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「家賃の減額」や「原状回復義務」など、民法改正後に
賃貸物件の大家&借主が注意すべき点を詳しく解説!民法(債権法)改正で不動産取引はどう変わる?【賃貸借契約編】

2020年4月30日公開(2020年4月27日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

アパートなどを借りる際の「賃貸借契約」は、民法改正でどう変わるのか? 変更点、注意点について詳しく見ていこう。(取材協力・監修:法律事務所アルシエン 弁護士/不動産取引アドバイザー・木村俊将氏
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借主による「原状回復義務」や「修繕権」が明確に

賃貸は民法改正でどう変わる?

 2020年4月から、民法のうち債権法とよばれる部分が大幅に改正された。改正項目は多岐にわたるが、アパートなどを借りる際の「賃貸借契約」に関しては、従来から判例などによって積み重ねられてきたルールを条文化したものが多い。

賃貸借契約とは?

 

 「当事者の一方がある物の使用および収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって効力を生じる」契約のこと(民法601条)

 そのひとつが、借主(賃借人)による原状回復義務とその範囲の明文化だ。

原状回復義務を明文化

 例えばアパートの賃貸借契約が終了し、部屋を返却する際、室内を入居時の状態に戻すことを「原状回復」という。

 従来の民法では原状回復について具体的な規定はなかった。

 そのため、実際のところ賃借期間中に生じたキズや汚れ、損耗を借主がどこまで元に戻す必要があるのかは、賃貸借契約において当事者の話し合いで決めていた。しかし、多くのトラブルが発生し、裁判によって判例が積み重ねられ、自治体によるガイドラインなども設けられてきた。

 そうした状況を踏まえて、今回の民法改正では新たに原状回復義務の規定が設けられた。

【改正民法第621条】

 

賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ)がある場合において、賃貸借契約が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 ポイントは、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」というところだ。これはすでに不動産の賃貸借契約において広く定着しており、実務にはほとんど影響はないだろう。

 ただし、アパートなど居住用建物ではなく、オフィスや店舗などの商業用建物においては、内装や設備の「原状」は物件によって大きく異なり、原状回復基準についてはより具体的に契約時に盛り込んでおく必要がある

 もうひとつは、賃借物の修繕に関する規定の明確化だ。

賃借物の修繕に関する規定の明確化

 従来の民法では、大家(賃貸人)は修繕義務を負っていた(旧民法606条第一項)。

 しかし改正民法では、修繕が必要となったことについて借主に責任がある場合、大家は修繕義務を負わないとした(改正民法606条第一項)。

 また一方で、大家が相当の期間内に修繕をしないときや、修繕の急迫の必要性があるときには、借主においても修繕することができること(修繕権)が認められた(改正民法606条第二項)。

 ただし、実際には修繕の必要性や範囲、修繕の仕方、金額などについて無用のトラブルを避けるため、予め当事者間で決めておくほうがよいだろう。

「賃料減額」の範囲・割合は事前に決めておく

賃料の減額

 今回の民法改正に盛り込まれた、建物の一部滅失・不具合にともなう賃料減額の規定(改正民法611条)も、これまでの裁判例を明文化したものだ。

【改正民法第611条】

 

1 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

 

2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。

 従来の民法では「賃料の減額を請求することができる」となっていた。それが改正民法では、一定の場合に「減額される」となった。

 「減額できる」と「減額される」では大違いだ。「減額できる」とは借主から請求してはじめて減額されるのに対し、「減額される」とは自動的に減額されるということだ。

 ただし、611条はどの程度、減額されるかまでは規定していない。また、611条は任意規定と解されているので、当事者間の特約で「減額なし」とすることも可能だ。とはいえ、あまりに一方的な特約は裁判で無効となるおそれがあるし、そもそも賃貸市場で借主が見つかるかどうかという問題もある。実際には事前にお互いに大まかなアウトラインを決めておくのが現実的だろう。

 この点、例えば公益財団法人日本賃貸住宅管理協会では、賃料減額についての特約として以下のようなガイドラインを公表しており、参考にするとよい。

賃料減額についての取り決めの一例
状況 減額割合(月額) 免責日数
トイレが使えない 30% 1日
風呂が使えない 10% 3日
水が出ない 30% 2日
エアコンが作動しない 5,000円 3日
電気が使えない 30% 2日
テレビ等が使えない 10% 3日
ガスが使えない 10% 3日
雨漏りによる利用制限 5~50%
結露・カビが発生した場合は50%
7日
出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会「クレーム・トラブル対処法増補改訂版」

保証人の責任が大きく変更

 今回の民法改正において、賃貸借契約に大きな影響を与える点がもうひとつある。保証に関する規定の見直しだ。

 従来、アパートなどの賃貸借契約では親族や保証会社が保証人(特に連帯保証人)になるという保証契約が一緒に結ばれ、保証人は賃貸借契約に基づいて発生する一切の債務を保証するのが一般的だった。家賃の滞納はもちろん、室内を汚したり、設備を壊したりした損害についても、保証人が❝青天井❞で責任を負うのである。

 このような限度額を定めない保証を「根保証」というが、今回の民法改正によって個人の根保証については、負担する上限額(極度額)を書面で定めることが必要になった。もし、極度額の定めがないと、保証契約は無効となる。

保証人が負担する上限額の設定が必要

 そのため今後、アパートなどの賃貸借契約に伴う保証契約において、個人が保証人になる場合は極度額を明記する必要がある。

 具体的にどのくらいの極度額にするかだが、アパートなどの賃貸借契約は通常、2年更新が多いので、たとえば家賃10万円だったら、家賃の24ヵ月分=「極度額:240万円」としたりするのだ。

 なお、金額を明記せず、「家賃の〇ヵ月分」とする考え方もあるが、極度額を明記したことにならないとされる恐れがあるため、明確に金額を明記したほうがよいだろう。また、家賃の滞納では最終的に、明け渡し手続きや残置物の撤去などが必要になることも多い。大家の側としては、「家賃」と限定しないためにも、金額で設定するほうがよいだろう。

 ちなみに、明け渡しの強制執行には平均9ヵ月から1年ほどかかる。その間の家賃、明け渡し手続きや残置物の撤去などの費用、さらに現状回復費用を加えた額が目安となるだろう。

 今回の改正によって、個人の根保証には金額の上限設定が必要となり保証人の保護が図られたわけだが、アパートなどの賃貸借契約では逆に限度額が明示されることで、個人の保証人には心理的な抵抗感が強まることも予想される。今後は、保証会社の利用がより広がるかもしれない。

 なお、改正前(2020年4月1日より前)に締結された賃貸借契約については、従来の民法がそのまま適用されるので、注意しておきたい。
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