新米大家のレッド吉田さんが百戦錬磨の先輩大家に賃貸経営の極意を学ぶ本連載。今回のゲストは激安不動産投資家&随筆家としてマニアから熱狂的な支持を集める加藤ひろゆきさんです。最新刊の「300万円で大家になって地方でブラブラ暮らす法」も好評の加藤さん。今回は、不動産購入の手法とこれからの夢について。
【第1回】「借金して遠くの高い不動産を買う意味がない!」
【第2回】「東京でも激安不動産投資はできる」
【第3回】成功する投資家に共通することとは?
ハリウッドも不動産投資も確率の問題
レッド吉田さん(以下、レッド) もともと大家になるのが夢だったんですか?
加藤ひろゆきさん(以下、加藤) 20代の頃の夢はハリウッドスターになることでした。アメリカに渡ってオーディションを200本受けて、マドンナやジャネットジャクソンのミュージックビデオに出たこともあります。でも、最後は貧乏をこじらせて、200ドルを握りしめて帰国ですよ。結局、挫折しましたけど、その経験から学んだこともたくさんあります。
レッド どんなことを学びました?
加藤 例えば、すべては確率の問題ということです。不動産も膨大な資料の中から物件を選んで見に行って、いくつかに買付を入れて、ようやく1棟買えるわけです。数が増えるほど、見る目も養われて、買える確率も高まります。オーディションもそれと同じです。とにかく数を当たることって大切ですよ。
レッド なるほどね~。最初のアパートを買うまでにどのくらい物件を見たんですか?
加藤 最初に買ったアパートは、80棟目に見に行った物件です。その前に、図面(マイソク)は何千枚も見ています。
レッド 当時は会社員だったんですよね。よくそんな時間がありましたね。
加藤 当時の週末は不動産一色でした。今みたいにぶらぶらしていなかったですね。その頃から数えたら、いくつ物件を見たかわからないですよ。でも、そのおかげで安く家を買えるようになりました。
レッド やっぱり何事も努力と経験が生きるんですね。それだけ買っていると、中にはちょっと変な物件もあるんじゃないですか?
加藤 去年買った築15年の家は、新築のときに2800万円で売られていたんですが、610万円で買って、今、9万円で貸しています。この家は隣に街宣車が止まっていたんですが、尖閣諸島問題のときに引き合いがあって売却したそうで、今は平和な町になっています。
レッド ワハハ! そんな物件があるんですね。それにしても隣の家に街宣車が止まっている家を買うなんて、やっぱり加藤さんはチャレンジャーだなあ。
物件を買うときはグーパーチョキ
レッド そういえば、加藤さんの本に、「物件を買うときはグーパーチョキ」と書いてありますよね。それについて教えてください。
加藤 まず、高利回りの物件以外はオーディションで落として、数を絞ります(グー)。そうしたら今度は、オーディションに通ったものをどんどん買って回しながら、資本を蓄積します(パー)。最後は買ったものの中から収益の悪いものを手放していって、いいものを残します(チョキ)。これがグーパーチョキという意味です。
レッド パーからチョキに減らすとき、物件が高く売れるとは限りませんよね。損をすることもあるんですか?
加藤 売却益が出なくても、その前に家賃で回収してしまえばマイナスにはなりません。最低でも引き分けにしないと、次の勝負に挑めませんよ。
レッド 今までの勝率はどのくらいですか?
加藤 野球に例えると、8勝1敗くらいです。1敗というのは、駐車場がついていると聞いて家を買ったのに、その駐車場が共有地だったという詐欺にあったときです。このときは、ご近所の主婦たちから「駐車場を勝手に使うんじゃない」と激しい言葉攻めに合って、心が折れそうになりました。その家は、クルマ不要の家族に貸したところ、オーナーチェンジで本州の投資家が買ってくれました。
レッド つらい経験もされているんですね。
加藤 まあ、それはレアなケースですね。勝負の話に戻ると、野球なら8対1で勝てるものを買えばいいんです。8対7でギリギリ勝てるものじゃダメなんですよ。
レッド そんな大差で勝てるような物件、どうやって見つけるんですか?
加藤 たくさん物件を見ればわかるし、出会えますよ。これまで一番大差で勝ったのは、55万円の家を7万円で貸したときです。
レッド ええ! そんな物件があるんですか? ああ、オレもそんな物件欲しいな~。
加藤 チャレンジしてみたらいいですよ。安くないなら、指値を入れてみたらいい。安い戸建なら、もし負けたとしても致命傷にはなりません。
レッド でも、僕にできますかね~。
加藤 レッドさんはしゃべりがうまいから大丈夫です。FXや株は人柄とかまったく関係ないですよね。でも、不動産は相手が人間だから、しゃべりがうまいことが有利になるんですよ。きっと金利交渉に成功したのだって、レッドさんのしゃべりのうまさと関係しているはずですよ。
もう一回ハリウッドを目指すのはどうですか?
レッド 加藤さんはすでに、やりたいことをやっているように見えますが、今後、テレビの仕事とかも考えているんですか?
加藤 コメンテーターとかやりたいですね。軍事評論家の「テレンス・リー」みたいなポジションがいいと思うんです。今さらネタ見せなんかやっても、「おもしろくないよ」って言われて終わりですから(笑)
レッド 切り口次第でうまくいくと思いますよ。世間が求めたタイミングでがんばればいいんです。焦っちゃダメ。エネルギーをためて、いつか求められたときにポーンと出るんですよ。加藤さんならいつもの調子でいれば、「なんかいい加減なこといっているな、この人」ってみんな笑ってくれますよ。
加藤 そうですかね。なんか恥ずかしいですよ。
レッド ところで、加藤さんの最終的な目標ってなんですか?
加藤 いい物件があれば欲しいし、本も書きたいですね。
レッド そうか~。加藤さんはもう、夢が叶っている状態なんですね。今、楽しそうですもんね~。そうだ。もう一回ハリウッドを目指すというのはどうですか? 何か一緒に面白いことをやりましょうよ。
加藤 いいですね~。二人で八分ズボンをはいて、サングラスをかけて、誰も欲しくない離島の物件とか、家の中から空が見えるボロ物件とかをレポートしたいですね。
レッド ワハハ!ぜひ実現させましょう! その日を楽しみにしています。
次回は、石原博光さんとの対談です。
(構成/加藤浩子 撮影/和田佳久)