2023年11月24日に開業する「麻布台ヒルズ」は住宅やホテル、オフィスなどを備える大規模開発プロジェクト。中でも、最上階の「アマンレジデンス」は200億円という販売価格で注目を集めています。一体、どのような住戸でどんな人が購入するのか。本記事では麻布台ヒルズの住宅エリアを中心に解説するほか、今後、街全体がどのように変化していくのかなど、筆者の視点を交えて本プロジェクトを考察します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)
「麻布台ヒルズ」が11月24日に開業
東京都港区の麻布台一帯を再開発していた大規模プロジェクト「麻布台ヒルズ」の開業が2023年11月24日に決まりました。
事業主は森ビルで、公式資料によると以下のようにあります。
約8.1haもの広大な計画区域は圧倒的な緑に包まれ、約6,000㎡の中央広場を含む緑化面積約24,000㎡、延床面積約861,700㎡、オフィス貸室面積214,500㎡、住戸数約1,400戸、メインタワーの高さは約330m、就業者数約20,000人、居住者数約3,500人、年間来街者数約3,000万人で、そのスケールとインパクトは六本木ヒルズに匹敵します(出所:森ビル公式サイトから)
森ビルを代表する六本木ヒルズの建設費が約2,800億円、麻布台ヒルズが約6,400億円と発表されていることから、六本木ヒルズに匹敵するどころかそれ以上の規模。計画が始まったのが1989年で、足掛け30年以上にもわたる森ビル肝いりの一大プロジェクトであることがわかります。
西から「麻布台ヒルズレジデンス B」「麻布台ヒルズレジデンス A」「麻布台ヒルズ森JPタワー」「ガーデンプラザC」「ガーデンプラザ A,B,D」の4棟から構成されています。
中でもメインの麻布台ヒルズ森JPタワーは高さ約330mで、これまで日本で最も高いビルだった「あべのハルカス」を30m上回り、新たに日本一高いビルになりました。
大きな話題となったのが、麻布台ヒルズで供給される約1,400戸の住戸です。各棟に住戸があり、レジデンスA(14階~53階、320戸)、レジデンスB(6階~64階、970戸)、低層の麻布台ヒルズ ガーデンプラザレジデンス(6階~8階、31戸)、そして森JPタワーの54階~64階までの91戸のアマンレジデンス東京です。
アマンレジデンス東京は、ラグジュアリーリゾートを手掛けるアマンが初めて手がけた住居で、最上階にあるペントハウス3戸のうち、2戸は200億円以上の価格であるといった報道も出ており、どんな人が購入して住むのかといったことも耳目を集めています。
住宅エリアの「麻布台ヒルズレジデンス」は、高さも価格も日本一
東京の都心部を商圏にしている不動産会社・プレイヤーの間では、麻布台ヒルズの事業概要が発表された2019年には、すでに大きな話題になっていました。とんでもなく大規模な開発であり、供給される住戸の価格帯も見当がつかないほど高額になりそうだったからです。
先述の通り、アマンレジデンス最上階の物件は広さが1,500㎡で、価格は200億円以上と報道されています。これが本当であれば、間違いなく日本一高額なマンションでしょう。
1,500㎡で200億円ということは、1坪当たり約4,400万円で、やはりとんでもない価格です。今年2月に販売され、こちらも大きな話題となった高級マンション「三田ガーデンヒルズ」の坪単価が1,300万円といわれていますが(これもかなり高額です)、その3倍以上の坪単価ですから、驚きです。
【関連記事】>>「三田ガーデンヒルズ」は坪単価1300万円!? 価格表を公開! モデルルーム予約も満席続きの異次元高級マンションが誕生
この原稿を執筆するにあたり、同業から情報を募ったところ「レジデンスBの29階の物件が200㎡で19億円だった」という話を聞くことができました。どのような間取りかはわかりませんが、単純計算で坪単価は3,140万円と、これもとんでもない価格でした。
レジデンスBは、麻布台ヒルズのなかでも最も供給戸数が多い970戸で、B棟の6階から64階を占めています。情報提供のあった29階の住戸は、レジデンスBの中間の階層であること、アマンレジデンスがそれよりも部屋やサービスのグレードが高いことを鑑みると、1,500㎡で200億円というのも十分にあり得る価格だと考えられます。
では、この価格が相場に比べて妥当なのでしょうかー。
正直、これほどの価格になると高いのか安いのかはわかりません(笑)。私を含め、一般庶民には逆立ちしても手が届かないほど高額ですが、不動産の価格は市場によって決まります。
各戸の売れ行きは好調のようで、くだんの200億円の物件3戸もすでに成約済みとのこと。買い手がいるということは、市場的には適正価格あるいはそれよりも安いということなのでしょう。
充実の共有施設やサービス、東京を一望できる眺望
麻布台ヒルズレジデンスは、管理サービスや利用できる共用施設も非常に優れています。
フロントサービスやドアマン、ポーター、バレーサービスなどは24時間対応、居住者のみが利用できるジムやプールを備えた国内最大規模となる約4,000㎡のウェルネス施設などが利用可能。その他、ラウンジ、ゲストルーム、スタディールーム、シアタールーム、キッズルームなどもあるようです。
アマンレジデンスでは、それらに加えて各戸に専用のエレベーターでアクセスできるほか、専用シェフがサービスを提供するプライベートダイニングルーム、25mのプライベートプールを含む1,400㎡のアマン・スパ なども利用できるそうで、高級リゾートのアマン東京の一室を所有しているような感覚で、まさに日本一にふさわしいサービスや設備がそろっています。
また、細かな点では住居の天井高にも驚きました。一般的なマンションの天井高が2m50cm~60cmであるのに対し、麻布台ヒルズレジデンスは基準階天井高が3m(事務室、住居階梁下の高さ)とかなり高く、開放的で圧迫感のない空間となっていることがうかがえます。
窓からは東京タワーが目の前にあり、東京の夜景を一望できる。最高の眺望も、物件の希少性を高めるひとつのポイントになっています。
麻布台ヒルズレジデンスに住むのはどんな人なのか?
麻布台ヒルズレジデンスは、モデルルームやオープンな内覧会などを一切行わず、クローズにして限られたごく一部のVIPに向けて極秘で販売されました。近年、高価格帯の物件は、このような非公開で販売されるケースが増えています。三井不動産が手がけた「パークコート青山 ザ タワー」の上層階なども、金融機関などからの完全紹介制で販売されています。
では、麻布台ヒルズレジデンスにはどのような人たちが住むのでしょうか。
アマンレジデンスの3戸ある超高額物件は既に成約済みで、購入者は日本人だと一部の週刊誌が報じています。業界で流れてくるうわさでも、対象の物件は有名ITサービスの創業者が購入したという話を聞きます。
その他の物件でも、おそらくは十数億円~の価格であろうことを考えると、その価格帯を購入できる方は限られています。金融機関からのローンも、どれだけ信用があっても借りられるのは最大で20億円ほどであることを考えれば、それ以上の価格の場合はキャッシュで購入しなければなりません。
それは弁護士や医師といった一般的な(?)富裕層ではなく、大企業で創業者利益を得た人や、IPO(株式の新規公開)によって巨額の利益を出した人でなければ難しいのではないかと思います。数十億円を現金で持っている人なんて、日本の0.00数%でしょう。あとは、ビットコインで大もうけした人でしょうか。
完璧な麻布台ヒルズレジデンスに、あえて難癖をつけるなら
クオリティーや充実したサービスなど、日本一の価格に見合う文句なしの麻布台ヒルズレジデンスですが、あえて難癖をつけるなら、周辺の交通利便性への懸念です。1,400世帯が一気に増えることで、周辺では渋滞なども起こりそうです。
特に、神谷町を南北に通る桜田通りと東西の都道319号線が交わる飯倉交差点は、六本木方面に抜けるための道路ですが、あまり交通の便がよいわけではないため、時間帯によっては周辺で大渋滞といったことが起こり得るかもしれません。
また、冒頭で紹介した公式資料にあったように、就業者数約20,000人、年間来街者数約2,500万~3,000万人と、居住者以外の人々も麻布台ヒルズに集まることから、鉄道などの公共交通機関に影響を与える可能性もあります。
職・住混在の麻布台ヒルズが、街のバリューを上げる可能性も
最後に立地について考えてみましょう。
麻布台ヒルズの最寄り駅は、東京メトロ日比谷線「神谷町」駅と東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅で、どちらの駅周辺も正直な話、「なにもないところ」です。しかしこれも、麻布台ヒルズによって変わる可能性が十分にあります。
六本木ヒルズのある六本木駅周辺も、もともとは何もない街でした。しかし、2003年に六本木ヒルズができたことにより、おしゃれな人気エリアに様変わりしました。また、周辺の不動産価格に大きな影響を与えました。
下記は、東京都港区六本木4丁目の公示地価の推移をグラフにしたものです。
六本木ヒルズが竣工した2003年頃までは下降気味だった価格が、2005年あたりから一気に上昇していることがわかります。その後、リーマンショックにより一時的に価格は落ち込みましたが、現在では再び高い水準で推移しています。
この要因には、六本木ヒルズに入居した外資系や大手企業が入ってきたことで、六本木がビジネスの中心になったことも要因となっています。
これと同様なことが、麻布台ヒルズでも起こるかもしれません。六本木ヒルズも竣工から20年経っていることから、もしかすると六本木ヒルズのテナントが移転してきたり、金融系の会社なども入居したりして、ビジネスの中心が虎ノ門や神谷町の周辺に移ってくる可能性もあります。
近年、大手商社が東京駅や大手町などに移転していると動きを見ると、六本木ヒルズよりも比較的近い神谷町周辺はアクセスがよくビジネスの連携も強くなるかもしれません。
今まではぱっとしなかった麻布台一帯でしたが、麻布台ヒルズによって街のバリューや周辺の不動産価格は上がっていくと思われます。
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- 価格
- 第2期1次 未定
- 完成時期
- 2026年4月下旬予定
- 東京都港区三田1丁目102番1(地番)
- 東京メトロ南北線 「麻布十番」駅 徒歩5分 (敷地(1)ノースヒルエントランスから)、徒歩7分(敷地(1)パークマンションエントランスから)、徒歩7分(敷地(2)サウスヒルエントランスから)
- 間取り
- 第2期1次 1R~4LDK
- 専有面積
- 第2期1次 29.34~200.42㎡
- 総戸数
- 1,002戸(一般販売対象住戸952戸、他に店舗2戸、敷地(1)837戸、敷地(2)165戸)
- 売主
- 三井不動産レジデンシャル株式会社、三菱地所レジデンス株式会社
- 施工会社
- 大成建設株式会社
※データは2023年5月18日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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