年間家賃収入8000万円という成功大家の岡元公夫さん。銀行に18年間務めた「融資のプロ」でもある。現在は8棟56戸所有し、そのほとんどの物件を銀行からの低金利の融資で購入しているという。銀行の裏事情を知り尽くした、もとメガバンカーに「銀行が積極的に融資したい人、会社員でも融資したくない人」の違いを聞いた。
[参考記事]
●第1回 家賃年収8000万円!元メガバンク銀行員が専業大家になった理由
●第2回 都内に8棟56戸で年間家賃8000万円の元メガバンク大家が教える、エリア戦略とは?
●第3回 リアル半沢直樹!元メガバンカー大家がこっそり教える「銀行が融資したい人VS貸し渋りにあう人」
●第4回 元メガバンカーが伝授。不動産投資ではじめて物件を買うとしたら「都内の区分マンションがおすすめ」な理由
銀行から融資を受けやすい人とは? 不動産の買い時はいつ?
――岡元さんの物件(8棟56戸)は、ほとんど銀行から融資を受けて購入しているのですか?
はい。キャッシュで買ったのは最近300万円で購入した再建築不可の戸建てくらいでしょうか。ほかは区分マンションであっても融資を受けています。すべて銀行からの融資で金利は2%以下です。銀行でしか借りないという主義ではなく、利回りが高い、たとえば15%といった高利回り物件なら、ノンバンクで4%といった高い金利で借りるのもありだと思っています。ただ、私の場合は前回お話ししたとおり、すべて都内の物件ですから利回りがそんなに高くない。その場合は金利が2%以下でないと潤沢なキャッシュフローが出ないんです。
――銀行から融資を受けたい人は多いと思いますが、苦戦している人も多いですよね。「銀行から融資が出やすい人」というのはどういう人でしょうか。属性はやはり会社員が有利ですか?
少し前までは会社員が有利でしたね。でもスルガ銀行の不正融資問題があって、会社員への融資は厳しくなりました。もちろん金融庁の指導があったというのも大きいです。
―――銀行にとっては大変な損失になりかねませんからね。Dzサロンには自分で事業をやっている人も多いのですが、中小企業の経営者はどうでしょうか。
一般事業会社の経営者に対しては昔も今も変わらず厳しいですね。やはり景気の波に飲まれやすいですから。ただ、今のように大変な状況下でも、「許認可に守られている」「他社が参入できない」といった事業で、かつ安定収益を上げている会社なら銀行の評価は高くなりますよ。
―――なるほど。中小企業の経営者はそのあたりを融資申請の際にアピールするといいですね。では、今、融資が出やすい有利な職業といえばどういう人でしょうか。
今、有利なのは「士業」ですね。弁護士、税理士、公認会計士、医師。こういった景気にさほど左右されない資格を持った人たちは融資を受けやすいですね。
―――専業の大家さんはどうでしょう。
専業大家もいいですよ。ただ、ここ数年で拡大した大家さんは財務バランスがよくない人が多いので、融資が難しくなっています。借りやすいのは大家のキャリアが10年以上ある人ですね。10年以上前から物件を買い進めた人は安価で物件を買っているでしょうし、債務もかなり減っているはずですから、財務バランスはいいはすです。そういう人は融資を受けやすいと思います。
―――最近は戸建てを投資対象にしている方も多いですよね。戸建ての専業大家はどうでしょうか。
10年以上大家のキャリアがあって、キャッシュフローがきちんと出ていて財務バランスがよければ、RCマンション、アパート、戸建て、区分マンションなど、投資対象はどれでも大丈夫です。
―――今から大家を始める方はどうでしょうか。
銀行で低金利の融資は難しいでしょうね。ノンバンクなどで金利が高ければ融資可能なところはあると思いますが。しかし、そうなると高利回りの物件じゃないと利益を出すのは難しいですよね。未経験だと郊外の高利回りアパートを見つけるのはなかなか大変だと思いますので、まず都内の区分マンションを購入して経験を積んでおくのがいいでしょう。
今は物件をどんどん買って拡大していく時期ではないと思います。私が知っているギガ大家さんもメガ大家さんも、今は積極的に買い進めていないですよ。
―――買い時はいつごろくるのでしょうか?
時期の予想は難しいですね。ただ、コロナショックが来てから半年から2年後は注視しておいたほうがいいでしょうね。新型コロナの影響で破綻する企業が増え、銀行に不良債権が多くなった場合、銀行は貸し渋りをします。そうなると物件の買い手が減り、物件価格は下がるでしょう。もちろんそういうときには、銀行は融資先を優良取引先に絞りますから、融資が通るかという問題はありますが。逆に言うと、そういう厳しい時代でも融資が通るように、大家としての経験を積み、財務のバランスシートを整えておくことが大事なんです。もうひとつ注意点としては、そういう状況ではフルローンは出ないでしょうから、物件の2~3割の現金を貯めておくことも大切です。
―――安く買える状況を待っていても、そのときに買える人は少ないということですね。
銀行の融資の話だけではなく、これからは現金をたくさん持っている人、純資産を積み上げている人に物件の話がたくさんくると思いますよ。コロナショックで今後は競売や任意売却の物件が増えると思いますが、そういうときには不動産会社もすぐ買える人に話を持って行きますからね。
――すごく勉強になりました。次回は銀行が注目する「財務のバランスシート」に関して詳しく教えてください。
(取材・文/タカチホ 撮影/和田佳久)
元メガバンク大家岡元公夫さん プロフィール
大学卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。銀行員時代は法人個人の融資をおもに担当。企業オーナーの事業承継対策や富裕層への相続対策も手掛ける。2004年に実家の跡を継いでからは、都内にマンション・アパート・戸建を精力的に取得。銀行を退行後は不動産開発会社に勤務。不動産収入が年間6000万円ほどになり会社員を卒業。現在、東京エステートバンク株式会社(東京房屋)を設立。国内・台湾・中国の投資家・会社経営者向けにコンサルティング及び不動産の紹介・管理を行なっている。東京大家の会・主宰、東京築古組・理事。