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不動産屋に就職したけど、定年まで働ける?
40歳以降のおすすめ「キャリアプラン」とは?

【第40回】2020年2月7日公開(2020年6月26日更新)
梶本幸治:株式会社レコ 取締役・コンサルティング本部長

「不動産営業は定年まで働ける仕事なのでしょうか? 街の不動産屋の社員は若い人が多い気がしますが……」という声はよく聞きます。就職を前に、不安を感じる方もいることでしょう。不動産会社向けの集客&教育コンサルも行う株式会社レコの私・梶本幸治がその実態について述べたいと思います。

実は、70歳になっても続ける人が多い

 人生100年時代を迎えるにあたり、今後私たちは今まで以上に長く働くことができる(長く働かされる……?)ようになるみたいですね。

 厚生労働省HP「人生100年時代構想会議」のページには「ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています」と記載されています。

 なんと107歳ですよ!?

 ここまでくると、楽しみというよりも恐ろしい感じすらいたします。

 そもそも不動産業界とは、長く働くことができる業界なのでしょうか?

 不動産業界は離職率が高いと言われる反面、「一度、不動産業界の楽しさ(楽チンさ?)を知ったら足を洗うことは難しく、一生、不動産業に従事してしまう」などと言われることもございます。

 では、実際に何歳ぐらいまでの方が現役で働いているのでしょうか?

 その点を知るために、まずは「年齢別宅地建物取引士証交付者数」および「年齢別取引士就業者数」を見てみましょう。(出典:不動産適正取引推進機構「宅建業者と宅地建物取引士の統計概要」※平成31年3月31日時点)

【年齢別宅地建物取引士証交付者数】

◆~29歳:29,352人
◆30~39歳:82,847人
◆40~49歳:129,908人
◆50~59歳:120,122人
◆60~69歳:87,290人
◆70歳~:65,214人
(合計:514,733人)

 

【年齢別宅地建物取引士証就業者数】
◆~29歳:21,524人
◆30~39歳:59,669人
◆40~49歳:85,253人
◆50~59歳:72,768人
◆60~69歳:44,594人
◆70歳~:33,709人
(合計:317,517人)

 これらから、算出した「就業率」は以下の通りです。

【就業率(宅地建物取引士就業者数/宅地建物取引士証交付者数)】​

◆~29歳:73.3%
◆30~39歳:72.0%
◆40~49歳:65.6%
◆50~59歳:60.6%
◆60~69歳:51.1%
◆70歳~:51.7%
(合計:61.7%)

不動産屋は定年まで働ける?

 この統計によると、一般的に定年を迎える年齢である60代で51.1%の就業率、70代で51.7%の就業率であり、50代の就業率60.6%と比較しても、仕事を辞めた方(宅地建物取引士証の交付のみを受け、就業していない方)が、さほど減っていないことが見て取れます。

 この数字だけを見ていると「不動産屋に就職したけど定年まで働ける?」という問いに対しては、

 「大丈夫ですよ! 定年までと言わず70歳を超えても働けそうですよ。元気なら107歳まで働けるかもしれませんね~! がんばってください」

とお答えできそうです。

では、80歳になっても可能な仕事なのか

 しかし、80歳くらいの不動産営業担当者っていうのも、なかなか想像しにくいですよね。

 不動産・住宅営業と言えば、車を使った物件案内も大切な仕事ですが、80歳といえばそろそろ運転免許の返納を考える時期でもあり、車でガンガン案内することは少し危ないですよね。

 いや、かなり危ないです。

 普通、不動産の仕事といえば、チラシやポータルサイトに物件情報を掲載し、その物件にお問い合わせくださった方を案内し、契約や引き渡しの段取りを行うイメージだと思います。

 そして、不動産業界に入ったばかりの新人さんの多くが、最初はこのような業務に従事する事になります。

 このように買主様(購入希望者様)をメインにお相手する営業を、不動産仲介業では「買付営業」などと呼ぶのですが、先程も触れました通り、80歳になって買付営業を行う事は物理的に難しくなります。

 ……というよりも、そもそも買付営業をメインにした営業活動というものは、80歳にならずとも40歳くらいを境にして、ドンドン難しくなっていきます。

 20代、30代のときは買付営業でトップの成績を上げていた営業マンが、四十路を超えたあたりから徐々に営業成績が落ち込んでくる、なんてことは珍しいケースではありません。

買付営業の「40歳の壁」は、なぜ起きるのか

 四十路を超えたころから買付営業が難しくなるのかについては、さまざまな理由があるかと思いますが、私は下記のような理由だと考えています。

●20代・30代のころは「マイホームを購入されるお客様」と同年代であったため、感覚が似ており、その点がお客様に受け入れられた。

 

●20代、30代のお客様から見れば40代以上の営業担当者はオジサン・オバサンであり、その営業担当から受けるアドバイスは「説教臭く」聞こえてしまう。

 

●買付営業は色々な意味でパワーとスピードを要する仕事であるが、40歳を過ぎてくると体力の面からも20代・30代のころのようには仕事をこなせなくなる。

 では、さきほどの統計にいた「50歳以上の不動産プレイヤー」は、どのような仕事をしているのでしょうか?

 不動産の売買だけではなく、賃貸管理とそれに伴う賃貸仲介で生計を立てている方も多いとは思いますが、売買に関して申し上げると「売り」から入るスタイルで仕事をしている方が多いと思います。

 「不動産を買いたい方」ではなく「不動産を売りたい方」のお世話をする事により、業績を組み立てるのです。

 買付営業はパワーとスピード、そして若い感性が物を言いますが、売却(売主様)のお手伝いは知識と経験で勝負ができます。

 また、この「不動産を売りたい方」の集客に関しても、チラシやインターネットを駆使するのでは無く、人脈や紹介でお客様を集めます。銀行・弁護士・税理士・司法書士・地方議員・既契約客・地元の名士・飲み友達などなど……さまざまな人脈を駆使して案件を集めるのです。

 たまに街で見かける「朝からずっと事務所に座って、新聞ばかり読んでいる不動産屋さん」は、このような方法で商売をしているケースが多いと思いますよ。

 ですから、不動産業界に就職した方はまず、購入希望者様を相手にした買付営業で腕を磨き、名を上げ、その後は徐々に売却のお手伝い(「仕入れ営業」と言います)にシフトしていき、107歳まで働ける環境をご自身で作り上げてみてください。
【関連記事はこちら】>>不動産屋さんってどのくらいのお給料を貰っているの? 不動産業界に就職する人ってどんな人が多いの?

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