不動産投資初心者は、なぜ戸建て投資から始めるべきなのか?
ボロ物件投資が強みの加藤さん<後編>

2021年10月14日公開(2021年10月11日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

築古、ボロボロ、再建築不可、事故物件。市場に取り残された悪条件の住宅を高利回りの物件へ再生してきた不動産投資家・加藤薫さん。後編では、リフォームのポイントや最も苦労したこと、大家業を営むうえで大事な考え方を聞いた。<前編>はこちら

リフォームは、古い物件の施工ができる業者に依頼

――物件再生ではリフォームが肝になりますよね。どんな業者と取引していますか?

大家さんの加藤さん
リフォームは、業者との関係作りが重要という加藤さん

 扱う物件が古くてボロボロの物件が多いので、古い家の構造がよくわかっている腕のいい大工さんを手配できるかがカギになってきます。私は今4~5社とお付き合いしていますが、いろいろな会社と取引する中で絞られてきた感じですね。

 少しでも費用を安く抑えようと、見積もりサイトで最安値が出た業者に依頼するケースがありますが、信用できるどうかがわからないので注意が必要です。見積もりサイトで見つけた業者に200万~300万円のリフォーム費用を持ち逃げされてしまったトラブルが私の周りでも実際に起こっています。そういう意味では、信頼できる大家さんから紹介してもらえるのが一番確かでしょうね。

――リフォーム費用を抑えるために、どんな工夫をしているのでしょうか?

 リフォームの予算は、利回り15%以上になるように計算して組んでいます。その予算に合わせて、どの部分をコストカットするのかを見極めていく流れです。

 リフォーム担当者とともに物件に行って現場を見て相談しながら決めていきます。例えば、土壁のリフォームならコストが高い順に、

(1)土壁を取り払い、下地を作ってクロスを貼る
(2)クロスを貼らず、下地のみ
(3)上から塗装する

の3通りの施工方法があって、物件のマーケットによってどの方法を取るか決めるのです。賃貸物件は、近隣物件と比較して勝てればいいので、必ずしもクロスでなければならないこともないんですよね。

 リフォームでどの施工方法を選ぶかの選択権は、発注者である大家側にあります。見積もりを大家が主体で決める感じですね。なので、出てきた見積書から値下げ交渉することはないです。

ーー値下げ交渉をしないのは意外でした!

 私も不動産業者として、オーナーからリフォームを受注する立場を経験しているので、とにかく安く買いたたく顧客のために頑張ろうとは思えないですからね。リフォームの依頼先が決まれば、「一緒に良い物件を作っていくチームの一員」だという意識を持って、対応しています。関係づくりを大事にすることで、こちらの希望も快く聞いてくれるようになります。

お金で解決できる問題は、さほど重要ではない

――ハードな局面を経験してきた加藤さんですが、大家業で特に大変だと思うことはなんでしょうか?

 「こんなに悪条件の物件ばかりを扱うのは、大変でしょう」と思われることはよくありますが、どれだけボロボロでも問題だとは思っていないんです。屋根に穴が開いていようが、建物が傾いていようが、修繕すれば解決できますからね。つまり、お金で解決できることは、問題にはならないのです。

 一番大変なのは、お金で解決できない「人」の問題ですね。入居者や近隣住民によるトラブルは予測不可能でして、解決までに難航することが今までもありました。

―――そうなんですね。最も苦労したエピソードがあれば、教えてください。

 10室中7室が空室だったアパートを購入したときの話です。空室のリフォームを始めたところ、ある入居者の女性が「音がうるさい!」「今すぐやめろ!」とものすごい勢いで怒鳴り込んできたんです。工事をやるたびに怒鳴り込んでくるので、なかなか進められず半年くらいたってしまい…。リフォーム担当者から警察に電話してもなかなか現場には来てくれず、困り果てていました。

 ついには、施工中の部屋のドアをガンガン蹴り出すように。私から警察に通報したら、駆けつけて2時間以上かけてなだめて、その場は収まりました。今後も何かしらトラブルを起こす可能性がありましたが、この入居者は生活保護受給者だったため、一度決定した住居を変更するのは難しい状況でした。そこで、私自身、何度か役所の担当者を訪れて、説得を試みました。結果、時間はかかりましたが、認めてくれて別の場所へ引っ越してもらえました。とにかく人に関するトラブル解決には、エネルギーを消耗しますね。

戸建てから経験を積み重ね、高利回りな1棟物件へ

――加藤さんが不動産投資や大家業で重要だと思うことは何でしょうか?

 投資ではなく「事業」として捉えることですね。大家業を始める方の9割近くは、投資感覚でスタートしていると思いますが、それだと「最初にどんな物件を選ぶか」にすべてがかかってしまいます。もちろん物件の選択も重要なのですが、不動産は自分で作り上げていく部分も大きく影響します。

 商売の基本である「安く仕入れて、商品化して市場に出す」というサイクルを着実にこなして、経営スキルを磨いていくのが重要なのですね。

――なるほど。では、初心者の場合、具体的に何からスタートすればよいでしょうか?

ドリーム家主倶楽部では、最初は必ず戸建てからスタートしてもらい経験値を積むのだという

 まずは戸建てからがよいでしょう。私が主宰している不動産投資家の会「ドリーム家主倶楽部」では、どんなに自己資金がある人でも最初は必ず戸建てからスタートしてもらいます。築古、ボロ、再建築不可など難易度が高い物件を安く買って、リフォームから客付けまで自分で動いて一通り経験します。一度経験すると、あとは同じことの繰り返しなので、戸数を積み上げていけばいいのです。

 小さい物件で経験を積んでから、アパートやマンションなど集合住宅にチャレンジしていくのが不動産経営で失敗しないためのコツです。特に、市場が敬遠するような戸建てを経験しているほど、多少難のある1棟ものに巡り合えたときに「これならイケる」と判断でき、良い仕入れができるチャンスが増えていきます。1棟物件を高利回りで運営したいなら、こうしたやり方が遠回りのようで近道だと考えています。

ーー今後の目標について教えてください。

 最終的な目標は、無借金経営をすることです。資産10億円規模で無借金なら、非常に安定した経営ができますからね。まだまだ先は長いですが、コツコツと目指していきたいと思います。

 これまでは、規模を拡大することにエネルギーを注ぎ、かなり必死に頑張ってきたので、少し余裕のある働き方がしたいとも思っています。良い物件は買っていきつつ、売却もしながら、キャッシュフローを良くして利益が残る経営を目指したいですね。(取材・文/猿渡彩乃)

加藤薫さんプロフィール
築古、ボロボロ、再建築不可、事故物件など、悪条件の住宅を高利回りの物件へ再生してきた不動産投資家。28棟217戸を所有し、年間家賃収入1億4000万円まで拡大してきた。関西で有名な不動産投資家の会「ドリーム家主倶楽部」を主宰。
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