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「所有者不明土地」とは?
増加する理由や、その問題点について詳しく解説!

2020年5月3日公開(2020年6月23日更新)
佐藤益弘

佐藤益弘(さとう・よしひろ)氏:株式会社優益FPオフィス代表取締役。CFP、1級FP技能士。企業の不動産部門を経験した後に独立。金融商品の販売を一切行わずに、住まい選びに関する考え方や土地活用についてのアドバイスを行っている。

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「所有者不明土地」という言葉を、最近よく耳にします。自宅を購入・売却したり、実家を相続したりする場合だけでなく、ご近所に同様の土地があっても管理上の大きな支障が生じたり、迷惑を被ったりすることも……。今後の住宅関連トラブルを考える際のキーワードとなりそうです。 今回から数回に分けて、この「所有者不明土地」について解説していこうと思います。(ファイナンシャルプランナー・佐藤益弘)

「所有者不明土地」の定義

所有者不明土地とは?
(画像:PIXTA)

「所有者不明土地」は、読んで字のごとく「誰が持っているのか分からない土地」のことを言います。

 一般的には「所有者台帳(不動産登記簿等)により、所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地」と定義されることが多いでしょう。

 たとえば、

  • ・登記簿や固定資産課税台帳などの所有者が分かる台帳が更新されていない土地
    「情報自体が古い」土地

    ・複数の台帳で記載内容が違うことから、「誰がその土地の所有者か?」すぐに特定することが難しい土地
    「情報(記載内容)が錯綜したり違ったりしている」土地

    ・所有者は特定できても、その所有者の所在(転出先や転居先)が分からない土地
    「持ち主の所在が分からない」土地

    ・登記名義人が既に亡くなっており、その相続人(所有権者)が多数となっている共有地

  • 「たくさんの共有者がいる」土地

    ・所有者が分かる台帳に、全ての共有者が記載されていない
    「共有者の記載がされていない」土地

のことをいいます。

たとえば、どんな問題が起こるの?

 「所有者不明土地」という言葉を最近よく耳にするようになった背景には、国内の人口減少や、高齢化の進展があります。土地利用のニーズ自体が低下したり、地方から都市等への人口移動も増加していることから、土地の所有意識の希薄化や、空き家や空き地、管理不全に陥っている土地や建物の増加が顕在化しているのです。

 この所有者不明土地を原因に、さまざまな問題が起こります。「所有者が不明」のため売買ができない……、「たくさんの共有者がいる」ので相続で意見をまとめられない……などなど。

 実際に、所有者不明土地の利用にあたっては、土地の所有者の調査や確認に多大な時間や費用が掛かるだけでなく、時間が掛かってしまうことで土地を利用するための制度の対象とならなくなる場合もあるなど、課題がたくさんあります。

所有者不明土地が発生する、制度上の理由

 土地など不動産の購入や相続、贈与等で手に入れた所有権を「持っている」という証明=公示をするために使える制度が「登記」です。

 日本の民法では177条・178条に記載されていて、不動産の登記についての詳細は不動産登記法という法律に記載があります。

 「此処に、こういう不動産(土地・建物)があります」と伝えるための登記を”表示の登記”といいますが、この登記に関しては税務当局が把握したいという背景もあり、法的にも以前から「強制」、つまり登記することが義務になっています。たとえば、建物を新築した場合、1ヵ月以内に登記をすることになっています。

 しかし、肝心の「不動産を持っているのは誰ですか?」「この不動産を担保にお金を貸しているのは誰ですか?」という権利に関する登記は、法的にも任意の制度です。ですから、困らなければ、購入や相続、贈与のときに登記をしなくていいことになっています。

 たとえば相続発生時でも、家族の中で、明確に所有者が誰か分かっていて、その人が定期的に建物も管理し、固定資産税などの費用負担もしていれば、登記をしていなくても誰にも何の迷惑も掛けずに済むわけです。

 むしろ、登記をするのは書面を用意したりするので面倒ですし、費用も掛かるので、多くの人が「登記しなくてもいいや」ということになるでしょう。

 つまり、日本の登記制度は、所有権や抵当権など権利を保証する制度ではなく、任意=自ら証明するための制度ですから、時を経たり、状況が変化したりすると、「分からなくなってしまう」というリスク=不確定要素をはらんでいるわけです。

 これが、所有者不明土地が発生する理由です。

どれくらいの数の所有者不明土地があるの?

・	最終の登記からの年数が経過するほど、登記簿上で所有者の所在が確認出来ない土地の割合が上昇する
写真を拡大 最後に登記したときからの年数経過につれて、登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合が増える。(出典:国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」)

 2017年(平成29年)6月に、一般財団法人国土計画協会の「所有者不明土地問題研究会」の報告で以下のような内容が公表されました。

「2016年(平成28年)時点の所有者不明土地面積は、地籍調査を活用した推計で、約410万haあり、九州(土地面積:約368万ha)以上に存在する」

 このニュースは多数のメディアで大きく取り上げられましたから、記憶に残っている方も多いと思います。

 また、国土交通省の「所有者不明土地の実態把握の状況について」で、2016年(平成28年)度の地籍調査をベースに土地所有者などの調査をしており、その結果を見てみると……

  • ・最終の登記からの年数が経過するほど、登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合が上昇する

      

    ・調査結果と「最後の登記からの経過年数と不明率による相関関係」を用いた結果の不明率は約29%で、地籍調査に基づいた全国の拡大推計の結果でも、所有者不明率は2割(20.3%)

 あくまで目安ですが、下表によると最後の登記から50年以上経過しているものは「大都市部で10件に1件」「大都市部以外では4件に1件」の割合で存在することになります。都市部でも意外と多いですね。

全国10ヵ所の地区で、相続登記が未了となっているおそれのある土地

 

最後の登記から50年以上経過した土地

大都市 総数 9.2%
(個人の所有権のみ) 6.6%
上記以外 総数 24.6%
(個人の所有権のみ) 26.6%
※所有者不明土地問題研究会の関係自治体と連携して調査を実施。所有権の個数=大都市の総数:30,071(うち自然人:24,360)、上記以外(中山間地域含む)の総数:122,161(うち自然人:93,986)。大都市:仙台市・神戸市等、上記以外:四万十町・大豊町・熱海市・高梁市・飯田市・三鷹市等。割合は累積値。(出典:国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」)

 「最後の登記から50年以上経過している」ということは、最低でも1世代は経ています。たとえ当時は当事者間で合意がなされていたとしても、現在はその合意内容を確認できる人がおらず、証拠書類が残っていない場合は「誰が所有者か?」「共有の場合、どれくらいの権利があるか?」が分からず、所有者不明土地になってしまう可能性が非常に高くなるわけです。

 次回は、今後10年間に予想される問題点と、その解決のために進行中の国の対策についてお伝えします。
【関連記事はこちら】>>「権利未登記」「違法建築」「境界未確定」など”不動産の売却”でよくあるトラブルの解決法とは?

「所有者不明土地」シリーズのリンク集

◆概要編◆

1.「所有者不明土地」とは?

2.「所有者不明土地」関連の法改正の行方は?

 

◆ケース別解決策◆

3.「相続放棄」で親の実家の空き地・空き家を手放したい

4.「相続登記」をして土地の名義変更をしたい
5.「共有権解消」〜相続した共有名義の土地を処分したい

6.「共有物管理」〜近所の空き地・空き家をなんとかしたい

7.「共有物分割」〜隣地から越境した木の枝は切除できる!?

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