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東京都が発表した「東京住宅リフォームガイド」とは? リフォームのトラブル防止に向けて、消費者が注意すべきポイントを段階別に解説!

2023年3月29日公開(2023年3月29日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

住宅を造っては壊し、壊しては造るという大量生産・大量消費の時代から、良い家を建てて、長く大切に使っていく時代へ――国や自治体も、新築住宅建設への支援一辺倒から、リフォームの支援に軸足を移しつつある。その一環として、東京都が「東京住宅リフォームガイド」を作成。どんな内容が書いてあるのか解説しよう。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

住宅リフォームを巡るトラブルが絶えない

 これからの時代は、新築住宅をどんどん建てるのではなく、優良な住宅を長く大切に使っていこうーー最近、国や自治体はこうしたメッセージとともに、中古住宅の品質向上リフォームを推奨するさまざまな減税制度や補助金制度を充実させている(減税制度・補助金制度の詳細については、こちらの記事で解説)

 ところが、住宅リフォームを促進するにあたり、大きな課題となっているのが、リフォームトラブルが絶えない点だ。主に、強引にリフォーム契約を締結する訪問販売や、点検を装って契約を押しつけようとする点検商法などが、それにあたる。

 リフォームトラブルは社会問題になりつつあり、トラブル相談件数は高水準で推移している。

図表1:消費生活センターなどへのリフォームトラブル相談件数(単位:件)

リフォーム 悪質 相談件数
※2022年度は2022年12月31日時点(資料:国民生活センターホームページ

 さらに、脱炭素社会実現に向けて、2022年6月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が改正され、省エネ住宅への改修がより一層求められるようになった。この省エネ改修機運の高まりに乗じて、悪質リフォーム業者の増加が懸念されるため、消費者庁は、関係団体・企業などを通じて消費者に注意を呼びかけている。

東京都が、人々が安心してリフォームを行うための「リフォームガイド」を作成

 コロナ禍が収まりつつある2022年後半ではあるが、住宅リフォームに関するトラブル相談がなお絶えない。そのため、リフォームへの意欲が減退している面があるのだ。

 リフォームとは、住宅設備の取り替えや壁紙などの模様替えといった小規模なものだけではない。特に、住宅の品質向上を目指すなら、大規模な工事が必要だ。例えば、耐震性を高める耐震リフォーム」、断熱性・気密性を高める「省エネリフォーム」、高齢者や障害のある人も安心して暮らせるようにする「バリアフリーリフォーム」などがそれにあたる。

 こうした大規模リフォームはそれなりの予算が必要となり、業者選びから、計画の立て方、見積もりなどの予算チェックに至るまで、幅広い知識が求められる。もちろん、希望する工事内容に応じてそれぞれ特有の専門知識が必要となるので、一般消費者にとって、適切なリフォームを行うまでのハードルは非常に高い。

 そこで、都民が安心してリフォームに取り組めるように、「東京住宅リフォームガイド」が作成されたのだ。

 「東京住宅リフォームガイド」は、リフォームの流れの紹介と、それぞれの段階別に注意点がまとめられている。

■SETP0:既存住宅(中古住宅の購入)
■STEP1:計画・準備
■STEP2:事業者選定
■STEP3:工事
■STEP4:維持管理

 また、リフォームガイドとともにダウンロード可能な「リフォームの整理シート」では、各段階ごとに、何をどうチェックしていけばよいのかが自然と理解できるようになっている。

リフォーム整理シート 東京都
全8ページにわたる整理シートに、チェックすべき項目がまとめられている(資料:リフォームの整理シート

STEP0:既存住宅(中古住宅)の購入

 それでは、「東京住宅リフォームガイド」で紹介されている、各段階ごとの主なチェックポイントを細かく紹介しよう。

 まずはSTEP0として、これから中古住宅を取得する人に向けての情報がまとめられている。

  1. 1. 既存住宅(中古住宅)に関する制度
     1)過去の工事情報(住宅履歴情報)
     2)建物の不具合に関する情報(建物状況調査)
     3)保険に加入した住宅の購入(既存住宅売買瑕疵保険)


    2. 安心で質の高い既存住宅(中古住宅)を購入
     1)安心R住宅
     2)長期優良住宅・住宅性能表示制度

 これから中古住宅を取得・リフォームして住むという人は、長く快適に住むために、できるだけ状態の良い中古住宅を選択することが大切である。

 これまでのリフォーム工事情報が分かる「住宅履歴情報」があればよいが、ない場合は専門家によるインスペクション(建物状況調査)で問題点を確認しておく必要がある。

 また、売買時に「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」に加入している物件を選べば安心感が増す。瑕疵保険とは、中古住宅の売買後に見つかった構造上の不具合や、雨漏りなどの補修費用が保証される保険のことで、一定の要件を満たした住宅は加入することができる。

 さらに、「安心R住宅※1」や「長期優良住宅※2」、あるいは住宅性能表示制度を利用している物件であれば、状態が良い中古物件だということが分かり、安心して購入することができるだろう。

※1 安心R住宅:国土交通省が設定した一定の基準を満たした中古住宅。新耐震基準などに適合、インスペクションの実施、瑕疵保険の検査基準に適合していることなどが条件
※2 長期優良住宅:長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅

STEP1:万全の計画・準備がリフォーム成功の礎

東京住宅リフォームガイド SETP1 計画
理想のリフォームを叶えるためにも、入念な計画が必要(出典:PIXTA)

 すでに持ち家がある人や、住宅購入が終わった人は、STEP1のリフォームの計画・準備に進む。STEP1でのポイントは、住宅の現状確認と、入念な計画立案だ。

1.住宅の現状を確認
 1)これまでの工事情報の確認(住宅履歴情報)
 2)建物の不具合に関する調査(建物状況調査)


2.リフォームの計画
 1)水回りや外壁などのリフォーム
 2)リフォームして住宅性能をアップ
  ➀耐震改修
  ➁省エネ改修
  ➂バリアフリー改修
  ➃国産材を利用したリフォーム
 3)家族構成などの変化に合わせた間取りの変更
 4)良い住宅をより長く使うためのリフォーム
  ➀長期優良住宅(増築・改築)の認定
  ➁既存住宅の住宅性能表示制度の活用

 リフォームの計画を立てる前には、現状の正確な把握が不可欠である。「STEP0:既存住宅の購入」と同様に、住宅履歴情報や建物状況調査などを通して確認する。

 その上で、水回りや外壁などの設備の取り替え、模様替えなど、どのようなリフォームを行いたいのか、住宅の性能アップのためのリフォームを行いたいのかなど、目的を明確にしておこう。

 「東京住宅リフォームガイド」では、リフォームによって住宅性能の向上を主に考慮し、耐震改修や省エネ改修などの解説に力を入れている。「長期優良住宅認定制度」のように、住宅性能を高めることで、補助や税制上の優遇が受けられる制度についても紹介されているので参考にして欲しい。

STEP2:リフォームの成否を分ける事業者選び

 リフォームの計画・準備が整ったら、どのリフォーム会社に依頼するか、STEP2の事業者選定に入る。信頼できる事業者を見つけることが、リフォーム成功の鍵を握る。

  1. 1.信頼できる事業者選び
     1)住宅リフォーム事業者団体登録制度の活用
     2)リフォーム瑕疵保険を利用できる事業者


    2.複数の見積もり比較
    3.工事請負契約の締結

 全国的に名前の知られた大手住宅メーカーの系列のリフォーム会社もあるが、リフォーム事業者の多くは地域密着型の中小企業が多い。それだけに、信頼できる会社を選ぶことは簡単ではないが、一つの目安として住宅リフォーム事業者団体登録制度」に登録された会社を選択すれば、安心感が高まる。

※住宅リフォーム事業者団体登録制度:消費者が安心してリフォームを行うことができる事業者団体を、国土交通省において登録するという制度。登録団体は、消費者窓口の設置や、人材育成の仕組みがあること、一定金額以上のリフォームは瑕疵保険に加入すること、などの条件を満たす必要がある。

 めぼしい会社を見つけたら、その会社が手がけたリフォームの事例を見学する、ホームページなどで事例が紹介されていれば実際に現地を訪問するなど、実物を見ることを心がけよう。リフォームした人の体験談を聞ければ最適だろう。

 また、リフォーム瑕疵保険制度を利用できる事業者であれば、万一のことがあっても保険でカバーできるし、制度の利用のためには保険制度の審査に合格しなければならないので、信頼感が高まる。

 そうした信頼できそうな会社を複数見つけて、見積もりを依頼し、比較検討の上でリフォーム契約を締結する。1社にだけ見積もりを依頼してしまうと、その価格が適当なのかどうかが判断できないので、必ず複数社に声をかけよう。

 なお、自分でリフォーム業者を一から探すのが難しいという人は、一括見積もりサイトなどを利用すると手間が省けるのでおすすめだ。見積もりは基本的に無料なので、気負わずに見積もり依頼をしてみよう。

STEP3:工事中は現場に立ち会い、工事に変更があれば新たに書面を交わすことが重要

 契約を締結したら、いよいよSTEP3の工事が始まる。工事の段階では、現場立ち会いや引き渡し時の注意点がまとめられている。

  1. 1.現場の立ち会いと工事内容の確認
     1) 現場立ち会い
     2) 工事記録等
     3) 工事変更時にはあらかじめ書面等で確認を!
     4) 工事完了確認書の取り交わし 
  2. アスベスト 東京住宅リフォームガイド
    アスベストの使用は2006年に全面禁止となったが、古い住宅だと屋根や壁に使われていることも(出典:PIXTA)

     古い住宅だと、建築時にアスベスト(石綿)が使われているケースが想定されるので、事前にその有無を確認した上で、十分な対策を取って工事を行う。実際のリフォーム工事中は定期的に現場に立ち会って、進捗状況をチェックすることが大切だ。

  3.  

  4.  小規模な設備の取り替えや模様替え程度であれば、在宅したままでのリフォームが可能だろうが、耐震改修などの大規模な工事になると、一定期間は仮住まいが必要になる。その仮住まい中も気軽に工事現場に立ち会えるような便利な場所を見つけておきたい。

  5.  

  6.  また、よくあるケースに、「工事中の設計変更」があるが、多くの場合で工事費が加算され、完成時期に影響を与えることがある。工事内容の変更を希望する場合には、事前に、変更内容、追加予算、期日などを明確にした書面を作成しておくことが大切だ。

STEP4:工事終了後も、リフォーム工事の記録は大切に保管しておく

 リフォーム工事が終わっても安心せずに、工事後の維持管理に注意を払っておきたい。STEP4では、工事終了後のポイントについて解説している。

  1. 1.工事記録等の保管と定期的な点検・メンテナンス
     1) 工事記録、取扱説明書等の保管(住宅履歴情報)
     2) 定期的な点検・メンテナンス 

 どの部分をどうリフォームしたのか、工事記録を履歴情報としてまとめて保管しておくと、次にリフォームするときに参考にできる。逆にそれがないと、一から現状を点検しなければならず、時間も費用も増えることになる。

 住宅のリフォーム履歴情報が明確に整備されていれば、将来、売却という事態が発生した場合にも、購入希望者は安心して物件を確認できるので、有利に売却できる可能性が高まる。

 そのほか、リフォーム後の定期点検やメンテナンスについても確認し、着実に実行され、問題が発生しないかどうかなどをきちんと確認するようにしたい。

 大切に使い続ければ、快適な住み心地を維持でき、長く快適に生活できると同時に、将来の売却時にも有利になるはずだから、リフォーム検討前にはぜひ「東京住宅リフォームガイド」に目を通していただきたい。

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