「一流ハウスメーカーでも震度7に耐えられない」は本当か? 熊本地震の住宅被害投稿から地震に強い家づくりの本質を考える

2026年10月6日公開(2026年10月6日更新)
まかろにお:住宅系YouTuber

2026年7月に起きた熊本地震の発生後、多くの住宅被害が出ている様子が連日SNSで投稿されました。ハウスメーカーで建てた家に住む人やこれから建てる人は、SNSで拡散される震災の被害報告をどう受け止めたらいいのか。注文住宅に詳しいまかろにお氏が、地震に強い家づくりについて解説します。(※本記事は、YouTube「まかろにおハウスメーカー&工務店攻略」2026年8月2日の公開動画を要約したものです)

有名ハウスメーカーで建てた家なのに?と不安視する声

 2026年7月、熊本地震が発生し、現地の方々は非常に不安な思いをされていることとお察しいたします。私は以前の震災時にもボランティアとして現地に入りましたが、今回も募金など自分にできる支援を続けていきたいと考えています。

 昨今、X(旧Twitter)やスレッズなどのSNSでは、被災地の状況がリアルタイムで共有されています。特に注文住宅に特化した被害状況なども容易に取得できる時代になりました。しかし、こうした情報は有益な側面がある一方で、悪い側面ばかりにフォーカスしてしまうと、これから家を建てようとしている方を過剰に不安にさせてしまう要素も孕んでいます。

 今回、SNSで大きな反響を呼んでいたある投稿がありました。震度7で築浅、地震に強い家がぐちゃぐちゃに。これでも全壊じゃないから地震保険がほとんどもらえない。家中ヒビだらけで粉まみれだが、これは修理できるのか。もう一発震度7が来たら倒壊するのでは、といった切実な声です。

 コメント欄を見ると、この家が一条工務店の物件であることが分かり、多くのショックを与えていました。「一条でもこうなるのか」「地元の工務店で建てた我が家はどうなるんだ」といった不安の声が広がっていました。

 確かに一条工務店は性能を重視しており、木造は鉄骨よりも地震の被害が少ないというアピールもしています。それを信じていた方からすれば、投稿された画像は衝撃的だったかもしれません。

 しかし、ここで冷静に考えていただきたいのは、震度7という揺れは多くの人が想像する以上に凄まじいものだということです。どんなに頑丈な家であっても、まったく揺れないということはあり得ません。

 むしろ私は、この画像を見て「倒壊せずにこの程度で済んだことが、逆にすごいことだ」と感じました。クロスの割れや可動棚の外れ、粉が舞うといった状況は、命を守るという観点では建物がしっかり役割を果たした証拠でもあります。

 修理費用についても、過度に恐れる必要はないと考えています。一条工務店の過去の傾向から推測すると、クロスの張り替え程度であれば、積算部門の見積もり負担などを考慮して無料対応になる可能性もあります。もし仮にお客さまの負担になったとしても、ボードの貼り替えとクロスの修復で済むのであれば、7万円程度の負担で済むのではないかと見ています。

 他には、ある大手ハウスメーカーで建てた家の壁に亀裂が入った、といった投稿も目にしました。これに対し、「耐震だから揺れる」「ユニットのズレがある」といったさまざまな憶測が飛び交っていました。

 しかし、正直に申し上げて、この投稿内容だけで「ハウスメーカーの工法が要因で被害を生んだ」と結論づけることはできません。住宅の地震被害は、地盤の違い、揺れの向き、建物の配置、間取り、地震エネルギーの伝わり方など、無数の要因が重なって決まるからです。地盤については、数十メートル離れるだけで性質が変わることも珍しくありません。

 ハウスメーカーが劣っているわけではなく、壁の亀裂は耐震等級3の住宅でも内装被害としてよく起こる現象です。むしろ、家族の命を守りきったという意味で、この家は良い仕事を果たしたと言えるでしょう。

耐震等級だけでは地震に対抗できない

 もう一つ、非常に重要な指摘をされていた投稿がありました。「耐震等級3、許容応力度計算の建物だけでは意味がなく、適切な立地、地盤選定、地盤補強工事までセットで重要だ」という内容です。

 これはとても本質的な話です。多くの人が混同しがちなのですが、「地盤の硬さ」と「地盤の揺れやすさ」は全くの別物です。耐震等級3という指標は、あくまで建物の強さを表すものであり、地盤の液状化や地滑り、大規模な不同沈下までを保証するものではありません。

 たとえ不同沈下に耐えられる硬い地盤であっても、地盤が持つ「増幅特性」と建物の揺れが共振してしまうと、家が倒壊するリスクは高まります。地震に強い家を作るためには、耐震等級3を取得するのはもはや「当たり前」の前提として、それ以上に「強い地盤の場所を選ぶこと」が重要になってきます。ハザードマップの確認、丁寧な地盤調査、そして適切な地盤改良といった対策を総合的に行うことが家づくりのポイントです。

災害時に自宅を「避難所」にするための設備投資

 震災時には停電も深刻な問題となります。熊本県内でも約4万7000件以上が停電したというニュースがありました。こうした状況で頼りになるのが、太陽光発電や蓄電池、あるいはEV(電気自動車)とV2Hの組み合わせです。

 太陽光パネルについては、将来的な処分問題(2030年代後半には年間最大50万トン程度の排出想定)を懸念する声もありますが、私は条件が合えば積極的に載せる価値があると考えています。太陽光は単なる「電気代削減設備」ではなく、生活インフラを自宅に持つための「防災設備」だからです。

 ただし、太陽光単体よりも、蓄電池、さらにはEVとV2Hを組み合わせるのがベストです。家庭用蓄電池の容量が10から15キロワット程度であるのに対し、EV(日産リーフやトヨタbZ4Xなど)は40から70キロワット、あるいはそれ以上の容量を持っています。つまり、家庭用蓄電池の4~7倍もの電力を蓄えられるのです。

 これだけの容量があれば、エアコン、冷蔵庫、照明などを長期間維持できる可能性が高まります。昼間に太陽光で発電し、余った電気をEVに充電、夜間にEVから家へ給電するというサイクルができれば、停電が数日続いても生活を維持しやすくなります。災害時に「自宅を避難所に近づける」という考え方は、これからの家づくりにおいて大きな価値を持つはずです。

ハウスメーカーや工法に対して過度に不安になる必要はない

 SNSでは情報が気軽に発信できるようになった分、中には誤った情報や嘘の情報も溢れています。被害状況の画像だけを見て、「このメーカーはダメだ」「この工法は危ない」と過剰に不安になる必要はありません。

 今回取り上げたケースでも、内装に被害は出つつも、建物そのものは家族の命をしっかりと守り抜いていました。大手ハウスメーカーの家は、こうした非常時にこそ強さを発揮します。

 皆さんがこれから家を建てる際には、表面的な被害報告に惑わされることなく、地盤選びから構造、そして災害時の自立インフラまで、トータルな視点で「強さ」を考えていただければと思います。被災された方々が一日も早く復興できることを心より願っております。

↓記事の動画はこちら↓

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