住宅ローンの借入で諸費用組み込み可能な銀行が増えている。また、手持ち資金がない「頭金なし」の人でもオーバーローンで住宅ローンを借りられる銀行は多い。そこで主要17銀行の住宅ローンについて、「借入可能な諸費用の内容」「頭金」を調査してみた。
諸費用組み込み可能な住宅ローンが増加
かつては、住宅ローンは「物件の価格」までしか貸してくれなかったが、最近は様々な諸費用も貸してくれるようになった。つまり、物件価格以上に住宅ローンを貸してくれる、「オーバーローン」に対応する銀行が増えているのだ。
たとえば、住宅ローンを借りる際、物件価格の2%程度の諸費用がかかるケースでは、物件価格が3000万円だと60万円もかかる計算になる。
その他にも、登記費用、引越代がかかる。マンションであれば購入時に修繕積立金を支払う場合もある。諸費用は合計で100万円を超えることもよくある。
さらに、住宅ローンを借りる際、物件価格の1〜2割程度の「頭金」が必要だったが、現在は「頭金なしでOK」という銀行が大半だ。
住宅ローンと一緒に諸費用を借りたり、「頭金なし」の銀行を選べば、自己資金(手元資金)が少なくても借り入れしやすくなるので、助かるという人は多いだろう。
ネット銀行は、諸費用に「手数料」も含む
まずは、主なネット銀行がどんな諸費用を貸してくれるのか、見てみよう。
銀行名 | 借り入れ可能な諸費用 | |
---|---|---|
印紙税(売買契約書などに貼付)、登記にかかる登録免許税、司法書士、土地家屋調査士の手数料、住宅ローン借入れの際に発生する事務手数料、火災保険料、地震保険料、不動産仲介手数料、引越費用など | ||
住宅取得またはパワースマート住宅ローン契約時にかかる手数料、不動産業者への仲介手数料、各種税金、火災・地震保険料、修繕積立基金、管理準備金、上下水道加入負担金等 | ||
(新規借入の諸費用) 登記費用、融資事務手数料、火災保険料、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代、不動産仲介手数料。修繕積立一時金、水道負担金、引越費用等の住宅取得に関する諸費用 (借り換えの諸費用) 登記費用、融資事務手数料、現在の借入先の繰上返済手数料・経過利息、新たに加入する火災保険料、金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代等の借り換えに関する諸費用 |
||
諸費用<取扱手数料、火災保険料、登記費用、印紙代、不動産仲介手数料、修繕積立基金、水道加入負担金、借換時に発生する諸費用> | ||
取り扱い手数料、登記に関する費用(登録免許税、司法書士手数料)、火災保険料(新規・追加契約を行う場合)、借り換えの場合の既存ローンに対する経過利息・違約金、購入の場合の仲介手数料 (自宅購入の場合、物件の購入価格+300万円が上限。物件の購入価格を超えて借り入れの場合は金利0.05%(年利)上乗せ。) |
||
事務取扱手数料、諸費用(印紙代、登記費用、火災保険料) (諸費用は500万円が上限) |
||
(新規借入の諸費用) 住宅ローンの事務手数料、不動産会社への仲介手数料、固定資産税、都市計画税、登記関連費用(抵当権設定の登録免許税/抵当権設定の司法書士報酬/所有権の移転、保存の登録免許税/所有権の移転、保存の司法書士報酬)、火災保険料、地震保険料、修繕積立一時金、水道負担金等の住宅取得にかかわる工事費 (借り換えの諸費用) 住宅ローンの事務手数料、借り換え元の繰上返済手数料等、登記関連費用(抵当権設定の登録免許税/抵当権設定の司法書士報酬/抵当権抹消の登録免許税/抵当権抹消の司法書士報酬)、火災保険料、地震保険料(新規加入分のみ) |
||
ー | ||
※2023年12月調べ、各銀行の主力商品の商品説明書を元に作成。諸費用に関する記載がない場合を「―」と記載しており、銀行によっては諸費用を貸してくれるケースもあるので、詳細は各銀行に問い合わせよう。 |
上表のように、ネット銀行は諸費用を組み込みで貸してくれるケースが多い。
諸費用の中身はどうなっているのだろうか。通常、諸費用を貸してくれる銀行であれば、住宅ローン借入時の手数料、保証料、登記費用、印紙税は含まれている。
こうした諸費用は新規借り入れでも借り換えでも発生するので、借り手としてはありがたい。
中にはそれ以外の諸費用を貸してれる銀行もある。イオン銀行は、手数料、登記費用、印紙代だけでなく、不動産仲介手数料、修繕積立金、水道加入負担金といった、不動産売買に関わる手数料も含めている。
auじぶん銀行の場合は、土地家屋調査士の手数料、引越費用まで借りられるのが特徴だ。
楽天銀行やPayPay銀行は、建売住宅などを購入した際に自治体に対して支払わなければならない「水道負担金」まで貸してくれる。通常は数万円だが、直径が太い水道管を引いた場合は、数十万円かかることもある。
大手銀行は、「諸費用込み」に後ろ向き
では、大手銀行は、どんな諸費用を認めてくれるのだろうか。まとめたのが下表だ。
銀行名 | 借り入れ可能な諸費用 | |
---|---|---|
火災保険料、保証会社手数料・保証料、ローン取扱手数料、電子契約手数料、固定金利手数料、仲介手数料、担保関連費用、印紙税、引越費用、修繕積立金、付帯工事費用、管理準備金、水道加入金、リフォーム費用(住宅の購入資金と同時申込の場合) | ||
借り換えに伴う諸費用(登記費用・印紙代・事務手数料等)<建築会社、不動産会社との提携ローンを除く> | ||
本人が居住する住宅の建築時の諸費用 | ||
諸費用(保証会社保証料、登記関係費用等) | ||
諸費用<詳しくは窓口に問い合わせ> | ||
借り換えに伴う諸費用 | ||
金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代(印紙税)、スーパーフラットを利用する際の融資手数料、抵当権の設定及び抹消費用(登録免許税)・司法書士報酬、適合証明検査費用(物件検査費用)、火災保険料・地震保険料、借り換えに伴う経過利息・繰上返済手数料 | ||
― | ||
― | ||
※2023年12月調べ、各銀行の主力商品の商品説明書を元に作成。諸費用に関する記載がない場合を「―」と記載しており、銀行によっては諸費用を貸してくれるケースもあるので、詳細は各銀行に問い合わせよう。 |
上表のように、ネット銀行と比べて、大手銀行・信託銀行は諸費用を含めていない、もしくは明記していない銀行が多い。
借り換えなら、諸費用を組み込める銀行も
また、借り換えの際だけ、諸費用を認めている銀行もある。通常、借り換えはより低い金利に乗り換えるので、総支払額は下がるというメリットがある。
ただし、借り換える銀行に支払う諸費用は100万円以上かかることもあり、トータルでは得をするとはいえ、一時的な出費を嫌がって借り換えをしない人がいる。
そこで、新規借り入れはダメだが、借り換えのための諸費用については住宅ローンに含めるという対応をとる銀行が多い。三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行などが、こうした対応を取っている。
ちなみに、諸費用のためのローンを用意している銀行もある。ただし、三菱UFJ銀行の諸費用ローン(新規借り入れの人向け)の金利は、店頭金利+2.0%。2024年7月時点の変動金利なら、4.475%と住宅ローン金利に比べるとかなり高区なる。
諸費用が高額になりそうであれば、金利が安い住宅ローンと一緒に借りられる銀行を選ぶのが得策だろう。
フラット35は仲介手数料や融資手数料も組み込み可能に
さらに、フラット35は2018年4月以降、仲介手数料や融資手数料、司法書士報酬まで借りられるようになった。これにより、もともと「審査基準がゆるい」と言われていたフラット35の審査が、さらに甘くなったと言える。
なお、上表には記載していないが、リフォーム資金を住宅ローンと一緒に借りられるという銀行も多いので、気になる人はそちらもチェックしておこう。
【関連記事】>>フラット35の最新金利、手数料を徹底比較! おすすめの銀行は?
借入にかかる諸費用は合計で30〜80万円程度
なお、実際にかかる諸費用は、おおよそ以下の通りとなる。借入金額3000万円の場合、30万~80万円かかる。借入額の1〜3%程度と考えておこう。
これ以外に、引越代、不動産仲介手数料(中古物件の場合)などがかかる場合がある。
費用名 | 費用 | |
---|---|---|
3大 コスト |
(1)保証料 | 0〜62万円 |
(2)手数料 | 0〜66万円 | |
(3)団信保険料(大半の銀行が金利に内包) | ほぼ0円 | |
その他 支払い |
(4)印紙代 | 2万円 |
(5)登録免許税 | 3万円 | |
(6)司法書士報酬 | 5万〜10万円 | |
(7)火災保険料・地震保険料 | 数万円 | |
(8)物件検査手数料(フラット35のみ) | 2万〜6万円 | |
諸費用の合計 | 30万〜80万円 |
【関連記事】>>住宅ローンの手数料・保証料とは? 18銀行の諸費用を比較して、安い銀行を見つけよう
住宅ローンを「頭金なし」で借りられる銀行が多い
次に、頭金について各銀行の対応を比較してみよう。
かつては「頭金は物件価格の約2割を用意すべき」と言われていた。住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)などの銀行・金融機関が、物件価格の約8割までしか住宅ローンを貸さなかったことも大きい。
ただし、住宅金融支援機構は2014年、頭金なしでも借りられるように条件を変更したほか、銀行同士の競争が激化したことなどにより、今では借り換えを中心に「頭金なし」が珍しくなくなった。
以下は、主要銀行の頭金の有無だ。同じ銀行でも商品によって、頭金が必要な場合もあるので注意したい。
頭金 | 最多金利 | 総支払額 |
---|---|---|
頭金1割以上 (融資率9割以下) | 1.86% | 4084万円(頭金300万円が必要) (90万円も少ない!) |
頭金1割未満 (融資率9割超) | 2.00% | 4174万円(頭金0円) |
※2024年12月、借入額3000万円、35年返済で計算 |
フラット35は「頭金1割以上」「頭金1割未満」で金利差を設けているので総支払額に大きな差が出た。
ただし、金利が一緒であったとしても、「頭金あり」の方が、「頭金なし」に比べて借入額の減少で金利負担が少なくなるので、やはり総支払額は少なくなる。頭金があったほうが、お得なのは確かだ。
また、転勤などを命じられてせっかく購入した自宅を売却しなければならない可能性があるなら、頭金を払っておいたほうがいい。
自宅を売却する時に、物件価格が大きく下落していると、売却した資金だけで残りの住宅ローンを支払うことができず、貯金を取り崩したり、売却そのものがキャンセルになってしまったりする可能性がある。一定の頭金を積んだ方が安全なのだ。
住宅ローンはあえてオーバーローン、フルローンで借りる選択肢も
だからといって、貯金のほぼ全額を頭金に回すのはよくない。そうアドバイスするのは『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』(日経BP)の著者でファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみ氏だ。
各家庭の状況にもよるが、頭金を用意できるにしても貯金の一部は現金のまま手元に置くことがポイントになる。その理由を端的に語ってくれた。
「マイホームを購入するときは産休、育休、時短勤務など、収支が大きくブレる時期と重なりやすいので、頭金を無理に用意しようとせず、1、2年分の生活費を手元に残しておくことで、ライフプランの変化にも柔軟に対応できると思います」と中嶋氏。
たとえば、将来、子どもの進学先が私立校であれば、その期間は家計の負担が大きくなるだろう。不確定な時代だからこそ、年収の増減だけでなく、突然の会社の倒産なども考慮して、手元にまとまった貯金があると安心だ。
仮に年間500万円程度の生活費がかかる人が、貯金を1000万円持っていれば、全額頭金に回すのではなく、半分の500万円を頭金にして残りの500万円は手元に置く。
頭金を払った後も、1年以上の生活費を常にキープしておくことが、ライフプランを支える上での大きな安心となるだろう。
頭金があるのはいいことだが、それで貯金が底をついてしまっては元も子もない。
自分のライフプランをよく考えたうえで、適切な頭金を用意するか、時にはあえて頭金を用意せずにオーバーローン、フルローンで借りて、手元に資金を置いておくなど、柔軟な対応をすることが重要ではないだろうか。
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淡河範明さん
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