あと少しで不惑の40歳。
株、FX、商品先物などの金融商品に自腹で挑戦して撃沈。金持ち父さんが目標!
ZAi記者が自腹で不動産投資をしよう! という大マジメな、無謀企画。狙うは大胆にも1棟もの。
日々、不動産広告とニラメッコし、週末には物件を見に行き…、涙ぐましい努力は果たして実を結ぶのか。
>>第1回
『サラリーマンでもできるの?不動産投資のイロハからオベンキョー!』はこちら
>>第2回
『やっぱり最初はワンルーム投資?区分マンションは安いが「金持ち」は遠い!?』はこちら
たまたま出会った不動産屋さんに紹介された物件は…
09年7月に時計の針を戻す。新聞折込チラシに中古マンションの内見の案内が入ってきた。おお! オレの家の近所だ。
これから金持ち父さんになるには、実は不動産投資が大本命なのではないか? とうっすら感じていたオレは、ヒマだったし、買う気はないけど冷やかし半分で見に行くことにした。ホンネを言えば、ちょっと不動産屋と話がしてみたかったのだ。
その物件は、新築当初5000万円近くで売り出していた3LDKの物件で、築10年程度経っていた。「4000万円ならそこそこ割安かな?」とは思ったけれど、なにしろオレはズブの素人。何を基準に「割安」と判断するのかさえ知らない。
しかしオレは不動産屋さんに言った。「投資用のマンションとか1棟アパートを探しているんですよ」
言ってみたかったのだ。
するとその営業マンは「実は僕、そっちが専門なんですよぉ。今度、紹介しますよぉ」と乗ってきた。
まさかの急展開。
さっそくオレは、つくりたてホヤホヤの個人の名刺を差し出した。
次の日、その営業マンが持ってきたのが荻窪のマンションと聖蹟桜ヶ丘のアパート。
荻窪のマンションのほうは写真付きだった。おしゃれなコンクリート打ちっぱなしで、室内もキレイ、1階はバイク置場になっている。場所は人気の荻窪だしコレ、イケてるんでないのぉ───?
デザイナーズマンションに心奪われるも…
すっかりオレは荻窪の物件に心奪われていた。でも、値段は高い。値下げが可能だとしても、表面利回りは8%が限界かな…。
物件を選ぶ際に最初、判断基準にしたのが「利回り」だ。利回りには「表面利回り」と「実質利回り」がある。表面利回りは単純に年間収入を物件価格で割ったもので、この数字が10%以上あることを条件にしていた。
一方、聖蹟桜ヶ丘のアパートは、今までは借地権だったものを「所有権アリ」で売り出す非公開物件とのこと。「非公開」という言葉にはかなり惹かれる。しかもこちらは「5000万円を4800万円まで下げてもいい」ということで、表面利回りはほぼ10%。
喜び勇んで束田センセイに見せに行った。
ぶっちゃけ、けっこう自信があった。
ところが、荻窪の物件は「まず利回りが低すぎる」とバッサリ。収益還元法で表面利回りが10%以上ないと、検討にも値しないとか。
「でも、おしゃれでいいですよね~、オレが住みたいくらいだな…。バイク置場もあるし…」と食い下がると、「そもそも土地が狭すぎ。これじゃ融資がつくかどうかも心配だし、おしゃれな外観や内装は自分がリフォームするときの参考にするにはいいけど、こういうきれいな物件は、その分儲けが乗っているので、割高ともいえるんです」
マジ凹むワ。
見た目で判断するのはオレの悪いクセか。気を取り直して、聖蹟桜ヶ丘の物件を。これならどうだっ!
収益還元法と積算価値の違いって…?
聖蹟桜ヶ丘は利回りが10%以上。「確かに悪くはないですね」と束田センセイ。しかしその次に「現地は見ましたか?」
オレが「まだです」というと、「最低限、現地を見てから。見ないで買うのは言語道断です」と言われてしまった。
土地勘がない場合は周辺にコンビニなどがあるか、生活環境をチェックし、周りの競合する物件を20軒以上見て、その辺の家賃相場、空室率などをしっかりチェックしないとダメとのこと。
トホホ…。
ところで、オレはその頃、「収益還元法」しか知らなかった。これは利回りから逆算して物件価格を導き出す方法だ。
具体的には1年の純収益が500万円で還元利回りが10%の場合、500万円÷0.1=5000万円となり、5000万円の物件を買えば、毎年10%の利回りが得られることになる。
しかし束田さんは「積算価値はどれくらいあるの?」とチラッと言っていた。セキサンて何だ?
調べると土地の価値と、その上に立っている建物の価値の合計のこと。2つを合計してその物件自体の価値を見る。
金融機関は積算価値から融資額を決めるので、融資を受けるならそっちを考えないといけないのだ。
路線価から計算すると土地の価値は3313万円。建物価値はざっくりだけど1606万円。合計で5000万円弱になる。
ということは4800万円なら、割安ってこと!?
強気なザイ記者は収益還元法だけで
4000万円の指値をしたのだが…
オレは早速、週末に聖蹟桜ヶ丘に出かけた。
初めて降りた駅だったが、思った以上に駅前は活気がある。物件は駅から5分ということで、その点は申し分ない。ただ、似たようなアパートをいくつか発見! ネットで家賃相場を調べると、今の家賃はちょっと高めかな、とも思う。一部屋5.5万円まで下がるかも、と思って計算し直すと、表面利回りで8%程度にまで下がってしまう。税金のことも考えると、収益還元法で実質10%になるように4000万円で買いたいな、と最近覚えた「指値」をしたい気持ちに。
営業マンに伝えると、「え! それじゃ土地の値段ですよ」と怒られた。でも、ここでナメられてはいけないと「4000万円じゃないとイヤです」とゴリ押し。
その後、最近不動産投資を始めたJackさんにも聞いてみたら「4000万円なら僕も欲しいです」だって。
オレは得意になっていた。初めての不動産投資で超お買い得物件を掘り当てたのだ!
ところが不動産屋からはその後、音沙汰がなくなった。さすがに安すぎて呆れられたのか?
がっくし…。最初の指値はこうして散った。
はぁ~、まだまだ金持ち父さんへの道は始まったばかり。でもけっこう、イバラの道が待っているのかも…。
(構成/八村晃代 撮影/和田佳久 イラスト/朝倉世界一 ダイヤモンド・ザイ2010年1月号より転載)
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