不動産売却の現場では、営業マンたちがしのぎを削りながら成約数を上げようと必死に動き回っています。中には「えげつない」営業テクニックを駆使する営業マンもいます。今回は、アポ取りの定石トーク、初回で契約する方法、値下げさせる営業テクニックなどを紹介しましょう。悪質な営業マンに騙されないための参考にしてください。
まずは、客に会うことが目標
前回は、不動産仲介会社の営業マンが、売り物件探しに仕事の7割を費やしていることを紹介しました。そこで今回はその続きとして、売り物件になりそうな不動産を所有している人を見つけたら、媒介契約を獲得するために、あの手この手を使って接触してくる営業マンのテクニックを紹介しましょう。
【前回の記事はこちら】
>> 不動産仲介の営業の仕事は売却物件探しが7割! 電気メーターによる空き部屋探しが日課で、非効率な仕事のツケは売り主、買い主に押し付け
営業マンの鉄則は「とにかく客に会え!」。彼らは、さまざまな営業トークを駆使してアポイント取りに奔走するわけです。その時の最大の武器が「査定」です。一般消費者は不動産相場には詳しくありませんから、「自分が所有する物件の価値がどれくらいか?」をはっきりと認識している人は少ないのです。
「まだ物件を売るかどうかは決めていないでしょうが、売るとしたら、いくらで売れるかを知りたくないですか?」
こうした営業トークで、―個人資産の中でもウエートが大きい不動産価格を知りたいと思う客の心理に付け込むのです。他にもあります。
「最近はインターネットで自動査定サービスも提供されていますが、いい加減で当てになりません。物件を見せていただければ30分で、正確な査定ができます。売るのは5年先、10年先かもしれませんが、いざ売る時に慌てないように、今から価格をウォッチしておくことが必要ですよ」
こんな営業トークを駆使しながら、面会の約束を取ろうとします。電話がダメなら、手紙を出すとか、手を替え品を替えてアプローチしてきます。
そして、客の家に上がり込めれば「営業マンの勝ち!」と言われています。「どのようにして物件を取得したのか」「現在の利用状況は?」など話し出せば、時間はどんどん過ぎていきます。すっかり家に居座り、営業マンはなかなか帰ろうとしません。結局、帰ってもらうために、思わず媒介契約書に判を押してしまうことも珍しくありません。
最初の訪問で、一気に媒介契約まで持ち込めるケースは半分ぐらいと言われます。それだけの確率で売り物件を獲得できるわけですから、「とにかく客に会おう」と必死になるわけです。
「一般媒介にすると煩わしいですよ」は常套句
媒介契約も、物件を独占的に扱える「専任媒介契約」と、複数業者が競合する「一般媒介契約」の大きく二種類があるのですが、営業マンは必ず「専任媒介契約」契約に持ち込もうとしてきます。そうすれば、他の不動産会社に取引を持っていかれる可能性がなくなり、もうかるからです。そこでいろいろな言い訳を考えるのです。
「一般媒介契約にすると、いろんな不動産仲介業者から問い合わせが来て、本当に煩わしいですよ」
「一般媒介契約だと、不動産仲介業者が本気で売ってくれませんよ」
などと言いながら、専任を勧めるのです。一般媒介に、そうした面があるのは確かですが、逆に複数の不動産仲介会社を競わせて、早期に売却できることもあり、一概に悪いとは言えません。
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「値熟し(値下げ)」は、所長と一緒に頭を下げる
営業マンは、見込み客に会う前に、目を付けた物件がどれくらいで売れるかをしっかり査定しています。営業マンにとって楽に儲けられるのは、買取再販業者などのプロに売ること。親しい業者に事前に打診して買取価格を握ったうえで査定するのです。
その査定価格で物件所有者を納得させられればシメタもの。あとはプロの事業者に売って、売り主と買い主の両方から手数料収入を得る“両手取引”が成立。さらに買取再販業者にリノベーションした物件の媒介も任せてもらえれば、1物件で2度もおいしい取引ができるわけです。
問題は、売り出し価格が目算より高くなってしまうことが多々あることです。特に、一括査定サービスなどを使用している場合、専任媒介契約を取るために、競合他社よりも価格査定を上げざるを得ません。それで本当に売れるかどうかは別として……。また、売主の中には、相場よりも相当高い価格での売却を希望している場合もあります。
売り出し価格が高くなれば、当然、売りにくくなります。不動産相場に精通したプロですから、売れるかどうかは最初から分かっているのです。
最初は電話やネットによる問い合わせ件数など反響を知らせつつ、様子を見ます。しかし、2週間もすれば、売り主の顔色を見ながら売り出し価格の見直しを打診し始め、「値熟し(ねこなし)」に取り掛かります。「熟す」とはもともと「食べ物を消化する」意味ですが、「値熟し」とは不動産仲介会社が手持ち物件を売りさばくために「価格を下げていく」ことを指します。
不動産は、値段が低い方が売れるに決まっています。そのため営業所長によっては、営業マンが値熟しできているかどうかの「値熟し率」を出して、「さっさと値熟しさせてこい!」とハッパをかけている不動産仲介会社もあると聞きます。
売主としては、「最初は『この価格ですぐに売れます』なんて言っていたのに、ちょっと最初と話が違うんじゃないの?」と言いたくなりますが、これが不動産仲介会社の手口なのです。
最初に散々、強気の価格査定をした手前、「値熟し」するときには営業所長クラスを同行。「市況が変化して反響が落ちている」と頭を一緒に下げて、何とか値下げさせます。
また、買主から値引き交渉が入ることがあります。売主からすれば、上手く交渉して値引きなしで売却したいところですが、早期に売却したい営業マンの場合は、積極的に値引きを受け入れようとします。「若い夫婦からの値引きの打診なので、何とか応援してあげてください」と情に訴えたりして、値引きを飲ませるのです。
まとめ 不動産仲介会社選びは、査定価格だけで選ばない
不動産の価格査定は、単に相場を知り、売り出し価格を決めるための査定で、中古自動車の価格査定のように買取価格を保証するわけではないのです。不動産では価格査定だけでなく、不動産仲介会社の対応や営業マンの人柄なども比較しながら、媒介契約先を選ぶべきでしょう。
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