不動産価格DBのトリセツ:AI予測の仕組みとデータの見方&活用法を徹底解説

2026年10月16日公開(2026年10月16日更新)
水谷昂太郎:都市空間総合研究所 代表取締役CEO

「自分が住んでいる街の不動産価格は将来どうなる?」「購入や売却を検討しているエリアの物件価格は、将来上がる?下がる?」――不動産の売買を検討している人にとって、その価格の将来予測は大きな関心事です。このニーズに応えるのが「不動産価格データベース」です。この記事では、不動産価格データベースでどのように価格を予測しているのか、その仕組みとデータの見方や活用方法、注意点までを詳しく解説します。

不動産価格予測の概要と作成方法

 ダイヤモンド不動産研究所の「不動産価格データベース」では、AIを活用して、全国の都道府県・市区町村・大字(町域)・駅の不動産価格(中古マンション・中古戸建て・土地)を2034年まで予測しています(のべ約13万地点をカバー)。2022年のサービス開始以来、多くのユーザーに利用されており、サービス自体も進化し続けています。

  • ●2022年5月:「12都府県版」としてサービス開始
  • ●2025年6月:「47都道府県版」として全国対応。各種データを更新
  • ●2026年3月:AIを活用した価格予測モデルを導入。対象地点を増やし、各種データを更新

 本サービスの要となるのが、独自に構築した「AI予測モデル」です。この予測モデルは、不動産経済学を専門とする清水千弘氏(一橋大学教授)、空間情報科学を専門とする秋山祐樹氏(東京都市大学教授)監修のもと、東京都市大学建築都市デザイン学部都市工学科の秋山研究室発ベンチャー企業である都市空間総合研究所で培われた学術的な知見と、最新の技術を用いて構築されています。

 まずは、その土台となるデータと、予測を算出する仕組みについて説明します。

信頼性の高い公的なオープンデータを中心に活用

 不動産価格データベースの不動産価格予測は、以下のオープンデータを基に構築されています。

  • ●不動産取引情報・成約価格情報: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2005年第3四半期~2024年第1四半期)
  • ●1kmメッシュ別将来推計人口データ(H30国政局推計):国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年1月推計)」の推計値
  • ●公示地価・都道府県地価調査: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2005年~2024年)
  • ●駅データ:駅データ.jp(2005年~2024年)。2024年12月時点までの駅を対象に、駅単位データや駅距離別の価格予測を実施しています。なお、近年にできた駅はサンプル数が少ないため、掲載対象外としている場合があるほか、現在廃止となった駅が掲載されている場合があります。

 これらの信頼性の高いデータを網羅的に使用することで、全国規模で精度の高い予測を実現しています。

AI(機械学習)による高度な予測モデル

 不動産価格データベースでは、AI(機械学習)の中でも特に精度が高いとされる「LightGBM」(Ke et al., 2017※1)という手法を中心に構築しています。

 この手法の根幹にあるのが「決定木」という考え方です。決定木とは、ある事象を予測するために「もしAならばB」「そうでなければC」といった条件分岐を繰り返していく、樹形図のような分析手法です。次の図のように、データに基づいて質問を自動的に作成して、物件や土地の価格を予測します。 

「決定木」分析手法のイメージ図。実際はもっと複雑な処理を行っている。

 LightGBMではこの決定木を多数組み合わせ、それぞれの予測の誤りを修正しながら学習を進めていき、最終的な価格を予測します。専門用語では「勾配ブースティング」と呼びます。これにより、非常に複雑な価格決定の要因をAIが自動で学習し、精度の高い予測モデルを構築します。

 この手法の大きな利点は、ある地域の取引データが少ない場合でも、近隣の地域や、人口構成・駅距離などの特徴が似ている地域の情報も踏まえて推計できる点です。全国180万件以上の膨大なデータをAIに学習させることで、データの偏りをなくし、安定した予測を可能にしています。

各種データ・グラフの見方

 不動産価格データベースでは、複数のグラフを用いて将来の価格推移を示しています。

ノーマル/グッド/バッドの各シナリオについて

 将来の価格推移は、3つのシナリオで表示しています。 

立川駅(東京都)の中古戸建ての価格推移グラフ
立川駅(東京都)の中古戸建ての価格推移グラフ
  • ●ノーマルシナリオ(水色の線): 過去(2005年~2024年)の価格動向や人口推計を基に、最も可能性が高いとAIが予測した将来価格の推移
  • ●グッドシナリオ(青色の線): 将来の人口や地価がノーマルシナリオに比べて約1.1倍で推移した場合の、より楽観的な価格予測
  • ●バッドシナリオ(赤色の線): 将来の人口や地価がノーマルシナリオに比べて約0.9倍で推移した場合の、より悲観的な価格予測

 まずはノーマルシナリオを基本の予測として、グッドシナリオとバッドシナリオを将来起こりうる経済や社会情勢の変動幅の目安として参考にしてください。

駅距離別価格/築年数別価格について 

 各エリアのページでは、将来予測だけでなく、「最寄駅からの距離」や「建物の築年数」によって価格がどのように変化するのかの傾向も確認できます。これにより、そのエリアの不動産市場の特性をより深く理解することができます。

立川駅(東京都)の駅距離別中古戸建て価格
立川駅(東京都)の駅距離別中古戸建て価格
立川駅(東京都)の築年数別中古戸建て価格
立川駅(東京都)の築年数別中古戸建て価格

 

よくある質問(Q&A)

 続いて、ユーザーからよく寄せられる質問にお答えします。

【Q1】住んでいる町の不動産価格が、周辺と比べて低いのはなぜですか?

【A】本サービスの価格予測は、過去の膨大な「取引事例」に基づいています。もしご自身の地域の予測価格が周辺より低い場合、それは過去にその地域で取引された物件の平均価格や人口が、周辺地域に比べて相対的に低かったことを示唆しています。個別の物件の事情(日当たりや形状など)ではなく、あくまでエリア全体の平均的な価格傾向を反映した結果と考えてください。

【Q2】駅から遠い場所ですが、不動産価格が高くなっているのはなぜですか?

【A】一般的に不動産価格は駅に近いほど高くなりますが、一部地域では必ずしもそうならない場合もあります。大きな要因の一つとして、全国的なモータリゼーションの進展が挙げられます。具体的には駅前の中心市街地が古くから開発されたのに対し、駅から離れたロードサイド沿いや、高速道路のインターチェンジ付近が比較的新しい住宅地として開発されるケースです。このような地域では、車での生活を前提とした商業施設が充実し、新しい住宅が供給されることで、駅からの距離が離れていても地価や不動産価格が上昇することがあります。本サービスのAIモデルは、こうした「駅距離だけでは測れない地域ごとの特性」も過去の取引データから学習し、予測に反映しています。

不動産価格予測の活用方法と注意点

不動産価格予測の活用方法

  • ●購入を検討している方: 気になるエリアの将来性を判断材料や価格交渉の際の参考情報として活用
  • ●売却を検討している方: 売出価格を設定する際の目安や、売却のタイミングを考えるきっかけとして活用
  • ●現在お住まいの方: ご自身の資産価値の変動を把握し、将来のライフプランを考えるための一助として活用
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利用上の注意点

  • ●算出された価格は、AIが公的データに基づいて算出した現時点での予測値であり、将来の価格を保証するものではありません。一つの目安として参考にしてください。
  • ●予測モデルは過去のデータに基づいており、例えば「巨大な半導体工場ができる」「新しい鉄道路線・駅が開業する」といった、将来発生する大規模な開発計画などの影響は織り込まれていません。もし、お住まいの地域にそのような計画がある場合は、予測に自身の知見を加えて判断材料としてください。
  • ●予測価格には、不動産情報ライブラリに掲載されていない個別の物件情報(例:角部屋、眺望、リフォーム履歴、特殊な設備など)は反映されていません。実際の取引、査定価格と乖離が生じる可能性があります。

まとめ

 ここまで、ダイヤモンド不動産研究所の「不動産価格データベース」における価格予測の仕組みから活用法までを解説しました。本サービスは、信頼性の高い公的データを中心に、大学の研究で培われたAI技術を駆使して開発した、全国規模で利用できる不動産のベンチマークとなります。

 自分が住んでいる地域や気になるエリアの将来価格を知ることで、街の新たな魅力を発見したり、不動産業者とのコミュニケーションやライフプランの作成に役立てたりできます。ぜひ、気になるエリアの不動産価格を調べてみてください。


脚注※1:Ke, Guolin,Meng, Qi,Finley, Thomas,Wang, Taifeng,Chen, Wei,Ma, Weidong,Ye, Qiwei,Liu, Tie-Yan:LightGBM: A Highly Efficient Gradient Boosting Decision Tree, . Proceedings of the 31st International Conference on Neural Information Processing Systems. Red Hook, NY, USA, Curran Associates Inc., 2017, p. 3149–3157, (NIPS’17).

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