マンションを買うなら、居住性もさることながら、将来の値上がりや資産性にも注目しておきたいところ。その点からは、東京カンテイの「中古マンションのリセールバリュー」に関する調査が参考になる。10年前に分譲されたマンションが、現在の仲介市場においていくらで取引されているのかを示す数値で、リセールバリューの数値が高いほど、資産価値が上昇しているわけで、購入後もさらなる上昇が期待できるかもしれない。(住宅ジャーナーリスト・山下和之)
リセールバリューとは? 計算方法などを解説
不動産データバンクの東京カンテイでは、毎年、中古マンションのリセールバリューを調査している。そして最新版として「2023年中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」を発表している。
リセールバリューというのは、竣工(しゅんこう)から10年が経過した分譲マンションのうち、現在中古で流通している物件を抽出、分譲時の価格と現在の価格を比較する。
算出方法は下記の通りだ。
例えば、10年前に5000万円で分譲されたマンションが、現在6000万円で取引されていれば、6000万円÷5000万円×100でリセールバリューは120%ということになる。
反対に流通価格が4000万円に下がっていれば、4000万円÷5000万円×100で、リセールバリューは80%ということだ。
この数値が大きいほど値上がり率が高いわけで、それだけ資産性が高いエリアという見方ができる。
首都圏でリセールバリューが高いエリアは?
リセールバリューは鉄道駅ごとに集計しており、2023年の首都圏で算出が可能な駅は445駅で、リセールバリューの平均は139.5%となった。図表1にあるように、近畿圏は132.3%、中部圏は110.5%で、やはり首都圏のリセールバリューが一番高くなっている。
図表1 三大都市圏の中古マンションリセールバリュー (単位:%)
平均すれば、首都圏では10年で4割近く資産価値が高まっているわけだが、マンション価格高騰の折、対象となった445駅のほとんどの駅でリセールバリューが上昇している。
中古流通価格が分譲時の価格を下回った駅、つまり値下がりした駅は445駅中の8駅にとどまっている。場所としては東京都下や周辺3県の遠隔地に限られている。しかも、下落幅はすべて1割未満にとどまっており、全体としての上昇傾向の強さをうかがわせる結果となっている。
上昇した駅のうち150%以上となった駅が121駅だった。10年で5割以上資産価値が高まったことになるが、その駅は都心部やJR山手線の沿線などに集中している。リセールバリュー100~150%が316駅で、JR山手線の外側から首都圏全般に広がっている。
資産価値の上昇を考えれば、やはり都心や山手線の沿線までの範囲で購入するのが一番ということになる。もちろん、価格相場は高く、築年数にもよるが都心部では1億円からそれ以上、都心周辺部でも7000万円、8000万円はするので購入は簡単ではない。しかし多少無理してでも購入するだけの価値はあるということだろう。
10年間で2倍、3倍に上がった都心の各区
首都圏の445駅のうち、リセールバリューが最も高かったのは、図表2にあるように、東京メトロ千代田線の新御茶ノ水駅の295.5%だった。
図表2 首都圏の中古マンションリセールバリュートップ10の駅
順位 | 沿線名 | 駅名 | リセールバリュー | 平均坪単価 | |
---|---|---|---|---|---|
分譲時 | 流通時 | ||||
1 | 東京メトロ千代田線 | 新御茶ノ水 | 295.5% | 424.8万円 | 1255.2万円 |
2 | 東京メトロ南北線 | 六本木一丁目 | 265.7% | 479.6万円 | 1274.2万円 |
3 | JR総武線 | 飯田橋 | 223.1% | 393.8万円 | 878.4万円 |
4 | 都営地下鉄大江戸線 | 赤羽橋 | 212.6% | 391.2万円 | 831.6万円 |
5 | 都営地下鉄三田線 | 芝公園 | 207.1% | 362.1万円 | 749.9万円 |
6 | 東急東横線 | 代官山 | 205.3% | 463.7万円 | 952.1万円 |
7 | 東京メトロ千代田線 | 乃木坂 | 204.5% | 376.9万円 | 770.7万円 |
8 | 東京メトロ南北線 | 麻布十番 | 200.7% | 372.2万円 | 747.1万円 |
9 | 東京メトロ日比谷線 | 築地 | 195.5% | 288.2万円 | 563.4万円 |
10 | 東京メトロ有楽町線 | 麹町 | 194.8% | 334.9万円 | 652.3万円 |
参考:東京カンテイ『2023年のリセールバリュー最高駅は「新御茶ノ水」の295.5%』
10年間でおよそ3倍の資産価値になった計算だが、それには理由がある。
調査に当たった東京カンテイでは、新御茶ノ水駅で調査の対象となったのは「ワテラスタワーレジデンス」の1物件だけで、「大手ゼネコンが施工した41階建ての駅近大規模タワーマンションのみ。中古流通している住戸の所在階が20階以上ということもあり、築後10年を経た現在の流通価格は坪1200万円を優に超えている」という特殊事情があるためとしている。
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それにしても、10年で3倍というのは、驚くべき数字といわざるを得ない。リセールバリューの2位の東京メトロ南北線・六本木一丁目駅は265.7%で、3位のJR総武線の飯田橋駅は223.1%、4位の都営地下鉄大江戸線の赤羽橋駅が212.6%、5位の都営地下鉄三田線の芝公園駅が207.1%などとなっている。
上位には東京23区の都心の駅がズラリと並んでいて、海外の投資家や富裕層からもニーズが高い港区、番町をはじめ国内の富裕層からの人気が高い住宅地が多い千代田区、100年に一度の再開発と話題が多い渋谷区などにリセールバリューの高い駅が多い。
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首都圏以外で価格上昇率の高いエリアはどこ?
ただ、残念ながら将来の資産価値の上昇が期待される首都圏の都心の駅では億ションが当たり前で、駅によっては2億ション、3億ションが中心で、かなりの高額所得者や富裕層でないと簡単には手が届かない。
そこで注目してみたいのが、首都圏以外の大都市部の中心エリアだ。
各種マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、全国市区町村の中古マンションの価格ランキングや騰落率のランキングを作成している。
図表3は、2024年5月の70㎡換算の中古マンション価格の1年前に比べての上昇率が高かった市区町村のベスト10を示している。
図表3 1年前と比べての上昇率が高い自治体上位10
トップは東京都中央区の29.93%、2位は東京都港区の23.01%で、ともに70㎡換算価格が1億円を超えており、購入は簡単ではないだろう。
それに続く3位には福岡県福岡市中央区が入り、上昇率は20.46%と2割以上上がっているが、70㎡換算価格は3294万円と格段に安くなる。さらに、4位にも福岡県福岡市から城南区が入り、こちらは上昇率19.64%で、価格は2294万円とさらに安くなる。
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2000万円を切る価格で上昇率は二桁台
5位には、首都圏から千葉県千葉市花見川区が入っているが、6位以下には、愛知県名古屋市や大阪府大阪市の各区市が並んでいる。大阪市北区は5000万円台前半とやや高くなるが、そのほかは2000万円台、3000万円台があり、2000万円を切る大阪府枚方市のようなエリアもある。枚方市は2000万円を切る水準でありながら、1年前からの上昇率が13.33%に達している。
首都圏に住んでいる人でも、在宅勤務が中心の勤務先であれば、こうしたエリアにマンションを取得して、月に1、2度東京に通うというライフスタイルが可能になるのではないだろうか。
最近、在宅勤務推奨の企業のなかには、通勤費として飛行機代や新幹線代を負担するというケースもあるので、手の届く範囲で首都圏以外にマンションを購入、将来の資産価値上昇を期待するという選択も可能ではないだろうか。
また、居住しないまでも、比較的リーズナブルな価格帯で中古マンションを取得して、賃貸で運用しながら、資産価値の上昇を待つといった考え方もできるだろう。その中間的な利用方法では、リゾートとして購入し、自分たちが使わないときには、民泊で運用するという手もありかもしれない。
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10年で資産価値が2倍近くになったエリアも
さらに10年前との騰落率のランキングの結果が図表4だ。
図表4 10年前と比べての上昇率が高い自治体上位10
10年騰落率のトップは東京都中央区で、3位には東京都千代田区、8位には東京都江東区が入っているが、そのほかには東京23区以外の市区が多く並んでいる。
2位は愛知県名古屋市中区で70㎡換算価格は3418万円。10年前に比べての価格上昇率は106.84%だから、10年間で資産価値がおよそ2倍になったわけだ。そのほか、10年間で2倍近くに上がった東京23区以外の市区は少なくない。たとえば福岡県福岡市中央区は96.54%の上昇率で、大阪府大阪市中央区は93.59%、同じく大阪市の北区は92.08%となっている。
大阪市の70㎡換算価格は5000万円台の前半だが、福岡市の中央区は3000万円台の前半にとどまっている。さほど年収が高くない人でも、十分に取得が可能ではないだろうか。
まとめ
居住用のマンションや投資用のマンションの取得を首都圏、特に23区など都心部に限定すると、資産価値の高いエリアでの取得は簡単ではないが、都心部やその周辺以外にも目を向けてみれば、思いのほか選択肢が広がるのではないだろうか。
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