三井不動産レジデンシャルウェルネスが運営する介護付き有料老人ホーム「パークウェルステイト西麻布」が、2024年10月に開業した。場所は、東京メトロ日比谷線の広尾、六本木駅から徒歩12分。地上36階建て、一般居室340室と60室の介護居室から成る。基本的には入居時に自立している必要があるが、条件次第では介護居室に直接入居することも可能だ。どんなところなのか、解説していきたい。
三井不動産も高齢者住宅事業へ参入「パークウェルステイト西麻布」
「パークウェルステイト西麻布」の外観は、高級タワーマンションそのもので、老人ホームの雰囲気は一切ない。ホームページを見ても、分譲新築マンションのような華やかさである。敷地には緑豊かなガーデンなどを配置、自然あふれる都心の杜(もり)を演出している。
これが駅前立地なら、三井不動産も高級分譲タワーマンションをつくるところだろうが、いくら広尾、六本木とはいえ駅徒歩12分となると、通勤・通学をともなう世帯層にとって便利とは言えない。また、世帯分の駐車スペースを用意することも難しいだろう。
首都圏では、駅近の大規模な土地の確保は限界を迎えているとの指摘もあり、この先も駅近好立地に広い土地を確保できる可能性は薄い。そのため、最近では都心でも駅から離れた場所に、高齢者向け住宅がつくられるケースが増えている。
大手ディベロッパーが展開している高齢者向け住宅には以下のブラ
・東急不動産系:「グランクレール」
・ベネッセ:「アリア」
・野村不動産系:「オウカス」
このうち、東急不動産系のグランクレールは、中央区晴海の「
約120㎡の部屋は、なんと5億5000万円!
現在ホームページに公開されているプランの中で一番広い部屋の価格は、以下のようになっている。
入居一時金:5億4366万円
月額利用料:521,350円
このタイプの部屋は2人入居が原則となるが、入居一時金は約5億5000万円。5億円をかるく超えてくる。
ちなみに入居一時金とは、有料老人ホームや高齢者向け住宅に入居する際、長期の利用を見越して前払いする費用のこと。部屋の所有権ではなく、あくまで「利用権」に対する費用だ。もし、想定居住期間内に退去した場合、未償却分が返還される。また想定居住期間を超えた場合には、追加の賃料負担は発生しない。
入居時の年齢が高いほど、想定される居住期間が短くなる分、入居一時金は低く設定される。本プランの場合も82歳での入居となれば入居一時金は約3億7000万円となるが、それでも依然として高額である。
部屋の間取りは下記の通り。
「パークウェルステイト西麻布」間取り図(公式ホームページから)
リビングダイニングは約23畳という広さで、2つのベッドルームがある。ウォークインクローゼット2つとシューズクローゼットに約2畳の納戸、またトランクルームも2つあり、十分な収納スペースがある。トイレは2つ、2つの洗面台があるダブルボウル仕様となっており、まるで高級ホテルのスイートルームのようだ。
1人入居が可能な部屋は?
一方、現在公開されている部屋の中で面積が小さい部屋が以下になる。こちらは1人入居ができる。1LDK(41.85㎡)、トランクルーム付きだ。
75歳の場合
入居一時金:7,398万円
月額利用料:235,460円
82歳の場合
入居一時金:4,932万円
月額利用料:235,460円
*2人入居の場合:追加入居一時金2,400万円/月額利用料:411,460円
82歳で1人入居するケースでは、入居一時金は約5000万円。この金額になれば、不動産を処分するなどすれば入居可能だという人が出てくるかもしれない。
ただし、住戸の水道光熱費やダイニングでの食事代金、医療費、介護費用等は月額利用料の235,460円に含まれないため、毎月の支出が相当高額になることは覚悟しなければならない。
「パークウェルステイト西麻布」間取り図(公式ホームページから)
「パークウェルステイト西麻布」の共用施設、サービスは?
「パークウェルステイト西麻布」の共用施設と主なサービスは以下のようになっている。
・ダイニングレストラン(35、36階):帝国ホテルによるダイニングサービス
・スパ・フィットネス(9階):大浴場とフィットネスジム、プール
・ロビーラウンジ:ホテルのような上品なラウンジ
・ライブラリー:ガーデンに面した開放的な空間
・ティーパビリオン:ガーデン中央につくられたラウンジで、朝食や喫茶も楽しめる
・カラオケルーム:カラオケ兼シアタールーム
・麻雀ルーム:自動麻雀卓を完備
・ペット足洗い場:条件付きでペットの飼育が可能で、足洗い場を用意
一番のウリは、帝国ホテルによるダイニングサービスだろう。ダイニングフロアには、個室スペースやバーコーナーもある。また、9階にはスパ・フィットネスエリアがある。こちらにも力を入れている印象だ。
医療・介護も充実し高齢者も安心
「パークウェルステイト西麻布」の医療、介護体制は、文句なしの充実ぶりである。
医療
建物内には、「西麻布メディカルクリニック」がある。内科・整形外科・老化予防外来・骨粗しょう症外来などの診療科が開業予定となっている。慶應義塾大学病院と医療連携しているため、精密検査が必要な場合は、同大学病院での検査が可能となる。
また、看護スタッフによる24時間見守り体制がとられているのも、大きな安心材料となるだろう。体調が悪いときには、食事の配膳などの生活支援サービスが受けられるほか、クリニックへの受診予約取り次ぎサービスもある。
介護
2階、3階には介護室が60室用意されている。介護が必要になれば、こちらに移動することになる。一般的にはそれまで使用していた一般居室の利用権はなくなるが、「パークウェルステイト西麻布」では、一般居室の利用権を保持したまま、介護居室の利用が可能であり、必要に応じて両方の居室を行き来しながら生活することができる。
ケアスタッフ(または看護スタッフ)の比率は、利用者1.5に対して1以上(週40時間常勤換算)となっている。これは一般的な基準(利用者3人に対してスタッフ1人)よりも手厚い配置といえる。
一方、建物内には介護保険事業所「TOKIORI 西麻布」が開設予定となっており、家事代行や介護サービスを有償で利用できる。
超高級老人ホームの代表格「聖路加レジデンス」と比較
ここまで、富裕層の究極のついのすみかとも言える「パークウェルステイト西麻布」を見てきたが、これまで都内の超高級老人ホームといって真っ先に名前が挙がるのが、中央区明石町にある「聖路加レジデンス」だった。
聖路加レジデンス
1994年9月1日開業
主な共用施設:
ミーティングルーム
ライブラリー
ゲストルーム
聖路加クリニック
ダイニングルーム
スポーツ施設
ホームページによると、2024年9月現在の入居金総額は、以下のように表記されている。
2億1,650万円〜6億892.5万円
形態は、サービス付賃貸マンションとなり、有料老人ホームとは異なる契約となるが、入居金の最高額は、「パークウェルステイト西麻布」の5億5000万円を超える6億円である。
「聖路加レジデンス」の特徴は、建物内に「聖路加クリニック」があり、通りを隔てた反対側にある「聖路加国際病院」と連携した医療サービスが受けられること。人気の理由はこの点が大きい。
また、ホテルのようなサービスでも知られ、1階エントランスの車寄せには、手荷物の運搬などを行うベルスタッフが待機。フロントでは、ゲストの受け付けや宅配便受け取りサービス、週2回のハウスキーピングに対応する。また、提供される食事も豪華で、ホテルオークラが運営する入居者専用ダイニングルームがあり、水辺の景色を眺めながら、食事が楽しめる。
ただ、この「聖路加レジデンス」も開業は1994年。開業から30年がたち、老朽化が危惧される。公式HPの入居案内には、「賃貸借期間の満了により終了し、更新はございません。(2044年3月終了)」とあり、営業は2044年をもって終了することになる。新しい入居者の受け入れもそろそろ終了となりそうだ。
一番高い老人ホームはどこになるのか?
三井不動産レジデンシャルウェルネスは、「幕張ベイパーク」の一角に「パークウェルステイト幕張ベイパーク」を、また神奈川県初進出となる「パークウェルステイト湘南藤沢SST」を2024年秋にそれぞれ開業する。
この先も「パークウェルステイト」ブランドのシニアレジデンスは増えていくだろう。
ただ、立地、設備、価格を考えると、当面最高級老人ホームは「パークウェルステイト西麻布」となりそうだ。「パークウェルステイト西麻布」の問い合わせ数は、4000件を超え(2024年7月)、予想以上の人気を博している。この先「パークウェルステイト西麻布」を超える超高級老人ホームは果たして出現するのか、大いに注目したい。
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