浜松町(東京都港区)の顔ともいうべき世界貿易センタービル本館の建て替え工事が始まっている。すぐ隣には、大規模マンション「ワールドタワーレジデンス」も建設中だ。芝浦1丁目では、約55万㎡に及ぶ大規模な再開発が進められ、東京湾岸部の新たなシンボルとなるツインタワーがつくられる。今、浜松町・芝浦エリアの大変貌が始まっている。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
変貌する浜松町駅周辺エリア
JR山手線などの浜松町駅周辺は、すぐ東側に旧芝離宮恩賜庭園が広がり、西側には1970年竣工で、霞が関ビルに次ぐわが国2棟目の超高層ビルである世界貿易センタービルがそびえている。そのため、再開発が難しく、東京の各地で大規模な再開発が進められるなかで、浜松町エリアはやや取り残された感があった。
だが、世界貿易センタービルの建て替え工事が始まるなど、浜松町駅周辺は今、大きく変貌を遂げようとしているのだ。世界貿易センタービルは駅直結なので、オフィスや店舗、会議場などがメインで、住宅は予定されていない。それが、東京モノレールができることで、羽田空港につながる玄関口として再スタートを切ることになる。
一方、羽田空港では、第3ターミナル直結の日本最大規模のホテルである「住友不動産ホテルヴィラフォンテーヌ羽田空港」を中心とする「羽田エアポートガーデン」がオープンし、ポストコロナの水際対策の緩和などもあって、注目度が高まっている。
浜松町・芝浦エリアで進行中、竣工済みの主な再開発事例、位置図は図表に示す。
図表 浜松町・芝浦エリアの主な再開発の事例
高さ、広さ | 用途 | スケジュール | |
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世界貿易センタービル | 46階建て(本館) 南館、モノレール棟などを含め約31.4万㎡ |
オフィス・店舗・会議場・交通機能等 | 2017年着工 2027年竣工予定 |
浜松町二丁目地区第一種市街地再開発 | 47階建てのツインタワー 約55万㎡ |
分譲住宅(ワールドタワーレジデンス)・オフィス・ホール・店舗等 | 2020年度着工 2023年度、2026年度竣工予定 |
芝浦一丁目計画
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S棟43階建て N棟45階建て延べ床面積合計約55万㎡ |
オフィス・ホテル・住宅・商業施設など
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S棟2021年度着工、2024年度竣工予定 N棟2027年度着工、2030年度竣工予定 |
ブリリアタワー浜離宮 | 32階建て 約3.0万㎡ |
住宅・店舗・保育園等 | 2020年着工 2023年竣工予定 |
日本生命浜松町クレアタワー | 29階建て 約9.9万㎡ |
オフィス・店舗・会議場等 | 2018年竣工 |
パークコート浜離宮 ザ タワー | 37階建て 約6.6万㎡ |
住宅・オフィス・店舗・保育園等 | 2019年竣工 |
ウォーターズ竹芝 | 26階建て 約10.9万㎡ |
ホテル・オフィス・商業施設・劇場等 | 2020年竣工 |
図表 浜松町・芝浦エリアの主な再開発の位置図
世界貿易センタービルは、46階建ての高層ビルに建て替え
世界貿易センタービルは、南館の建て替えが2017年に始まり、2021年に竣工したのを皮切りに、本館も2017年から建て替え工事が始まり、2027年の竣工を目指して工事が本格化している。
新たな本館ビルは地上46階建てで、オフィス、国際級のホテル、国際医療センター、観光プレ体験施設などが入る予定。海外からのインバウンド需要を吸収するだけではなく、海外の人たちがわが国の最先端医療に触れることができる施設も予定されている。
併設のターミナル棟は7階建てで、バスターミナルのほか、カンファレンスセンター、レセプション会場、屋上庭園などが整備され、羽田空港につながる空の玄関口としての機能がいっそう充実することが期待されている。
新築の超高層マンション「ワールドタワーレジデンス」が建設される
世界貿易センタービルの建て替えと同時に、周辺の回遊性が高まるのも大きな特徴。これまでは慣れない人には分かりにくかった、電車、バス、タクシーなどとの乗り換えが格段にスムーズになり、JRやモノレールの駅から駅前の開発エリア一体が、歩行者デッキでつながり、利用する人の利便性や安全性が飛躍的に向上する。
世界貿易センタービル本館の建て替えに先立って開業した周辺の日本生命浜松町クレアセンター、世界貿易センタービル南館や建設中の他の棟とのJR、モノレールの改札、すべてが歩行者用の通路として、地上3階レベルでフラットにつながる。
さすがに世界貿易センタービル本館には、住宅は予定されていないが、西側に隣接する浜松町2丁目地区には、新築マンション「ワールドタワーレジデンス」の分譲が予定されている。総戸数389戸(一般販売対象戸数364戸)で、専有面積は40㎡台から148㎡台で、間取りは1LDKから3LDK。「浜松町」駅から徒歩2分、都営地下鉄大江戸線の「大門」駅が徒歩4分など絶好のロケーションとなっている。
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東京湾岸の玄関口としての芝浦一丁目計画
浜松町の世界貿易センタービルの建て替えなどが空の玄関口の整備とすれば、東京湾岸エリアの新たなシンボルとして建て替えが進められているのが、「芝浦一丁目計画」だ。
芝浦運河や日の出ふ頭における水辺の観光・にぎわいの新たな拠点の創出が目指され、浜松町が羽田につながる空の玄関口なら、こちらは、まさに海の玄関口といったところだろうか。
鉄筋コンクリート造の地上43階建てのS棟と、地上45階建てのN棟から成るツインタワーで、S棟が2024年度、N棟が2030年度の竣工予定となっている。S棟の着工が2021年度だったから、都合10年間にも及ぶ壮大な建替え計画であり、東京湾岸の景色を一新するプロジェクトといわれている。
用途はS棟がホテル、オフィス、商業施設などで、N棟が住宅、オフィス、商業施設などとなっている。ただし、こちらは住宅といっても分譲住宅ではなく、賃貸住宅になる見込みだが、さて賃料はいくらになるのか、2030年度の竣工が待たれる。
浜松町周辺の中古マンション取引相場は、坪700万円台に
再開発がすすむと気になるのは、周辺エリアのマンション価格だ。2019年に竣工した「パークコート浜離宮ザ・タワー」はJR山手線などの浜松町駅徒歩5分の地上37階建て、総戸数563戸の超高層マンションで、2019年7月に竣工しているが、すでに仲介市場で活発な取引が行われている。
専有面積30㎡台の1Kマンションが6500万円台、54㎡台の2LDKマンションが1億3000万円台で取引されるなどの人気ぶり。坪単価にすれば700万円台だから、都心の他の人気エリアに負けない相場が形成されつつある。
浜松町周辺の坪単価は、1000万円近い価格設定になる可能性も
2023年9月竣工予定の、「ブリリアタワー浜離宮」は、JR浜松町駅徒歩5分の地上32階建て、総戸数422戸だが、2022年11月段階ですべての住戸が完売している。2020年段階の販売価格をみると、坪単価は600万円台だから、現在の中古マンションの取引価格よりも安い価格だった。
東京の湾岸部、たとえば江東区の豊洲エリアでは、数年前に竣工したばかりの築浅の超高層マンションが、新築の販売価格よりも高い価格で取引されるようになっているが、ここ浜松町でも同じような現象が発生している。
今後の新築マンション発売価格は中古マンションの取引価格よりも高い水準に設定されるであろうことは間違いなく、坪800万円、坪900万円などの価格帯もターゲットに入ってくるかもしれない。上層階などでは坪1000万円を超える住戸も出てくるだろう。
現に、前述した新築マンション「ワールドタワーレジデンス」では、2022年10月のオンラインプロジェクト案内会で、50㎡台2LDKが1億円中盤~、80㎡台3LDKが2億円台中盤~という発表があった。
2022年11月現在、詳細な販売価格は未定だが、2023年3月上旬からの販売予定なので、その前後には価格が明らかになるだろう。さすがに3A(赤坂、青山、麻布)などには及ばないまでも、それに次ぐ価格帯となりそうだ。
浜松町エリアと芝浦、竹芝エリアの一体化で、急速に発展する可能性
芝浦一丁目計画が完成する2030年度までには、浜松町駅周辺の整備事業とネットワーク整備が促進される。JR山手線などの「浜松町」駅の南東側で歩行者専用通路から敷地まで接続され、敷地内にひさしが設けられるので、駅まで雨に濡れずにアクセスが可能になる。
さらに、都営地下鉄大江戸線・浅草線の「大門」駅も、世界貿易センタービル内のデッキ経由でアクセスできるようになる。
浜松町、芝浦、竹芝方面の回遊性が高まり、エリアの活性化が一段と促進されるのではないかと大きな期待が寄せられている。
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