価格競争と高級路線の二極化で激変するハウスメーカー業界の今と未来! 元大手住宅営業No.1が徹底解説

価格競争と高級路線の二極化で激変するハウスメーカー業界の今と未来! 元大手住宅営業No.1が徹底解説
2025年11月11日公開(2025年11月14日更新)
まかろにお:住宅系YouTuber

今どんなハウスメーカーが強いのか?これから住宅業界はどうなっていくのか?元大手ハウスメーカー営業No.1で住宅系YouTuberとして活動するまかろにおさんが、二極化するハウスメーカーの現状と今後について、YouTubeチャンネル「まかろにお【工務店&ハウスメーカー攻略法】で解説。圧倒的に安いメーカー、ここ数年で爆伸びしているメーカーなど、具体的な企業とその戦略についても語っています。

所得格差の拡大で、ハウスメーカーのポジショニング戦略が激化

 所得格差が広がることによって、ハウスメーカーのポジショニング戦略が激しくなっています。この所得格差の拡大は、住宅業界にとって致命的といえる現象です。なぜなら、戦後から続いてきたハウスメーカーの事業モデルである、住宅の大量生産・販売が出来なくなってきているからです。

 利益を出すためには、安い価格で数を売りさばく必要があります。しかし、昨今は物価は上がっているにもかかわらず、給与は上がらない状況が続き、住宅を購入する人の数は年々減っているのが現状です。

 さらに、注文住宅は多くの部材の寄せ集めであるという特性上、もともと価格競争が起こりにくい業界でもあります。価格を安くするにも限界があるのです。逆に言えば、価格を安く提供できる状況を作り出せさえすれば、勝てるということです。

圧倒的な安さが売りのハウスメーカー3社とは

 では、圧倒的に安く販売できているハウスメーカーはどこなのか。ここでは、3社見ていきます。

1. 一条工務店

一条工務店では自社工場で建材を製造し、コストを下げている
自社工場で建材や設備を製造している(出所:一条工務店公式サイト)

 一条工務店は、自社で工場を保有しているため、中間マージンが発生せず、価格を抑えつつオリジナルの商品を顧客に提供できる仕組みを持っています。

 自社工場でオリジナルの建築部材を作っているのは、国内で一条工務店のみで、価格と商品のクオリティでここに勝てるメーカーはほぼ存在しないと言い切れるほど、日本市場では圧倒的でぶっちぎりの存在です。

2.桧家住宅

桧家住宅の売りである全館空調のZ空調
桧家住宅のZ空調(出所:桧家住宅公式サイト)

 次に挙げられるのが、桧家住宅です。桧家住宅は、全館空調の「Z空調」と断熱材を自社で製造しており、価格を下げやすい構造になっています。さらに、さまざまな制限をかけることでコストを抑える戦略を取っています。

 具体的には、標準仕様とオプション仕様で明確な線引きを設ける、契約後の打ち合わせ回数に制限を設ける、着工期限を設けることにより、高回転率での家づくりを実現し、価格を下げています。

 桧家住宅は、建物のみの坪単価で70万円台から提供していますが、こうした仕組みの上に成り立っているため、積水ハウスや住友林業のように完全な自由設計で建てられるタイプのハウスメーカーではありません。なるべく時間をかけず、安めに建てたい方向けに適しています。

3.ヤマダホームズ

 桧家住宅と同じような仕組みで商品展開しているのが、ヤマダホームズです。桧家住宅と同じグループ会社なので、仕組みが似通ってくるのは当然とも言えますが、ヤマダホームズの親会社はヤマダ電機であることから、家電量販店ならではのキャンペーン施策を打ち出しているのが特徴です。たとえば、テスラの蓄電池を無料にしたり、住宅の購入者が家電を大幅に安く手に入れられるようにするなど独自の戦略を取って低価格で販売しています。

 ヤマダホームズも坪単価70万円台から建築が可能なのですが、小堀住建という建築士事務所を自社内に抱えていて、建物のみの坪単価100万円以上の高価格層にも対応できる点が桧家住宅との違いです。

 一条工務店、桧家住宅、ヤマダホームズの3社は、本来価格競争が生まれにくい住宅業界で圧倒的な安さで価格破壊を起こしているメーカーで、基本的に安さと生産効率を重視しています。昨今、特に強いのが一条工務店と桧家住宅で、多くのファミリー層がこの2社で家づくりをしています。

 一条工務店には、完全自由設計の商品もありますが、積水ハウスや住友林業など大手メーカーと比較すると残念ながら遠く及びません。基本的には決まったプランをベースに改造を施す程度と考えた方がよいでしょう。

方向性に迷いが出てきた大手ハウスメーカー

ハウスメーカー大手は9社を指すことが多い
大手ハウスメーカーの迷いとは?

 こうした状況の中、大手ハウスメーカー各社にポジショニングの迷いが出てくるようになりました。 

 従来、業界人が「大手」と呼ぶのは、積水ハウス、住友林業、ダイワハウス、パナソニックホームズ、ヘーベルハウス、積水ハイム、ミサワホーム、トヨタホーム、三井ホームの9社です。これらの企業は古株中の古株で、戦後から続く住宅の大量生産に力を入れてきたメーカーの代名詞です。  

 これらの大手メーカーは、これまで豪華なモデルルームを住宅展示場に作って集客し、企業の知名度による安心感で販売を行ってきました。

 しかし、その豪華なモデルルームが、今の時代、注文住宅を検討する人たちに「高級すぎて手が届かない」「欲しいけど自分の身の丈に合わない」と感じさせる要因になっています。大手が昔から同じ戦略を愚直に続けてきたことで、知らず知らずのうちに候補から外されてしまう結果になっているのです。

 対照的に、好調な桧家住宅の住宅展示場は、現実そのものでありながら、全館空調の「Z空調」というちょっと手の届く贅沢品を提供することで、優越感を感じられるようになっています。この現実的+少しの贅沢が味わえる戦略が市場にハマったといえます。

大手ハウスメーカーの規格住宅

 そして、大手ハウスメーカー各社も価格競争に対抗するため、規格住宅をリニューアルしたり、新たにリリースして力を入れるようになりました。

 住友林業「Forest Selection BF」、ヘーベルハウス「My Dessin(マイデッサン)」、三井ホーム「MITSUI HOME SELECT」、セキスイハイム「スマートパワーステーションFXアーバン」などといった商品が該当します。

 しかし、大手ハウスメーカーは本来、規格住宅を売りたいと思っていません。自社で建材を作っていないので、規格住宅を安く売るには、利益を削って薄利多売でやらなければならなくなります。結果、現場が自転車操業のようになり、疲弊してしまうのです。

 過去にも規格住宅ブームがあったのですが、大変なわりには儲からない、そして現場は疲弊するという手痛い失敗を経験したため、大手メーカーは基本的に企画住宅の販売に後ろ向きです。

 しかし今は、価格の安いハウスメーカーに顧客を奪われないよう、規格住宅を売らざるを得ない状況で、採算度外視で売っていることがほとんどです。これは購入検討者からすると、お得であるとも言えますので、低価格帯を希望するなら大手メーカーの規格住宅も比較検討してみるといいでしょう(※動画では、大手8社の商品名に言及しています)。

大手ハウスメーカーの本命である富裕層向け住宅

 大手ハウスメーカーが本来売りたいのは、高級層向けの住宅です。その理由は2つあります。

1. 流行はお金持ちが作る

 ファッションと同様に、住宅のトレンドも富裕層が作り出しています。富裕層が建てた家を他のメーカーがまねて作り、安く一般に広まっていく流れがあります。お金を気にせず色々なことができる富裕層の家は、建てたハウスメーカーの広告宣伝となり、さらにそこで得た知識や技術でオリジナル部材の開発したり、特定メーカーとのコラボレーションで建材を作ったりすることも可能になります。

2. 受注が安定する

 注文住宅は、契約から引き渡しまで1年近くかかり、引き渡し時がキャッシュポイントとなります。会社の経営を安定させるには、受注残という着工予定件数の管理が必要です。

 ただ、規格住宅メインだと受注残が一気に消費され、薄利になるデメリットがあるので、それなりの単価の案件を受注残で貯めていかないといけません。その際、高額な高級案件が1件でもあれば、受注の数が少なくても予定の売上を一気に超えて、現場に余裕ができ、経営が安定しやすくなります。

高級案件で実績のあるハウスメーカーは?

富裕層の高額物件に強い三菱地所ホームとベルクハウス
高級住宅を建てている2社について解説

 現在、高級案件の市場(特に関東圏)で圧倒的に強いのが、三菱地所ホームとベルクハウスです。建物のみの価格で3億円以上がメインで、芸能人やプロスポーツ選手などがこぞって選ぶハウスメーカーとなっています。

 その次が積水ハウスです。積水ハウスは規格住宅を作らず、高級案件を愚直に狙う方向で動いていますが、3億円以上の案件は苦手で、建物の価格帯1億~3億円未満が得意ゾーンになります。

 積水ハウスで家を建てる場合、土地から購入するなら世帯年収1500万円以上、土地があれば800万~900万円の世帯年収でも検討できるでしょう。建物のみの坪単価は、だいたい坪155万円~と高いことに変わりはないです。

 積水ハウスを検討する人は、ほぼ100%の割合で住友林業も検討対象に入れています。住友林業もデザイン性が高いメーカーですが、価格は積水ハウスより1000万円くらい安くなることが多いです。住友林業は、性能、デザイン、コストのバランスがよく取れており、幅広い層にリーチできている「ちょうどいいハウスメーカー」と言えます。

 現在のハウスメーカー業界は、所得格差の拡大により、コスパ重視の方向性と高所得者向けの方向性に立ち位置が明確に二極化しており、方向性がはっきりしないメーカーは業績が悪くなっている傾向にあります。

続々と登場する新興系ハウスメーカー

 大手メーカーの方向性が定まらない状況は、新しく出てきた新興系ハウスメーカーにとっては大きなチャンスです。大手に対抗できる商品戦略と明確な差別化により、一気に受注を伸ばすことが可能になるからです。

 たとえば、アイ工務店は伸びているハウスメーカーの一つで、かつては「1000万円台で家が建てられる」をキャッチフレーズにしていました。現在は建物のみの坪単価が90万円台~で、大手ハウスメーカーに片足を突っ込んでいる状態です。しかし、「コスパが良い」という印象が今も残っており、ものすごい勢いで成長しています。

 もう一つ成長しているメーカーが、WITHDOM建築設計です。2019年から2023年度までの5年間で売上成長率が527.4%と、全国1位の成長率を誇る企業です。人気の理由は、一条工務店レベルの断熱性能を持ちながら、間取りの自由度が高い点、国産の無垢の柱材を使用している点、そして建物の坪単価90万円台~という破格のコストパフォーマンスにあります。

 今後は、このような新興勢力のハウスメーカーがどんどん登場し、大手ハウスメーカーとの激しいシェア争いを繰り広げることになるのではないかと思います。

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(次ページに解説動画あり)

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