不動産会社で働く営業社員といえば、「不動産の情報を右から左に動かすだけで多額の歩合給(インセンティブ)を手にする姿」と「厳しいノルマに追い立てられる悲惨な姿」という、両極端な2つのイメージを思い浮かべる人は多いのではないだろうか。はたして実際のところはどうなのか、不動産会社の現役社員や無免許ブローカーまで不動産専門家が参加する不動産業界最大のツイッター集団「全宅ツイ」の書籍『不動産営業マンはつらいよ』&『宅建出るで!』をもとに、リアルな不動産営業社員たちの働き方を覗いてみよう。
コンプライアンスの意識が低いほど稼げる!?
不動産営業のフトコロ事情
街で見かける不動産会社であれば、営業社員の給与は大きく分けて固定給と歩合給がある。固定給は月額18~27万円程度で、宅地建物取引士の資格があれば月額1~2万円の手当も付加される。歩合給は稼いだ仲介手数料の8%~15%程度が相場になる。
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営業社員だけに、稼げば稼いだだけ歩合給が膨らむのだが、あくせく働いているようには見えないのに、高そうなスーツに巨大な腕時計で派手に飲み歩く。あなたの周囲に、こんな不動産営業社員がいるならば、キックバックを疑ってもよいかもしれない。
キックバックとは正規の報酬とは別に受け取る紹介料のこと。例えば、マンションの売買に携わった営業社員がマンションオーナーにリフォーム会社を紹介し、リフォーム会社から工事費の何%かを受け取るケースなどがある。通常ならば、営業社員が属する会社に入るべきお金がダイレクトに営業社員に入るのだから、おいしい副収入になるのだ。
当然だが、紹介する仕事の金額が上がれば、キックバックも跳ね上がる。例えばビルオーナーからビルの立て替えの相談を受けた営業社員がビルの解体業者を指定して仕事を紹介したとする。ビルの解体費用は数百万円から1000万円を軽く超えることもあるので、業者からのキックバックも100万円単位に上るのだ。月々の収入のうち基本給が20万円、歩合給が15万円でキックバックが100万円なんという強者(?)もいるという。
狭い世界で仕事を回し合う不動産ビジネスでは癒着も生まれやすい。特に不動産を売りたい側の仲介担当と、不動産を買いたい側の仲介担当では癒着こそが仕事の源泉であったりもする。
2019年4月には大手不動産会社の元営業開発室が多額のキックバックをもらっておきながら税務申告を怠ったとして、東京国税局から東京地検に告発されたことが明るみになった。報道によると、この元室長が受け取ったキックバックは2年間で7億5200万円にもなったというから驚くほかない。この元室長は不動産の買主側の仲介を担当する一方で、売主側には自分が代表となる会社を参加させるという徹底ぶり。手口といい、受け取る金額といい、もはや副収入ではなく本業だったといえるだろう。会社に発覚して、依願退職したのだが、これだけ稼いでいればサラリーマンに未練は無かったはずだ。
言うまでも無いが、こうした行為は利益相反に当たるため、ほとんどの企業で禁止されている。あまり派手にやると会社に発覚することもある。
「ある会社は、
3カ月タコ(売上げゼロ)ならクビ!?
不動産営業はつらいよ
利益相反のキックバックは、そもそも実績を残せるからできるものである。稼げる営業社員がいる一方で、数字が出せない営業社員にはつらい現実が待っている。
ワンルームマンションの営業社員である1Rテッタ氏は語る。
「私の会社ではノルマに達しない営業社員は1カ月目で人権が剥奪。
1週間アポ(商談)がなかったら腹筋を毎日100回、2週間なかったら毎日200回という腹筋ノルマを設けていた不動産会社もあった。中には1日1000回の腹筋を課された社員もいるという。この会社は退職した社員から賃金未払いやパワハラなどで、損害賠償請求をされた。パワハラ以外にも、労働契約書がなかったり、歩合給規準が示されていなかったり、あまりの前時代的なひどさに弁護士が「ガラパゴス諸島でシーラカンスを見つけた」と口走ったという。
もちろん一部ではあるが、このような過酷な環境があるため、部下がとりまとめた案件にもかかわらず、なぜか契約会場に同席して自分の売り上げにしてしまう上司など、信義にもとる行為も横行する。
また、「がんばれば歩合給がもらえる」「稼げる仕事である」ことをやりがいに手数料で2500万円もの売り上げを計上しても、給与の入金のタイミングで売り上げとして計上されたのはなぜか1500万円になっていて歩合給が減らされる……など、営業社員にとっては理不尽なことも尽きないという。
しかし、不動産業界の中でも人気上位の財閥系大手に代表される企業や業種によっては、そうした過酷な職場環境とは無縁だという。
「不動産業界も大手になればなるほど、勤怠や残業不可など含め福利厚
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宅建資格の価値はベンツ1台分!?
転職で求められる人物像とは
宅地建物取引士(宅建)資格があれば、業界内での転職には困らない。気まぐれな一般の買主や売主を相手にするリテール営業から、比較的安定している法人向け営業に転職するなどキャリアアップを狙うこともできる。
全宅ツイのグル氏(Twitterアカウント「emoyino」)によると、「宅建に受かれば、宅建資格手当で2万円ぶん毎月のお賃金が増えて、これを4.0%で還元すると600万円になるからベンツが買える。いうたら宅建資格はベンツSLC。」と、その資格の重みを語る。
しかし、宅建士は出題範囲が広いため、社会人として働きながら勉強をこなすのは骨が折れる。
実際に、2018年度の宅建試験は全国で26万5444人が申込み、合格者は3万3600人に留まった。合格率は15.6%で、実に23万人以上が落ちたことになる。(一般財団法人不動産適正取引推進機構発表)
そのため「落ちた人は点数が社内での呼び名になる。後輩に『20点さん、お電話です』とか言われる」(rea氏※Twitterアカウント「rea87736817」)という辛い現実が待っていることもある。
何度、受験しても合格しないため言い訳ばかりが上手くなり、「今年も1点足らなかった」が口癖になる人もいるという。
「宅建はあるにこしたことはないのですが、不動産営業は実力が全ての世界でもあります。それに加えて、根性とやる気、忍耐力をアピールできれば拾ってくれる会社はたくさんあります。元気があれば何でもできる世界なので!」(あくのふどうさん氏※Twitterアカウント「yellowsheep」)
(『不動産営業マンはつらいよ』解説)
上司に詰められ、部下にナメられ、取引先では土下座もいとわない…という不動産営業マンの悲哀がつづられたツイート(#不動産営業マンはつらいよ)などをベースに、不動産営業マンならではの話を、全宅ツイメンバーがおもしろおかしく展開。つらい不動産営業マンのファッションや、つらい不動産営業マンの悲しい部屋事情なども含めて「ツライ不動産営業マン」をさまざまな角度から紹介していく。
全宅ツイ●数百億円の不動産を取引する不動産ファンドの社員から、ルノアールにたむろする無免許ブローカーまでを会員に擁する、不動産業界最大のツイッター集団。業界の裏事情から社会風刺まで、歯に衣着せぬつぶやきで人気を集めている。
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