サラリーマンをしながら、わずか2年で18棟もの不動産を購入し、現在積算評価額で約12億円の不動産を所有。コロナ禍の3月末にサラリーマンを卒業、念願のセミリタイアを果たした森井雄一さん。不動産投資を始めたきっかけは80歳までに夫婦で必要なお金を計算してみたことから。今では年間満室想定家賃収入1億2000万円という森井さんは、1件目は新築区分マンションを購入する失敗をしていたという。
[参考記事]
●わずか7年で21棟のアパートを購入!
年間満室家賃は1億2000万円で3月末にセミリタイア達成!
不動産投資家 森井雄一氏 第1回
●富山で250%のアパートなど最初の2年で18棟購入!
高利回り物件を見つけて購入する秘訣とは?
不動産投資家 森井雄一氏 第2回
●世田谷で新築9%など都心好立地戦略に転換した理由。
アンダー・コロナで狙うべき物件と戦略とは?
不動産投資家 森井雄一氏 第3回
2013年から約7年でセミリタイアを達成! でも1件目はカモられていた
ーー簡単に自己紹介をお願いします。
森井雄一といいます。2013年から不動産投資をはじめて、2020年の3月末にサラリーマンを辞めて専業大家になりました。これまでに21棟、戸建て4戸、区分1室の184室を取得していて、所有する不動産の評価額は12億円ほど、借り入れ残高は6.9億円くらいです。現在、年間家賃収入は約8000万円で、満室になれば1億2000万円くらいになる予定です。
ーー不動産投資を始めたきっかけを教えて下さい。
2012年に妻に部署異動があったのですが、激務と人間関係がもとで体調を崩し、短期間の休職をすることになりました。
それまでは順風満帆だと思ってなんの疑問もなく続けていたサラリーマン業でしたが、この思いがけない休職がきっかけになり、これからの仕事やお金について考えざるをえなくなりました。そこで、妻が将来の為にとFPの勉強を始めたんです。
当時、僕も妻も年収は600万円程度で、世帯年収で1000万円を少し超えるくらいの普通の共働きサラリーマン家庭。試しに妻が覚えたてのライフプランニングで80歳までの収支表を作ってみたところ、今の収入と預金では、自分たちが将来理想とする暮らしには全く足りない、それどころか大赤字だと分かりました。辞めたいと言っていた妻でしたが、これでは到底辞められそうにもないね……ということで、2人で色々と話し合った結果、「サラリーマンを辞めても稼げる仕組み作りが必要だ!」ということになりました。それが夫婦で不動産投資を始めた最初のきっかけです。
ーーそのときに自己資金はありましたか?
いいえ、ほとんどありませんでした。結婚式をわりと派手に挙げてしまったのと、マイホームを買っていたので。特に自宅はふたりの年収から逆算してギリギリの住宅ローンを引いたので、余裕は全くありませんでした。
ーー自己資金も乏しいなか、最初にどんな行動を取りましたか?
無料の不動産投資セミナーに参加しました。それが新築のワンルームセミナーだったんですけど、そのまま物件も購入しました。
ーーえ、当時は1R投資が良いと思えたということですか?
ネットで見つけた無料セミナーだったのですが、見事に大失敗してしまいました(苦笑)。大田区の駅徒歩3分の物件を約2000万円で買ったのですが、不動産業者から「803号室からスカイツリーが見えるんですけど、残念ながらその部屋は売約済で他の部屋はスカイツリーは見えない」と説明されて、「そうなのか、残念だな」と思いながら家に帰りました。そうしたら業者から電話が来て「森井さん、たった今803号室がキャンセルになりました! しかも今決めたら100万円値引きできます!」と言われたので、わずかな自己資金もほぼ入れて、買ってしまいました。
ーーその、キャンセルの電話って……。
絶対ウソですよね。今ならわかりますが、当時は「いい部屋が手に入った。これで大家さんだ!」と思っていました。
購入してから1カ月後に家賃が入金されて、ローン返済して、固定資産税などを払うと赤字になると気が付きました。
不動産投資に少しでも詳しい人なら手を出さない物件ですね。不勉強の代償は大きかったです。
書籍やセミナーで猛勉強! 地方高利回り物件に目覚める
ーー最初にあまり良くない物件を買われたとのことですが、そこからどう行動されたのですか?
そこから、まず本屋に行って「不動産」と名のつく本を片っ端から買って読み漁り、たくさんのセミナーに行き、先輩大家さんや、不動産屋さんからも色々教えてもらいました。最初に不勉強で大失敗したので、とにかく猛勉強しました。
本では石原博光さんの『まずはアパート一棟、買いなさい!』や、加藤ひろゆきさんの『ボロ物件でも高利回り激安アパート』という本に強く影響を受けました。そこで、本の内容通りに地方高利回り戦略で再スタートして、栃木県の矢板市に1000万円で利回り22%のアパートを日本政策金融公庫の融資で買いました。2LDK×6世帯のファミリー物件です。
ーー石原さんが本で推奨した物件にぴったりあてはまりますね。物件探しはどのように。
不動産屋を50~100軒は回りました。やり方としては、健美家や楽待などの不動産投資物件を扱っているサイトで利回りが高い物件を検索しました。ひたすら地方高利回り物件を検索しているうちに、自分の条件にあった物件を多く掲載している業者さんがだんだん絞られてくる。そこで、その業者さんを土日の休みを使ってせっせと訪問しました。
ーー訪問したら自己PRなどするのですか?
会ったらできるだけ人間関係を作ることを意識していましたね。「自分はこういう条件の物件を探している」「今後も継続的に購入を検討している」という事を明確に伝えて、長くお付き合いしていきたいという意思を示すようにしました。物件を見に行った帰りに車で送ってもらう時も、車内でも積極的に話をするようにしました。
不動産屋さんも人間なので、世間話をしたり、不動産屋さんの話を聞いたりするうちに次第に打ち解けてきます。そこで「細かい条件は問わないので、あなたがいいと思う物件が出たら、僕に電話をください。すぐ買いますから」とお伝えするようにしました。不動産屋さんからみて"買う気があって面倒くさくない客"と思ってもらう事も重要だと思います。
業者さんに会うと次から物件案内が直接届くようになり、なかには社長さんから「うちが仕入れた物件を利回り20%で出すから、それで良ければ買ってください」と未公開物件を教えてもらえることも。一棟目がまさにそんな感じで、ご紹介いただいた物件を購入しました。
ーー未公開物件を欲しがる投資家はたくさんいると思いますが、そのなかで森井さんが工夫されたことは?
特に工夫というほどではないですが、欲しいと思う物件が出たら買い付けと同時に銀行や日本政策金融公庫に融資の審査資料を提出していました。業者さんにも融資の審査をすぐに始めると伝えていましたね。そうすることで「気に入った物件があればすぐに動いて買ってくれる客」と思ってもらえたのかもしれません。
ーー地方の高利回り物件は、リスクが高いと考える人もいますが、不安はありませんでしたか?
僕も高利回り=高リスクだと思っていました。そこで、購入予定物件の周辺地域にある賃貸管理業者に何社も電話をかけ、「このエリアで、この家賃で客付けはできそうですか?」と確認しました。そのおかげで、ある程度その地域の賃貸需要や家賃相場、有力な管理会社も分かってきて、「これなら行ける。」と思えるようになりました。
何より地方高利回り物件は一棟あたりの値段が手頃なので、万が一失敗しても売却して損切りすればなんとかなると思えるのが僕達には合っていました。
ーー森井さんご自身は栃木県に地縁はありましたか?
全くないです。だから現地のリサーチやヒアリングに力を入れました。矢板市は割と空室率が高いエリアですが、物件を任せている管理会社がすごく優秀で、ほぼ満室経営なので助かっています。
2棟目の物件も同じ矢板市で、同じ社長さんから「いい物件を仕入れた」と連絡があったので公庫の融資で買いました。僕の中では1000万円クラスの物件なら、もし何かあっても僕と妻の稼ぎで何とかなると試算していたので、最初は小さい物件からスタートしました。
(第2回に続く)(取材・文/栗林 篤)
森井雄一さんプロフィール 2013年9月に不動産投資をスタートするも1件目は新築区分を購入して失敗。その後、書籍などで猛勉強し、地方築古高利回りに目覚める。現在、21棟、戸建4戸、区分1戸を含めて184室を所有。満室想定家賃収入は、年間1億2000万円ほど。平均利回りは15%ほどで、利回り250%の物件も所有。2020年3月末に念願のセミリタイヤを実現した。