マンション購入時にはローン返済のことで頭がいっぱいだという人が多いが、毎月の支払いはローンだけではない。管理費や修繕積立金などのランニングコスト(維持費)がある。特に首都圏では、近年のマンション価格高騰の影響で、管理費は年々上昇を続けている。購入後の家計を考えるうえで、注意が必要だ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
管理費はマンション購入後、大きな負担に
毎月支払いが生じるマンションのランニングコストには、管理費、修繕積立金、駐車場代などがある。マンション購入後の家計管理を考えるときには、ローン返済金と併せて、こうしたランニングコストの負担も念頭において資金計画を組み立てなければならない。
中でも管理費は金額が大きく、マンションによって金額差がある。充実した管理にはそれなりの管理費の負担が必要になるし、反対に、管理にはさほど期待しない、最低限の管理で十分という人なら、管理費負担の少ない物件を優先的に探すという方法もありだろう。いずれにしても、現在の管理費の実情を知っておく必要がある。
首都圏の管理費は、分譲価格に比例して上昇
まずは、前項の月額管理費の平均を見てみよう。2019年の平均は、首都圏が1万9085円、中部圏が1万2541円、近畿圏が1万1346円だ。
下の折れ線グラフをみれば分かるように、この10年ほどは、どのエリアでも管理費が上昇している。特に首都圏の上がり方が顕著で、2010年には月額1万6116円だったのが、2019年には1万9085円だから、9年間で18.4%上がっている計算だ。
月額管理費は分譲価格に比例して上昇する傾向がある。マンションが高額になりハイグレードになると、24時間有人の管理体制になったり、コンシェルジュサービスが追加されるなどして管理費は上がる。
首都圏の新築マンション価格を見ると、2010年は4716万円で、2019年が5980万円だから、9年間で26.8%上がっている。同じ期間の管理費の上昇率は18.4%だから、分譲価格に比例するとすれば、管理費はもう少し上がってもおかしくない。
しかも、分譲価格の平均は2019年の5980万円から2020年には6083万円と、もう一段階上がっており、2010年からの上昇率は29.0%に達する(※価格は不動産経済研究所のデータから)。それも考慮すれば、2020年、2021年と管理費はさらなる上昇が想定されるので、これからのマンション選びに当たっては注意しておくべきだろう。
月額のマンション管理費は、近畿圏より中部圏のほうが高い
先に見たように、マンションの管理費は首都圏が最も高く、ついで中部圏で、三大都市圏のなかでは近畿圏が最も安くなっている。分譲価格に比例するとすれば、中部圏より分譲価格が高い近畿圏のほうが管理費が高くなってもおかしくないのだが、そうはなっていない。
このあたりは、エリアによる管理に対する考え方の違いがあるのだろうか。中部圏の愛知県を例にすると、名古屋人はふだんは倹約家だが、必要なことにはお金を惜しまないという合理主義で、それがトヨタ自動車など、世界に冠たる製造業を生み出してきたといわれる。そんな考え方が管理にお金をかけることを惜しまないという考え方につながるのかもしれない。
ただ、それでも首都圏に比べると月額管理費は少なく、分譲価格に比例するという考え方は変わらない。それは、三大都市圏による違いだけではなく、首都圏だけをとってみても、エリアによって違ってくる。
東京都の管理費は、月額2万円以上と高額
首都圏のエリア別の2019年の月額管理費は図表2のようになっている。首都圏平均では1万9085円だが、東京都はそれよりも高く2万1753円と2万円を超え、東京都のなかでも東京23区に限れば、2万2911円とさらに高くなる。分譲価格も首都圏では東京都が最も高く、東京23区はさらに一段と高くなる。それに合わせて管理費も高くなっているわけだ。
首都圏のなかで管理費が首都圏平均よりも高いのは東京都だけで、次いで高いのは神奈川県の1万5171円。横浜市は1万6381円と神奈川県全体より高いものの、東京都の管理費には及ばない。
埼玉県と千葉県はいずれも1万4000円前後で、1都3県のなかでは比較的管理費が安くなっている。特に、千葉県は県庁所在地の千葉市の管理費が千葉県全体より安くなっているのが目立っている。
これは、千葉県の分譲価格を見ると東京寄りの浦安市、市川市、船橋市などの分譲価格のほうが高い傾向にあり、その分管理費が高くなるが、東京からやや離れた千葉市の分譲価格はやや低くなり、その分管理費も安くなっているといっていいだろう。
管理費が高くなるのは、総戸数が50戸未満と500戸以上のマンション
エリアと同時に、マンションの戸数規模、最高階によっても管理費は大きく異なってくる。
まず、戸数規模別の月額管理費は図表3にある通りだ。首都圏平均で見ると、50戸未満のマンションは2万3111円だが、戸数が増えるほどに1戸当たりの管理費は安くなる。戸数別で最も管理費が少ないのは300戸以上500戸未満の1万3082円となっている。
日常の清掃、来客対応などの最低限の管理サービスは、どんなマンションでも必要なため、戸数が少ないと1戸当たりの管理費負担額は相対的に高くなる。それが、戸数が増えるほどスケールメリットから1戸当たりの負担額は減少していくわけだ。
しかし、500戸以上の規模の大きなマンションは2万2776円と、50戸未満のマンションとほぼ同じ水準の高い管理費になる。戸数が増えると、その分共用施設なども多くなり、管理すべき共用部分が増えると同時に、物件によってはコンシェルジュサービスなど、管理サービスの内容の水準が上がることが多く、それが1戸当たりの負担を押し上げる要因になる。
一般的には、高層になるほど管理費は上昇
首都圏では、30~40階建てが一番高い
マンションの階数によっても管理費が違ってくる。図表4にあるように、20階未満の中高層や低層マンションの首都圏全体の平均は1万8751円だが、20階以上のタワーマンションになると、1万9341円とやや高くなり、30階以上の高層タワーマンションでは2万7701円に跳ね上がる。
その後、40階建て以上の超高層タワーマンションは2万5738円とやや少なくなる。ただ、ここにはないが近畿圏の最高階数別の管理費を見ると、30階建て以上より、40階建て以上が最も高くなっており、最高階数と管理費が完全に正比例している。
一般的に、超高層タワーマンションの多くは豪華な共用施設、充実した管理を売り物にする物件が多くなる。そのため、階数が高くなるほど、管理費も高くなるといっていいだろう。
管理費は、サービス内容と金額を比較して見極める
以上のように、マンションの管理費は、エリアや戸数規模、最高階数などによって大きく異なっているので、購入希望物件の物件概要に応じて、管理費の妥当性をチェックする必要がある。
同時に、金額だけではなくどこまで管理してくれるのか、そのサービス内容とコストの妥当性の見極めが重要になる。できれば同じエリアの同規模の物件とサービス内容、管理費を比較して検討したいところだ。
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