東京の10年後を変えるビッグプロジェクト、「東京駅前 常盤橋プロジェクト」。このプロジェクトで誕生する新たな街「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」のメインタワーが、「Torch Tower」だ。竣工時にはビルとして日本一の高さになる予定で、日本一家賃の高い高級賃貸住宅、スーパーラグジュアリーホテルが入り、東京駅の新たなランドマークとなる。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
「TOKYO TORCH」は、10年がかりの一大プロジェクト!
「東京駅前 常盤橋プロジェクト」は東京駅の北側、日本橋口に隣接するエリアで、三菱地所が開発を進めているプロジェクトである。事業名称は「大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業」で、東京都千代田区大手町2丁目、東京都中央区八重洲1丁目にまたがる約3.1万㎡の敷地が対象。
地上38階建ての「常盤橋タワー」、63階建ての「Torch Tower」、「変電所棟」「下水道局棟」の4棟が建設され、中央には約7000㎡の大規模広場が設けられ、東京の玄関口にふさわしい新たな街づくりが行われている。
この再開発によって誕生するエリアは「TOKYO TORCH」と命名された。「常盤橋タワー」「下水道局棟」と「変電所棟」のⅠ期はすでに竣工し、「Torch Tower」と「変電所棟」のⅡ期が2027年度の竣工予定。2016年度に東京圏の「国家戦略特別区域計画」の特定事業として都市計画が決定されて始動しているから、まさに10年がかりの大規模プロジェクトだ。
江戸時代から東京の経済を支えてきた常盤橋
常盤橋エリアは、江戸時代から江戸のまちの中核を担ってきた。江戸城外郭の正門に当たる常盤橋門があり、奥州街道につながる江戸五口のひとつとされてきた。交通の要衝として重要な役割を果たし、橋詰に北町奉行所が設けられたこともある。日本の交通の中心である日本橋に隣接し、常に社会の要請にこたえる街として機能してきた。
明治になってからも隣接地に日本銀行が建設され、日本橋には百貨店などが進出、東京駅と日本橋エリアをつなぐ重要な役割を果たしてきた。
1962年には、当時、東洋一といわれた日本ビルが竣工、地下には東京都下水道局のポンプ場が設けられ、東洋一のビルには野村総合研究所、パソナなどの有名企業が入居していた。江戸時代から現代に至るまで、日本の経済成長を支える街として発展してきたといっていいだろう。それが、いま「TOKYO TORCH」として新たな街に生まれ変わりつつあるわけだ。
「TOKYO TORCH」には、高さ390mの日本一のビル「Torch Tower」が誕生!
「TOKYO TORCH」は2027年度に「Torch Tower」が完成して、全体竣工になる。メインタワーである「Torch Tower」には3つの「日本一」が誕生する。
まず、「Torch Tower」は、地上63階、高さ約390mであり、竣工時には日本一高いビルになる。2022年現在、日本一高いビルは「あべのハルカス」の約300mだが、2023年に約330mの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」が取って代わる。しかし、その日本一の期間は4年間だけで、2027年には「Torch Tower」が日本一になる。
二つ目の日本一は、日本一のラグジュアリーホテルが進出する点。「Torch Tower」の最上階には展望室が設けられ、その下、57階から61階にはホテルが設置される。まだ、どのホテルになるのか具体的な名称は公表されていないものの、開発に当たっている三菱地所では「スーパーラグジュアリーホテル」としており、世界でも超一流のおもてなしが期待できるホテルになる。それも日本一といっていいのではないだろうか。
「Torch Tower」の上層階には、最高級賃貸レジデンスも!
三つ目の日本一は、ホテルの下に設けられる賃貸レジデンス。住戸数は50戸程度になる見込みで、高さ300mほどからの東京都心の圧倒的な眺望を満喫できる。しかも、上層階のスーパーラグジュアリーホテルとの連携によって、ホテルライクというよりは、ホテルそのもののサービスを享受できるようになる。
東京駅の駅近立地で、かつ最上級のサービスが期待できる上、広さは70㎡台から400㎡台のゆとりある住まいになる。そのうち、最も専有面積が広いタイプの家賃は日本一になるのではないかといわれている。
現在のわが国で最も家賃が高い賃貸住宅は、森ビルが開発した六本木ヒルズ「六本木レジデンス」、住友不動産の「ラ・トゥール代官山」の500万円ほどといわれている。
そのうち「ラ・トゥール代官山」は2010年の竣工時には、専有面積531㎡の部屋が家賃531万円といわれた。何しろ玄関だけで20畳もの広さがあり、リビングは57.5畳、主寝室は26.3畳などと桁違いの広さで、キッチンが2つあって、ひとつは外部からシェフを呼べるようにシェフ控室まで設けられているそうだ。
高級レジデンスの家賃は500万円以上か?
「Torch Tower」の賃貸レジデンスも、こうした高級賃貸住宅にひけをとらない。いやそれ以上の条件がそろっている。何しろ、東京駅の駅近立地という抜群の交通アクセスで、広さ400㎡台、高さ300mの眺望、スーパーラグジュアリーホテルのサービスなどがそろっている。
東京駅の駅近といえば、生活利便施設などがあまりないのではないかと懸念されるが、東京駅には百貨店や駅ナカ施設が充実しており、すぐ近くの日本橋にも百貨店などが集積している。
さらに、「Torch Tower」の低層階には新たに商業施設や飲食施設なども設けられる。こうした点を考慮すると、家賃が500万円以上になるのは間違いないところで、賃貸住宅事情に詳しい専門家によると、「ラ・トゥール代官山」を抜いて家賃日本一になるのは間違いないだろう」としている。
「Torch Tower」の低層階には、2000席規模の大ホールも
このほか、「Torch Tower」には、これまでのビルにはないさまざまな仕掛けが用意されている。
屋上には、屋外空間併設の展望施設が整備され、57階のホテルロビーには、外気を取り入れるデザインを採用。300m超の高さでありながら、緑と風を実感できる空間として、スーパーラグジュアリーホテルならではの特別感が演出される。
ホテルの下には賃貸レジデンスがあり、その下の中層階はオフィスだが、地下1階から6階は商業ゾーン。その目玉は現代の芝居小屋をイメージした約2000席の大規模ホールで、「常盤橋タワー」と「Torch Tower」の間に完成する約7000㎡の広場との連動により、よりダイナミックなイベント展開が可能になる。
商業ゾーンについても、東京や日本の文化を五感で味わえる飲食店街、エンターテインメント施設を中心に構成され、銭湯発祥の地といわれる常盤橋にふさわしく、温浴施設「常盤湯」が設けられる。
これまで大手町、丸の内、八重洲エリアはビジネスやショッピングが中心だったが、それにレジャーやカルチャーなどが加わり、より深みのある街づくりが推進される。
東京駅前は、10年単位の大規模再開発で大きく変貌する
「Torch Tower」によって「TOKYO TORCH」が完成する2027年度といえば、リニア新幹線の開業が予定されている年でもある。工事の遅れによって、開業は少しずれ込みそうだが、完成すれば品川駅が新たな東京の玄関口になる可能性があり、存在感が格段に高まるだけに、東京駅も負けているわけにはいかない。
丸の内がビジネス街からショッピング機能を備えた新たな街に生まれ変わったのに続いて、常盤橋エリアも10年単位の大規模再開発によって、大きく変わろうとしている。
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