人生100年時代、介護サービスや高齢者向けのサービスが受けられる高齢者専用の住宅が注目されている。しかし、その種類やシステムなどは非常に複雑だ。そこで、この記事では「シニア向け住宅(高齢者向け住宅)」の選び方について解説していく。1回目は、主にシニア向け住宅の種類や費用について、2回目はそれぞれの住宅のメリット・デメリット、選ぶときの注意点などについて説明する。
シニア向け住宅(高齢者向け住宅)」のシステムはわかりにくい!
人生の最期に住む家はどこにするのか、あなたは考えたことがあるだろうか? これまでの「人生すごろく」は、「賃貸マンション・アパート」→「分譲マンション」→「戸建て」と言われ、すごろくの上がり、つまり終(つい)の棲家(すみか)は戸建てという考えが定着していた。しかし、人生100年時代を迎えた今、介護など将来的に人の助けが必要な事態になるときに備え、最後の住まいとして、「シニア向け住宅(高齢者向け住宅)」を望む人が増えている。
従来、年をとって要介護になり、
では、希望する住まいを自分の意思で見つけるには、
シニア向け住宅の選び方のポイントは、資金と将来の介護
記事執筆にあたり、シニアビジネス・コンサルタントの髙山善文さんに話を伺った。高山さんによると、シニア向け住宅の選び方のポイントは、どれだけお金をかけるのかと、将来の介護をどう考えるか、だという。
実際に介護が必要な人(介護保険適用となる人)は、約2割~3割だ。さほど高い数字ではないが、将来自分がどうなるかはわからないということを考えると、これをどう捉えるか、人によって考え方が変わる微妙な数字だと言えるだろう。
また、言うまでもなく、予算をどの程度にするかによって、終の棲家の選択肢は大きく変わってくる。
シニア向け住宅の種類は?
まずは、シニア向け住宅の種類から説明したい。現在自立している状態という前提で、その選択肢を挙げてみよう。
シニア向け住宅(高齢者向け住宅)の選択肢
①自宅(バリアフリー化)
②シニア向け分譲マンション
③有料老人ホーム(住宅型)
④サービス付き高齢者向け住宅
⑤シニア向け賃貸住宅
一番多いのは、①の自宅という選択肢だろう。現在健康で、健康にある程度自信がある、または子どもと同居を考えている人は自宅をバリアフリーに改装して住むのが有力な選択肢だ。
万一、重い病気や介護が必要になった場合は、訪問介護を頼むなど自分でなんとかすることになるが、持ち家の場合、費用が抑えられるのが最大のメリットである。
将来、何かしらの安心を担保したいとなると、主な選択肢は②シニア向け分譲マンション、③有料老人ホーム、④サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、⑤シニア向け賃貸住宅となるだろう。それぞれの種類と費用などをまとめたのが下表だ。今回はこちら4つの住宅について説明したい。
シニア向け住宅の特徴は?
各住宅のメリット、デメリットは第2回で詳しく述べるが、ここでは、各住宅の特徴を説明する。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、あまり知られていないが、近年その数は首都圏を中心に増加中だ。ほかのシニア向け住宅との大きな違いは、所有権付き物件だということ。部屋はバリアフリー設計がなされ、入居可能年齢を50歳以上や60歳以上としていることが多い。最近の物件では、レストランや大浴場など共用施設も充実している。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、主に自立した高齢者が入居する「住宅型」と「介護付き」がある。最近では、住宅型と介護付きが同じ建物や敷地内にあるケースも多い。
値段はピンキリだが、相対的に高めで、豪華な共用施設を有するものは数億円という場合もある。初めから介護が必要な場合には、要介護3以上の認定を受けることが条件となる、費用負担が少ない「特別養護老人ホーム(特養)」がある。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とシニア向け賃貸住宅
シニア向け住宅で、賃貸住宅という位置づけになるのが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とシニア向け賃貸住宅だ。サービス付き高齢者向け住宅は、「高齢者住まい法」に基づいて、2011年にスタートした制度だ。60歳以上か要介護認定を受けている人が対象。
サ高住には、「自立型」と「介護型」があり、介護型は在宅介護サービスを併設している。自立型の部屋と介護型の部屋の両方を有する施設も多い。ただし、義務づけられているサービスは、安否確認と生活相談だけのため、住宅の質や費用はかなりばらつきがある。
シニア向け賃貸住宅は、バリアフリーなどがなされた高齢者が住みやすい部屋となっている賃貸物件。首都圏が中心で、現在その数は限定的だ。
わかりにくい理由は、すべて、シニア〇〇と呼ぶから
シニア向け住宅をわかりにくくしている理由の一つに、その呼び方がある。ホームページや広告を見るとわかるが、運営会社のイメージ戦略から、老人、高齢者というワードを使いたくないために、施設名が「シニア向けレジデンス」などとなっていることが多く、いったいどのような分類の施設なのかわからない。
例えば、「オウカス」(野村不動産)というシリーズ。ホームページのトップには、「賃貸シニアレジデンス」とあるが、こちらは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)である。
また、こちらの「グランクレール」(東急不動産)のホームページでは、「シニア向け住宅」とあり、一見すると分譲マンションのように見えるが、こちらもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。
気になる住宅の広告やホームページを見つけたら、必ず「物件概要」を見てほしい。「物件概要」を見る人はそう多くないが、ここを見れば住宅の種類が正確にわかる。
東京近郊のシニア向け住宅の費用は?
もう一つわかりにくいのが、費用だ。
前出のシニア向け住宅の選択肢一覧を再度提示する。
シニア向け住宅(高齢者向け住宅)の選択肢
①自宅(バリアフリー化)
②シニア向け分譲マンション
③有料老人ホーム(住宅型)
④サービス付き高齢者向け住宅
⑤シニア向け賃貸住宅
④サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と、⑤ シニア向け賃貸住宅は、賃料として掲載されているため、比較的理解しやすい。特にわかりにくいのは、③の有料老人ホームだ。入居時費用は、0円~数千万円などとなっており、イメージがつかめない。
もちろん、立地やサービス、共用施設によって、相当な差がつくため、平均的な数字を挙げるのは難しい。ただ、今回はおおまかなイメージをつかむため、東京近郊で大手不動産会社が運営する高級有料老人ホームと、価格的には中~上レベルのシニア向け分譲マンションを例に1LDK(40㎡台)でその価格を見てみたい。
【シニア向け分譲マンション】LUMISIA(ルミシア)浦安舞浜の価格は?
まず、築4年と比較的新しいシニア向け分譲マンションを見てみよう。JR京葉線舞浜駅 徒歩24分、新浦安駅32分にある「LUMISIA(ルミシア)浦安舞浜」だ。
4階建て総戸数は88戸。2024年1月時点で売り出されていた中古物件、1LDK(42.39㎡)の価格は、2980万円となっている。
「LUMISIA(ルミシア)浦安舞浜」
1LDK(42.39㎡)の間取り
また、LIFULL HOME'Sによると。管理費が27,600円、修繕積立金が7,300円。ほかにレストラン運営支援金、生活支援業務費などが49,725円かかる。毎月の費用は、トータルで約85,000円だ。(2024年1月時点)
共有施設は、レストラン、大浴場があり、サービスステーションには、スタッフが24時間常駐し、部屋の電球交換から介護相談まで日常生活のサポートに対応する。
また、徒歩1分には、「浦安中央病院」がある。ちなみに、「LUMISIA(ルミシア)浦安舞浜」は、新築時と比べ+6%価格が上がっている(騰落率は、「ダイヤモンドオンライン・特集老人ホーム・サ高住・シニア分譲マンション50代も必見!シニアの住まい選び」から)。
【住宅型有料老人ホーム】「パークウェルステイト幕張ベイパーク」の価格は?
次に、2024年開業の「パークウェルステイト幕張ベイパーク(住宅型有料老人ホーム)」を見てみよう。
パークウェルステイト幕張ベイパーク
1LDK(42.49㎡)、42Aタイプの間取り
有料老人ホームの場合、利用権方式で基本的には死亡時まで居住する権利があるため、入居時の年齢で入居時の費用が変わる。ここでは、79歳、1人入居が前提。価格は下の通りとなる。
支払い方式には、「前払い方式」と「月払い方式」がある。何年入るかわからない、終の棲家として考えるなら、前払い方式の方がトータル費用は抑えられる可能性が高い。また、前払いの場合に万一入居して早々に退去する場合、年数に応じた返還金もある。 一般的には5年から10年で均等償却するケースが多い。
前払い方式の大雑把な費用感は、入居時に2,600万円、月に20万円。月払いでは、入居一時金0円で、月額は前払い方式の倍の約40万円だ。また、夫婦2人で2LDK(59.45㎡)に入居すると、入居時に約6,800万円、月に約30万円(月払いの場合は、月に約70万円)がおおよその目安となる。
「パークウェルステイト幕張ベイパーク」は、JR京葉線「海浜幕張」駅徒歩18分。建物は28階建て、部屋数は617室で、一見すると高級タワーマンションのように見え、老人ホームとはわからない。サービスや共有施設も充実している。レストラン、大浴場、ライブラリーなどがあり、24時間看護スタッフが常駐。建物内にはクリニックもある。また、介護面も充実している。介護室があり、一般居室での生活が困難となった場合は追加料金なしで移動できる。
東京近郊で快適なシニア向け住宅に住みたいなら…
こうして見てみると、有料老人ホームは、サービス面が充実している分、月の費用はシニアマンションの倍程度はかかると思った方がよさそうだ。
入居時の費用は、東京近郊で快適な生活を望むなら、老人ホーム、マンションとも一人入居で最低3000万円程度用意しておく必要があるだろう。
もちろん、立地が都心になったり、住宅のランクを変えれば、費用は全く変わってくる。また、まとまった一時金を用意するのが難しい場合は、賃貸住宅である、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やシニア向け賃貸住宅を考えるといいだろう。最近は、高級志向のサ高住も増えている。
一方、入居年齢を考えると老人ホームは80歳前後が多く、シニアマンションは70台半ばくらいの夫婦が子どもに頼らない老後を考えたときに有力な選択肢となるようだ。第2回ではそれぞれの住宅のメリット・デメリットを考えてみたい。
総掲載物件数は約400万件! |
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