じぶん銀行住宅ローンの公式サイト

機械式駐車場は冠水リスクや管理費上昇のデメリットがある? マンション購入前に見落としがちな「駐車場問題」をプロが解説

2023年11月9日公開(2023年11月10日更新)
日下部理絵:住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家

マンション購入時、盲点になりやすいのが「駐車場問題」だ。 日本のマンションの88.5%に駐車場があるが、様々なリスクをはらんでいる。駐車場が埋まらないと車を持っていない人を含めて管理費等が上昇する可能性があるほか、30年ごとのリニューアルには多額の資金が必要だ。さらに機械式駐車場は冠水リスクもある。マンションの購入時には、ぜひとも駐車場の利用状況や規則、収支を確認しておきたい。

マンションの駐車場に空きが生じるとどのような問題が起こるのか?

駐車場に空きが生じるとどのような問題が起こるのか?
出典:PIXTA

全国のマンションに駐車場がどれくらいあるのか

 国土交通省が公表する「マンション総合調査(平成30年度)」の住宅部分の駐車場の有無および種類別設置状況によると、駐車場があるマンションは全体で88.5%にもなるという。内訳をみると平面式駐車場は78%、機械式駐車場は32.2%、立体自走式駐車場は5.3%(複数回答あり)となっている。

 特に東京圏では、平面式駐車場は66.3%、機械式駐車場は40.6%、立体自走式駐車場は6.1%となっており、土地スペースの有効活用とはいえ、維持費のかかる機械式駐車場の割合が多いのが読み取れる。

 さらに平成に入ってからは、機械式駐車場の設置率が増え、平成12年以降の機械式駐車場の設置率は50%を超える。特に平成22年~平成26年に完成したマンションでは60.2%ものマンションに機械式駐車場がある。

参考:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」

駐車場に空きが生じると何が起こる……? 

 では、駐車場に空きが生じると起こる問題とは何か。それは多くのマンションの管理組合が、駐車場使用料を管理費会計・修繕積立金会計の収入源としているため、駐車場使用者が減ると収入も減り、収支バランスが崩れてしまうことだ。

 例えば、1住戸1台の駐車場が確保されている50戸のAマンションがあるとする。月額使用料は1台1万円とする。近年の車離れにより、現在50台中10台が空いていると仮定した場合、マンションの管理組合に入る収入を見てみると、下記の通りになる。

 年間で120万円もの差が出るのだ。

【Aマンション/駐車場使用台数による収入差】

【満車】(50台中50台契約)の場合
月額1万円×50台=50万円
年間50万円×12カ月=600万円

【10台空き】(50台中40台契約)の場合
月額1万円×40台=40万円
年間40万円×12カ月=480万円

⇒600万円-480万円=120万円

 この120万円をざっくり50戸で割ると、1戸当たり24000円を負担しなければ、空き駐車場によって減った収入源を補填できない計算になる。

 平面式駐車場より維持費が高い機械式駐車場がある管理組合においては、空き駐車場によって使用料収入が得られないにもかかわらず、維持費負担という支出が伴い両側面からつらい状況である。

 特に駐車場使用料を管理費会計の収入にしているマンションでは、今までは収入減を余剰金や費用削減でなんとか乗り切っていたとしても、今般の物価高によって支出が増加しており、管理費の値上げを避けられない事態に陥っている。

機械式駐車場の維持費

 では、機械式駐車場の維持費は具体的にどれくらいかかるのか。

 機械式駐車場のコストは、毎年かかる維持費、故障などによる修繕費、耐用年数に達した時の交換費用からなる。毎年必要になる維持費は、1台当たりおおよそ1万円~1万2000円とされる。50台なら毎年50万~60万円かかる計算だ。

 そして25年~30年経過すると耐用年数が過ぎ、新品へ交換するなら1パレットあたり100万円程度かかるとされる。50台分なら目安として5000万円である。

 また耐用年数に達しなくても、年数が経過すれば故障や劣化による修繕費も必要になる。

 これらの費用は、駐車場の収支状況とは関係なくかかる。つまり、どれだけ空き駐車場があっても機械式駐車場が存在する限りかかり続ける。

 さらに、機械式駐車場の交換費用は長期修繕計画に組み込まれていないマンションも多い。そのため、当初設定されていた積立額では足りずに一時金の徴収や、修繕積立金の値上げという事態も起こっている

【関連記事】>>選んではいけないタワマンの特徴は? 大規模修繕で200万円超!? 購入後に後悔しがちなポイントを解説

マンション購入前に注意すべき駐車場問題

マンション購入前に注意するべき駐車場問題
出典:PIXTA

 車を所有していない住人からしたら、なぜ駐車場にまつわる負担が増えるのか、納得がいかない人も多いだろう。

 でも、だからこそ、車の有無に関係なく、購入前に駐車場に関する確認を怠ってはいけないということになる。

 下記、駐車場問題に巻き込まれないために注意するポイントをまとめた。

駐車場が空きすぎていないか確認する

 まずは、マンションの駐車場の使用状況(予定を含む)を確認すること。前述のとおり管理組合の駐車場に空きが生じ、収支バランスが崩れ問題となっているためだ。

 回避するためには何らかの対策を講じる必要がある。例えば、「駐車場使用料を値上げする」「外部の駐車場使用者を呼び戻す」「外部貸しをする」「空き駐車場をバイク置き場などに転用する」などがある。管理組合で何らかの空き駐車場の対策を講じていなければ遅かれ早かれ、あなたの懐にまで空き駐車場問題のしわ寄せがくる。

マンションの駐車場に関するルールを確認

 近年多いのが、機械式駐車場で停められるサイズと車両サイズが合わないことだ。

 一般的にマンションの駐車場は近隣相場よりも使用料が安く利便性もいいため、できればマンション内の駐車場を使いたいと思うであろう。しかし、ワンボックスカーやミニバンで機械式駐車場のサイズや高さ制限にひっかかり使用できないことが多いのだ。

 また昔の「マンションの駐車場問題」といえば、違法駐車のほか「駐車スペースが足りない」というものであった。そのため、いまだに「1住戸1台」などの制限や貸出ルールがされているマンションもある。実情に合っていないなら、早急にルールを見直すべきところである。

 駐車場の収支だけに特化した「駐車場会計」が別にあれば、原則として駐車場の使用者で収支を運営することになるため、多額の維持費がかかる機械式駐車場の長期修繕計画も立てやすく、駐車場使用料の改定もしやすい。こういった会計を行っているマンションは少数派であるが、機械式駐車場や空き駐車場にかかわるリスクは比較的少ないと考えていいだろう。

 なお、なかには駐車場が共用部分ではなく「分譲車庫権利付きマンション」として販売されていることもある。この場合、駐車場は使用料を支払わず利用できる。

機械式駐車場の冠水リスク

機械式駐車場の冠水リスク
出典:PIXTA

 さらに機械式駐車場は、近年のゲリラ豪雨や台風などによる大雨の被害で、冠水するリスクもある。

 短時間に想定を上回る大雨が降ることによって、排水が追い付かず、機械式駐車場と車両の両方が水没するほどの被害につながることがあるのだ。

 しかも、機械式駐車場の水災害はマンションの管理組合が掛けている保険では補償されないケースが多い。それは水災の支払い条件として、床上浸水、地盤面より45cmを超える浸水といった条件があるためである。機械式駐車場の冠水は、「床下」である地下ピットで起こることが多いからだ。

 もし購入予定のマンションや、自身が住むマンションに機械式駐車場があるなら、地下ピット式ではないか、排水ポンプが適切に維持管理されているか、インターロック解除キーなどの運用がうまく機能しているか、ハザードマップで浸水の危険性が高いとされている地域ではないか、早急に確認してほしい。

【関連記事】
>>マンション管理組合は、1300万円もの火災保険料値上げにどう対抗したのか? 保険内容の見直しで保険料の節約に成功した2事例を紹介!

>>管理組合向け火災保険は、数年で2倍以上の値上がり! 知らないともったいない、保険内容の見直しポイント5つ

まとめ

 繰り返しになるが、車を所有していないから、駐車場の問題と関係ないと思っているなら大きな間違いである。

 前述のとおり一定数の空きが生じることにより、駐車場の維持費すらまかなえず、修繕費などの費用負担をどうするかという問題を抱えるマンションが増えている。

 管理組合の収支バランスが崩れるということは、回り回って毎月の管理費や修繕積立金の値上げにつながる。なお一度、値上がりした管理費や修繕積立金を値下げするケースは少ない物価高や金利の上昇が続く今般、管理費等の固定費まで値上げされたら、家計に大打撃である。

 車の所有の有無にかかわらず、定期的に駐車場の空き状況と管理組合会計の収支、駐車トラブルなどがないか必ず確認しておきたい。

【関連記事】
>>こんなハズじゃなかった…! マンション購入後、住んでみて分かった後悔エピソード3選

 >>「隣人ガチャ」で大ハズレ…!ブラック住民がいるマンションを事前に見抜く方法はある?

  • RSS最新記事
TOP