※民間金融機関は、金融機関によって借入可能額の計算方法は違うのであくまで目安としてください。配偶者等の収入合算は、フラット35なら全額合算可能、民間金融機関は「半額」としていることが多いです。
借入可能額の計算方法は?
住宅ローンの借入可能額はどうやって試算するのでしょうか。実際に計算するには、以下の3つの数値が必要です。
- ・毎月返済額
- ・審査金利
- ・借入期間
毎月返済額は、年収と返済負担率から計算
毎月返済額が多いほど、借入可能額は増えます。
そこで、「思い切って、年収の半分を住宅ローンの返済に当てよう」と考える人がいるかもしれませんが、あまりにも住宅ローンの負担が多いと返済に困ってしまい、住宅ローン破綻する可能性が高まります。そこで、銀行では、「返済負担率(返済比率)の上限」を設定しています。
「年収」に、この「返済負担率」をかけたものが、「年間の返済額」となります。「毎月返済額」は、「年間の返済額」を12で割って求めます。
「年収」×「返済負担率の上限」÷12カ月=「毎月返済額の上限」
「返済負担率」が高いほど返済が苦しくなるので、各銀行は上限を設けています。
民間の銀行の場合、「返済負担率の上限」は、40%程度に設定している銀行が大半です。ダイヤモンド不動産研究所のシミュレーションの場合、大手銀行が採用している以下の基準で計算しています。
- 年収400万円未満 返済負担率35%以下
- 年収700万円未満 返済負担率40%以下
- 年収700万円以上 返済負担率45%以下
独立行政法人・住宅金融支援機構が提供している住宅ローン「フラット35」は、「返済負担率」を公表しています。以下の基準となります。
銀行 | (公表)フラット35 | |
審査上の 返済負担率 |
40%程度(銀行によって違う) | 30%以下(年収400万円未満) 35%未満(年収400万円以上) |
(参考)住宅保証機構のシミュレーションは古い情報のまま…
国交省指定法人でもある住宅保証機構は、ネット上で住宅ローンシミュレーションを提供している先駆者です。しかし、情報が更新されず、古いままで放置されています。
借入可能額シミュレーションの試算結果ページには、下記のようにフラット35の返済負担率が記載されていますが、これは現在は使われている制度とは違います。平成19年(2007年)10月に、上記のように簡素化(年収400万円未満、400万円以上の2通り)されています。10年以上、情報の更新をしていないようです。※参考 住宅金融支援機構「10月よりフラット35のご利用条件を簡素化します」
このように、ネット上には現在は適用されない古い情報が掲載されいていることもあるので注意しましょう。

審査金利
金利が低いほど、借入可能額は高まります。低金利の現在は、従来よりも借入可能額が上昇しているのです。
なお、借入可能額を計算する場合は、「審査金利」を使います。実際に貸し出す金利とは別に、住宅ローンの審査用に設定された金利です。銀行のホームページやパンフレットには記載されていません。民間銀行の審査金利の相場は3~4%です。
一方で、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」の場合は、「実際に融資する金利」=「審査金利」で審査しているので、借入可能額を正確に試算することが可能です。
民間の銀行 | (公表)フラット35 | |
審査金利 | 3~4% |
融資する金利 |
借入期間
借入期間が長いほど、借入可能額は高くなります。そのため多くの人は、なるべく長期間に渡って借りようとします。民間銀行の住宅ローンは35年を最長としている銀行が多く、借り手も借入期間を35年に設定する人が大半です。
しかし、老後に住宅ローンを安定して返済し続けることは困難です。そのため、住宅ローンは「80歳までに返済完了」などと年齢制限がもうけられています。もし借入期間を35年間、フルに設定できるのなら、年齢は45歳までに借り入れをする必要があります。
一方で、「安定した収入がある定年の年齢(65歳など)までに完済したい」という人も多くいます。
自分の働き方や家族の状況に応じて、借入期間を決めましょう。
実際に試算してみよう
以上の「毎月返済額」「審査金利」「借入期間」から、借入可能額が求められます。フラット35なら審査金利も公表されているので自分で計算できますが、非常に大変なので、下記のシミュレーションなどを活用してください。
(参考)借入可能額の計算方法
①、年収と返済負担率から、毎月返済額の上限を求める。
②、「返済額早見表」(下記)を使って、金利、返済期間から、借入金額100万円あたりの毎月返済額を求める(関数電卓、エクセル等を使う方法もある)。
③、①÷②×100万円で、借入可能額を求める。
返済額早見表(元利均等返済、毎月払い、100万円あたり毎月返済額)
借入期間 | 審査金利 1.5% |
~ | 審査金利 3.0% |
審査金利 3.5% |
審査金利 4.0% |
---|---|---|---|---|---|
15年 | 6207円 | ~ | 6905円 | 7148円 | 7396円 |
20年 | 4825円 | ~ | 5545円 | 5799円 | 6059円 |
25年 | 3999円 | ~ | 4742円 | 5006円 | 5278円 |
30年 | 3451円 | ~ | 4216円 | 4490円 | 4774円 |
35年 | 3061円 | ~ | 3848円 | 4132円 |
4427円 |
なお、繰り返しになりますが、銀行によって審査基準が異なるため、借入可能額も異なります。確実に借りたいのであれば、最初から複数の銀行に仮申込するのが鉄則です。
また、「転職したばかり」『年収が少ない」などの不安要素があるのなら、「フラット35」の審査は緩めなので、借入可能額が高めに出やすくなっています。
ダイヤモンド不動産研究所の「借入可能額シミュレーション」は、年収、借入期間さえ入力すれば簡単に計算できるので、ぜひ試算してみましょう。
(参考)借入可能額の計算式
借入可能額を計算する際には、先程の「返済額早見表(100万円あたり毎月返済額)」が必要となりますが、エクセルや関数電卓を使って自分で計算式を立てて試算することも可能です。
エクセルの場合は、「PV関数」を使います。PV関数は「投資の現在価値を計算」するものですが、毎月返済額から借入可能額を計算するのにも使えます。
具体的には、まず以下の3項目を用意します。
①月利(年利÷12カ月で計算)
②借入期間(例:20年×12カ月=240カ月)
③毎月返済額(年収×融資比率÷12カ月)
以上の3項目について、PVの式に入れ込みます。
=PV(月利,借入期間,毎月返済額)
以上で、借入可能額が求められます。
以下のリンクから、試作したエクセルファイル「借入可能額シミュレーション」をダウンロードできるので、参考にしてみてください。
エクセルファイル「借入可能額シミュレーション」をダウンロードする

年収倍率は最大7~10倍程度
年収に対して、何倍くらいまで住宅ローンは借入可能なのでしょうか。低金利下でかつてないほど借入可能額は増加しています。借入期間35年で試算してみると、以下のように、7~10倍程度が上限となります。
借入可能額は年収の何倍?(2021年12月金利で、当サイトシミュレーションを使い試算。借入期間35年)
年収 | 民間の銀行 | フラット35 |
---|---|---|
350万円 |
2470万円 (年収の7.1倍) |
2937万円 (年収の8.4倍) |
600万円 |
4839万円 (年収の8.1倍) |
5874万円 (年収の9.8倍) |
800万円 |
7259万円 (年収の9.1倍) |
7832万円 (年収の9.8倍) |
新築マンションは東京で10倍越え
実際の物件価格も参考に見ておきましょう。
2020年の新築マンションの年収倍率は全国平均で8.41倍です。年収が低い世帯は、一定の頭金などがないと購入できません。東京都に限ると、年収の13.4倍となり、資産がない限り購入は難しくなっています。
一方で、中古マンションの年収倍率は全国平均で5.92倍となっており、サラリーマンでも購入可能といえそうです。ただし東京都は11.5倍で、頭金を用意しなければ購入は難しそうです。※東京カンテイ「新築マンション年収倍率」「中古マンション年収倍率」
借りすぎないように注意を
なお住宅ローンの「借りられる金額」=「返済できる金額」ではないことに注意しておきましょう。現在は低金利であるため、借入可能額は非常に高くなりがちですが、それが返済できるとは限らないのです。
住宅ローンは返済し終えるまで最大35年かかります。ギリギリの返済計画であったり、金利が上昇したりすれば、返済が滞る可能性もあります。
本当に安心できる毎月返済額は、現在の毎月あたりの出費等から計算できます。
「現在の家賃(管理費、更新料など含む)」
+「貯蓄額」
-「将来に向けた教育費や老後資金の積み立て分」
-「趣味や旅行などレジャー費」
ー「固定資産税、マンションなら管理費」
「現在の家賃並みの返済額なら大丈夫だろう」と考えてはいけません。その他の費用や子どもが大きくなれば教育費も増えていきます。身の丈以上に借りすぎないように、注意しましょう。