悪質なリフォーム会社にだまされないようにするには、どうすればいいのか? このような会社には共通する特徴がいくつかあるため、その特徴を事前に確認すればだまされる確率は低くなります。これからリフォームを検討している方は、ぜひ確認しましょう。(一級建築士・不動産ライター:三澤智史)
悪質なリフォーム会社が増えている
住宅の取得やリフォームに関して、トラブルや不安を抱える消費者の相談窓口「住まいるダイヤル」に寄せられる相談件数は毎年のように増加しており、リフォームに関する相談は、2020年度と比べて2021年度では20.1%も増加しています。
【住宅トラブルに関する相談件数の推移】
中でも注目されているのは、悪質なリフォーム会社によるトラブルです。「不当に高額な費用請求」「不要な工事の実施」「工事をせずに代金を持ち逃げする」「当初の予定と異なる設備を設置し追加費用を請求」といった事例が報告されており、消費者庁や、国土交通省でも注意喚起を行うなど、社会問題となっています。
このようなリフォーム会社が増えているのには、いくつかの理由が考えられます。
まず、リフォーム会社は開業するのに資格や免許が不要で、参入障壁が低いことが考えられます。500万円以上の工事をするためには、「建設業許可」を取得している必要がありますが、リフォームの多くは500万円未満の軽微な工事であるため、建設業の許可を受ける必要がありません。
そして、数千万円やそれ以上の金額がかかる新築工事と比べて、リフォームにかかる金額は数十万円から数百万円と比較的安いため、契約が取りやすいことも、悪質リフォーム会社が増える原因の一つでもあるでしょう。
なお、建設業の許可を受けている会社でも、不当な追加費用を要求するマナーの悪い会社は多く存在します。建設業の許可を受けていることは、必要最低条件であると考えておいてもいいくらいです。
悪質リフォーム会社に共通している特徴とは?
私がこれまで建設業界で働いていて分かった、悪質リフォーム会社に共通する特徴をいくつか紹介します。以下のような発言・行動があるリフォーム会社には、工事を依頼するのは避けた方がいいでしょう。
1. 不安をあおるような説明をする
悪質なリフォーム会社は、消費者に対して大げさな表現を使います。不安をあおることで、契約を結ぼうとしているのです。優良なリフォーム会社であれば、消費者の意向を聞き取り、その意向に沿った提案をするため、不安をあおるような表現は使いません。
例えば、耐震性能についての不安をあおるために、「このまま放置すると、地震が起きたら家が倒壊してしまいますよ!」といった表現です。しかし実際は、建築基準を満たさない違法建築物でさえも「決して許されることではないが、実際に地震が起きても完全に倒壊する可能性は低い」と考えている専門家も多いのが実情です。ですので、このようなあおりを受けても簡単に信じないようにしましょう。
例えば、「雨漏りしてしまうので修理したいんですが……」「近くの家をリフォームしている際に、お客様の屋根が割れていることに気が付きました」という表現は、よくある手口のため注意が必要です。
2. 大幅な値下げをしてくる
打ち合わせ初期の段階で高めの見積金額を提示し、最後に大幅な値下げをすることで、消費者に得をしたような気持ちにさせるのも特徴的な手口です。
しかし、優良なリフォーム会社であれば、ある程度固定された金額で提示することが多く、打ち合わせの最後に大幅に金額が変わることはありません。
「大型連休前なので、今なら給湯器の設置や浴室のリフォーム工事を半額にすることができます」「今月中に契約すれば近場の工事と一緒にできるため、運搬費を値引きできます」
といった値引きもよくある手口なので、簡単に信じないようにしましょう。
3. 契約書での契約を交わさず、口約束だけである
信じがたいことですが、契約書を作らず口約束だけで工事を始めるリフォーム会社もあります。
契約書を作りたがらない理由は、依頼されたリフォーム箇所がどこなのかという証拠を残さないためです。こうしたリフォーム会社は、依頼者の承諾を得ずに勝手にリフォーム箇所を増やして、多額の請求をしてきます。
例えば、「無料点検」と称して家にやってきて、点検結果とリフォーム内容を口頭だけで伝え、そのあと勝手に給湯器や設備機器を設置し、多額のリフォーム代を請求するという手口があります。
このケースだと、打ち合わせの履歴も残っていないので、「言った・言わない」の事態になり、消費者にとっても反論する手段がなく、非常に悪質です。
4. 見積書に詳しい内訳がない
見積書に「リフォーム箇所」や「数量」や「単価」など、詳しい内訳が記載されておらず、「一式でいくら」といったあいまいな表現になっていることがあります。
リフォーム工事はやってみないと実際の費用が判明しにくいものなので、一般的によく使われる表記ではあるのですが、これがあまりにも多いと問題です。見積もり金額を曖昧にするのは、追加費用を請求しやすくなるからです。
そのため、リフォームが終わった後に「見積書には記載されていない箇所も、リフォームしなければいけないことが判明したため、リフォームしておきました」といった説明をして、消費者に追加の費用を請求することがあります。
例えば、見積書に「木部塗装が一式で5万円」と記載されている場合、窓枠や建具や下足箱など、塗装にはさまざまな箇所が考えられます。塗装する箇所や㎡数を、見積書に詳しく記載してもらうことが大事です。
なお、もらった見積書に不安がある場合は、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターで紹介している「リフォーム見積書セルフチェックのポイント」を参考にして、不備がないかを確認することをおすすめします。
悪質リフォーム会社の具体的な事例
悪質リフォーム会社の手口はさまざまですが、いくつかのパターンに分けることもできます。これまでに起こった事例を確認して、同じような会社に遭遇したときは悪質であるかどうか疑うようにしましょう。
事例1. わざと屋根材を壊してリフォーム費用を請求
消費者が普段の生活では見ることができない「屋根」は、悪質リフォーム会社の標的にされやすい傾向があります。
屋根であれば、わざと壊してもバレることはほとんどないからです。
よくあるのが「近くに寄ったので、もしよければ無料で屋根の点検をしますよ」などと声をかけ、屋根にのぼると屋根材をわざと割り「屋根材が割れているので、修理させてください」と言って契約を結ばせるケースです。
屋根だけではなく、アンテナや雨樋などの設備を壊すこともあります。
事例2. 事前に用意したシロアリを見せて、駆除作業の契約を結ぶ
訪問営業などで「床下の点検を無料で行います」と言い、シロアリ駆除の契約を迫るケースもよくあります。悪質なリフォーム会社は、事前にシロアリと腐食した木材を用意して、実際にいるはずのないシロアリが床下にいたかのように偽装します。
また、床下工事では、効果のない補強金具や換気設備が勝手に設置されたケースもあり、その分の費用を支払うことになってしまいます。
事例3. 通気フィルターを高額で請求
こちらも訪問営業ですが、通気口の無料点検を提案し、その後通気フィルターを高額で請求することがあります。「管理会社の担当の者ですが……」と偽って消費者を安心させたり、「マンションの入居者様はみんなこのフィルターを取り付けています」と言って必要だと思わせることで、契約を促します。
訪問営業に来る時期は、引っ越して間もないタイミングが多いです。「換気扇の使い方を説明させてください」と言われることが多いため、断って部屋の中に入れないようにしましょう。
事例4. 手抜き工事による仕上がりの悪さ
よくあるのが、壁や天井のクロスの貼り替えにおいて、クロスの継ぎ目や表面が凹凸だらけで、仕上がりが悪いケースです。これは、作業を早く終わらせ、人件費を削減するために、手抜き工事になっていることが原因です。
既存の壁紙を剥がして凹凸をなくすための下地処理や、カッターを入れて継ぎ目を目立たなくする作業には、十分な作業時間が必要です。そのような大事な作業を省き、お金だけをもらう「やっつけ仕事」をするリフォーム会社が存在するので気をつけましょう。
事例5. 水回りリフォームで、きちんと寸法を図らない
水回りのリフォームにおいて、設備の収まりが悪いといったことがあります。水回りにはさまざまな設備が集まっていて、工事前には、配管の位置や、衛生器具の寸法をすべて調べておくことが必要です。ところが、悪質なリフォーム会社は、その手間を惜しんでいます。
便器に座ると膝が壁にぶつかってしまう、トイレットペーパーに手が届きにくい配置になっているなど、さまざまな問題が発生してきます。
悪質リフォーム会社に騙されないための対策
リフォームについて専門的な知識がなくても、悪質なリフォーム会社に騙されないためにできる対策はあります。これらの対策により、会社が悪質であるかどうか判断でき、だまされる確率を大幅に減らせます。
・訪問営業の会社ではなく自分で調べて選ぶ
・複数社から相見積もりを取る
・社歴が長い会社を選ぶ
・追加工事や納期遅延が発生しないかどうか聞く
・リフォーム代金は2回に分けて支払う
・訪問営業では屋根にのぼらせない
訪問営業の会社ではなく自分で調べて選ぶ
リフォーム会社を選ぶ際は、訪問営業の会社ではなく、自分でインターネットなどを使って調べて選びましょう。訪問営業によるリフォームのトラブル相談件数は、年々増えていて、非常に問題視されているからです。
多くのリフォーム団体においても、訪問営業をしている会社に対しては、団体への入会を認めないほどです。
一方で、インターネット検索でも注意しなければいけないのは「検索上位に表示されている会社が必ずしも良いとは限らない」ということです。特に、検索上位に表示されるリスティング広告は、悪質なリフォーム会社が検索エンジンにお金を払って、意図的に上位表示させている可能性があります。
その会社の施工実績や口コミも含めて判断しましょう。
複数社から相見積もりを取る
リフォーム前には3社ほどから相見積もりを取り、リフォーム代金を比較しましょう。こうすることでリフォーム代の相場を把握できるので、不当に高額な見積もりを出してくる悪質リフォーム会社を避けることができます。
また、相見積もりを取る際は、各リフォーム会社に「他社との相見積もりをしています」と伝えるようにしましょう。そうするとリフォーム会社は、他社よりも良い提案をするように努めます。
しかし、5社以上の相見積もりをしている場合、それを伝えるとかえって逆効果になる可能性もあるので注意です。「自分たちの会社を選んでもらえない可能性が高い」とリフォーム会社が不安になりますし、「このお客様は価格のことしか考えていないのでは……」と、優良なリフォーム会社でさえも辞退してしまうことが考えられるからです。
価格のみならず技術力を含めて総合的に提案できる会社も存在するので、頑張って提案したいと思ってもらうために、相見積もりの会社は3社ほどにして伝えておくのがいいでしょう。
社歴が長い会社を選ぶ
工事を依頼するのは、できれば10年以上社歴がある会社を選びましょう。同じ地域に根付いて営業を続けている会社は、その社歴の長さだけでも誠実な仕事をしてきた証明になります。
悪質なリフォーム会社は、不正を繰り返すたびに新しい会社を立ち上げるため、社歴が短く1~2年程度です。本社の所在地も住所だけが存在するバーチャルオフィスであることが多く、不正の後には音信不通にして逃げやすい態勢を取っています。
追加工事や納期遅延が発生しないかどうか聞く
リフォーム会社と打ち合わせの際、追加工事が発生しそうな箇所を聞いて確認しておきましょう。優良な会社であればリフォームの経験が豊富なので、必ず答えてくれます。
ときには「追加工事が発生したとしても追加の費用は掛かりません」と言ってくれることもあります。一方で、「工事が始まってからでないと分かりません!」と乱暴に答える会社は、やや注意が必要です。
また、納期が遅延しそうな設備器具があるかどうかも、ついでに聞いておくとよいでしょう。最近は、世界情勢の悪化により、設備機器の価格高騰や、納期の遅延が発生しています。納期が間に合わず、代わりに性能の高い設備機器を設置することで、追加の費用を支払うことにならないかどうか、念押しして確認することが大事です。
リフォーム代金は2回に分けて支払う
リフォーム代金は、リフォーム前の着手金とリフォーム後の完工金の2回に分けて支払いましょう。工事前に全額を支払うのは絶対におすすめできません。工事をせずに逃げられてしまう可能性があるからです。
着手金の割合は一般的に全体の3~5割です。もちろん支払い回数や割合には例外もありますが、悪質リフォーム会社であるかもしれないという疑いの目をもって打ち合わせに臨みましょう。
訪問営業では屋根にのぼらせない
前述したように、屋根の点検を口実にして「屋根にのぼらせてくれませんか」と訪問営業で提案されることがありますが、必ず断るようにしましょう。のぼらせてしまうと、屋根材を意図的に壊されてしまい、リフォームの提案とその代金を要求されるからです。
のぼらせてしまった時点で、屋根材が経年劣化など自然に壊れたものなのか、意図的に壊されたものなのか、判断できなくなります。
どうしても屋根の状況が気になる場合は、新築のときに施工した会社に点検を依頼しましょう。
【関連記事】>>悪質な「火災保険金請求サポート業者」に要注意! 法外な手数料や違約金がトラブルに
被害に遭ってしまった場合は?
以上、悪質なリフォーム会社について解説しました。トラブルの相談件数は年々増えていますが、悪質な手口のパターンは決まっているため、ここで解説した対策をすれば被害に遭う確率は低くなります。
しかし、それでも被害に遭ってしまった場合は、国民生活センターや住宅リフォーム・紛争処理支援センターなどに相談してみましょう。トラブルに詳しい専門家に相談できます。
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