瑕疵担保責任に代わる「契約不適合責任」とは?
不動産の売主&買主が注意すべき点を詳しく解説!民法(債権法)改正で不動産取引はどう変わる?【売買契約編】

2020年3月23日公開(2020年4月27日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

民法のうち債権法とよばれる部分が大幅に改正される(2020年4月より施行。改正案は2017年に成立)。改正項目は多岐にわたるが、不動産取引においては特に分譲マンションなどを購入する際の売買契約、そしてアパートなどを借りる際の賃貸借契約がどう変わるか、注目される。今回はまず「売買契約」について見ていこう。(取材協力・監修:法律事務所アルシエン 弁護士/不動産取引アドバイザー・木村俊将氏

これまで不動産の売主が負っていた
「瑕疵担保責任」とは?

瑕疵担保責任とは?

 「瑕疵(かし)」とは、売買の目的物に一般的には備わっているべき機能や品質が備わっていないことをいう。いわゆる欠陥や不具合のことだ。

 例えば、中古一戸建てを買ったところ、雨漏りがするとか、土台がシロアリの被害を受けていたというようなケースが当てはまる。

 これまでの民法では、瑕疵の中でも買主が一般的に要求される程度の通常の注意を払っても知り得ないようなものを「隠れた瑕疵」として、売主が一定の責任を負うこととしていた。これが「瑕疵担保責任」(旧民法570条)だ。

 「瑕疵担保責任」に基づき、買主は瑕疵を補修するためにかかった費用などを売主に損害賠償請求することができる。また、瑕疵が重大であり、買主が売買契約の目的を達成できない場合は、契約の解除を求めることもできる。

 契約解除となれば、目的物を返し、代金を戻してもらえる。(なお、買主が売主の「瑕疵担保責任」を追及できるのは、隠れた瑕疵を発見してから1年以内である。)

不動産の売買契約における実態は?

 以上が「瑕疵担保責任」の大まかな原則だが、実際の不動産の売買契約においては、売主と買主という当事者間の特約や特別法によって、いろいろ異なる扱いがされてきた。

・売主が個人の場合

 例えば、中古住宅や土地の売買で個人が売主の場合(買主は個人でも法人でも構わない)、一般的には「現況有姿」といって、現在のあるがままの状態での売買を前提に、当事者間の特約によって売主の「瑕疵担保責任」を売買契約から3か月とか6か月に限定したり、あるいは免責とすることもある。

 民法の「瑕疵担保責任」は任意規定(当事者の意思によって適用しないことができるような規定)と解されており、当事者間の特約は有効とされる。

・売主が不動産会社の場合

 一方、売主が不動産会社の場合は、宅地建物取引業法という法律によって売主である不動産会社の瑕疵担保責任は最低2年以上とされている。これに反する規定(例えば、瑕疵担保責任の期間を1年とするような特約)は無効とされ、原則通り隠れた瑕疵の発見から1年となる。

 また、新築住宅については、住宅品質確保促進法という法律によって、売主である不動産会社は10年間、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分については瑕疵担保責任を負うことになっている。

「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」になって何が変わる?

瑕疵担保責任が「契約不適合責任」に変わる

 さて、今回の民法(債権法)改正では、この「瑕疵担保責任」(旧民法570条)が「契約不適合責任」(民法562条)に変わった。概念的には大きな差はないが、いくつかの点で従来とは違いがあるので注意したい。 

 まず、条文上、「瑕疵」という用語に代わって「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という表現になった。

「瑕疵」という用語に代わって「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という表現に

 「契約の内容」とは契約書に記載された条項や文言だけでなく、当事者が契約するに至った経緯やその目的など、一切の事情を含む。

 これによって、「契約不適合責任」は契約上の責任(契約責任)であることが明確になった。従来の「瑕疵担保責任」については、特定物(不動産のような「一点物」のこと)の売買にのみ適用があるとする説(法定責任説)が有力であった。それが、契約責任になったことで、特定物・不特定物を問わず適用されることになり、とりわけ損害賠償の範囲については、単に瑕疵がない目的物を手に入れること(信頼利益)のみならず、契約が履行されていれば目的物の利用や転売などにより得られたであろう利益(履行利益)にまで拡大される。

 また、「契約不適合責任」に基づいて、買主が売主に請求できる手段が広がった。

「契約不適合責任」に基づいて「追完請求」「代金減額請求」が可能に

 「瑕疵担保責任」においては、損害賠償請求と契約解除(目的が達成できない場合)の2つだったが、「契約不適合責任」ではこれら2つに加え、目的物を完全な状態にする追完請求、および追完請求をしても応じてもらえない場合の代金減額請求が可能になった。合計4つの手段が使えるわけで、買主の保護が手厚くなったといっていいだろう。

 そのほかにも、「瑕疵担保責任」の瑕疵は基本的に契約の時点で存在しているもの(原始的瑕疵)に限られたが、「契約不適合責任」では目的物の引き渡しまでの間に発生した不具合なども含むことになる。

売主、買主がそれぞれ注意すべきことは?

 今回の民法(債権法)の改正によって「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わるが、任意規定であることは同じであり、個人間の売買では売主の契約不適合責任を3か月間に限定したり、いっさい負わない(免責)といった特約を当事者どうしで結ぶことは可能だ。

 しかし、免責に対する買主の抵抗感は強まると思われ、また3か月間などの短期間であってもその間に何らかの不具合等が見つかれば、買主はこれまでとは違って補修の追完請求や代金の減額請求が可能であり、買主の権利が強くなることは確かだ。

・売主の注意点

 そういう意味で、これからの不動産の売買契約では売主のほうがより注意すべきだろう。契約書においてできるだけ「契約の内容」を明確にし、後から目的物の契約不適合を指摘されるリスクを減らしておくべきだ。特に、損害賠償で履行利益まで請求可能である点からは、契約の目的を明らかにしておくことは重要だろう。

 また、中古物件では物件の状況や付帯設備についてできるだけ細かく当事者間で確認し、書面にしておくべきだ。記載漏れがあると、3か月などの期間制限に関係なく請求される可能性がある。場合によっては、買主による建物のチェック(インスペクション)を認め、瑕疵保険に加入するといった対応も考えられるだろう。

・買主の注意点

 従来の「瑕疵担保責任」は法定責任、新たな「契約不適合責任」は契約責任と解されているが、買主が証明する内容は改正後も変わらないと考えられる。しかし、買主もまた、売主に対して細かく、目的物の状況や付帯設備などのほか、近年頻発している自然災害のリスクとその影響などについても確認し、契約書に記載しておくべきだろう。

 これまで日本における不動産の売買契約は、欧米に比べ比較的簡略な面があったが、これからは欧米並みに詳しく、細かく記載することが当たり前になっていくのではないだろうか。

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