「家を買うなら一戸建てがいい!」――実は、全国的には6割以上の人がまずは一戸建ての購入を検討している。一戸建てを購入する場合、新築へのこだわりもあるだろうが、築年数が経過している「築深」の中古物件を買ってリノベーションすることも検討したい。現実的には、その方が確実に「安くて広い」物件を手に入れることができるのだ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
まだまだ根強い日本人の一戸建て志向
首都圏を中心とする大都市部では、マンション居住者が増えているとはいえ、まだまだ全国的には一戸建てが主流だ。
東京カンテイの調査によると、秋田県と福井県では、2018年の1年間を通して新築マンションの分譲がなかったそうで、そうした地方圏を中心に一戸建て志向は強く残っている。
国土交通省のデータによると、分譲マンションストックは2018年末現在約654.7万戸だが、それでもマンションに住んでいる人は日本人の約1割にとどまるとしている。残りの約9割が一戸建てに住んでいると考えていいだろう。
実態面だけではなく、意識面でも一戸建て志向が根強く残っている。
国土交通省では、毎年『土地問題に関する国民の意識調査』を実施しており、そのなかで、今後望ましい住宅形態について質問している。その最新の2018年度版では、下記の円グラフにあるように、全国平均では65%の人が「一戸建て」がいいとしている。「一戸建て・マンションどちらでもよい」が21.8%あるものの、最初から「マンション」と一本に絞っている人は10.2%と約1割にすぎない。
エリア別にみると、大阪圏では「一戸建て」を希望する人が48.5%と半数以下にとどまっているが、名古屋圏では77.3%と8割近くに達するといった違いがあるものの、一戸建て志向が全国的にたいへん根強いものであることが分かる。
戸建て物件、人気の理由はなにより「広さ」
その一戸建て、かつては「庭付き一戸建て」といわれたほどで、やはりその面積の広さが一番の魅力だろう。
東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏で売りに出されている新築一戸建て物件(新規登録物件)の平均土地面積は112.41㎡だが、実際に成約に至った物件の平均土地面積は123.91㎡。新規登録物件の平均値より10㎡以上も広くなっている。
つまり、新築物件のなかでも、比較的土地面積の広い物件から売れているということになりそうだ。
東京都の新築一戸建ては、
首都圏平均よりも30㎡よりも狭い
一戸建ては、庭にあたる部分に駐車場を設ければ、マンションのように駐車場料金がかからないのがメリットでもある。しかし、それなりに土地面積が広い場所でないと、駐車場を設置することでほとんど庭がなくなってしまう。実は、そういった土地面積の狭い一戸建ては少なくない。
首都圏でも都県によって土地面積の広さは大きく異なるが、特に東京都は狭い一戸建てが多い。成約物件の平均で見ると、以下のようになっている。
千葉県 144.33㎡
埼玉県 143.90㎡
神奈川県 117.18㎡
東京都 92.77㎡
東京都に限れば、平均で92㎡台だから、実際には土地面積が70㎡、80㎡台の新築一戸建ても決して珍しくないということになる。特に、東京23区内の物件であれば、それが当たり前になっていると言ってもいいかもしれない。
しかしこれでは、駐車場を設置すると、庭は文字通りの「猫の額」状態になってしまう。門扉もなく、駐車場の脇を通って玄関に入り、住まいの窓を開けると隣の家の壁が迫っているというのが実情だろう。とても庭いじりを楽しむといった空間は望めず、一戸建てとは名ばかりの、実際的には長屋状態の住まいといっても過言ではない。
中古一戸建てなら土地面積は20㎡以上広くなる
それでは一戸建てにこだわる意味がほとんどなくなってしまうのではないか――そこで、注目したいのが中古一戸建てだ。
東京都における新築一戸建ての成約物件の平均土地面積は123.91㎡であるのに対して、中古一戸建ての平均は143.57㎡となっている。中古なら、平均でも新築より20㎡ほど広くなっているのだ。
新築と同様に都県による面積の差が大きく、最も広い千葉県は189.28㎡と200㎡に近い広さで、埼玉県は155.48㎡、神奈川県は142.27㎡となっている。東京都は一番狭くて105.62㎡だが、新築の92.77㎡に比べると10㎡以上広い住まいを確保できる。
築年数が長くなるほど土地面積が広くなる!
首都圏成約物件の中古一戸建ての平均築年数は22.08年だが、築年数が長くなるほど土地面積が広くなる傾向がハッキリしている。
それが下記の図表に示した通り、築0~5年は115.76㎡で、それが築6~10年になると120㎡台に、築16~20年では140㎡台に広がり、築21~25年は150㎡台に達する。さらに、築26~30年は173.84㎡と、一段と広くなる。築31年以上は165.29㎡とやや狭くなるものの、築浅物件に比べると、格段に土地面積の広い一戸建てを確保しやすくなる。
築深の一戸建てなら築浅に比べて値段は半分に
しかも、築深物件の価格は築浅に比べると大幅に安くなる。仲介市場では、一戸建てに関しては、「築20年以上たてば建物の評価はゼロになる」といわれる。最近の基本性能が高く、耐久性に優れた住まいであれば、築深物件でも建物に一定の評価がつくようになっているが、それでも築浅に比べてかなり安いのはいうまでもない。
先の図表からも分かるように、築0~5年の築浅の一戸建ての成約価格の平均は4100万円台であるのに対して、築26~30年は2600万円台、築31年以上に至っては2100万円台と、築深物件なら築浅物件の半値近くで手に入れることができる。
もちろん、それだけ建物の老朽化が進んでいるのは間違いないが、最近はリノベーション技術が進歩しているので、一定の費用をかければかなりの部分まで、新築に近い状態に戻せるようになっている。
築深なら、リノベーション費用を考慮しても、坪単価半値で購入できる!
築浅物件が4100万円台に対して、築深物件が2100万円台で手に入れば、そこに900万円かけてリノベーションしても、予算は合計3000万円。築浅に比べて1000万円以上少ない予算で手に入れることができる。
しかも、その予算面の違いに加えて、土地面積は築浅の平均は110㎡台に対して、築深なら160~170㎡台になっている。この土地面積の広さを考慮すれば、中古住宅のメリット感がさらに高まるのではないだろうか。
築浅は4100万円で土地面積110㎡とすれば、1㎡単価は約37万円。それが築深なら3000万円で160㎡だから、約18.8万円と、ほぼ半値になる。リフォーム費用を加えても、これだけの差がある。建物の価値を除いて計算すると、こんなに大きな違いになる。
中古住宅向けの有利な住宅ローンも増えている
ただ、問題はリノベーション資金。現金を用意できないと、リノベーション(リフォーム)ローンを利用しなければならないが、リノベーションローンは金利が高く、利用できる返済期間も短い。そのため、住宅取得の住宅ローンとリノベーションローンを合わせて利用すると、新築住宅を買う以上の返済負担になるため、なかなか大規模なリノベーションが広がらなかったという問題があったのだ。
それが、最近はリノベーションに必要な資金も住宅ローンと同じ条件で借り入れできる「リノベーション(リフォーム)一体型」のローンが増えている。これなら、総予算の差がそのままローン負担の差になって、中古+リノベーションのメリットが出てくる。
また、一定の条件をクリアできれば、当初の10年間の金利が0.50%低くなる、住宅金融支援機構の「フラット35リノベ」もある。価格面の優位さだけではなく、ローンのメリットも加わって、中古一戸建てのメリットがより大きくなるはずだ。
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