働になってしまっていたかについて、まず少しご説明いたします。

不動産屋さんの労働時間・残業時間は長いのか?

 営業成績が好調なときは、お客様のご案内や契約書類の作成、物件引き渡しの段取り等で忙殺され、どうしても帰宅が遅くなります。

 効率良く業務を行う努力はするのですが、なかなか早く帰ることはままなりません。

 まぁ、営業成績好調で忙しい分には、まだがんばり甲斐もあるのですが、問題なのはその逆の場合です。

 営業成績が不振で全然契約が取れていないときなどは、上司から次のような台詞が飛んできたものです。

◆「〇〇君、契約していないのにお給料がもらえるって素敵だね。羨ましいよ」

 

◆「がんばってくれとは言っていないんだよ。ただ成績を上げてくれたらそれで文句は無いんだから」

 

◆「逆にそこまで成約できないって、ある意味才能あるね」

◆「〇〇君、権利と義務って知ってる? ひょっとして義務って言葉は知らないんじゃない?」

 こんなことを言われると、もう定時に上がることはできなくなります。

 でも、夜遅くまで働いたからと言って営業成績が良くなるわけでもなく、ひたすら上司へのアピールのためだけに遅くまで勤務先に残ることとなり、精神的にも肉体的にもボロボロになってしまいます。

 このように、営業成績が好調でも低調でも、どちらの場合でも早く帰れない状態が続くと、遅くまで残ることが常態化し、それに何の疑問も感じない状況に陥ってしまっていたのです。

 そして、遅くまで会社に残ることが常態化すると営業マンはどうするかと言いますと、昼間に手を抜くことになります。

 昼は公園横に営業車を停めてお昼寝したり、ネットカフェで漫画を読んだりゲームをしたりして過ごし、夜は22時や23時までだらだら働くという、全くもって不健全な働き方をしていたのでした。

では、今の不動産業界では
労働時間はどうなっているのか

 しかし現在は、大手の不動産会社では、上記のような状態はほとんど見られなくなりました。

 営業店舗は「店を閉めた時間」をセキュリティシステムのセット時間で管理され、決められた時間以降まで営業店舗に残っていると本部から注意されますし、残業を申請してもなかなか許可が下りない場合もございます。

 以前、深夜まで店舗の明かりを煌々と付け、遅くまで仕事をすることが偉いように勘違いしていた頃からすると驚くべき改善ですが、劣悪な労働環境を叩かれすぎた影響からか、若干「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」(以前の失敗にこりて、必要以上に用心すること)の感が無きにしもあらずでして、ここまで残業を厳しく規制されたら仕事もなかなかしにくいだろうなと思ってしまいます。

 まぁ、働き方改革は世の流れですから、これくらい厳しく規制した方が良いのかも知れませんね。

深夜にメールをくれた不動産会社はすべて
地域密着型の"モーレツ"不動産会社なのか

 このように大手不動産会社では、徐々に残業を減らす働き方改革が進んでいますが、地域密着の中小・少数精鋭型の不動産会社はどうなっているのでしょう。

 地域密着の中小・少数精鋭型の不動産会社では、ズバリ「社長の考え方次第」です。

 この令和の時代に、なんと前時代的なんだと驚くほどのモーレツ(死語)な会社もあれば、定時に全員ピタッと帰宅する会社もあります。

 しかし、まだまだ「営業成績が上がっていない社員が、定時に帰宅すること」に関し、嫌悪感と言いますが、抵抗感と言いますか、あまり良い印象を持っていない不動産会社社長は多いように思います。

 この点も、不動産業界の今後の課題です。

 しかし、もしも読者のみなさんのところに「不動産屋から、営業時間外の深夜にメールの返信があった」としても、その不動産屋がすべて「地域密着型のモーレツ不動産会社」なのかといいますと、そうとも言い切れません。

 今、不動産の物件ポータルサイト(購入用サイト)でも、不動産一括査定サイト(売却用サイト)でも、問い合わせ直後にお客様へ電話やメールで連絡するなど、超スピーディなレスポンスを心がけないと、お客様と連絡が取れない状態になっています。

 そのため、大手不動産会社も含めて多くの不動産会社で、ポータルサイトからの問い合わせを各営業担当者のスマートフォンへ転送し、1分1秒でも早く対応できるように体制を整えています。

 つまり「不動産屋から、営業時間外の深夜にメールの返信があった」としても、それは不動産会社の店舗から送られているとは限らないのです。帰宅後、スマートフォンから連絡しているのかも知れません。

 この方法では結局、自宅にいるときまで仕事に追いまくられているので「残業が減った」ことにも「働き方改革」にもなりません。また、ポータルサイトからの問い合わせを、各営業担当者のスマートフォンへ転送することによる「個人情報の管理」にも一抹の不安が残ります。

 このような課題を抱えながらも、同業他社との競争に勝ち抜くため、仕方なく上記のような対応を取らざるを得ない会社が多いことは事実です。

 ひと昔前に比べれば、劇的に労働環境が改善されてきた不動産業界ですが、まだまだ「本当の働き方改革」までは道半ばといった状態であり、今後も業界全体で不断の努力が必要だと私は感じています。

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