「経済的に不安定」「住宅ローンに通りづらい」など、厳しい条件の人が多い芸能関係者。その人達の家探しを300人以上お手伝いした「不動産芸人」の世良光治氏は、著書『住宅購入で成功する人、大失敗する人』で「どんなに条件が厳しくても家は買える」と断言しています。会社勤めではない人や、収入が少ない人が家を買うコツとはーー。本書から紹介します。
フリーターにだって家は買える
有川浩さんの小説『フリーター、家を買う。』を原作にした同名のドラマが2010年に放送されていました。主演は二宮和也さんでしたね。
フリーターが家族のために高額なマイホーム購入に奮闘する意外性とポジティブな展開で、視聴率も良かったようです。
「所詮(しょせん)小説の話でしょ?」と思われるかもしれません。ところが、住宅ローン審査が通りづらいのは事実ですが、不可能ではありません。
しっかりした収入があり、ある程度の年数働き続けている実績と勤務先の属性によっては、住宅ローンが組める場合があります。一つずつ説明していきましょう。
年収については「返済比率」が物件に対して適正であれば、問題にはなりません。返済比率とは「年収に占める年間返済額の割合」です。住宅ローン審査では、このあたりがチェック項目に入ってきます。
また勤務先の属性としては、一部上場企業は有望です。例えば、近所のイオンスーパーでアルバイトしていて、既に勤続5年とか。コンビニの場合、フランチャイズですと、
ポイントはしっかり源泉徴収票がもらえているかどうか。大手スーパーなどは、週に20時間以上の勤務で社会保険への加入義務がありますから、社会保険に加入して保険料を支払っていることも源泉徴収票で示すことができます。
難しいケースは、いわゆる接客業で、源泉徴収票がもらえない勤め先の場合。夜のお仕事などは会社がしっかり税務処理をしていないことも多いそうで、厳しいかもしれません。
フリーターでも住宅ローン審査に通る裏技は?
フリーターでも住宅ローンの審査に通る方法をよく聞かれるのですが、正攻法をお伝えすれば、頭金をしっかり用意すること。
借入金額も、普通のサラリーマンの返済率のぎりぎりの部分ではなく、年収に対して返済比率20%以下とか、無理なく返済できる金額に抑えること。
住宅ローンとしては、「フラット35」であれば、頭金を1割以上入れれば、フリーターでも審査に通る可能性が高くなると思います。
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フリーランスは節税をしすぎると通りにくくなる
最近、フリーランスという言葉を耳にする機会が増えました。フリーランスとは、特定の企業や団体に所属せずに働く、いわゆる個人事業主のことを指します。ちなみに吉本興業の芸人は、そのほとんどがフリーランスになります。
住宅ローンについては、フリーランスのほうがフリーターより、収入にもよりますが、借りやすいのが現状です。
フリーターはアルバイトを主な収入源とする一方で、フリーランスは専門分野を持った働き方で、いわば自営業。個人で事業をして、収入を得ているといえるからです。また最近は政府の副業推奨もあり、フリーランスの社会的信用がぐっと伸びてきているという感覚もあります。
具体的には、住宅ローン審査で確定申告を2期分もしくは3期分チェックされます。法人にこそしていないけれども、定期的に収入が入ってくる事業を営み、収入が安定していることを示せればよいわけです。
ここで注意点があります。個人事業主であれば、なるべく節税しようと努力されている方が多いと思いますが、住宅ローン審査では所得で審査するので、行きすぎた節税は不利になります。
つまりは、課税対象になる額が多いほどローンが通りやすくなります。「税金をたくさん払っている人を、銀行は信用する」ともいえます。
また、できれば開業届は出しておきましょう。開業届を添付書類として住宅ローンの審査のときに出すと、一つ下駄を履かせてもらえる感覚があります。公的書類ですから、支えとなるのかと推測しています。
貯金が0円でも家が買える「諸費用ローン」という裏技も
初めてマイホーム購入する方が驚かれることに、「諸費用」があります。これは物件価格の6〜8%ほどかかります。諸費用は、不動産の実際の物件の価格以外にかかるもろもろの費用のこと。主に以下の通りです。
・仲介手数料
・印紙代
・住宅ローンの保証料
・火災保険料
・固定資産税および都市計画税の清算金
・マンションの場合は管理費や修繕積立金の清算金
基本的に、諸費用は自己資金で賄うのが大前提です。諸費用分の貯金は準備しましょう。
とはいえ、もし5000万円の物件を選んだとすると、諸費用となるのは50
そこで、「諸費用ローン」の登場です。基本的に住宅ローンは、物件そのものを購入するために貸すローンで、諸費用は住宅ローンでは賄えません。「うちの銀行だったら諸費用分もお貸ししますよ」というのが諸費用ローンとなります。
このローンを利用すれば、貯金がゼロでも家が買えるわけです。
また、「手付金」がほとんどの不動産の売買契約において生じます。手付金支払うことは、「この物件はキープしておきますよ」という意味があるもの。不動産は高額な取引のため、口約束だけでは信用しきれないためです。
手付金は大手の不動産会社では、不動産価格の5%以上を求められるケースがほとんど。とはいえ手付金は、物件価格の一部を先払いするだけなので、諸費用とは全然意味が違います。
こちらも現金で支払うのが一般的です。貯金がない方はこのハードルが意外と高かったりします。手付金は法律で◯%と決まっているわけではなく、売り主と買い主で相談することも可能です。現金の準備をしながらも、手付金の金額に足りそうにもない場合は、営業担当に相談してみましょう。
【関連記事】>>諸費用込み、頭金なしで住宅ローンを借りられる銀行は?
芸能人、スポーツ選手の物件購入事情
自分が実際に芸人やアイドルといった芸能人の物件購入に携わって
これは伝聞ですが、スポーツ選手も住宅ローンがなかなか借りられない様子。年俸がかなり高い選手でも、「何年続けられるか分からないから」と思われるようです。
芸能人に関しても、ローンを組まずして買えたりするくらい稼がれていると、節税なども勘案してマイホームを買おうとしない方が多い傾向にあります。家賃を経費として計上すれば、
一方で、舞台で堅実に活動されている中堅くらいの芸歴の芸人は、住宅ローンをしっかり組んで家を買っていらっしゃいます。ただし、そんな方々でも住宅ローン審査は難儀されていることが多く、芸人ってめちゃくちゃ社会的信用がないんだなって、ご本人も僕も、ショックを受けるときがあります。
この「住宅ローンが通りづらい対策」、一般の方にも参考になる堅実な例をここでご紹介します。
まず審査が優しい金融機関で住宅ローンを組んで、数年間ちゃんと返済し確定申告をして実績をつくる方法。その後、金利が低いなどで自分がローンを組みたかった金融機関に借り換えるわけです。
既に住宅ローンを返済した実績があるので、審査に通りやすくなります。今なら前述した「フラット35」が最初の実績作りにピッタリ。借入額の上限が8000万円と、通常の銀行に比べて若干低めです
ただし、それくらい高額な物件を買われる方は、他のローンでも審査に通るくらいの稼ぎはあるでしょうから、そこはあまり心配しなくていいでしょう。
(吉本興業所属芸人 ぺんとはうす 世良光治)
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