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コロナ禍で「物件の内見」や「重要事項説明」もオンライン化!? 「非対面」で不動産取引をするときの注意点を解説!

2020年6月25日公開(2022年5月27日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

緊急事態宣言が全国的に解除されたが、今後も新型コロナウイルス感染拡大を予防する観点から、各業界が対策を講じている。不動産業界でも、人との接触機会を減らす「非対面型の不動産取引」が注目されている。ここでは、買主や借主といったユーザーが、非対面で住宅を探す際の注意点を紹介しながら、非対面の不動産取引サービスの現状について見ていく。
※2022年5月27日追記:現在は不動産の賃貸契約及び売買契約時における重要事項説明と書面の交付はオンラインでも可能となっている。

「非対面」で利用できる不動産取引サービスの需要が急増

 不動産・住宅会社向けコンサルのGlueeが注文住宅の販売会社向けに行ったコロナショックの影響調査によると、55.7%の事業者が資料請求(反響)の数は「変化がない」(前年同月比)と回答した。また、11.4%の事業者はむしろ資料請求(反響)の数が増加したという。

 その一方で、新規来場予約の数については、事業者の44.3%が「変化ない」(前年同月比)と回答した一方で、55.7%の事業者が10%以上も来店客が減少したと答えたという。

 コロナ禍の家探しでは、来店(来場)を嫌がる人が増えているのは間違いない。

 このような状況下のため、不動産・住宅関係の企業では、不動産取引を「非対面」で進めることができるサービスを取り入れている。

非対面で物件を探すときに、買主や借主が注意すべき点

 では、ここからは、買主や借主といったユーザーが非対面で物件を探す際の手順ついて見ていこう。

 物件を探す際には、これまでもネットで物件情報を閲覧するなどが可能だったが、最近では、物件の画像も豊富に掲載されており、なかにはパノラマ画像で部屋全体を見ることができるサービスもある。また、VRを使って、臨場感のある「疑似内見」が可能な物件も増えてきている。

マンション販売大手の三菱地所レジデンスでは、新築マンション販売でネット接客を5月から始めた。自宅のパソコンからネットで三菱地所レジデンスの担当者と相談できる。パソコンの画面から物件資料や図面を共有してくれる。また、VRを使ったモデルルームの内覧もできる。まずは首都圏で開始しているが、関東の他エリアから名古屋や関西、広島での導入を予定している。
マンション販売大手の三菱地所レジデンスでは、新築マンション販売でネット接客を5月から始めた。自宅のパソコンからネットで三菱地所レジデンスの担当者と相談できる。パソコンの画面から物件資料や図面を共有してくれる。また、VRを使ったモデルルームの内覧もできる。まずは首都圏で開始しているが、関東の他エリアから名古屋や関西、広島での導入を予定している。

 気になる物件を絞り込んだら、不動産会社に問い合わせてみよう。電話やメールの他にウェブ会議の仕組みを使って、接客担当のスタッフと面談できる不動産会社も増えている。

 不動産会社の意見も踏まえて、十分に検討が進んだら実際の物件に内見にいくのだが、ここでも「オンライン内見」で家から一歩も出ずに見学することが可能だ。

 現場には不動産会社のスタッフに行ってもらい、スマートフォンのカメラを使ってリアルタイムで物件を見るという、まさに内見の生中継なのだが、気になる箇所をスタッフに伝えれば、何度も見せてもらうことができるのでデメリットも感じないだろう。

 不動産会社向けに非対面での接客システムを開発する「いい生活」の北澤弘貴副社長によると注意すべきは2点あるという。

 「リモートで物件確認をするときは、部屋の中や設備にばかり目が行きがちです。部屋の中だけでなく、窓を開けてもらって周辺の騒音など音にも気を配ってみましょう。また、周辺環境を気にする場合は最寄り駅からの道中も、スタッフにカメラを回してもらうと良いでしょう」(北澤氏)

 騒音については、線路が近いなら電車が通るまで、大きな道路があるなら大きな車が通るまで待って、しっかり見せてもらおう。また、窓を閉めた状態での騒音についてもしっかり聞いておこう。

 スマホを使った内覧の生中継だが、やってみると想像以上に不自由なく物件の詳細を確認できる。ただ、一つだけ分からない点がある。

「におい」だ。

 物件の周辺施設によっては特有のにおいがすることもある。これだけは、現地に行って自身で感じなければ分からない。やはり最低でも一度は、現地に足を運ぶべきだろう。

 このように、テクノロジーを活用した非対面での物件探しは、かなり便利になった。しかし、現状では全ての不動産会社がこのように対応してくれるわけではない。「どうにかして店舗に呼んだ方が、手っ取り早い」と感じている不動産会社も多いという。

 「リモートでの内見に非協力的だったり、ホームページの画像が少なかったりする不動産会社は顧客目線が足りない会社と言われるようになるでしょう」(北澤氏)

 そうした対応をチェックして、柔軟な対応をしてくれる不動産会社を選ぶようにしたい。

重要事項説明も、「対面」という原則が変わる?

 さて、買主の場合は購入する物件が決まったら、契約の前に購入する物件に関わる重要事項説明(重説)を受ける必要がある。

 重要事項説明は専門の資格を持つ宅地建物取引士が、内容を記載した書面に記名押印し、その書面を交付した上で、口頭で説明を行わなければならない。対面が原則だ。

 しかし、2019年10月より国土交通省が「個人を含む売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験」を行っており、この実験に登録している不動産事業者であればウェブ会議などのシステムを使って、説明を受けることができる。※2022年5月27日追記:売買取引における「IT重説」は2021年3月から解禁されている。

 その際、事前に重要事項説明書を郵送で送付してもらった上で、説明を聞くことになる。ちなみに、この社会実験は2020年9月末で終了する予定だ。実験結果を踏まえて、対面を前提にしていた不動産売買の取引方法についての方針が決まっていく。
※2022年5月27日追記:売買取引における重要事項説明書など各種契約書の交付についても、2022年5月18日からオンラインでの電子書面交付が解禁されている。

 一方、賃貸住宅の借主の場合はどうだろうか。賃貸住宅では、一足先に2017年10月からITを活用した重要事項説明の実証実験が始まっている。重説をする側、つまり不動産会社からも評判が良いという。

 「重要事項説明は、これまでは借主の都合を考えて、週末や平日夕方以降に集中しがちでした。そのため繁忙期になると、重説の時間調整に忙殺されることも多い。

 しかし、『IT重説』によって借主の仕事の休憩中などにできるようになれば、不動産会社も対応しやすくなります。また、IT重説なら、宅建資格を持った主婦などの人材も柔軟に活用できるようになるので、IT重説を好意的にとらえている不動産会社の経営者もいるのです」(北澤氏)

【関連記事はこちら】>>「IT重説」の解禁で不動産売買の重要事項説明が非対面で可能に! 不動産取引のオンライン化の展望は?

「物件探し」から「決裁」まで、
今後も非対面の不動産取引は広がっていく

 最後に紹介するのは「決裁」に関する、非対面のサービスだ。

 エスクロー・エージェント・ジャパン提供の「H’OURS(アワーズ)」は、買主が重要事項説明に納得し、物件購入を決めた後の「決裁」を、非対面で済ますことができる。

 このサービスでは、中立な立場で契約に立ち会うエスクロー会社と、権利の移転を記録する司法書士が、決済日までに本人確認から住宅ローンの実行までを済ませておく。

 そして、決済日には司法書士が法務局への登記を申請するのだ。買主は登記申請が完了してから、希望する日時に鍵を受け取る、という流れ。

 こうした決済に関する複雑な手続きも、三密を避けて済ませることができるというわけだ。


 ここまで、さまざまな非対面の不動産取引サービスについて見てきた。物件探しから購入物件の決裁に至るまで、幅広く活用が進んでいることが分かった。

 社会的な情勢も踏まえれば、非対面の不動産取引はますます推進されていくにちがいない。ユーザー側の認知が進めば、もっと普及していくだろう。
【関連記事はこちら】>>民法(債権法)改正で不動産取引はどう変わる?【売買契約編】

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