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「隣地からはみ出た木の枝を切りたい」「共有者が行方不明だが土地を売却したい」などの問題は、法改正で解決しやすくなる!?所有者不明土地のケース別解決策(5)

2020年6月20日公開(2020年6月23日更新)
佐藤益弘

佐藤益弘(さとう・よしひろ)氏:株式会社優益FPオフィス代表取締役。CFP、1級FP技能士。企業の不動産部門を経験した後に独立。金融商品の販売を一切行わずに、住まい選びに関する考え方や土地活用についてのアドバイスを行っている。

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「隣地から越境した木の枝を切りたいがOKしてくれない」など、近隣トラブルは多いものの、現行の民法では具体的な規定がなく、放置せざるを得ない状況にありました。この問題を解決すべく、「共有物分割」の現状や今後について、お伝えしていきたいと思います。(ファイナンシャルプランナー・佐藤益弘)

共有の解消、今後は「代償分割」が原則に

近隣トラブル
近隣トラブルを解消したい(画像:PIXTA)

 前回の記事では「共有物管理」として、空き地・空き家問題の解決策についてお伝えしてきました。今回は、共有物関連の続編として、「共有物分割」について、2019年末の法務省法制審議会 民法・不動産登記法部会「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」をベースに解説していきたいと思います。

 共有関係を解消する場合、民法258条により、以下のように一定のルールを取り決めています。

 共有物の分割について、協議が調(ととの)わないときや、協議をすることができないときは、共有者はその分割を裁判所に請求することができる。

 具体的には、裁判所が共有物の分割方法を判断する材料として、

①現物を実際に分割すること
②共有物を一人または複数の共有者に取得させて、その人から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる代償分割)
③共有物を競売して、現金に換えて分ける

 上記3つの方法がありますが、今後、分割については、裁判所が共有物を一人または複数の共有者に取得させることが相当と考え、取得させることに関して、共有している者の間で公平を害す恐れがないときには、②の代償分割の方法で分割を命ずることができる。

 つまり、代償分割を原則とする内容に変更されそうです。

 早期に問題を解決させるためには、代償分割が好都合だからでしょう。個人的にも現実的な対応だと感じます。

 ですから、共有物を取得したい人は、相当額の現金を用意する必要があります。たとえば、相続時であれば、遺産を引き継がせた人を死亡保険金の受取人として指定し、その保険金を代償分割の原資に使えば、スムーズに遺産分割を終えることができます。

共有者が所在不明の場合は、裁判所に共有持分を請求できるようになる!?

 共有者が所在不明の場合については、2つの案が出ています。

 1つ目が、「共有者の間で時価相当額を決められる方法」です。不動産が数人の共有になっている場合で、ある共有者の所在が分からないときは、その共有持分が欲しい共有者が、所在の分からない共有者の持分の時価として、相当と認められる金額を供託して、以下の請求をすることができます。

・所在が分からない共有者の持分を、請求した共有者が取得すること
・所在の分からない共有者以外全員の同意を得て、その不動産の所有権を第三者に売却することができる権限を得ること

 ただ、個人的にこの案はあまりおすすめできません。なぜなら、このケースは仮に後日、所在が分からなかった共有者が現れた際に「持分時価相当額」について深刻な争いになる可能性が高いからです。

 2つ目は、裁判所が介在しますが、1つ目の案のように、後日、深刻な争いが起きる心配が無い方法です。不動産が数人の共有になっている場合で、ある共有者の所在が分からないときは、その共有持分が欲しい共有者が、裁判所に請求することができます。そして、裁判所が、所在の分からない共有者の持分の時価として、相当と認められる金額を決め、供託させて、以下の処分を命ずることができます。

・所在不明共有者の持分を所在不明である共有者に取得させること
・所在の分からない共有者以外全員の同意を得て、その不動産の所有権を第三者に売却することができる権限を請求した共有者が得ること

 以前の記事でお伝えしたとおり、遺産分割については、「期間制限(10年)を過ぎても遺産分割をしない場合は、法定相続分で遺産分割をしたものとみなされる」ことが検討されています。そして、その後の共有権の分割については、今回の共有を解消するルールに従うことになるはずです。

 いずれにしろ、共有権の解消も容易にできるようになることが予想されます。

【関連記事はこちら】>>相続した共有名義の土地を処分したいが、全員同意が必要なんて…。 「共有権解消」の現状と今後を解説

近隣トラブルは今後、解決しやすくなる!

 以下のような近隣とのトラブル解決も大きな問題です。

・境界の確定のため、近隣の土地を使わせて欲しいのだが、OKしてくれない
・庭木がボウボウに伸びていて、越境した枝を切りたいのだがダメだと言われる
・電気やガス、水道管など、自分自身が継続的に利用するライフラインが、私道や隣地の下を通っていて、工事したくとも許可してもらえない

 特に、現行の民法に規定がない上記のような問題に対しては、新しいルールが設定されることが検討されています。

 たとえば、「隣地の使用」については土地の所有者が、

・境界やその周辺にある障壁や建物など築造または修繕
・越境した竹木の枝の切除
・境界標の調査や境界を確定するための測量

 といった目的で、その行為に必要な範囲内であれば、隣地所有者に対して、隣地の使用承諾を求めることができるようになります。

 また、土地の所有者は、隣地所有者に対して、

・隣地の使用目的や場所、その方法と時期
・相手が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 を通知したにもかかわらず、相当の期間内に異議がないときは、利用できるようになります。

 今までは隣地所有者に請求しても、無視されるとどうすることもできませんでしたが、今後、その問題は解決されるようです。

 そして、隣地所有者が誰か分からない、どこに居るのか分からない場合も、上記の2点(隣地の使用目的や場所、その方法と時期と相手が一定の期間内に異議を述べることができる旨)を公告し、相当の期間内に異議がないとき、そして、災害など急迫の事情があるときは使用できるようになります。

 今まで、このような規定がなかったことが不思議なくらいですが、それだけ所有権という権利が強いということです。

隣地から越境した木の枝を切除できる!?

 これまで、隣地から木の根が越境した場合は切除できましたが、枝の場合はNGでした。この問題の解決策として、「越境した木の枝の切除」については2つの案が出ています。

 1つ目が、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、「請求者(土地所有者)は、自らその枝を切り取ることができる」という内容です。ただ、この規定はいわゆる権利の濫用(らんよう)になる可能性が高いと感じていますから、次の案が採用されると思います。

 2つ目、今まで通り、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、請求者は、「その竹木の所有者にその枝を切除させることができる」という内容です。ただこの規定に、条件付きで、「請求者自らその枝を切り取ることができる」という+アルファのルールが加えられます。

 たとえば、以下のような場合には、枝を切り取ることができるようになります。

・竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除されないとき
・所有者が不明なとき
・災害など急迫の事情があるとき

私道や隣地の下を通っているライフラインは!?

 また、「電気やガス、水道管など自分自身が継続的に利用するライフラインが私道や隣地の下を通っている」ケースの対応も2つの案が出ています。

 1つ目は、ほかの土地に囲まれて、電気、ガス若しくは水道水の供給または下水の排出、その他の継続的給付を受けることができない土地の所有者(請求者)は、継続的なサービス提供を受けるために、その土地を囲んでいる他の土地に、自分自身のライフラインを設置したり、他の人が設置したライフラインを自分自身のライフラインに接続したりすることができるようにします。当然、その設置場所や方法は、近隣の損害が最も少ないものを選ばなければいけません。

 2つ目は、請求者が隣地の所有者に対して、隣地にライフラインを設置したり、接続する件の承諾を求めることができるという内容です。請求者が隣地所有者に対して、

・ライフラインの設置場所や接続方法
・その工事の方法や時期
・相手が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 を通知したにもかかわらず、相当の期間内に異議がないときに利用できるようになります。また、所在が分からない場合も、前述の「隣地の使用」と同様、公告を経て、対応できるようになります。

 当然、他人の土地を無償で利用できるわけではなく、請求者は隣地の所有者に対して一定の償金を支払わなければいけません

今後の法改正に備えて、準備をしておくことが大切

 以上のように、極めてまともなルール変更=法改正が検討されていますが、これらのルールがないために、ある意味、所有者のわがままとも思われるような権利の濫用を助長していた傾向もあったのでしょう。

 私たちも、今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言により、個人の権利がある程度制限されることを知りました。今後、皆の幸せのため、いわゆる「公共の福祉」により、個人の権利がある程度制限されることもあり得ると理解しましょう。

 法改正まで、まだしばらく時間がかかると思いますが、この改正により得をする人もいれば、損をする人も出てくると思います。このような法改正によるルール変更は、自分自身の力ではどうしようもできない事柄なので、先読み力を高め、事前準備を進めてください

【関連記事はこちら】>>「権利未登記」「違法建築」「境界未確定」など”不動産の売却”でよくあるトラブルの解決法とは?

「所有者不明土地」シリーズのリンク集

◆概要編◆

1.「所有者不明土地」とは?

2.「所有者不明土地」関連の法改正の行方は?

 

◆ケース別解決策◆
3.「相続放棄」で親の実家の空き地・空き家を手放したい

4.「相続登記」をして土地の名義変更をしたい
5.「共有権解消」〜相続した共有名義の土地を処分したい

6.「共有物管理」〜近所の空き地・空き家をなんとかしたい

7.「共有物分割」〜隣地から越境した木の枝は切除できる!?

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