「新築住宅の営業」という仕事はどんな方に適性があるのか、不動産・住宅業界への転職をお考えの方に向けて解説したいと思います。(不動産会社向けの集客&教育コンサルタント・梶本幸治)
「新築住宅営業」と「不動産売買仲介営業」の違いとは?
「不動産や住宅に関わる仕事がしたい」「お客様の一生に一度の大きなお買い物に携わりたい」「家を売ってお給料をたくさん稼ぎたい」といった理由で、不動産・住宅業界への転職を考えられる方は多いでしよう。
しかし、同じ家を売る仕事でも、「新築住宅営業」と「不動産売買仲介営業」は、別の仕事であることをご存知でしょうか。
新築住宅営業と不動産売買仲介営業は、何となく同じようなイメージを持たれているかも知れませんが、その中身は異なる部分が多く、ご自身の適性を考えた上で選択して転職活動を行わないと、ミスマッチが発生してしまうかも知れませんのでご用心ください。
では、新築住宅営業と不動産売買仲介営業の違いについて、解説していきたいと思います。(なお、ここで言う新築住宅営業とは、いわゆる「建売住宅」の販売営業を指し、住宅メーカーや工務店の住宅請負営業は含んでおりませんので、その点を踏まえた上でご覧ください)
私なりに感じている新築住宅営業と不動産売買仲介営業との違いは、新築住宅営業は「商品を売る営業」であり、不動産売買仲介営業は「情報を売る営業」という点です。
新築住宅営業の場合、お客様に販売するお家はあくまで自社が分譲している物件であり、基本的に他社の分譲物件を紹介したり、中古の物件を紹介する事はまれです。また、販売する自社分譲物件を用意することは、主に会社(新築住宅会社の社長や幹部、用地仕入れ部門)の仕事であり、営業担当者は販売に専念することが一般的です。
その点、不動産売買仲介営業は市場に出ている物件全てが販売対象であり、市場に思うような物件が出ていなければ、営業担当自身が売り物件を掘り出してくる仕事も行います。
新築住宅営業は自社物件販売に特化しているため、「商品を売る営業」と呼ぶことができ、不動産売買仲介営業は広くマーケットから物件を収集してくるため、「情報を売る営業」と呼ぶことができる、と私は考えています。
新築屋は人(ヒト)を切り、仲介屋は物(モノ)を切る
このような特性は、追客(ついきゃく。成約前顧客のフォロー)の場面でも顕著に表れてきます。
繰り返しになりますが、新築住宅営業の場合、お客様に販売するお家はあくまで自社が分譲している物件です。
販売に際しては、インターネットやチラシ等からお問い合わせくださったお客様を、分譲物件のある現地へとご案内します。
しかし、その案内が不調に終わった場合、つまり、自社の分譲物件を購入してもらえる可能性が無くなった場合は、お客様に別の物件を紹介することなく、「追客を断念」することが多いのです。
もちろん、近隣の街で、自社分譲中の物件があればそちらも紹介しますが、なかなかそう都合よくいくものでもありません。
その点、不動産売買仲介営業は、街にあるたくさんの不動産が売り物になる可能性があるわけですから、1回の案内が不調に終わったからといって追客の手を休めることはございません。
次から次へと物件を紹介して、成約を目指すことになります。
これら新築住宅営業と不動産売買仲介営業の違いを表すものとして、不動産・住宅業界には次のような言葉もございます。
「新築屋は人(ヒト)を切り、仲介屋は物(モノ)を切る」
新築屋(新築住宅営業)は、自社分譲物件を買ってくださらない方はお客様じゃないとして、案内不調後は追客しない(ヒトを切る)。
仲介屋(不動産売買仲介営業)は、売り物はたくさんあるため、1つの物件には固執せず(モノを切る)に案内不調後も追客を続ける。
上記の言葉はこういう意味です。
新築住宅営業に「向いている人」と
気を付けたい「注意点」
つまり、新築住宅営業の仕事内容とは、「自社商品(自社分譲住宅)のスペックを頭に叩き込み、競合する他社分譲現場との違いを研究して、インターネットやチラシなどからお問い合わせくださったお客様を、短期間で徹底的にクロージングすることにより成約を目指す仕事」と言えるでしょう。(なが!)
追客期間が比較的長期になりやすい不動産売買仲介営業と異なり、新築住宅営業は一期一会の販売力・提案力が試される仕事のため、「瞬発力のある営業スタイル」に自信がある方は、不動産売買仲介営業よりも新築住宅営業が向いているかも知れません。
また、新築住宅営業の方が歩合率の高いケースが多く、「スピード感を持ってお金を稼ぎたい」方は、新築住宅の営業を転職先として検討されてもいいでしょう。
新築住宅会社の中には、年収1500万円程度を狙える会社もあるので、腕に自信のある方には魅力的な仕事だと思います。
ただし、一つご忠告を。
不動産売買仲介営業の場合は、たとえ家が売れなくなっても、「仕入れ営業(不動産を売りたい方からの依頼を獲得する営業)」や「投資物件営業」など、仕事の内容が多岐に渡りますので、仕事の内容や方法を変更することは比較的容易です。
しかし、新築住宅営業の場合は基本的に「販売」のみが仕事ですので、自らの販売力・提案力が通用しにくくなった場合でも仕事の内容や方法を変更することは難しいでしょう。
実際、20代30代の頃はトップセールスだった新築住宅営業担当者が、40代の半ばを過ぎたあたりから住宅購入者との年齢差を感じ始め、営業成績自体が低迷してしまった例を多く見てきました。
不動産業界・住宅業界への転職をお考えの際は、ご自身の適性はもちろん、その業界で長く活躍できるか否かを考慮して、慎重な転職活動を行って下さい。
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