マンションも”ステルス値上げ”している? 10年前と今の新築物件の違いから、築何年くらいが狙い目なのか解説

2025年3月7日公開(2025年3月7日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

建築費や土地価格の高騰により、新築マンションの価格上昇が続いています。しかし、単純な価格上昇だけでなく、「ステルス値上げ」と呼ばれる一見分かりにくい実質的な値上げが進んでいることをご存じでしょうか。今回は、新築マンションの仕様や設備の変化から、この10年で何が変わったのか、そして、購入検討時にどのような点に注目すべきかを詳しく見ていきたいと思います。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

専有面積の変化から見える実質的な値上げ

新築マンションの広さが変化している
この10年で専有面積が縮小している(出所:PIXTA)

 まず目立つのが、専有面積の縮小傾向です。かつての新築マンションでは、3LDKといえば75㎡が主流でした。それが70㎡の時代を経て、今では60㎡台のものが一般的になっています。 

 面積が小さくなれば、その分価格も抑えられるように見えますが、実は㎡単価で見ると着実に上昇しています。

 不動産経済研究所が2024年4月に発表した「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の平均値と中央値の推移」調査によると、2013年に首都圏で供給された新築マンションの専有面積の平均は「70.77㎡」でした。

 ところが、10年後の2023年は「66.10㎡」と、供給されるマンションの戸当たりの広さが10年で約7%狭くなっています。一方で、同調査にある価格の推移を見てみると、2013年の平均値が「4,929万円」だったものが、2023年には「8,101万円」と約164%上昇しています。

 ㎡単価は69万円台から122万円台と、10年でほぼ2倍になっており、もはやステルスになっているのかどうかも怪しいほどに高騰しています。

収納スペースが減っている

 専有面積の縮小は、単に「部屋が狭くなった」というだけの話ではありません。特に顕著なのが収納スペースの減少です。以前は各部屋に十分な収納が確保されていましたが、最近の物件では収納スペースが限られています。

 収納スペースの減少によって、季節物の衣類や布団の収納に苦労する世帯が増加し、その結果としてトランクルームの需要が高まっている傾向もあります。都心部では、月額1万円前後のトランクルーム利用が一般化しており、これも実質的な居住コストの上昇やステルス値上げの弊害と言えるでしょう。

 また、収納不足を補うために追加の家具が必要となり、それによって実質的な居住スペースがさらに圧迫されるという悪循環も生まれています。新築マンションの価格を検討する際には、このような追加コストも考慮に入れる必要があります。

かつての標準仕様設備が、オプションに

 2000年代から2010年代前半にかけては、新築マンションの仕様は比較的充実していました。例えば、バルコニーには、スロップシンクが標準装備されることが多く、エコカラットなどの調湿・消臭壁材や、食洗機も一般的でした。

キッチン背面カップボードは標準仕様だったが最近はオプション
キッチンのカップボードなどオプション化が増えている(出所:PIXTA)

 キッチン背面のカップボードも標準仕様として設置されていました。中規模マンションでもディスポーザーが装備されていることも多かったです。

 しかし、最近の物件では、これらの設備の多くがオプション扱いになっています。特に、価格帯が手頃な物件では、ほぼ間違いなく追加で費用が必要です。これらの標準だった設備がオプションとなってしまったこともステルス値上げの一つと言えるでしょう。

天井埋め込み型エアコンは今では自分で設置する
エアコンは購入者自ら設置するのが一般的に(出所:PIXTA)

 電気設備の面では、エアコンが挙げられます。以前は、天井埋め込み型エアコンが標準装備、もしくは、壁掛けエアコンが標準装備されていましたが、今では自分で設置するのが一般的になっています。食洗機がオプション追加というマンションも見かけるようになりました。

 床暖房についても、以前は標準仕様として設置されている物件も多かったのですが、現在では一部の高級物件を除いて、オプション扱いになることが増えています。同様に、以前はタンクレストイレと手洗いカウンターが標準装備でしたが、手洗い付きロータンクトイレが標準装備になっているのを見かけます。

 その他、細かい部分でも変化が見られます。例えば、ちょっとした洗濯機置き場上部の棚がオプションになっていたりするなど、一つひとつは小さな変更に見えますが、全てそろえようとすると大きな負担になってしまいます。

品質面では、向上している点も

 ただし、全てが後退しているわけではありません。むしろ、建物の基本性能については着実な向上が見られます。例えば、天井高は以前の2.4mから2.5mへと改善されている物件が増えています。

 また、スラブ(天井・床)の厚さも、1980年代の15~18cmから、現在では20cm程度が一般的になっています。これは遮音性や耐久性の向上につながる重要な改善点です。そして、最新の建築技術や材料の採用により、耐震性能も向上しており、この点は新築物件の大きなメリットと言えるでしょう。

マンションの販売手法も大きく変化

マンションのモデルルームも縮小傾向
モデルルームの展開も縮小傾向に(出所:PIXTA)

 マンションの販売方式にも大きな変化が見られます。以前は、デベロッパーが各地でモデルルームを展開し、大規模な販売活動を行っていました。

 例えば、一つの物件に対して複数のモデルルームを用意し、さまざまな間取りパターンや内装の違いを実際に見て比較できるのも一般的でした。

 しかし最近では、モデルルームの展開を縮小し、一カ所に集約する傾向が強まっています。さらに、VRやデジタル技術を活用した販売手法も増えてきました。これは、販売コストを抑制するための施策ですが、購入検討者にとっては、実際の物件の様子を確認する機会が減少することにつながりかねません。

 また、一カ所集約型のモデルルームでは、限られたスペースで効率的な販売を行うため、標準仕様ではなくオプションを含めた展示が一般的です。そのため、実際の標準仕様の物件がどのような状態なのかを、購入前に把握することが難しくなっています。

 モデルルームで見た設備や内装が、実は全てオプションだったということが後から判明し、予算オーバーに悩むといったケースも少なくありません。

では、マンションはいつの時代(築何年)のものを選ぶべきか

マンションは築何年のものを選べばいいのか
築年数で見極めるポイントがある(出所:PIXTA)

 「これだけの変化があるなかで、実際にマンションを購入するとしたら、築何年くらいの物件を選ぶべきなのか?」という質問をよくいただきます。

 実は、マンションの品質は大きく3つの時期に分けることができます。特に重要な転換点が、2000年4月以降に建てられているかです。2000年4月から品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行されました。

 この法律により、マンションを建てたデベロッパーには10年間の瑕疵(かし)担保責任が義務付けられることになりました。つまり、まったく意図せずに欠陥のある建物を造ってしまったとしても、必ず10年間はその責任を負わなければならなくなったわけです。その結果、2000年4月以降に建設されたマンションは、それ以前と比べて品質が大きく向上しています。

 さらに、2009年10月には品確法を補完する住宅瑕疵担保履行法が施行され、デベロッパーは建てたマンションの修理費用等の資力確保として保証金を供託することが義務付けられました。つまり、2009年以降の物件は、さらに品質面での信頼性が高まっています。

 2025年現在でいえば、築15年以内の物件というのは、法規制強化後に建設された物件になりますので、品質面での安心感は相当高いと言えます。

 このような点から考えて、私なら2010年前後に建設された物件をおすすめします。この時期の物件は、法規制強化によるマンションの品質向上のメリットを享受できながら、かつ当時の充実した標準仕様設備も備えているという、バランスの取れた物件であると言えるでしょう。

 現時点で築15年程度であれば10年住んでも築25年です。リセールバリューも十分にあるため、住み替えなどにおいてもさまざまな選択肢を持つことができるでしょう。

まとめ

 紹介した築年数のおすすめは、あくまでも一般論であり、実際の購入に際しては、立地や個別の物件の状態、価格など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。また、新築物件であっても、近年は建物の基本性能面では着実な向上が見られますので、用途や予算に応じて選択肢を多く持つことが賢明でしょう。

 重要なのは、表面的な価格だけでなく、仕様や設備の内容、建物の基本性能など、総合的な視点で物件を評価することです。特に、モデルルームや物件の見学時には、標準仕様とオプションの区別を明確に確認し、必要な設備をすべてオプションで追加した場合の総額を事前に計算しておくことが、予想外の出費を防ぐためのポイントとなります。

 また、収納スペースについては、実際の生活スタイルに合わせて必要な容量を事前に計算し、不足する場合は家具での対応やトランクルームの利用を含めた総コストを検討することをおすすめします。

 最後に強調しておきたいのは、物件選びに「絶対的な正解」はないということです。それぞれの時代の物件には、それぞれの特徴や長所・短所があります。大切なのは、自分のライフスタイルや価値観に合わせて、何を重視し、どこで妥協するかを見極めることです。その際、この記事で紹介したような時代による変化を参考に、より良い選択をしていただければ幸いです。

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