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管理されていない、近所の空き家をなんとかしたい!
改正土地基本法で所有者が管理責任を問われるも、関連法の修正はこれから所有者不明土地のケース別解決策(4)

2020年6月19日公開(2020年6月23日更新)
佐藤益弘

佐藤益弘(さとう・よしひろ)氏:株式会社優益FPオフィス代表取締役。CFP、1級FP技能士。企業の不動産部門を経験した後に独立。金融商品の販売を一切行わずに、住まい選びに関する考え方や土地活用についてのアドバイスを行っている。

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近年の空き家の増加に伴い、「近所にある空き家をどうにか対処したいが、所有者がどこにいるか分からなく、見つかっても意見がまとまらず困っている」といった問題が多発しています。このような管理不全に陥った空き地・空き家問題を解決すべく、「共有物管理」の現状と今後についてお伝えしたいと思います。(ファイナンシャルプランナー・佐藤益弘)

管理不全の土地や建物の増加が問題に

空き家に悩む近隣住民
近所の空き家をどうにかしたいが、所有者はどこに? (画像:PIXTA)

 前回の記事は、遺産の共有名義を解消したいというケースだったので、「自分自身が共有者」の立場でした。今回のケースでは、近隣の土地や建物が管理不全に陥っているといった、「相手が共有者」のために迷惑を被った、あるいは被っているという問題の解決策をお伝えします。

【関連記事はこちら】>>相続した共有名義の土地を処分したいが、全員同意が必要なんて…。 
「共有権解消」の現状と今後を解説

 皆さんの住んでいる地域にある空き地や空き家、これらは管理不全の状態に陥っている可能性があり、こうした管理不全物件が増えることで、衛生面や治安の悪化といった、生活環境を脅かす問題に発展します。そのため、土地や建物が管理不全になるのを防ぐことが重要です。では、なぜ、管理不全になってしまうのでしょうか。この問題を解決すべく、「共有物の管理」の現状と今後の対応についてお伝えします。まずは、空き家の現状から順を追って解説していきましょう。

近年、空き家が大幅に増えている

 そもそも、現状、空き家はどれくらいあるのでしょうか? また、空き家でも、行政はどのように"活かせる空き家"と"そうでない空き家"を選別しているかの視点を知っておきましょう。

 2018年に不動産行政の基幹統計である「平成30年住宅・土地統計調査」(2019年・令和元年9月)が公表されました(図表1)。そのデータによると、空き家数は849万戸(対前回+29万戸)、空き家率は13.6%(+0.1ポイント)と、一貫して増加が続いており、この30年間で455万戸(115.4%)という大幅な増加になっています。共に最高値を更新していますが、増加率は微増となっています。

 空き家数に対して、空き家率が微増となっている理由はハッキリしていませんが、「空き家率=空き家数/総戸数」ですから、入居者が増えたか空き家自体を壊して減らしたのか、2つの理由が考えられます。おそらく後者だろうと思われます。

 【図表1】空き家数および空き家率の全国推移

利活用可能な物件は「駅から1㎞以内」!?

 この住宅・土地統計調査に先駆けて、国土交通省住宅局建築指導課 社会資本整備審議会「今後の建築基準制度のあり方について」(第三次答申)(2018年2月22日)の参考資料に以下の分析データが出ていました(図表2)。

 このデータを読み解くと、空き家になりそうな土地の購入を防ぐ、つまり、土地購入に失敗しないオフィシャルな視点が分かります。

 【図表2】空き家の現状(賃貸用空き家・その他空き家)

 図表2の内容は、前回(2013年)の住宅土地統計調査をベースにしていますが、以下のことが示されています。

・空き家総数820万戸のうち、747万戸(91.1%)が賃貸用とその他の住宅である。
・賃貸用空き家は429万戸存在し、そのうち耐震性を満たした住宅が369万戸、朽ちたり壊れたりしていない住宅が265万戸、駅から1km以内の住宅が137万戸である。
・その他空き家(実家の空き家)は318万戸存在し、そのうち耐震性を満たした住宅が184万戸、朽ちたり壊れたりしていない住宅が103万戸で、駅から1km以内の住宅が48万戸である。
・今すぐ活用可能な空き家は、賃貸用空き家で137万戸、その他空き家で48万戸の合計185万戸である。

 また、この資料で国土交通省は「利活用可能な有望な住宅ストック数」を見るに当たり、以下の3つの基準を示しています。

・耐震基準を満たしているか?
・腐朽していないか(きちんと管理されているか)?
・駅から1㎞以内か?

 ですから、土地・住宅購入で失敗したくなければ、この3つの基準を外すべきではありません。行政が、「利活用可能な物件は、駅から1㎞以内」の利便性を定義づけたことは驚きでしたが、今後、自用でも賃貸用でも、住宅を購入する際の大きなヒントになるでしょう。

 ただし、この基準には、近隣トラブルなど個別トラブルは加味されていません

 つまり、今回のメインテーマである、「近所に管理不全の土地があり、しかもその土地の所有者が分からない」とか、「共有名義のため対処のしようがない」というケースです。

近隣トラブルは意外と多く、生活環境にも影響を与えている

 近隣の土地や建物が管理不全な状態になっているということは、周辺住民の人命や健康、財産、また周辺の生活環境が被害を受けたり、その恐れがあるということです。つまり、外部不経済(当事者以外に被害が及ぶこと)がもたらされ、迷惑を被っているということです。

 外部不経済とは、以下のような観点から判断されます。

・「危険性」の観点…老朽化、暴風雨や積雪など自然現象による倒壊や剥落・飛散など
・「防犯・防災」の観点…不特定者の侵入による犯罪・火災の誘発など
・「生活環境や景観」の観点…樹枝の越境・雑草の繁茂・落ち葉の著しい飛散、ごみの不法投棄、野良猫や犬などの動物が住み着いている、病害虫が発生したりして衛生の悪化・悪臭の発生など

 その対応のため、私道や埋設物などの権利関係の諸問題を話し合おうと思ったときに、所有者が不明だと話し合えません。また、共有のため、話し合えても合意できないという状況に陥ると、対応が困難となり、結果としてその状況を放置せざるを得ないということになります。

 その結果、管理不全の不動産(土地・建物)が、空き地や空き家となり、地域に増えてしまうことで、地域全体が機能不全の状態となり、悪影響を被ってしまいます

 前回の記事でもお伝えしたとおり、共有物を利用するためには、共有者全員を個別に探し出して交渉する必要があります。ですから、現行の民法では、共有者の一部でも不明だと全員の同意を取ることができず、土地の利用や処分は難しくなるのです。

 売却や境界画定、私道の承諾や苦情への対応は、資産価値自体に大きく影響するので、法的にも「変更行為」とみなされ、共有者全員の同意が必要になります。

 ですから、実際問題として、共有や所有者が不明の不動産(土地・建物)が、管理不全の状態になってしまうと、その後は対応したくてもできない状況に陥るため、この問題の解決が急務となります。

今後、共有物の管理は全員の同意が必要なくなる!?

 共有物の通常の管理行為については、基本的なルールに変更は加えられないようです。

 ただ、2020年4月に「改正土地基本法」が施行され、所有する意思の如何(いかん)を問わず、所有者が管理の責務を問われることになりました。そして今後、関連したルールについては大きく変更が加えられることが予想されます(参考:2019年末の法務省法制審議会民法・不動産登記法部会「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」)。

 「共有物の管理」については、以下のように変更されそうです。

 同意を得る方法について、共有者が、他の共有者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に共有物の管理に関する行為について、同意するかどうかを回答するよう督促でき、回答がない場合は、他の共有者全員の同意で変更できる

 また、他の共有者が誰か分からなかったり、誰か分かっているが所在が分からなかったりする場合、以下のように変更されそうです。

 一定の期間を定めて、対象の共有者に対し、同意するかどうかを回答すべき公告をすることができる

 そして、その不動産を売却するなど変更(処分)する場合に、前述の督促や公告がされた場合、以下のようになります。

 一定期間内に回答がない時は、督促や公告をした共有者が、それ以外の共有者全員からの同意を得て、その変更または処分をすることができる。

 これらの変更により、所有者不明土地問題の解決が進むでしょう。次回は、共有物の続編として、「共有物分割」についてお伝えします。

【関連記事はこちら】>>「権利未登記」「違法建築」「境界未確定」など”不動産の売却”でよくあるトラブルの解決法とは?

「所有者不明土地」シリーズのリンク集

◆概要編◆
1.「所有者不明土地」とは?

2.「所有者不明土地」関連の法改正の行方は?

 

◆ケース別解決策◆

3.「相続放棄」で親の実家の空き地・空き家を手放したい

4.「相続登記」をして土地の名義変更をしたい
5.「共有権解消」〜相続した共有名義の土地を処分したい

6.「共有物管理」〜近所の空き地・空き家をなんとかしたい

7.「共有物分割」〜隣地から越境した木の枝は切除できる!?

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