闇バイト型強盗が急増するなか、積水ハウスが世界初の防犯サービス「駆けつけホームセキュリティ」を開始

2025年5月21日公開(2025年5月21日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

いわゆる「闇バイト」に応募してきた人に、強盗の実行役をさせる犯罪が増加している。犯罪のプロではないため、手口としては深夜にドアや窓を破壊して侵入し、住人に暴行を加えて金品を奪う乱暴なケースが多く、命を奪われる事件も発生している。こうした犯罪を防ぐため、積水ハウスは博報堂、ALSOKと連携し、世界初となる防犯に関する行動習慣を可視化し、その行動を価格に反映させる「駆けつけホームセキュリティ」をスタートさせた。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

住宅への侵入強盗が増加に転じている

 先進国のなかでも飛び抜けて治安のいい国といわれるわがニッポン。侵入強盗の認知件数は図表1にあるように年々減少してきた。

図表1 侵入強盗の認知件数とそのうちの住宅強盗の認知件数の推移(単位:件)

(出典:警察庁「令和5年の刑法犯に関する統計資料」)

 それが2023年には一転して増加してしまったのだ。2022年には侵入強盗は290件まで減ったのが、2023年には414件に増えた。うち住宅強盗が2022年は116件だったのが、2023年は131件だ。2024年にはさらに増えているのではないだろうか。

 増加の要因のひとつになっているのが、いわゆる闇バイト。「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」によって、高額報酬をうたって集められた、主に若い人たちが個人情報をネタに脅されて強盗を働いてしまう事件が増えている。なかには、不幸にもお金だけではなく、命を奪われる事件も発生している。その狙われる住宅としてはマンションよりは戸建住宅が多く、住宅業界としても対策を考えざるを得ない

積水ハウス、博報堂、ALSOKの共同事業「駆けつけホームセキュリティ」

出典:積水ハウス公式ホームページから

 そんな事情もあって、大手住宅メーカー各社とも防犯システムの充実に力を入れている。積水ハウスが2024年末からサービスを始めたのが、「駆けつけホームセキュリティ」だ。もともと、2023年8月から広告代理店大手の博報堂と協力して、ビッグデータを蓄積した生活ログをAIで解析し、住んでいる人の生活行動を分析、無意識の行動の源泉、潜在意識を可視化することを目指してきた。

 今回、それをさらに発展させて、ALSOKをサービス提供者として迎え、世界初となる在宅時の行動など、防犯に関する行動習慣を可視化し、そのレベルに応じてサービス価格を決定する「駆けつけホームセキュリティ」を2024年12月から実施している。

 このサービスのもととなる「スマートサービス」である「PLATFORM HOUSE touch」は2021年12月から実施されている。このサービスの採用は2024年12月段階で4100邸に及び、さまざまなデータが蓄積されてきた。

防犯意識、行動によってサービス価格が変化

 その成果を活かすと同時に、ALSOKと提携し、新たな防犯サービスをスタートさせた。

 「PLATFORM HOUSE touch」が採用された設備(窓鍵センサー、玄関ドア錠、火災警報器)などが異常を検知した場合、ALSOKに自動通報され、即座に警備担当者が現地に駆けつける仕組みとなっている。

 基本的な住まいの設備に後付けできる仕組みのため、大規模な専用機器の導入は不要。ただし、窓鍵センサーやドアロックなど、サービスに対応した機器を設置していない場合は、別途初期費用が発生する可能性もある。また、警備担当者による住まいの警備状態をアプリで離れた場所から確認できるため、安心して生活できる。

 さらに、「PLATFORM HOUSE touch」は、窓や玄関のドア、照明の操作といった防犯に関する住まい手の行動習慣を生活ログから分析・可視化し、そこから得られたアドバイスをアプリ上で提示する。

 このように、防犯に関する行動習慣の改善を促し、そのレベルに応じてサービス価格が変動する仕組みとなっている。たとえば、通常の行動レベルで月額5,600円だったものが、行動様式が向上すれば5,100円、4,600円と安くなる。最大で月額1,000円、年間では12,000円の差が生まれることになり、防犯意識と行動の向上が期待される。

 こうした意識や行動を価格に反映させる仕組みは、世界でも初の試みだという。

図表2 防犯行動によってサービス料金が変わる仕組み

今からでもできる、自宅の防犯対策

 闇バイトによる被害を防ぐためには、こうしたサービスを利用するだけではなく、さまざまな対策が必要になる。

 住宅への侵入強盗による被害は、物品や現金を盗まれるだけではなく、「自宅に見知らぬ者に侵入された」という、精神的なショックも大きい。いわば、心まで奪われてしまうわけで、トラウマとして長く、家族に影響しかねないだけに、警察庁、警視庁ではホームページなどを通じて、さまざまな啓発活動を行っている。

 そのうち、警視庁では、普段からのドアや窓に対する防犯対策、戸締りが大切として、次のような対策を紹介している。

ドアの防犯対策

CPマーク
CPマーク

 補助錠をつける。1つのドアに2つの以上の鍵がついていれば、侵入に時間がかかるため、泥棒が嫌がる。一般的に、鍵を開けるのに5分以上かかりそうだと、侵入を諦めるといわれている。

 ドアとドア枠に隙間があると、バールなどの工具を差し込んでドアが破壊される。そこでプレートを設置して隙間を無くせば被害を少なくできる。
 
 防犯性能の高いCP部品にすれば、ピッキングやサムターン回しを防止できる。鍵の場合、「CP認定錠」として、CPマークがついているので、モデルハウス、ショールームなどで確認できる。

窓の防犯対策には多少の費用をかける

 ドアだけではなく、窓も狙われやすい部位。1階だけではなく、上層階でも屋根や屋上から下がってくるなど、どの階でも対策が求められる。もちろん、地上から入りやすい戸建住宅の1階ほど対策が重要になる。

 ここでも、防犯性能の高いCP認定された窓にするのが安心。ドアそのもの、サッシ、ガラス、錠前、ウィンドウフィルムなどがある。

 最近の闇バイトでは侵入の素人ともいうべき若い人たちが、強引に窓を破ろうとするケースが増えているので、防犯ガラスやウィンドウフィルムなどは有効だろう。

 そのほか、玄関などに人の動きを察知してライトが点灯するセンサー付きライトを設置する、カメラ付きのインターホンにする、マンションでは当たり前になっているオートロックシステムを戸建住宅にも取り入れるなどの対策も効果的だ。多少の費用がかかるが、生命・財産を守るために必要な費用ではないだろうか。

戸建住宅では外回りの対策も欠かせない

 戸建住宅においては、外回り、いわゆる外構部分についても防犯対策が必要になる。マンションだと共用部分については、マンション全体、管理組合、管理会社が対策してくれるが、戸建住宅はすべて自己責任で対応しなければならない。

 まず、侵入されても周囲から視認できる見通しのよいフェンスを設置する。ブロック塀のほうが安心という気もするが、それだと乗り越えられると外部からは見えなくなってしまう。むしろ、編み目などの見通しのよいフェンスのほうが有効といわれている。
 
 庭先に砂利を敷くのも効果的。侵入者が敷地内を歩くと音が響くため中にいる人が気づきやすいし、侵入者は嫌がるので、多少なりとも安心感が高まる。

基本をシッカリすれば闇バイトの侵入は防げる

 以上のように対策をとっていても、日頃からの心がけが肝心。先の積水ハウスのシステムのように、防犯意識を高め、日常的に対策をとっておきたいところだ。外出時、就寝時の戸締りは当たり前だし、外出時に合鍵などを玄関周辺、郵便受け、植木鉢などにおいておかないようにする。

 2階から侵入されやすくなるので、庭に脚立やポリバケツなど足場になるようなものは置かない、旅行時に新聞や郵便物がたまると留守を知らせるようなものなので、あらかじめ新聞配達所に連絡して配達をストップ、新聞がたまらないようにする。また、普段から近所への挨拶、声かけなどの近所付き合いを行っておけば、地域の目で住まいを守れるようになる。

 闇バイトによる侵入は、ある意味では素人同然なので、逆にいえば以上のような対策をキチンとしておけば、侵入被害を防げる可能性が高いのではないだろうか。

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