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外国人は日本の不動産を購入できる?
日本の不動産を購入する時に必要な情報・条件とは

2023年6月6日公開(2023年6月6日更新)
福崎剛:フリージャーナリスト

外国人による日本の不動産購入が話題だ。タワーマンションの最上階や高級リゾート地の別荘をはじめ、無人島など、その用途も居住用から投資用までさまざま。今回は、外国人が日本の不動産を購入する際の手続きや手順、また住宅ローンは組めるのかについて解説する。(フリージャーナリスト:福崎剛)

外国人は日本の不動産を購入できる?

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(出典:PIXTA)

 日本国籍を持たない外国人でも、不動産を購入できるのか?

 結論から述べると、答えはイエスだ。日本には不動産購入希望者の国籍による売買の規制がない。日本のように規制のない国は実は少数派で、先進国ではアメリカやカナダ、フランスくらい。多くの国では外国人による不動産の売買に制限があり、またインドネシアなど、国籍を持っていなければそもそも不動産取引自体ができない国もある。

 こうした規制は自国の安全や利益を守るためにあり、内容も国によってさまざまだ。たとえば中国なら、土地の購入はできないが、建物であれば売買できる。余談だが、日本人が海外の不動産投資をする際などには、こうした規制を熟知しておかなければ投資詐欺に遭う危険性もあるので注意したい。

 さて、外国人が日本の不動産を購入する場合、日本人とほぼ同条件と考えて差し支えない。日本の不動産は外国人にとって安心して購入しやすいといえるだろう。

購入に必要な書類、資格などは?

 では、日本の不動産を購入したい外国人はどういう手続きを踏めばいいのだろうか?

 日本における不動産の売買や賃貸借の契約の流れは、日本人でも外国人でもほぼ同じだ。基本的には不動産会社を利用して売買を行う。

  • 不動産取引の流れ
    1、物件の希望条件を不動産会社に相談し、条件に合う物件の中から実際に下見する
    2、購入物件を決定した場合、購入意思を示す買付証明を作成する。この時、手付金を払う
    3、外国人の場合は、在留資格の確認、購入代金の支払い能力を不動産会社または仲介業者が審査する
    4、審査で問題なければ法律の定めに従って不動産会社から「重要事項説明」が行われる
    5、契約書を作成し、締結する際に仲介手数料等の費用が必要になる
    6、契約に基づいて売買代金の決済をし、決済後に不動産登記申請を行う

 これで物件の購入、登記が完了し、不動産の所有者となれるというわけだ。

 外国人が不動産を購入する場合に必要な書類関係を一覧にしたので、こちらも参考にしてほしい。なお、個人と法人とで用意する書類が若干異なるが、今回は個人で購入する場合を想定して説明する。

 まずは購入希望者の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)、取引目的および職業を確認する必要があるため、不動産会社から提出を求められる書類がある。日本に住居がある場合とない場合とで用意しなければならない書類が異なるので、事前に不動産会社に確認しておきたい。

外国人が不動産を購入する場合に必要な書類

個人 日本国内に住居を有しない外国人の場合 旅券(パスポート)
乗員手帳(船舶の乗組員であることを証明する手帳)
外国政府、国際機関発行書類(※)

(※)顔写真なしの書類が提示された場合は、当該書類に記載されている住所宛てに取引関係文書を書留郵便等の転送不要郵便物として送付することにより本人確認を行う。
日本国内に住居を有する外国人の場合 旅券(パスポート)
在留カード
特別永住者証明書
個人番号カード
住民基本台帳カード
 等
法人 外国法人の場合 外国政府、国際機関発行書類
ただし、上場企業については本人特定事項を含む取引時確認は不要であるとされている。なお、現に特定取引の任にあたっている者(代理人、法人の代表者、取引担当者等)の本人特定事項の確認は別途必要。
※「不動産事業者のための国際対応 実務マニュアル」国土交通省土地・建設産業局国際課(平成29年8月)を参照して著者作成

国土の安全保障のための「重要土地等調査規制法」

 日本の不動産取引には規制がないと説明したが、一部例外がある。2021年6月に制定された「重要土地等調査規制法」だ。

 これは国土の安全保障上から重要施設や国境離島などを守るために、指定区域を規制対象にするというもの。重要施設とは、自衛隊や海上保安庁をはじめ、米軍基地、原発周辺の土地などを指している。これらの施設周辺の不動産には、規制がかけられているのだ。

 同法が制定された背景に、以前より水源地の森林地域が外国資本によって買われていた事実が明らかになってきたことがある。豊かな日本の水源地の水資源を外国人が独占するのではないかという不安から、外国人への不動産売買の規制を求める声が上がり、それにいち早く対応した自治体もあった。その一つが「北海道水資源の保全に関する条例」だろう。

ニセコ 土地買収
ニセコ町は、外国人による土地買収が話題になった(出典:PIXTA)

 北海道では2012年に条例を制定し、水資源保全地域内に土地を所有している人が土地の権利を移す場合には管轄の役所にへの届け出を義務づけた。とはいえ、あくまで条例に不動産売買を禁止させるほどの強制力はない。しかし、条例が制定されたことで水源地の土地の売買がチェックされることになり、不適切な取引の抑止につながった。

 今では多くの道府県が水資源保全条例を制定しているので、参考までに一覧にしておく。

水資源保全条例を制定している道府県一覧

道府県 条例名 制定年月日
北海道 北海道水資源の保全に関する条例 2012年4月1日
秋田県 秋田県水源森林地域の保全に関する条例 2014年3月28日
山形県 山形県水資源保全条例 2013年3月22日
茨城県 茨城県水源地域保全条例 2012年10月3日
栃木県 栃木県水源地域保全条例 2022年3月23日
群馬県 群馬県水源地域保全条例 2012年6月26日
埼玉県 埼玉県水源地域保全条例 2012年3月27日
新潟県 新潟県水源地域の保全に関する条例 2013年12月27日
富山県 富山県水源地域保全条例 2013年3月27日
石川県 石川県における水資源の供給源としての森林の保全に関する条例 2013年3月25日
福井県 福井県水源涵養地域保全条例 2013年3月22日
山梨県 山梨県地下水及び水源地域の保全に関する条例 2012年12月27日
長野県 長野県豊かな水資源の保全に関する条例 2013年3月25日
岐阜県 岐阜県水源地域保全条例 2013年3月26日
静岡県 静岡県水循環保全条例 2022年3月29日
三重県 三重県水源地域の保全に関する条例 2015年7月10日
滋賀県 滋賀県水源森林地域保全条例 2015年3月23日
京都府 京都府森林水源地域の保全等に関する条例 2018年3月30日
徳島県 徳島県豊かな森林を守る条例 2013年12月19日
宮崎県

宮崎県水源地域保全条例

2014年3月17日

※出典:一般財団法人 地方自治研究機構「水源地域保全条例」

外国人でも住宅ローンを借りられる!

 次に、不動産を取得する場合に、外国人でも住宅ローンを組めるのかについて解説する。

 住宅ローンの申請要件に「日本人国籍または永住許可を有する」と定めている金融機関は多いが、主要19金融機関を調べると、以下のように最低限の条件のいずれかを満たしていれば借りられることがわかった。

1、日本で自分が住むための住宅が対象

 自分が住む住居の購入が前提となる。そのため、日本に居住せずに日本の別荘を購入する場合や海外の不動産については対象外。

2、日本国籍を取得、または永住者、特別永住者

 日本国籍や永住者でなくとも、「在留資格者」「在留カード保有者」であれば住宅ローンを組めるケースがある。「在留カード保有者」については、三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行、SBIマネープラザなどが住宅ローンの対象として説明書に記載している。

3、配偶者が日本国籍を持っている

 住宅ローンを借りる本人が日本国籍や永住権を持っていない場合でも、配偶者がそのどちらかを持っており、連帯保証人になる条件であれば可能になる銀行もある。

4、日本語を理解できる

 東京スター銀行が条件としている。ほかの金融機関でも日本語で対応できなければ住宅ローンを借りるのは難しい。

 これらの条件をクリアすれば、いずれかの金融機関で住宅ローンを組むことは外国人でも難しくない。

 また、金融機関によって審査の条件には差があるが、全期間固定金利の「フラット35」なら審査基準さえクリアすれば比較的審査が通りやすい。フラット35は借入金額の最大が8000万円。一方で、金融機関によっては融資限度額が8000万円から5億円までと幅広い。

 頭金をいくら用意できるのかによっても住宅ローンの組み方は変わる。まずは複数の金融機関で試算してもらって申し込むのがいいだろう。

【関連記事はこちら】>>外国人は住宅ローンを借りられる? 永住権なしでもOK?19銀行の審査の条件を比較

まとめ

 外国人は、日本国籍や永住権を持っていなくても日本人と同じく日本の土地や住宅などを購入し、所有できる。外国人だからといって、特別な課税などはない。不動産売買のフローにも国籍に関する差はほとんどなく、本人確認のための書類を用意すれば契約できる。

 住宅ローンに関しても、永住資格者や在留カード保有などの最低限の条件を満たせば借り入れ可能。また、配偶者が日本国籍を持っていれば連帯保証人にすることで住宅ローンを組める金融機関もある。

 ただし、安全保障の観点から自衛隊や海上保安庁、国境等にあたる離島には規制がかかる重要土地等調査規制法が存在する。また、水源地などの土地を購入したい場合には、水資源保全条例を制定している道府県も多く、届け出などが必要になる場合があるので注意したい。

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