【元ソニー不動産幹部が暴露】相続直後に届く大量のDM、情報はどこから漏れている? 不動産業界の裏側と「騙されない」業者の選び方

2026年2月3日公開(2026年2月3日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

不動産を相続した途端、大量に届くDM。なぜ彼らは情報を知っているのか?そこには1件わずか10円で情報を入手する手口があった。元ソニー不動産幹部で、不動産業界の裏側を知る風戸裕樹さんが、YouTubeチャンネル「ダイヤモンド公式チャネル」で、怪しいDMの実態と損をしない業者の選び方を解説した。

野口:ダイヤモンド不動産研究所副編集長の野口です。今回は不動産を相続すると大量の怪しいDMが届くという「不動産あるある」について取り上げたいと思います。解説いただくのは、元ソニー不動産幹部で、現在はProperty Access株式会社の代表を務める風戸裕樹さんです。

風戸:よろしくお願いします。

野口:早速ですが、不動産を相続するとDMが来るというのはご存知ですか?

風戸:そうですね。不動産仲介会社は常に売主さんを探していますので、売る可能性の高い相続をされている方にDMを送る会社は多いと思います。

「すでに買い手がいます」はチラシの時代からの常套句

「すでに買い手がいます」といった常套句は、8割方怪しい

野口:では、実際に送られてきた手紙DMの中身を見ていきましょう。一つ目は、ある銀座の不動産会社からの手紙です。「この度、取引先の経営者の方から、税金対策のため●●周辺の一棟収益物件の購入相談を受け、近隣に不動産をご所有の方に手紙を出させていただきました」と書いてあります。

風戸:相続して1年以内に売るケースが多いので、売主さんと接触したいというのが狙い。内容もよくあるものです。「取引先の経営者の方から、収益物件の購入相談を受け…」とありますが、要するにこれは「すでに買い手がいますよ」ということ。長年使われてきた定番のフレーズです。正直に言うと、8割方怪しいですね。

野口:やはりそうなんですね。

風戸:そもそも収益物件を投資で買うわけですから、利回りが良ければ特定のエリアに固執する必要はありません。池袋でも渋谷でもいいわけです。「融資の心配がない」と強調しているのも、売主さんからすると、ローン特約で契約が白紙になるリスクがないというのは魅力的ですからね。そこを強調して、「確実に買ってもらえる」と思わせたい魂胆が見え見えです。

「○○情報を参考にご連絡」はクレーム対策兼個人情報収集

不動産会社は、登記情報をもとにDMを送ってくる

野口:次はこちらです。面白いのが、「不動産の登記情報を参考にご連絡させていただいております。ご連絡が不要な方は、上記電話番号まで配信停止の旨をお伝えください」と書いてあること。これは何が狙いなのでしょうか?

風戸:登記簿を確認してそれをもとにDMを送るわけですが、仲介もやっていた私の経験から言うと、返信の3件に1回は「なんで俺の不動産情報を知ってるんだ」というクレームなんです。「登記情報を参考に送付」という一文が添えられているのは親切心でもなんでもなくて、単なるクレーム対策にすぎません。

野口:こうやって電話させることで、電話番号を入手する罠なんじゃないかと邪推してしまったのですが……。

風戸:そうですね。わざと電話をかけさせて、あわよくば在宅確認や情報を引き出そうという狙いもあるかもしれませんが、クレームの電話をしてきた顧客から仲介を取るのは至難の業なので、そこまで邪推する必要はないでしょう。

相続した瞬間に業者が群がる「1件10円」のカラクリ

野口:実は編集部で、実際に法務局に行って調べてみたんです。世田谷区だけで、1ヶ月に相続によって登記が変わった物件が169件ありました。驚いたのは、この情報を取るのにかかったお金です。わずか1000円ちょっとでした。つまり、1件あたり約10円という安さで相続情報を手に入れ、DMをバンバン送っているわけです。

風戸:そうなんです。情報はすべて法務局から出ています。今はオンラインで誰でも登記情報を取得することもできます。プロである不動産会社は、この仕組みを使ってオーナーを特定しているんです。

野口:これは違法じゃないんですよね?

風戸:はい、公開情報ですので違法ではありません。登記情報は公開しないとむしろトラブルのもとなので、誰でも見られるようになっています。それを逆手に取っているわけです。

不動産業者が狙う「両手取引」と利益相反

野口:こうしたDMを送ってくる業者の本当の狙いは何なんでしょうか?

風戸:彼らの本当の狙いは、「知り合いの業者に早く回す」あるいは「自社でキャッシュ買取する」の2つです。手紙一発で物件を仕入れられれば、何のマーケティングコストもかかりません。

野口:そこで問題になるのが「両手取引」ですね。

風戸:はい。仲介会社が自社で見つけた買取業者にすぐに売らせてしまえば、売主と買主(業者)の両方から仲介手数料をもらえます。手数料は約3%なので、一撃で約6%になります。さらに、安く買った業者が転売するときにまた仲介に入れば、一度の物件で何度も手数料を稼ぐことができます(※編集部注:業界ではこのことを「往復ビンタ」と呼んでいる)。

野口:それは業者にとっては美味しい話ですが、売主にとってはたまったものではないですね。

風戸:その通りです。仲介会社にとっては、価格を下げてでも早く取引を成立させた方が儲かるというインセンティブが働いてしまいます。本当は一億円で売れる物件であっても、あの手この手で売却を急かしてきます。これは売主の利益と相反する行為です。両手取引自体は違法ではありませんが、売主側にとっては見えないところで損をする可能性があるんです。

絶対に損しない業者の選び方とは?

野口:どうやって信頼できる不動産会社を選べばいいのでしょうか。

風戸:物件のタイプによって異なります。まず、戸建てや土地の場合、一般の個人が買わないような古い物件や広い土地は、建売業者などが買い手になることが多いです。そのため、そういった業者へのネットワークを持っている会社であれば、大手でも中小でも大差はありません。

野口:マンションの場合はどうですか?

風戸:マンションや一般的な戸建ての場合は、今の時代、購入検討者はインターネットで物件を探します。ですから、SUUMOやLIFULLHOME'S、アットホームといった大手ポータルサイトに漏れなく掲載してくれるかどうかが極めて重要です。

野口:大手なら安心というわけではないんですか?

風戸:実は、大手不動産会社であっても、囲い込み(※編集部注:自社で購入する顧客も見つけて両手取引にするために、他の不動産会社から問い合わせがあっても断る行為。これは違法となる)のために自社のサイトにしか載せないケースや、ポータルサイトの掲載枠の都合で載せないケースがあります。契約する前に「主要なポータルサイトすべてに掲載してくれますか?」と確認し、掲載後の問い合わせ数や閲覧数をきちんと数字で報告してくれる会社を選んでください。

野口:透明性のある報告ができる会社かどうかが大事なんですね。

風戸:はい。あとは、もちろんサービス面も大切です。最近では、家具や照明を配置してモデルルームのように演出し、買い手のイメージを具体化させる「ホームステージング」の有無や、シロアリの有無、家の傾きなどを確認する「インスペクション」をどこまで実施してくれるか。そうした付加価値も含めた全体像で判断しましょう。

不動産会社選びは、総合力で判断する

野口:売却の入り口で判断する方法はありませんか?

風戸:それは、営業担当者の個人の資質になってきますね。それを見極められるのが、訪問査定です。訪問査定の際は、質問に対して的確に答えられるか、「気遣い」ができるかなどをこちらからも査定してやりましょう。ここは大手でも中小でもあまり差がありません。当然、相性もあります。

野口:気遣い、というのは具体的にどのようなことですか。

風戸:例えば、頻繁に電話をかけてくるのではなく、「日中はお電話がつながりにくいですか?それならメールのほうがよろしいですか?」と聞いてくれるような担当者です。そういう配慮ができる人は、買主との交渉でも相手を気遣い、うまくまとめてくれる可能性が高いです。会社の看板ではなく、その人個人の対応力を見てください。

野口:実際の取引で、他に気をつけた方がいいことはありますか?

風戸:そうですね。不動産会社を、無理に一社に絞る必要はないということでしょうか。二社程度で競わせることによって、こちらが主導権を握れやすくなります。特に相続での売却を考えている方は、相続税の支払いなどは期間が決まっていますから、それまでの期間でしっかりと資金化までのストーリーが選べる会社を選びましょう。

野口:DMを送ってくるような会社は選ばない方がいいですか?

風戸:もちろん一概には言えませんが、少なくとも、すぐ「買取が決まった」とか言ってくる業者は切ってしまっていいと思いますね。

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(次ページに解説動画あり)

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