20代で6棟総資産7億円の不動産投資を実現した八木エミリーさん。後編では、頭金を作るための節約と投資、銀行融資の交渉術、そして将来の夢を語ります。
[参考記事]
●不動産投資で20代で資産7億円を達成した元証券ウーマン。命題は「市長になるか、金持ちになるか?」 八木エミリーの不動産投資 --前編
新卒初任給から毎月10万円を自社株購入に充て、不動産投資の軍資金に
-----不動産の購入前から、株式投資でもかなりの成果を上げていたと聞いていますが……。
確かに、株式投資でも不動産購入のために軍資金を作りました。新卒で入社した2013年の時点で不動産投資を決意していたので、毎月の給与から10万円を天引きして自社株を購入していましたね。
ただ、株式投資でも利益が出ていたとはいえ、街の活性化には数100億円といった単位のお金が必要になってきます。そのような大金を株式投資で短期間のうちに生み出すのは無理なので、やはり不動産投資しか方法はないと思っていました。
だから、自社株の購入以外にも、かなり生活を切り詰めてお金を貯めていました。実は、6棟のオーナーになった今も、お金の管理は当時とあまり変わっていません。
基本的には、収入の1割を寄付、3割を投資、1割を両親のために貯金に充て、残りの5割で生活しています。贅沢とはほとんど無縁で、ギリギリの生活を送っています。
「空室が出たら自分で埋めにいく!」というスタンスで臨む!
----不動産投資にとって空室の発生は大きなリスクですが、その点に関してはどのように捉え、どういった対応策を取っていますか?
私の場合は、「空室が出たら自分で埋めにいく!」というスタンスで考えていますね。実は1棟目の中古アパートも、購入した時点では半数が空室になっていました。
そこで、証券営業の経験を生かして仲介会社をローラー作戦で訪ね歩きながら、毎週月曜日には物件の管理会社に連絡を取り、問い合わせの数と実際に案内した数、契約に至らなかった理由についてヒアリングを続けたのです。その結果、約3カ月で空室はすべて埋まり、期待通りの家賃収入が得られるようになりました。
この一件で学んだのですが、空室対策で大切なのは、管理会社とのコミュニケーションだと思います。1棟目の物件はロケーションや建物自体などに関して、特に難があったわけでありません。
にもかかわらず半数が空室だったのは、管理が行き届いていなかったからだと私は思いました。郵便受けにチラシなどのゴミが貯まったままで、共有部分の掃除も疎かになっており、空いている部屋の空気の入れ換えもロクにやっていない様子だったのです。
明らかに管理会社が手を抜いていると感じたので、私はその担当者と信頼関係を築くことからスタートすることにしました。先程も話したように毎週必ず連絡を取るようにして頻繁にコミュニケーションを交わし、見学者がいたのに入居に至らなかった理由を確認し、どのように対処すれば改善されるのかについて、担当者さんも巻き込んで2人でいっしょに考えるようにしたのです。
オーナーとして上から目線で話すのではなく、相手の立場を考えながら、どうすれば積極的に動いてもらえるのかを考えました。その点に関しても、証券営業の経験が役に立ったと思います。
「どうすれば空室が埋まるのでしょうか? ○○さん、教えてください!」と相談を持ちかければ、「部屋の空気をこまめに入れ換えて、玄関回りのゴミも片付けましょう。こまめに掃除をしておきますね」といったように、担当者は改善策を自ら具体化してくれるものです。
ただ、店舗付き物件のテナント探しは大変だと実感しましたね。4棟目が私にとっては初の店舗付き物件でした。
1年間の家賃保証があったので油断していて、2店舗中1店舗のテナントがなかなか見つからなくて焦りました。家賃保証が切れるギリギリのタイミングでお弁当屋さんの出店が決まって胸をなで下ろしました。
大手銀行で融資金利を0.55%まで引き下げることに成功!
----大手銀行でローンを組む際にも、巧妙な交渉術で金利の大幅な引き下げを導き出したという“武勇伝”があるそうですが、詳しくお話しいただけますか?
5棟目の2億円強のRC物件を購入する際に大手銀行で融資を申し込んだのですが、「なぜ私が不動産に投資しようと考えているのか? そのためにどんな準備をしているのか?」について、担当者にプレゼンテーションを行いました。そして、自分が思い描いているストーリーや将来のビジョンをA4の便箋5枚程度にまとめた手紙を渡して、「これを稟議書の中に盛り込んでください」とお願いしたのです。
すると、「投資目的の人は多いが、女性でここまで夢やビジョンを抱いて取り組む人は珍しい」と言われ、それまで経験したことのない好感触が得られました。やはり、その作戦が奏功したようで、1.9%の金利なら融資できるとの回答をいただきました。
その条件でも十分に満足できたのですが、さらに担当者の上司や支店長とも面談することになったので、私は改めて30分程度のプレゼンテーションを行いました。自分の生い立ちから投資の目的、今後の計画まで切々と語ったところ、融資金利を0.55%まで引き下げてもらえたのです。
きっと、自分の夢をここまで包み隠さ話す人は、あまり見かけないのでしょうね。今後も投資の規模をどんどん拡大していくつもりだと宣言したら、「その際にはいつでも当行に相談してください。応援しますよ!」と励ましてくれました。
恵まれない子供ための事業を興すことが目標。不動産投資で資金作りを
------すでに証券会社は退職したとのことで、現在は完全に不動産投資の家賃収入だけで生計を立てているのでしょうか?
2017年に証券会社を退職し、フリーランスの不動産投資家であるとともに、ファイナンシャル・アドバイザー(中立的な立場から資産運用のアドバイスを行う専門家)としても活動しています。
また、法人を設立してその法人名義でも物件を所有し、黒字決算を3期以上継続できるように心掛けています。将来的に、出産や子育てなどで仕事が一時中断することを想定しての備えです。
その際に個人名義で融資を受けるのが難しくなったとしても、法人の属性で投資を継続できるように先手を打っているわけです。「3期以上の黒字決算」は、金融機関が法人に対する融資で判断材料の一つにしています。
当初は「20代で10億円」を目標としていましたが、「最終的には40歳までに100億円」といったように私の夢は大きく膨らんでいます。100億円を達成したら財団を設立したいと考えています。
今は1割の寄付部分を、養護施設に寄付をしています。いずれは施設を自分で作ったり、恵まれない子供たちも楽しめる事業を興したいと思っています。
また自分だけの力では限界があるので、地域活性のために活動するような志を同じくする企業に投資をすることで自身の影響の幅を広げていくつもりです。
雇用創出からの納税による地方創生。全ての子供たちが平等に教育が受けられ心から楽しめ、自分で自分の人生を選択できる環境づくり。正しい金融リテラシーの普及。
この3つは今わたしが人生を懸けて行っていきたいことです。
自分のステージが上がればまたやりたいことは変わるかもしれません。目的は世界平和です。でもどんなことがやりたくなっても、それを選択できるためには資金力も必要。そのために今は不動産投資で力を蓄え続けます。
(取材・文/大西洋平 撮影/土井一秀)