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近年増加する豪雨災害! 水害リスクの少ない立地の見極め方を知り、安心できるマイホームを選ぼう

2021年8月17日公開(2021年8月11日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

毎年のように豪雨や台風被害に遭遇するわが国だけに、住まい選びにおいては、より被害に遇いにくい場所でマイホームを手に入れたいもの。水害リスクを避けるため、ハザードマップで安全性を確認すると同時に、契約前には念のために自分で現地やその周辺を歩いてみて、どんな場所なのかを確認しておくようにしたい。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

重要事項説明に、ハザードマップによる水害リスクの説明が追加された

令和2年7月豪雨
令和2年7月豪雨後の天ヶ瀬温泉(大分県)の様子(出所:PIXTA)

 わが国は、毎年のように大雨や台風に襲われている。

 損壊家屋1000戸以上、浸水家屋1万戸以上程度、相当の人的被害などがあった気象現象の場合には、気象庁が命名を行っている。

 その命名件数、かつては数年に1件程度だったのが、最近ではほとんど毎年のように出現し、2019年には年間2回も命名されているのだ(図表1)。

図表1 気象庁が名称を定めた気象現象[平成27(2015)年以降]

 その急増の要因は、地球温暖化による異常気象といわれており、CO2削減が進んでいない現在、異常気象がいっそう深刻化し、豪雨や台風の被害はますます増加するのではないかと懸念されている。

 そのため、国も被害をできるだけ抑えられるよう、さまざまな対策をとっている。たとえば、2020年には宅地建物取引業法を改正し、不動産売買における重要事項説明の対象項目に「水防法の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地」を追加した。

 つまり、不動産の売買契約に当たって、不動産会社は買主に対してハザードマップを使って所在地の水害リスクについて説明しなければならなくなったわけだ。

マイホーム購入前に、希望エリアのハザードマップをチェックしておく

 先に触れたように、契約時の重要事項説明で、このハザードマップを使って希望する物件がどの場所にあるのかを示してくれるはず。

 しかし、重要事項説明には、さまざまな内容があるので、ハザードマップに関しては「ここです」とだけ説明されて、浸水の深さなどの詳細をチェックしている余裕はないだろう。

 それだけに、事前にハザードマップを入手して物件が立地する場所の水害リスクを確認しておくようにしたい。

 ハザードマップは国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から閲覧可能。地図で調べたいエリアをクリックしてから、「洪水」「土砂災害」「高潮」「津波」などの閲覧したい項目をクリックすれば、地元自治体のハザードマップが表示される。もちろん、地元自治体のホームページから直接閲覧することも可能だ。

 図表2は、東京都世田谷区の洪水に関するハザードマップ。多摩川が氾濫した場合には、どのエリアまで何m程度の水が出るのかなどが示されており、避難場所の方向や避難場所などが表示され、同時に土砂災害のリスクの高いエリアも示されている。

 土砂災害といえば、郊外の丘陵地などといったイメージがあるが、一見平地とみられるエリアでも、土砂災害警戒区域がある。

 世田谷区のハザードマップでも、特別警戒区域(レッドゾーン)は赤く、警戒区域(イエローゾーン)は黄色で表示されている。

【関連記事はこちら】>>世田谷区の水害の危険性をハザードマップや標高から読み解く! 川辺の住環境や浸水の歴史も紹介

図表2 世田谷区のハザードマップ

世田谷区の洪水ハザードマップ
出所:東京都世田谷区ホームページから

現地を歩いてチェックすることも重要、意外な高低差に気が付くことも

 さらに、できれば契約する前に現地周辺を歩いてチェックもしておきたい。物件パンフレットに記載されている地図だけでは、周辺の高低差はほとんど分からない。しかし実際に歩いてみると、けっこう大きな高低差があることに気づいたりする

 東京都建設局によると、図表3にあるように高低差が5mでも、傾斜がきつい場合には土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていることもある。

 ハザードマップでは警戒区域などに指定されていなくても、現地を歩いてみて、けっこうな高低差があるエリアについては注意しておく必要があるだろう。

図表3 土砂災害警戒区域、特別警戒区域のイメージ

自分の目、足、耳で、立地の安全性を確認しておく

 町を歩いていると、地下鉄の入り口や電信柱などに、下の写真にあるような海抜表示が設けられていることがある。この例のように、海抜が30m近くあれば、まず津波の心配はないし、大河川が氾濫しても浸水するリスクは小さいだろう。

海抜表示看板
地下鉄の入り口に掲示された海抜表示

 しかし、なかには、海抜1m、2mなどと低いエリアもあって、そんな場所だと近くの河川が氾濫したときには、洪水被害が発生するリスクが高い。海が近いと津波の心配もある。

 なかなか簡単ではないかもしれないが、地元の商店などで買い物のついでに、過去に水が出たことがないかなどを聞いてみるのもいいだろう。

 ここ10年ほどは水が出たことはなくても、現在のような異常気象下では、短時間に想定外の雨が降って、20年ぶり、30年ぶりの災害が発生するリスクもある。地元で長く商売を続けている人であれば、そうした記憶もあるはずだから、地元の人にしか分からない情報をゲットできるかもしれない。

災害リスクの高い地域から移住するための住宅なら、グリーン住宅ポイントが最大100万ポイントに

 2021年3月末からスタートした「グリーン住宅ポイント」制度でも,より安全な場所での住まいの購入を勧めるような制度設計が行われている。

図表4 グリーン住宅ポイント制度の新築住宅建築・購入のポイント数

グリーン住宅ポイント制度の新築住宅建築・購入のポイント数

※ポイント加算は①~④のいずれかに当てはまる場合
①東京圏の対象地域からの移住のための住宅
②多子世帯が取得する住宅
③三世代同居仕様である住宅
④災害リスクが高い区域からの移住のための住宅

出所:国土交通省「グリーン住宅ポイント事務局」ホームページから

 図表4①にあるように、省エネ性能の高い住宅を取得した場合の基本ポイントは40万ポイントだが、「災害リスクの高い区域からの移住のための住宅」については60万ポイントが加算されて、1戸当たり最大100万ポイントとなっている。

 災害リスクの高い区域の対象となるのは、①土砂災害特別警戒区域(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律に基づく区域)、②建築禁止災害危険区域(建築基準法に基づく、災害危険区域で建築物の建築の禁止が定められた区域)であり、そうしたリスクの高いエリアからより安全な地域への移住を促進しようとする施策になっている。

【関連記事はこちら】>>1戸当たり最高100万円相当の「グリーン住宅ポイント」制度がスタート! ポイント付与の条件や、特例について解説

 いよいよ台風シーズンが目前。備えあれば憂い無しだ。

【関連記事はこちら】>>水災補償に入っていないと、台風での浸水被害は補償されない!? 台風被害に備えた火災保険の選び方と、保険料の申請方法を解説

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